役員変更・本店移転など登記変更の期限と総務の段取り:2週間以内の登記と、その後の届出
会社の登記事項に変更があったときは、原則として2週間以内に本店所在地で変更の登記をしなければなりません(会社法第915条)。役員の任期管理と再任時の登記、本店移転・商号変更などの手順、登記後に必要な税務署・年金事務所などへの届出を、総務の段取りとして整理します。
- 対象読者
- 株主総会・役員改選・本店移転の事務を担当する従業員30〜300名の企業の総務担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了9分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 登記事項に変更が生じたら、2週間以内に本店所在地で変更の登記をする。期限を過ぎても申請はできるが、代表者が100万円以下の過料に処される可能性がある
- 役員は再任(重任)でも変更登記が必要。任期を一覧で管理し、定時株主総会の準備と一緒に登記の段取りを組む
- 登記の後は、税務署・都道府県・市区町村・年金事務所などへの届出が続く。登記事項証明書を早めに取得して並行して進める
役員の改選、代表者の交代、本店の移転、商号や事業目的の変更。こうした会社の基本情報の変更は、登記をして初めて社外に示すことができます。登記には期限があり、忘れると過料の対象になります。小さな会社では総務が段取りを担うことが多いので、期限と流れを押さえておきましょう。
登記の期限は「2週間以内」
会社法第915条第1項により、登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に、本店の所在地において変更の登記をしなければなりません。
| 押さえておきたい点 | 内容 |
|---|---|
| 期限の起算点 | 変更が生じた日(例:株主総会で選任され就任を承諾した日、役員の任期が満了した日、本店を移転した日) |
| 期限を過ぎた場合 | 申請は受け付けられるが、代表者が裁判所から100万円以下の過料に処される可能性がある(会社法第976条) |
| 申請先 | 本店所在地を管轄する法務局(登記所) |
| 申請方法 | 書面(窓口・郵送)またはオンライン |
| 依頼先 | 登記の申請を代理する専門家は司法書士 |
よくある登記事項の変更
| 変更の内容 | 社内で必要な決定(例) | 登記の期限 |
|---|---|---|
| 役員の就任・退任・再任(重任) | 株主総会の選任決議、就任承諾 | 変更が生じた日から2週間以内 |
| 代表取締役の交代 | 取締役会の決議(取締役会設置会社)など | 同上 |
| 役員・代表者の氏名・住所の変更 | 不要(事実の発生) | 同上 |
| 本店移転 | 定款変更が必要な場合は株主総会の特別決議、具体的な所在地と移転日は取締役会など | 移転の日から2週間以内 |
| 商号・事業目的の変更 | 株主総会の特別決議(定款変更) | 変更が生じた日から2週間以内 |
| 資本金の額の変更 | 増資・減資の手続き | 同上 |
申請書の様式と記載例は、法務局の「商業・法人登記の申請書様式」で公開されています。
役員変更の登記と任期の管理
再任でも登記が必要
法務省は、役員が再任された場合でも役員変更の登記が必要だと注意を呼びかけています。同じ人が続けて役員になる場合も、法律上は任期満了でいったん退任し、改めて就任したことになるためです(登記上は「重任」と表示されます)。
任期の基本
| 役員 | 任期の原則 | 非公開会社(株式の譲渡制限がある会社)の特例 |
|---|---|---|
| 取締役 | 選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで | 定款で、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで延ばせる |
| 監査役 | 選任後4年以内(同様の数え方) | 定款で10年まで延ばせる |
自社の任期は定款で確認します。任期を10年にしている会社では、改選を忘れやすいので特に注意してください。
最後の登記から12年を経過した株式会社は「休眠会社」として扱われ、届出をしないと解散したものとみなされることがあります。任期を10年にしている会社で役員変更の登記を忘れていると、この対象になりかねません。
役員の任期一覧を作る
| 役職 | 氏名 | 就任日 | 任期満了となる定時株主総会 | 次回の改選 |
|---|---|---|---|---|
| 代表取締役 | ◯◯ ◯◯ | 2025-06-26 | 2027年6月の定時株主総会 | 2027-06 |
| 取締役 | ◯◯ ◯◯ | 2025-06-26 | 2027年6月の定時株主総会 | 2027-06 |
| 監査役 | ◯◯ ◯◯ | 2023-06-28 | 2027年6月の定時株主総会 | 2027-06 |
この一覧を、契約書や許認可の更新期限と同じように期限管理の対象にしておくと安全です(「契約書管理の基本」、契約書管理台帳)。
定時株主総会から登記までの段取り
| 時期 | やること |
|---|---|
| 総会の2〜3か月前 | 任期一覧で改選の対象者を確認する。司法書士に依頼する場合は日程を伝える |
| 総会の1〜2か月前 | 候補者を決め、就任承諾書・本人確認書類の準備を依頼する |
| 総会の招集 | 招集通知に役員選任の議案を入れる(招集の時期と方法は定款と会社法で確認) |
| 総会当日 | 選任決議。議事録を作成する。代表取締役を選定する場合は取締役会など |
| 総会後2週間以内 | 登記を申請する(議事録、就任承諾書、印鑑証明書など) |
| 登記完了後 | 登記事項証明書を取得し、各所への届出・変更を行う |
添付書類は、役員の種類や就任・再任の別、取締役会の有無などで変わります。法務局の記載例を確認するか、司法書士に確認してください。登記申請に使う会社の実印の管理は「印章管理と押印規程のつくり方」と印章管理簿・押印申請簿で整理できます。
代表取締役等の住所の非表示
2024年10月1日から、一定の要件を満たす株式会社は、代表取締役などの住所の一部(市区町村より後)を登記事項証明書などに表示しないよう申し出ることができるようになりました(代表取締役等住所非表示措置)。申出は住所が登記される登記の申請と同時に行う必要があり、上場会社以外は所定の書面の添付が求められます。利用する場合は、法務省の案内で要件を確認してください。
本店移転の登記
本店移転では、移転先が今と同じ法務局の管轄内か、管轄外かで手続きが変わります。
| 移転先 | 登記の申請 |
|---|---|
| 同じ法務局の管轄内 | 本店所在地の法務局に移転の登記を申請する |
| 別の法務局の管轄 | 移転の日から2週間以内に、旧本店所在地で移転の登記、新本店所在地で所定の事項の登記を行う。新本店所在地あての申請は、旧本店所在地の法務局を経由して、旧本店所在地あての申請と同時に行う |
定款に本店の所在地を「東京都千代田区」のように最小行政区画まで書いている場合、区をまたぐ移転では定款変更(株主総会の特別決議)が必要になります。移転日より前に登記を申請することはできないので、実際の移転日を社内で1日に決めておきます。
オフィス移転に伴う労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所などへの届出は「オフィス移転の総務チェックリスト」とオフィス移転チェックリストにまとめています。
登記の後に必要な届出・変更
登記が終わったら、登記事項証明書を取得して各所への届出を進めます。変更の内容によって必要な届出が違うので、表で確認してください。
| 届出先 | 対象となる変更の例 | 届出の内容 | 期限の目安 |
|---|---|---|---|
| 税務署 | 商号、本店所在地、代表者、事業目的の変更など | 法人税・消費税の異動届出書(e-Taxでも提出できる) | 変更後、速やかに |
| 都道府県税事務所・市区町村 | 同上 | 法人の異動届(様式・期限は自治体ごとに確認) | 自治体の定めによる |
| 年金事務所 | 事業主(代表者)の変更など | 健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届 | 事実発生から5日以内 |
| 年金事務所 | 名称(商号)・所在地の変更 | 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 | 事実発生から5日以内 |
| 労働基準監督署・ハローワーク | 名称・所在地の変更 | 労働保険・雇用保険の名称・所在地等の変更届 | 変更の翌日から10日以内 |
| 取引先・金融機関 | 商号・本店所在地・代表者の変更 | 変更の通知、口座名義・届出印の変更 | 速やかに |
インボイス(適格請求書発行事業者)の登録事項に変更がある場合も手続きが必要です。法人の名称や本店所在地の変更を記載した異動届出書を提出していれば、別途の変更届出書は不要とされています。
社内での変更
- 会社案内、ウェブサイト、名刺、封筒、請求書のひな形
- 契約書のひな形と、締結済み契約の相手方への通知
- 就業規則・社内規程の会社名・代表者名の記載(「社内規程の体系と管理」)
- 許認可(業種ごとの許可・登録)の変更届
年間の流れに組み込む
役員変更の登記は、多くの会社で定時株主総会の後に発生します。3月決算の会社なら6月の総会後、7月上旬までに登記を終えるのが一般的な流れです。月次の業務カレンダー(「6月にやること」)に、総会・登記・届出の予定を書き込んでおきましょう。
まとめ
- 登記事項に変更が生じたら、2週間以内に本店所在地で変更の登記をする。遅れると代表者に過料が科される可能性がある
- 役員は再任でも登記が必要。定款で任期を確認し、任期一覧で改選時期を管理する
- 登記の後は税務署・自治体・年金事務所・労働保険などへの届出が続く。登記事項証明書を早めに取得して並行して進める