支店・営業所を開設するときの届出一覧:登記・社会保険・労働保険・税務と事業場ごとの義務
支店や営業所を開設するときは、本店所在地での支店設置の登記、社会保険・労働保険の事業所としての扱い、税務署・自治体への届出、そして就業規則・36協定などの事業場ごとの義務を確認します。支店を独立した事業所にするか本社でまとめるかの考え方と、一括適用・継続事業の一括などの制度を整理します。
- 対象読者
- 支店・営業所の新設を担当する、従業員30〜300名の企業の総務・労務担当者
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- 実務
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この記事のポイント
- 会社法上の「支店」を設ける場合は、本店所在地で支店設置の登記をする。2022年9月1日から支店所在地での登記は廃止された
- 社会保険・労働保険・雇用保険は、支店を独立した事業所として扱うか本社でまとめるかで手続きが変わる。一括適用・継続事業の一括・事業所非該当承認は別々の制度なので、それぞれ管轄で確認する
- 労働基準法の義務は原則として事業場ごと。支店の人数に応じて就業規則の届出、36協定、衛生推進者などの選任が必要になる
支店や営業所の開設は、物件探しや内装に目が行きがちです。しかし総務・労務には、登記、社会保険・労働保険、税務、労働基準法上の事業場ごとの義務と、確認することが数多くあります。
この記事では、支店・営業所を開設するときの届出を、提出先ごとに整理します。本店そのものを移す場合は「オフィス移転の総務チェックリスト」を参照してください。
最初に決めること
届出の要否は、次の3点で変わります。開設の計画段階で決めておきます。
| 決めること | 影響する手続き |
|---|---|
| 会社法上の「支店」として登記するか | 支店設置の登記の要否 |
| 支店で採用・給与計算・労務管理をするか、本社でまとめるか | 社会保険・労働保険・雇用保険の事業所の扱い、給与支払事務所の届出 |
| 支店に常時何人の労働者が働くか | 就業規則、衛生推進者・衛生管理者、防火管理者などの義務 |
「営業所」「出張所」という名前でも、登記上の支店にするかどうかは会社の判断です。登記するかどうかと、社会保険などで独立した事業所になるかどうかは、別々の基準で判断されます。
登記:本店所在地で支店設置の登記をする
会社法上の支店を設けた場合は、本店所在地を管轄する法務局で支店設置の登記をします。登記事項の変更なので、原則として2週間以内に申請します(登記変更の期限と段取り)。
法務省の案内によると、2022年(令和4年)9月1日から、支店の所在地での登記は廃止されました。一方で、本店の所在地で行う支店の設置・移転・廃止の登記は引き続き必要です。
| 項目 | 2022年9月1日以降 |
|---|---|
| 本店所在地での支店設置の登記 | 必要 |
| 支店所在地での登記 | 廃止(申請しても受け付けられない) |
取締役会設置会社では、支店の設置は取締役会で決議する事項とされています。議事録の作成も忘れずに行います(取締役会・株主総会議事録の作り方)。
社会保険:独立した適用事業所にするか、本社でまとめるか
健康保険・厚生年金保険は、事業所ごとに適用されるのが原則です。支店の人事・給与の管理の実態によっては、支店も独立した適用事業所として新規適用届が必要になることがあります。
本社・支社などごとに適用されている事業所について、本社で人事・給与などを集中管理しているなど一定の基準を満たす場合は、年金事務所に申請して承認を受けると、支社を含めて一つの適用事業所にできます(一括適用)。
| 方式 | 手続き | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 支店を独立した適用事業所にする | 支店について新規適用届。従業員の異動のたびに資格の喪失・取得が必要 | 支店で給与計算や労務管理をしている |
| 一括適用(本社でまとめる) | 年金事務所に承認申請。承認までに時間がかかる | 本社で人事・給与を集中管理している。支店が複数ある |
どちらになるかは事業所の実態で判断されるため、開設前に管轄の年金事務所に相談するのが確実です。一括適用の場合でも、社宅や食事などの現物給与の価額は、本社・支店それぞれの所在地の価額で計算するとされています。
労働保険・雇用保険
労働保険(労災保険・雇用保険の保険料)
労働保険も、事業ごとに保険関係が成立するのが原則です。支店に労働者がいて独立した事業と扱われる場合は、支店について保険関係成立届と概算保険料の申告が必要です(手続きの流れは労働保険の成立手続き)。
複数の事業の保険料の申告・納付を本社でまとめたい場合は、「継続事業の一括」の認可を申請できます。兵庫労働局の案内では、主に次の要件が示されています。
- 継続事業(期間の定めのない事業)であること
- 指定事業(本社など)と一括される事業の事業主が同じであること
- 労災保険率表の「事業の種類」が同じであること
- 指定事業で、一括される事業の労働者数や賃金を把握でき、事務処理ができること
新しく開設する支店で一括を申請する場合の手順(成立届の要否を含む)は、労働局によって案内の仕方が異なることがあるため、管轄の労働局で確認してください。
雇用保険(被保険者の手続きの単位)
継続事業の一括の認可を受けても、雇用保険の被保険者の届出をする事業所の単位は変わりません。雇用保険の手続きの単位をまとめるのは、別の制度です。
| 制度 | 目的 | 窓口 |
|---|---|---|
| 継続事業の一括 | 労働保険料の申告・納付を本社などにまとめる | 労働基準監督署・労働局 |
| 雇用保険の事業所非該当承認 | 独立性のない支店などの雇用保険の手続きを本社などで行う | ハローワーク |
| 雇用保険の適用事業所設置届 | 支店を雇用保険の独立した適用事業所にする | ハローワーク(設置の日の翌日から10日以内) |
事業所非該当承認は、支店に人事・経理・賃金計算などの独立性がないことなどが基準とされています。どれを使うかは、支店の管理の実態にあわせて決めます。
税務署・自治体への届出
| 届出 | 提出先 | 期限 | 必要になる場合 |
|---|---|---|---|
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 支店の所在地を所轄する税務署 | 開設の日から1か月以内 | 支店で給与の計算・支払いをする場合 |
| 事業所等の設置の届出(法人住民税・法人事業税) | 支店のある都道府県・市町村 | 自治体ごとに異なる | 新たな自治体に事業所を設けた場合 |
| 償却資産申告 | 支店のある市町村 | 毎年1月31日 | 支店に事業用の資産(内装・機器など)がある場合 |
給与の計算・支払いを本社で行う場合は、支店について給与支払事務所等の開設届出書は通常不要です。法人住民税は事業所のある自治体ごとに課税されるため、新しい自治体に支店を出したときは、その自治体への届出を忘れがちです。償却資産申告は「償却資産申告の総務実務」で解説しています。
労働基準法・安全衛生:事業場ごとの義務
労働基準法や労働安全衛生法の多くの義務は、会社単位ではなく事業場単位で判断します。支店が一つの事業場にあたる場合は、次を確認します。
| 確認すること | 内容 | 関連記事 |
|---|---|---|
| 適用事業報告 | 新たに労働者を使用する事業場として、所轄の労働基準監督署へ | 労働保険の成立手続き |
| 就業規則 | 支店が常時10人以上なら、支店の所轄の労働基準監督署に届け出る。本社と同じ内容なら本社で一括して届け出る方法もある | 就業規則の作成・変更と届出 |
| 36協定 | 事業場ごとに過半数代表者と結び、届け出る | 36協定の基本 |
| その他の労使協定 | 賃金控除協定などは事業場ごとに結ぶ | 会社が結ぶ労使協定の一覧 |
| 衛生推進者・衛生管理者・産業医 | 常時10人以上で衛生推進者など、50人以上で衛生管理者・産業医 | 衛生管理者・産業医の選任義務 |
| 事務所の衛生基準 | 照度・換気・トイレ・休憩の設備など | 事務所衛生基準規則のポイント |
少人数の営業所で、上位の事業場と一括して扱うのが相当な場合もあります。判断に迷うときは、所轄の労働基準監督署に確認します。
消防・防災・セキュリティ
- 防火管理者:入居するビルの用途や収容人員によって、選任と消防計画の届出が必要です(防火管理者の選任と消防計画)
- 安否確認・連絡網:支店の従業員を安否確認の対象に追加します(安否確認の仕組みづくり)
- 鍵・入退室:鍵の管理者、最終退出者の手順、書類の施錠保管を決めます(オフィスの物理セキュリティ)
開設スケジュールの例
| 時期 | やること |
|---|---|
| 3か月前 | 登記するか・事業所の扱いを決める。年金事務所・労働局・ハローワークに相談 |
| 2か月前 | 物件契約、取締役会決議。保険・備品・回線の手配 |
| 1か月前 | 就業規則・労使協定の準備、過半数代表者の選出。名刺・Webサイトの住所の準備 |
| 開設日 | 業務開始。支店設置の登記の申請(2週間以内) |
| 開設後5〜10日 | 社会保険・労働保険・雇用保険の届出(独立した事業所にする場合) |
| 開設後1か月 | 給与支払事務所等の開設届出書(必要な場合)、自治体への届出 |
社会保険・労働保険の届出は、e-Govで電子申請できます(電子申請を始める手順)。
まとめ
- 会社法上の支店を設けたら、本店所在地で2週間以内に支店設置の登記をする。支店所在地での登記は2022年9月から不要
- 社会保険は一括適用、労働保険は継続事業の一括、雇用保険は事業所非該当承認と、まとめ方の制度が別々にある。開設前に各管轄に相談する
- 支店で給与を支払うなら税務署に給与支払事務所等の開設届出書、新しい自治体に出店するなら自治体への届出も忘れない
- 就業規則・36協定・衛生推進者などは事業場ごとの義務。支店の人数を見て判断する