会社設立後の届出一覧:設立直後から従業員を初めて雇うまでに総務・労務がやること
会社を設立したら、税務署・都道府県・市町村への届出と、年金事務所への社会保険の新規適用届が必要です。さらに従業員を初めて雇うと、労働保険の成立手続き、雇用保険の適用、労働条件の明示や法定帳簿の準備が加わります。設立直後から最初の採用までにやることを、時期・提出先・期限つきで整理します。
- 対象読者
- 会社を設立したばかりで、これから初めて従業員を雇う経営者・管理部門の担当者
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この記事のポイント
- 設立直後は、税務署への法人設立届出書(設立の日から2か月以内)・青色申告の承認申請、都道府県・市町村への届出、年金事務所への新規適用届(5日以内)を進める
- 給与を支払う事務所を設けたら、給与支払事務所等の開設届出書を1か月以内に税務署へ。常時10人未満なら源泉所得税の納期の特例も検討する
- 従業員を初めて雇うときは、労働保険の保険関係成立届(10日以内)、雇用保険の適用事業所設置届、労働条件の明示、法定三帳簿の準備をセットで行う
会社を設立した直後は、登記が終わってほっとする間もなく、税務署や年金事務所への届出が続きます。さらに初めて従業員を雇うと、労働保険・雇用保険の手続きや、労働条件の明示、帳簿の準備が加わります。
この記事では、設立直後(役員だけの時期)と、初めて従業員を雇うときに分けて、総務・労務がやることを一覧にします。個々の手続きの詳しい書き方は、それぞれの解説記事にリンクしています。
全体の流れ
| 時期 | 主な手続き | 提出先 |
|---|---|---|
| 設立登記の後すぐ | 法人設立届出書、青色申告の承認申請書など | 税務署 |
| 設立登記の後すぐ | 法人設立(設置)の届出 | 都道府県税事務所・市町村 |
| 設立登記の後すぐ(役員報酬を払う場合) | 健康保険・厚生年金保険の新規適用届 | 年金事務所 |
| 給与を支払う事務所を設けたとき | 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 |
| 初めて従業員を雇うとき | 労働保険の保険関係成立届・概算保険料申告書 | 労働基準監督署 |
| 初めて従業員を雇うとき | 雇用保険の適用事業所設置届・資格取得届 | ハローワーク |
| 初めて従業員を雇うとき | 適用事業報告 | 労働基準監督署 |
社会保険は「従業員を雇ってから」と思われがちですが、法人は役員報酬を受ける代表者1人だけでも適用事業所になります。設立直後の段階で準備が必要です。
設立直後にやること(役員だけの時期)
税務署への届出
国税庁の「新設法人の届出書類」では、主に次の書類が案内されています。
| 書類 | 期限 | ポイント |
|---|---|---|
| 法人設立届出書 | 設立の日(設立登記の日)以後2か月以内 | 定款等の写しを添付する |
| 青色申告の承認申請書 | 設立の日以後3か月を経過した日と、最初の事業年度終了日のうち早い日の前日まで | 設立第1期から青色申告をする場合。期限を過ぎると第1期は白色申告になる |
| 棚卸資産の評価方法の届出書、減価償却資産の償却方法の届出書 | 最初の事業年度の確定申告書の提出期限まで | 出さない場合は法定の方法になる |
| 事前確定届出給与に関する届出書 | 国税庁の案内を確認 | 役員に決まった時期・金額の賞与を払う場合 |
| 消費税関係の届出書 | 届出の種類ごとに異なる | 課税事業者の選択やインボイスの登録などは税理士と相談する |
青色申告の承認申請は期限が短く、忘れやすい書類です。
都道府県・市町村への届出
法人住民税・法人事業税のため、都道府県税事務所と市町村にも法人設立の届出をします。期限や様式は自治体ごとに異なるので、本店所在地の自治体のWebサイトで確認してください。eLTAX(地方税のポータルシステム)で電子提出できる自治体もあります。
社会保険の新規適用届
法人の事業所は、従業員がいなくても、役員報酬を受ける代表者1人から健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です。適用事業所になった日から5日以内に、年金事務所へ新規適用届を出します。代表者の資格取得届もあわせて提出します。
添付書類や、役員報酬が無報酬の場合の扱いなどは「社会保険の新規適用届の出し方」で詳しく解説しています。
登記事項の管理を始める
設立登記の内容(本店所在地、役員、目的など)に変更があったときは、原則として2週間以内に変更の登記が必要です。役員の任期もこの時点で一覧にしておくと、任期切れの登記漏れを防げます(登記変更の期限と段取り)。
給与を支払い始めるときにやること
給与支払事務所等の開設届出書
役員報酬を含め、給与を支払う事務所を設けたときは、給与支払事務所等の開設届出書を、その事務所の所在地を所轄する税務署に提出します。期限は、開設の事実が生じた日から1か月以内です。
源泉所得税の納期の特例
給与から天引きした源泉所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。給与の支給人員が常時10人未満の事業所は、税務署に申請して承認を受けると、半年分をまとめて年2回納付する「納期の特例」を使えます。
| 項目 | 原則 | 納期の特例 |
|---|---|---|
| 対象 | すべての事業所 | 給与の支給人員が常時10人未満 |
| 納付期限 | 翌月10日 | 1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日 |
| 手続き | 不要 | 承認申請書を税務署に提出 |
住民税の特別徴収
従業員(役員を含む)の住民税は、会社が給与から天引きして納める特別徴収が原則です。設立初年度は、市区町村から特別徴収税額の通知が届くタイミングに注意します(住民税の特別徴収の実務)。
初めて従業員を雇うときにやること
労働保険・雇用保険の手続き
労働者を1人でも雇ったら、労災保険と雇用保険(あわせて労働保険)の手続きが必要です。
| 手続き | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 労働保険 保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 保険関係が成立した日の翌日から10日以内 |
| 労働保険 概算保険料申告書(納付) | 労働基準監督署・労働局・金融機関 | 保険関係が成立した日の翌日から50日以内 |
| 雇用保険 適用事業所設置届 | ハローワーク | 設置の日の翌日から10日以内 |
| 雇用保険 被保険者資格取得届 | ハローワーク | 雇い入れた日の属する月の翌月10日まで |
| 適用事業報告 | 労働基準監督署 | 労働者を使用するに至ったとき、遅滞なく |
成立届の控えはハローワークでの設置届に使うため、労働基準監督署→ハローワークの順に進めます。手続きの詳細は「初めて従業員を雇ったときの労働保険の成立手続き」を参照してください。
役員は原則として労災保険の対象外です。経営者も現場の作業をする場合は、労災保険の特別加入を検討します。
社会保険の資格取得届
社会保険の加入要件を満たす従業員を雇ったら、雇い入れた日から5日以内に年金事務所へ資格取得届を出します。扶養する家族がいる場合は被扶養者(異動)届も必要です(入社時の社会保険・雇用保険の加入手続き)。
労働条件の明示と雇用契約
労働契約を結ぶときは、賃金・労働時間・就業場所などの労働条件を書面などで明示しなければなりません(労働基準法第15条)。2024年4月からは、就業場所・業務の変更の範囲なども明示事項に加わっています。
| 準備するもの | 内容 |
|---|---|
| 労働条件通知書 | 明示が義務づけられた事項を漏れなく記載する(労働条件通知書の書き方) |
| 雇用契約書 | 双方が署名・記名押印して合意を残す(任意だが作成しておくと安心) |
| 入社書類の案内 | マイナンバー、年金手帳・基礎年金番号、扶養家族、口座、通勤経路など |
テンプレートは労働条件通知書と雇用契約書を使えます。入社手続き全体の流れは「入社手続きの全体像」で確認できます。
法定三帳簿と記録の保存
労働者を雇ったら、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿(労働時間の記録)を作成し、保存します。給与計算ソフトや勤怠管理システムで作成してもかまいません(法定三帳簿の記載事項と保存期間)。
残業がある場合は36協定
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせる、または法定休日に働かせる場合は、事前に36協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。届け出る前の残業は違法になるため、初めての採用の前に、残業の見込みを確認しておきます(36協定の基本と上限規制)。
雇入れ時の健康診断と安全衛生教育
常時使用する労働者を雇い入れるときは、雇入れ時の健康診断と、安全衛生教育を行います。健康診断の対象や記録については「定期健康診断の実施義務と事後措置」を参照してください。
人数が増えたら発生する義務
最初の採用のあとも、人数の増加にあわせて新しい義務が発生します。
| 人数の目安(事業場単位) | 発生する主な義務 | 関連記事 |
|---|---|---|
| 常時10人以上 | 就業規則の作成・届出、衛生推進者などの選任 | 就業規則の作成・変更と届出 |
| 常時50人以上 | 衛生管理者・産業医の選任、衛生委員会、ストレスチェック | 衛生管理者・産業医の選任義務 |
手続きを楽にするコツ
- 法人番号・本店所在地の正式表記・設立日・事業年度などの基本情報を1枚にまとめ、転記ミスを防ぐ
- 社会保険・労働保険はe-Gov、税務はe-Tax、地方税はeLTAXで電子申請できる(電子申請を始める手順)
- 提出した書類の控えを保存する(文書管理と保存期間の一覧)
まとめ
- 設立直後は、税務署(法人設立届出書は2か月以内、青色申告の承認申請は期限に注意)、都道府県・市町村、年金事務所(新規適用届は5日以内)への届出を進める
- 給与を支払う事務所を設けたら、1か月以内に給与支払事務所等の開設届出書を出す。常時10人未満なら納期の特例も検討する
- 初めて従業員を雇うときは、労働保険の成立届(10日以内)→雇用保険の設置届の順に手続きし、社会保険の資格取得届も5日以内に出す
- 労働条件の明示、法定三帳簿、36協定(残業がある場合)、雇入れ時の健康診断を採用前に準備する
- 自治体への届出の期限・様式は自治体ごとに異なるため、本店所在地の自治体で確認する
この記事で使えるテンプレート
人事 入社手続きチェックリスト 雇用契約、社会保険・雇用保険の資格取得届、マイナンバー、扶養控除等申告書、PC・アカウント・備品・名刺の準備まで、人事・労務・総務の入社手続きを時系列で確認できるチェックリストです。 人事 労働条件通知書(パート・有期雇用用) パートタイム・有期雇用の従業員向け労働条件通知書です。2024年4月改正の明示事項(変更の範囲・更新上限・無期転換)と、パートタイム・有期雇用労働法で求められる昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口、2026年10月から追加された「待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」を盛り込んでいます。 人事 雇用契約書(正社員用) 正社員の採用時に使う雇用契約書のひな形です。労働基準法で書面明示が必要な事項と、2024年4月から追加された「就業場所・業務の変更の範囲」を盛り込み、労働条件通知書を兼ねる形にしています。この記事に出てくる用語
- 安全衛生教育
- 労働災害を防ぐために、雇入れ時や作業内容の変更時などに行う教育です。労働安全衛生法で、業種や規模にかかわらず会社に義務づけられています。
- インボイス制度
- 2023年10月1日に始まった消費税の仕入税額控除の方式です。買い手が仕入税額控除を受けるには、原則として登録を受けた売り手が発行する「適格請求書(インボイス)」の保存が必要です。
- 衛生委員会
- 常時50人以上の労働者を使用する事業場で設置が義務づけられた、労働者の健康障害の防止などについて労使で調査審議する委員会です。毎月1回以上開催します。
- 衛生管理者
- 常時50人以上の労働者を使用する事業場で選任が義務づけられた、職場の衛生管理を担当する人です。衛生管理者免許などの資格が必要です。
- 健康保険
- 会社員などが加入する公的医療保険で、業務外の病気・けが、出産、死亡に対して給付を行います。保険者は協会けんぽと健康保険組合です。
- 厚生年金保険
- 会社員などが加入する公的年金で、老齢・障害・死亡に対して年金を支給します。原則として70歳未満の被用者が加入し、保険料は会社と本人が折半します。
- 雇用契約書
- 会社と労働者が労働契約の内容に合意したことを示すため、双方が署名・記名押印などをする書面です。法律上の作成義務はありませんが、トラブル防止のために多くの会社が作ります。
- 雇用保険
- 労働者が失業したときや、育児・介護で休業したときなどに給付を行う公的保険です。週20時間以上働き、31日以上雇用見込みがある人が原則として加入します。
- 36協定
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて残業させたり、法定休日に働かせたりするために、会社と労働者の過半数代表が結び、労働基準監督署に届け出る労使協定です。
- 産業医
- 労働者の健康管理について専門的な立場から指導・助言を行う医師です。常時50人以上の労働者を使用する事業場は選任が義務づけられています。
- 資格取得届
- 従業員が社会保険や雇用保険に加入するときに会社が提出する届出です。健康保険・厚生年金保険は年金事務所へ5日以内、雇用保険はハローワークへ翌月10日までに提出します。
- 就業規則
- 労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
- 就業場所・業務の変更の範囲
- 雇い入れた後に、就業場所や従事する業務が変わりうる範囲のことです。2024年4月から、労働条件の明示事項に加わりました。
- 出勤簿
- 労働者ごとの出勤日や始業・終業時刻を記録する書類で、賃金台帳・労働者名簿とあわせて「法定三帳簿」と呼ばれます。
- 住民税の特別徴収
- 会社が従業員の個人住民税を毎月の給与から天引きし、従業員に代わって市区町村に納める方法です。6月から翌年5月までの12回に分けて徴収し、翌月10日までに納めます。
- ストレスチェック
- 労働者に心理的な負担の程度を把握するための検査を年1回行い、本人に結果を通知して、セルフケアや職場環境の改善につなげる制度です。
- 賃金台帳
- 労働者ごとに賃金計算の基礎となる事項や支払額を記録する帳簿で、労働基準法で作成と保存が義務づけられています。法定三帳簿の一つです。
- 定款
- 会社の目的・商号・本店所在地・機関設計・役員の任期など、会社の基本ルールを定めた文書です。会社の「憲法」とも呼ばれ、変更には株主総会の特別決議が必要です。
- 適用事業所
- 健康保険・厚生年金保険の加入が義務づけられた事業所です。法人は従業員が1人でも、社長1人でも適用事業所になります。
- 年金事務所
- 日本年金機構の地域の窓口で、健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険の加入や保険料に関する会社の届出を受け付けます。
- ハローワーク
- 厚生労働省の公共職業安定所の愛称です。職業紹介や求人の受付のほか、雇用保険の加入・喪失や給付の手続きの窓口になっています。
- 被扶養者
- 健康保険の被保険者に生計を維持されている家族で、保険料の負担なく健康保険の給付を受けられる人です。原則として年収130万円未満などの要件があります。
- 法人番号
- 国税庁が会社などの法人に1つずつ指定する13桁の番号です。個人のマイナンバーと違って公表されており、誰でも自由に利用できます。
- 法定休日
- 労働基準法で与えることが義務づけられた休日で、毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上です。この日に働かせると35%以上の割増賃金が必要です。
- 法定三帳簿
- 労働基準法で作成・保存が求められる労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3つの帳簿の総称です。
- 法定労働時間
- 労働基準法で定められた労働時間の上限で、原則として休憩時間を除き1日8時間・1週40時間です。これを超えて働かせるには36協定の締結・届出が必要です。
- マイナンバー
- 住民票を持つすべての人に1人1つ指定される12桁の番号です。会社は社会保障・税・災害対策の法定の手続に限って従業員などのマイナンバーを取り扱えます。
- 労災保険
- 業務中や通勤中のけが・病気・障害・死亡に対して、治療費や休業中の所得補償などを給付する公的保険です。保険料は全額会社が負担します。
- 労働基準監督署
- 労働基準法・労働安全衛生法などが守られているかを監督する厚生労働省の機関です。36協定や就業規則の届出先で、労災保険の給付の窓口でもあります。
- 労働者名簿
- 事業場ごとに、労働者の氏名・生年月日・履歴などを記録する名簿で、労働基準法で作成と保存が義務づけられています。法定三帳簿の一つです。
- 労働条件通知書
- 会社が労働者を雇い入れるときに、賃金・労働時間・就業場所などの労働条件を書面で知らせるための文書です。労働基準法の「労働条件の明示」を果たすために使います。
- 労働条件の明示
- 労働契約を結ぶときに、会社が賃金・労働時間などの労働条件を労働者に示す義務です。主な事項は書面で示さなければなりません。
- 労働保険
- 労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。労働者を1人でも雇うと加入が必要で、保険料は年度更新でまとめて申告・納付します。