社名変更(商号変更)の手続き一覧|株主総会・登記から税務署・年金事務所・取引先への通知まで
社名(商号)を変えるには、定款変更の株主総会特別決議、2週間以内の変更登記のあと、税務署・都道府県・市町村、年金事務所(5日以内)、労働基準監督署とハローワーク(10日以内)への届出が続きます。インボイス登録、銀行口座、許認可、印鑑、名刺・Web・契約書の切替えまで、効力発生日から逆算した段取りを整理します。
- 対象読者
- 社名変更の実務を任された、従業員30〜300名の企業の総務担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 商号は定款の記載事項なので、株主総会の特別決議で定款を変更し、効力発生日から2週間以内に本店所在地で変更登記をする。同じ本店所在場所に同一の商号があると登記できない
- 登記後は、税務署・地方税の異動届(インボイスの登録事項変更は異動届で兼ねられる)、年金事務所の名称変更届(5日以内)、労働保険の名称・所在地等変更届と雇用保険の事業主事業所各種変更届(いずれも10日以内)を出す
- 社外向けの切替え(銀行口座、許認可、取引先への通知、印鑑、名刺・Web・メール)は数が多い。効力発生日を決めたら、3か月前から一覧で進める
社名変更は、経営判断としては一瞬でも、総務にとっては数か月がかりのプロジェクトです。登記と役所への届出に期限があるうえ、銀行口座・許認可・取引先・名刺・Webサイトと、切り替える対象が社内外に散らばっています。
この記事では、商号変更の法的な手続と、効力発生日の前後に総務がやることを順番に整理します。登記変更全般の期限や役員変更は登記変更の期限と段取り、定款変更の決議は定款変更の手続きもあわせて参照してください。
新しい商号を決めるときの確認
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 会社の種類の文字 | 株式会社は商号中に「株式会社」を用いる(会社法第6条第2項) |
| 同一本店・同一商号 | 同じ本店所在場所に、同一の商号の会社の登記があると登記できない(商業登記法第27条) |
| 他社と誤認されるおそれ | 不正の目的で他の会社と誤認されるおそれのある名称を使ってはならない(会社法第8条)。有名企業に似た名前は避ける |
| 商標 | 自社の商品・サービス名として使うなら、商標の先行登録を調べる(商標登録の基本) |
| ドメイン・SNSアカウント | 新しい社名のドメインやアカウント名が取れるか(ドメイン名の管理) |
登記上は、本店所在場所が違えば同じ商号でも登記できます。ただ、取引先が混同するような名前は、後の誤送金や信用の問題につながるため、登記できるかどうかとは別に検討します。
法的な手続の流れ
商号は定款の記載事項です。変更には、株主総会の特別決議による定款変更が必要です(会社法第466条、第309条第2項)。
| 順番 | 手続 | 期限・ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 取締役会(設置会社)で株主総会の招集を決定 | 効力発生日を決めておく(「〇年〇月〇日付で変更」とする決議もできる) |
| 2 | 株主総会の特別決議で定款変更 | 議事録を作る(議事録の作り方) |
| 3 | 本店所在地の法務局に変更登記を申請 | 効力発生日から2週間以内(会社法第915条第1項) |
| 4 | 新しい登記事項証明書・印鑑証明書を取得 | 各届出に添付する部数を確認(証明書の取り方) |
登記申請の様式は法務局の「商業・法人登記の申請書様式」に掲載されています。登録免許税などの費用は申請時に確認してください。
会社の印鑑
法務局に届け出ている印鑑の印影に旧商号が入っている場合は、新しい印鑑を作り、印鑑届を出し直すのが一般的です。登記の申請とあわせて手続できるかを、管轄の法務局で確認しておくと二度手間を防げます。銀行の届出印も同様に変更します(印章管理)。
登記後の届出
| 提出先 | 届出 | 期限 |
|---|---|---|
| 税務署 | 法人税・消費税の異動届出書 | 変更後速やかに |
| 都道府県税事務所・市町村 | 法人住民税・事業税の異動届(名称は自治体ごと) | 自治体の定めによる |
| 年金事務所(事務センター) | 健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 | 事実発生から5日以内。登記簿謄本のコピーを添付 |
| 労働基準監督署 | 労働保険 名称、所在地等変更届 | 変更の翌日から10日以内 |
| ハローワーク | 雇用保険 事業主事業所各種変更届 | 変更の翌日から10日以内 |
国税庁の案内では、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録事項の変更は、名称の変更を記載した異動届出書を出していれば、別に変更届出書を出す必要はないとされています。公表サイトの表示が新しい名称に変わったかを、後日確認しておきます。
年金事務所・労働基準監督署・ハローワークの届出は、電子申請でもできます(電子申請を始める手順)。健康保険組合に加入している場合は、組合への届出も確認します。
社外・社内の切替え
届出よりも件数が多いのが、民間の取引や社内の切替えです。
社外
- 金融機関:口座名義、届出印、ネットバンキングの登録名、融資・保証の契約
- 許認可:建設業許可、宅建業免許など業法ごとの変更届。期限が短いものもあるため、許認可の一覧から確認する
- 取引先:社名変更の通知状(効力発生日、新旧の社名、変わらない事項=住所・電話・口座など)。請求書・注文書の宛名変更を依頼する
- 契約書:社名変更だけなら会社の同一性は変わらないため、契約を結び直す必要は通常ない。通知で足りるか、契約に通知条項があるかを確認する(契約書管理)
- 各種サービス:電気・通信・リース・保険・クレジットカード・SaaSの契約名義
社内
- 名刺、封筒、ゴム印、請求書・見積書のテンプレート、社員証(表記とデザインの統一)
- Webサイト、メール署名、SNSのプロフィール、求人票・求人サイト
- 就業規則・社内規程の会社名、雇用契約書・労働条件通知書の様式
- 看板・表札(看板の許可)
通知状を出す前に、振込先口座の名義変更が終わっているかを確認します。口座名義と請求書の社名が一致しない期間があると、取引先の経理で入金が止まることがあります。
従業員への案内
従業員にも、変更日と、何が変わり何が変わらないかを案内します。雇用契約は社名変更後もそのまま続き、勤続年数や有給休暇の付与もリセットされません。給与明細・源泉徴収票の会社名、健康保険の資格情報、社員証の切替え時期をあわせて伝えると、問い合わせが減ります。合併や会社分割など、社名変更と同時に会社の組織そのものが変わる場合は、労働契約の承継など別の手続が必要になるため、専門家に相談してください。
効力発生日から逆算した段取り
| 時期 | やること |
|---|---|
| 3か月前 | 新商号の確認(同一商号、商標、ドメイン)。切替え対象の洗い出し |
| 2か月前 | 印鑑・名刺・封筒などの発注準備。許認可の変更手続の確認。株主総会の準備 |
| 1か月前 | 株主総会決議。取引先への事前案内 |
| 効力発生日 | Webサイト・メール署名の切替え |
| 〜2週間 | 変更登記 |
| 登記完了後 | 役所への届出、銀行・許認可・各種契約の名義変更、取引先への正式通知 |
登記の完了日によって各届出の期限が近くなります。年金事務所は5日以内と短いため、登記事項証明書が取れ次第すぐ出せるよう、届出書を先に作っておきます。
まとめ
- 商号変更は株主総会の特別決議による定款変更と、2週間以内の変更登記が必要。同じ本店所在場所に同一商号があると登記できない
- 登記後は、税務署・地方税、年金事務所(5日以内)、労働基準監督署・ハローワーク(10日以内)に届け出る。インボイスの登録事項は異動届で兼ねられる
- 銀行口座、許認可、取引先、印鑑、名刺・Webなどの切替えは一覧にして、効力発生日の3か月前から進める
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総務 オフィス移転チェックリスト 本社・事業所を移転するときの準備、行政への届出(登記・税務署・年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク・消防署)、従業員関係の手続き、移転後の確認までを時期別にまとめたチェックリストです。この記事に出てくる用語
- 印鑑証明書
- 会社が法務局に届け出た代表者印(会社実印)が本物であることを証明する書面です。重要な契約や登記の申請で、代表者印の押印とセットで提出を求められます。
- インボイス制度
- 2023年10月1日に始まった消費税の仕入税額控除の方式です。買い手が仕入税額控除を受けるには、原則として登録を受けた売り手が発行する「適格請求書(インボイス)」の保存が必要です。
- 株主総会
- 株式会社の最高意思決定機関で、株主が集まって計算書類の承認、役員の選任、定款変更などを決議する会議です。毎事業年度の終了後に開く「定時株主総会」と、必要に応じて開く臨時株主総会があります。
- 健康保険
- 会社員などが加入する公的医療保険で、業務外の病気・けが、出産、死亡に対して給付を行います。保険者は協会けんぽと健康保険組合です。
- 源泉徴収票
- 会社が1年間に支払った給与・賞与の額と、源泉徴収した所得税の額などを記載した書類です。従業員に交付するほか、法定調書として税務署に提出します。
- 厚生年金保険
- 会社員などが加入する公的年金で、老齢・障害・死亡に対して年金を支給します。原則として70歳未満の被用者が加入し、保険料は会社と本人が折半します。
- 雇用契約書
- 会社と労働者が労働契約の内容に合意したことを示すため、双方が署名・記名押印などをする書面です。法律上の作成義務はありませんが、トラブル防止のために多くの会社が作ります。
- 雇用保険
- 労働者が失業したときや、育児・介護で休業したときなどに給付を行う公的保険です。週20時間以上働き、31日以上雇用見込みがある人が原則として加入します。
- 就業規則
- 労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
- 商業登記
- 会社の商号・本店・目的・役員・資本金などを法務局の登記簿に記録し、取引の相手方が確認できるように公示する制度です。登記事項に変更があれば2週間以内に変更登記をします。
- 定款
- 会社の目的・商号・本店所在地・機関設計・役員の任期など、会社の基本ルールを定めた文書です。会社の「憲法」とも呼ばれ、変更には株主総会の特別決議が必要です。
- 適用事業所
- 健康保険・厚生年金保険の加入が義務づけられた事業所です。法人は従業員が1人でも、社長1人でも適用事業所になります。
- 登記事項証明書
- 法務局が発行する、会社の登記内容を証明する書面です。いわゆる「登記簿謄本」にあたり、銀行口座の開設や入札、許認可の申請などで提出を求められます。
- 登録免許税
- 登記や登録、免許などを受けるときに国に納める税金です。会社の設立・役員変更・本店移転・増資などの商業登記を申請するときに納めます。
- 取締役会
- 3人以上の取締役で構成され、会社の業務執行の決定や代表取締役の選定・監督を行う会議体です。置くかどうかは定款で決め、置いている会社を「取締役会設置会社」といいます。
- 年金事務所
- 日本年金機構の地域の窓口で、健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険の加入や保険料に関する会社の届出を受け付けます。
- 年次有給休暇
- 一定期間働いた労働者に与えられる、賃金が支払われる休暇です。6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すると10日付与され、勤続に応じて最大20日まで増えます。
- ハローワーク
- 厚生労働省の公共職業安定所の愛称です。職業紹介や求人の受付のほか、雇用保険の加入・喪失や給付の手続きの窓口になっています。
- 労働基準監督署
- 労働基準法・労働安全衛生法などが守られているかを監督する厚生労働省の機関です。36協定や就業規則の届出先で、労災保険の給付の窓口でもあります。
- 労働条件通知書
- 会社が労働者を雇い入れるときに、賃金・労働時間・就業場所などの労働条件を書面で知らせるための文書です。労働基準法の「労働条件の明示」を果たすために使います。
- 労働保険
- 労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。労働者を1人でも雇うと加入が必要で、保険料は年度更新でまとめて申告・納付します。