支店・営業所を閉鎖するときの手続き一覧|登記、給与支払事務所の廃止届、全喪届・雇用保険廃止届、従業員と賃貸物件の段取り
支店や営業所を閉鎖するときは、会社法上の支店なら本店所在地で2週間以内に廃止の登記をし、給与支払事務所等の廃止届(1か月以内)、社会保険の全喪届(5日以内)、雇用保険の適用事業所廃止届(10日以内)、労働保険の確定保険料申告(50日以内)などを出します。その拠点が単独の適用事業所かどうかで要否が変わる点、従業員・賃貸物件・書類の段取りを整理します。
- 対象読者
- 支店・営業所・出張所の閉鎖を担当する、従業員30〜300名の企業の総務担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- まず、閉鎖する拠点が登記上の支店か、税務・社会保険・労働保険で独立した事業所として届け出ているかを確認する。本社でまとめて手続している拠点なら、廃止届が不要なものもある
- 単独の事業所なら、給与支払事務所等の廃止届(1か月以内)、適用事業所全喪届(5日以内)、雇用保険適用事業所廃止届(翌日から10日以内)、労働保険の確定保険料申告(消滅の日から50日以内)が必要
- 従業員は転勤か退職かを早めに決めて本人に説明する。賃貸物件の解約予告期間と原状回復、法定帳簿や個人情報書類の移管・廃棄も逆算して進める
業績の見直しや拠点の統合で、支店や営業所を閉じることになった。開設のときと同じく、閉鎖にも登記・税務・社会保険・労働保険の手続があります。開設時に何を届け出たかによって必要な手続が変わるため、まず「その拠点がどう登録されているか」を確認するところから始めます。
開設時の手続は支店・営業所を開設するときの届出一覧、移転の場合はオフィス移転のチェックリストを参照してください。
最初に確認すること
| 確認項目 | 確認方法 | 閉鎖時の手続 |
|---|---|---|
| 登記上の支店か | 登記事項証明書の「支店」欄 | 記載があれば支店廃止の登記 |
| 給与支払事務所として届け出ているか | 拠点で給与計算・源泉徴収をしているか | していれば給与支払事務所等の廃止届 |
| 社会保険の適用事業所か | 拠点独自の事業所整理記号があるか | あれば適用事業所全喪届 |
| 雇用保険の適用事業所か | 拠点独自の事業所番号があるか | あれば雇用保険適用事業所廃止届 |
| 労働保険の保険関係が独立しているか | 拠点独自の労働保険番号があるか(継続事業の一括をしていないか) | 独立していれば確定保険料申告 |
| 消防・自治体への届出 | 防火管理者の選任届、屋外広告物の許可など | 解任・廃止の届出を確認 |
本社で一括して手続している営業所なら、税務・社会保険・労働保険の廃止届は不要で、従業員の転勤や退職の手続だけで済むこともあります。
手続の一覧と期限
| 提出先 | 手続 | 期限 |
|---|---|---|
| 本店所在地の法務局 | 支店廃止の登記(会社法上の支店の場合) | 廃止から2週間以内(会社法第915条第1項) |
| 税務署 | 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 廃止の日から1か月以内 |
| 都道府県・市町村 | 法人住民税・事業税の事業所廃止の届出 | 自治体の定めによる |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険 適用事業所全喪届 | 事実発生から5日以内 |
| ハローワーク | 雇用保険適用事業所廃止届 | 廃止の翌日から10日以内 |
| 労働基準監督署・労働局 | 労働保険の確定保険料申告(保険関係が消滅したとき) | 消滅した日から50日以内(徴収法第19条) |
支店の所在場所は登記事項です(会社法第911条第3項)。2022年9月以降、支店所在地での登記は廃止されていますが、本店所在地での支店廃止の登記は必要です。
社会保険の全喪届
日本年金機構の案内では、全喪届には原則として、解散登記の記載がある登記簿謄本のコピー、または雇用保険適用事業所廃止届のコピーを添付します。支店の閉鎖のように会社自体は続く場合は、雇用保険の廃止届の控えを使えるよう、ハローワークの手続を先に済ませておくと進めやすくなります。添付書類が用意できない場合の代替書類も案内されているため、事前に確認してください。
拠点の従業員は、本社など別の適用事業所に移るなら資格喪失と資格取得、退職するなら資格喪失の手続をします。
労働保険
拠点が独立した労働保険番号を持っている場合、保険関係が消滅するため、消滅した日から50日以内に確定保険料を申告し、概算保険料との差額を精算します(年度更新のやり方)。継続事業の一括で本社にまとめている拠点を閉じる場合の手続は、管轄の労働局に確認してください。
従業員の扱い
閉鎖で最も時間がかかるのは、拠点で働く人への説明です。
| 選択肢 | 手続・注意点 |
|---|---|
| 他の拠点へ転勤 | 就業規則の配転条項と、勤務地限定の合意がないかを確認する(異動・配置転換の進め方)。雇用保険の転勤届、住民税・通勤手当の変更(転勤の手続き) |
| 退職(本人の希望・合意) | 退職勧奨として進める場合は、面談の進め方に注意する(退職勧奨の進め方) |
| 解雇 | 拠点閉鎖を理由とする解雇は、配置転換の可能性の検討など厳しく判断される。弁護士・社労士に相談してから判断する |
勤務地限定の契約で働いている人は、転勤を命じることができない場合があります。閉鎖の方針が決まったら、拠点ごとの在籍者と雇用契約の内容を一覧にし、早めに一人ずつ意向を聞きます。退職者が出る場合の離職票の書き方は離職票の書き方を参照してください。
物件と設備の段取り
| 項目 | やること |
|---|---|
| 賃貸借契約 | 解約予告期間(契約書で確認)から逆算して解約を通知する。原状回復の範囲を確認する(オフィスの賃貸借契約) |
| 電話・回線・公共料金 | 解約日、電話番号の扱い(転送・廃止) |
| 郵便物 | 転送の手続、取引先への住所変更の案内 |
| 看板 | 撤去と、許可を受けていれば廃止の届出(看板の許可) |
| 備品・IT機器 | 移管・売却・廃棄の区分、PCのデータ消去(PCの返却・廃棄とデータ消去) |
| 書類 | 法定帳簿や契約書は本社へ移管。保存期間が過ぎた個人情報書類は溶解処理など(機密書類の廃棄) |
労働者名簿・賃金台帳・出勤簿などの法定帳簿は、拠点を閉じても保存期間中は保存が必要です(法定三帳簿)。どこに移したかを記録しておきます。
逆算スケジュールの例
| 時期 | やること |
|---|---|
| 6か月前 | 閉鎖方針の決定。賃貸借の解約予告。拠点の登録状況の確認 |
| 3か月前 | 従業員への説明と個別面談。取引先への案内準備 |
| 1か月前 | 転勤・退職者の確定。備品・書類の移管計画 |
| 閉鎖日 | 業務終了、鍵の返却 |
| 閉鎖後5日 | 全喪届(単独の適用事業所の場合) |
| 閉鎖後10日 | 雇用保険の廃止届・転勤届・資格喪失届 |
| 閉鎖後2週間 | 支店廃止の登記 |
| 閉鎖後1か月 | 給与支払事務所等の廃止届 |
| 閉鎖後50日 | 労働保険の確定保険料申告 |
まとめ
- 閉鎖する拠点が登記上の支店か、税務・社会保険・労働保険で独立した事業所かを最初に確認する
- 単独の事業所なら、全喪届5日、雇用保険廃止届10日、支店廃止登記2週間、給与支払事務所等の廃止届1か月、確定保険料申告50日が目安
- 従業員は雇用契約の勤務地条件を確認し、転勤か退職かを早めに個別に話し合う
- 賃貸の解約予告期間から逆算し、帳簿・個人情報書類の移管と廃棄まで計画する
この記事で使えるテンプレート
総務 オフィス移転チェックリスト 本社・事業所を移転するときの準備、行政への届出(登記・税務署・年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク・消防署)、従業員関係の手続き、移転後の確認までを時期別にまとめたチェックリストです。 労務 転勤時の手続きチェックリスト(雇用保険の転勤届・社会保険・手当・住民税・社宅・本人への案内) 転勤の辞令を出してから赴任後3か月までに、人事・給与・総務・本人がやることを1枚で確認するチェックリストです。拠点ごとの雇用保険・社会保険の届出状況を確かめる欄、雇用保険の転勤届や社会保険の喪失・取得、通勤手当の変更と随時改定、住民税、社宅・赴任旅費の確認欄をまとめています。この記事に出てくる用語
- 健康保険
- 会社員などが加入する公的医療保険で、業務外の病気・けが、出産、死亡に対して給付を行います。保険者は協会けんぽと健康保険組合です。
- 源泉徴収
- 給与や報酬などを支払う人が、支払の際に所得税を差し引いて国に納める仕組みです。差し引いた税額は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。
- 厚生年金保険
- 会社員などが加入する公的年金で、老齢・障害・死亡に対して年金を支給します。原則として70歳未満の被用者が加入し、保険料は会社と本人が折半します。
- 雇用保険
- 労働者が失業したときや、育児・介護で休業したときなどに給付を行う公的保険です。週20時間以上働き、31日以上雇用見込みがある人が原則として加入します。
- 資格喪失届
- 従業員が退職したときなどに、社会保険・雇用保険の被保険者でなくなったことを届け出る書類です。社会保険は5日以内、雇用保険は10日以内に提出します。
- 就業規則
- 労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
- 出勤簿
- 労働者ごとの出勤日や始業・終業時刻を記録する書類で、賃金台帳・労働者名簿とあわせて「法定三帳簿」と呼ばれます。
- 退職勧奨
- 会社が社員に退職を勧め、合意による退職を目指すことです。解雇とは違い、本人は断ることができます。
- 賃金台帳
- 労働者ごとに賃金計算の基礎となる事項や支払額を記録する帳簿で、労働基準法で作成と保存が義務づけられています。法定三帳簿の一つです。
- 適用事業所
- 健康保険・厚生年金保険の加入が義務づけられた事業所です。法人は従業員が1人でも、社長1人でも適用事業所になります。
- 登記事項証明書
- 法務局が発行する、会社の登記内容を証明する書面です。いわゆる「登記簿謄本」にあたり、銀行口座の開設や入札、許認可の申請などで提出を求められます。
- 年金事務所
- 日本年金機構の地域の窓口で、健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険の加入や保険料に関する会社の届出を受け付けます。
- 配置転換
- 同じ会社の中で、職務の内容や勤務場所を変えることです。勤務地が変わるものを特に転勤といいます。
- ハローワーク
- 厚生労働省の公共職業安定所の愛称です。職業紹介や求人の受付のほか、雇用保険の加入・喪失や給付の手続きの窓口になっています。
- 法定三帳簿
- 労働基準法で作成・保存が求められる労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3つの帳簿の総称です。
- 防火管理者
- 一定の人数以上が出入りする建物で、消防計画の作成や消火・避難訓練の実施など、火災予防の業務を行う責任者です。消防法にもとづき、建物の管理権原者(所有者やテナント)が選任し、消防署に届け出ます。
- 溶解処理
- 機密書類を箱ごと専門業者が回収し、製紙工場などで水と薬品で溶かして処理する廃棄方法です。大量の書類を開封せずに復元不可能な形で廃棄できます。
- 離職票
- 退職者が基本手当(失業手当)を受けるためにハローワークへ提出する書類です。会社が提出した離職証明書にもとづき、ハローワークが交付します。
- 労働基準監督署
- 労働基準法・労働安全衛生法などが守られているかを監督する厚生労働省の機関です。36協定や就業規則の届出先で、労災保険の給付の窓口でもあります。
- 労働者名簿
- 事業場ごとに、労働者の氏名・生年月日・履歴などを記録する名簿で、労働基準法で作成と保存が義務づけられています。法定三帳簿の一つです。
- 労働保険
- 労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。労働者を1人でも雇うと加入が必要で、保険料は年度更新でまとめて申告・納付します。