総務 #定款#株主総会#登記#会社法

定款変更の手続き|株主総会の特別決議、登記が必要な変更・不要な変更と原本の管理

定款は、会社の成立後は株主総会の決議で変更できます(会社法第466条)。決議は原則として特別決議で、公証人の認証は不要です。登記事項にかかわる変更は2週間以内に登記します。決議の要件、登記が必要な変更と不要な変更、よくある変更例、変更後の定款の作り直しと備置きまでを会社法の条文と法務局の案内で整理します。

対象読者
事業目的の追加や本店移転、役員任期の見直しなどで定款を変える事務を担当する、従業員30〜300名の企業の総務担当者
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • 定款の変更は株主総会の特別決議(議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)で行う。株式の譲渡制限を新たに設ける変更は、さらに重い特殊決議になる
  • 公証人の認証が必要なのは設立時の定款だけ。変更は総会決議で効力が生じる。目的・商号・公告方法など登記事項にかかわる変更は、2週間以内に変更の登記をする
  • 変更後は、変更内容を反映した現行定款を作り、本店(と支店)に備え置く。株主総会議事録・登記事項証明書と内容が一致しているかを確認する

新しい事業を始めるので目的を追加したい。本店を別の区に移したい。役員の任期を見直したい。こうした場面で必ず出てくるのが定款の変更です。定款は会社の基本ルールで、変えるには株主総会の決議が必要です。登記が必要な変更もあり、期限を過ぎると過料の対象になります。

この記事では、定款変更の決議の要件、登記が必要かどうかの見分け方、よくある変更例、変更後の定款の管理を順に整理します。取締役会を置いているか、株式の譲渡制限があるかで手続きの細部が変わるので、まず自社の定款と登記事項証明書を手元に用意してください。

定款変更の基本

項目 内容 根拠
決める機関 株主総会 会社法第466条
決議の要件 特別決議(定款で一部変更できる) 第309条第2項第11号
公証人の認証 不要。認証が必要なのは設立時の定款 第30条第1項
効力の発生 総会の決議時(効力発生日を定めればその日) 第466条
登記 登記事項にかかわる変更は2週間以内に変更の登記 第915条第1項
備置き 定款を本店・支店に備え置き、株主・債権者の閲覧に応じる 第31条

会社法第466条は「株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができる」と定めています。取締役会の決議だけでは定款は変えられません。

特別決議の要件

特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します(第309条第2項)。定足数は定款で3分の1まで下げることができ、賛成の割合は定款で引き上げることができます。

株主が社長とその家族だけの会社でも、決議は必要です。株主全員が書面または電磁的記録で提案に同意すれば、総会を開かずに決議があったものとみなされます(第319条第1項、いわゆる書面決議)。この場合、同意書は10年間本店に備え置きます。総会の段取りは定時株主総会の段取り、議事録の作り方は取締役会・株主総会議事録の作り方と保存を参照してください。

より重い決議が必要な変更

発行する全部の株式に譲渡制限(会社の承認がないと株式を譲渡できない定め)を新たに設ける変更は、議決権を行使できる株主の半数以上で、その議決権の3分の2以上の賛成が必要です(第309条第3項第1号、特殊決議)。中小企業の多くは設立時から譲渡制限を設けているため、この決議が必要になることは多くありませんが、譲渡制限の有無は登記事項証明書で確認しておきましょう。

登記が必要な変更・不要な変更

定款の記載事項のうち、登記事項にあたるものを変えたときは、変更が生じた日から2週間以内に本店所在地で変更の登記をします(第915条第1項)。登記を怠ると、代表者などが過料の対象になります。

変更の内容 登記 補足
目的(事業内容)の追加・変更 必要 法務局に「目的の変更」の申請書様式がある
商号の変更 必要 印鑑・看板・契約書など社内外の切替えも多い(社名変更の手続き一覧)
本店所在地の変更 必要(移転登記) 定款の記載の仕方で、定款変更が要るかが変わる
公告方法の変更 必要 官報・日刊新聞紙・電子公告から選ぶ(第939条)
発行可能株式総数の変更 必要 減らす場合は発行済株式総数を下回れない(第113条)
株式の譲渡制限・取締役会の設置などの機関設計 必要 法務局の申請書様式で関連する登記をまとめて確認する
役員の任期の変更 不要(任期そのものは登記事項ではない) 任期の変更で現任役員の改選時期が変わることがある
事業年度・定時総会の時期・基準日 不要 税務署などへの届出が必要になる場合がある
取締役の員数・株主総会の招集手続の細目 不要 社内の手続きに影響する

登録免許税は登記の種類や会社の規模で異なり、複数の変更をまとめて申請すると扱いが変わることもあります。金額は法務局の案内または国税庁の登録免許税の税額表で確認してください。

よくある変更例と注意点

目的の追加

新事業を始める前に、定款の目的に含まれているかを確認します。目的は登記事項なので、取引先や金融機関は登記事項証明書で会社の事業範囲を確認します。許認可が必要な事業では、許認可の窓口が目的の書き方を確認することがあるため、文言は申請先の案内にも合わせておきましょう。

本店所在地の変更

会社法第27条は、定款に「本店の所在地」を記載するよう定めています。多くの会社は「当会社は、本店を東京都千代田区に置く」のように最小行政区画(市区町村)まで書いています。この書き方なら、同じ市区町村の中での移転には定款変更が要らず、具体的な所在場所は取締役会(取締役会を置かない会社は取締役の過半数)などで決めて登記します。市区町村をまたぐ移転では、定款変更の特別決議が必要です。手続きの流れは役員変更・本店移転など登記変更の期限と総務の段取りとオフィス移転の総務チェックリストを参照してください。

なお法務省のQ&Aは、市町村合併で本店の地名が変わった場合でも、定款の字句を変更するには株主総会の決議を要するとしています。

公告方法の変更

公告方法を定款で定めていない会社は、官報による公告になります(第939条第4項)。決算公告の費用や手間を見直すため、電子公告(自社のウェブサイトに掲載する方法)に変える会社もあります。電子公告にする場合は、定款には「電子公告により行う」と定めれば足り、ウェブサイトのアドレスは登記します。決算公告の考え方は定時株主総会の段取りで整理しています。

役員の任期の変更

公開会社でない会社(株式の全部に譲渡制限がある会社)は、定款で取締役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会の終結の時まで延ばせます(第332条第2項)。任期を延ばすと登記の手間は減りますが、改選を忘れやすくなります。任期を短くする変更では、現任の取締役の任期がその時点で満了しているかどうかの確認が必要になることがあります。判断に迷う場合は司法書士に相談してください。

株式の譲渡制限の廃止

譲渡制限の定めを廃止する定款変更をすると、取締役の任期はその変更の効力が生じた時に満了します(第332条第7項第3号)。上場準備など特別な事情がない限り、中小企業で検討することは少ない変更です。

定款変更の進め方

順番 やること 担当の目安
1 現行定款と登記事項証明書を取り寄せ、変更箇所と登記の要否を確認する 総務
2 新旧対照表を作り、議案(定款一部変更の件)を作成する 総務・司法書士
3 取締役会で総会の招集を決める(取締役会設置会社) 取締役会
4 株主総会で特別決議(または全員同意の書面決議) 株主総会
5 株主総会議事録を作成する 総務
6 登記事項にかかわる変更は、2週間以内に法務局へ変更登記を申請する 総務・司法書士
7 現行定款を作り直し、本店・支店に備え置く。税務署など関係先への届出を確認する 総務

登記事項証明書の取り方は登記事項証明書・印鑑証明書の取り方を参照してください。

変更後の定款の管理

定款の変更は、総会の決議で効力が生じます。設立時の原始定款を書き換えるわけではないので、変更のたびに現行定款(変更内容を反映した最新版)を作り直して管理します。

  • 表紙と末尾:「令和○年○月○日 改正」と変更日を記載し、代表取締役が「現行定款に相違ない」と証明する形にしておくと、金融機関などに提出しやすい
  • 変更履歴:変更日・条文・決議した総会をまとめた履歴を作る。議事録とセットで保管する
  • 備置き:定款は本店と支店に備え置き、株主・債権者は営業時間内に閲覧や謄本の交付を請求できる(第31条)
  • 社内の規程との整合:取締役の員数や任期、事業年度が変わると、社内規程や議事録のひな形も直す必要がある。規程の一覧で関連規程を洗い出す(社内規程の体系と管理)

金融機関や許認可の窓口から「定款の写し」を求められたとき、古い版を出してしまうミスがよくあります。最新版の保管場所を一つに決め、旧版には「旧版」と明記して分けて保管しましょう。

まとめ

  • 定款は株主総会の特別決議で変更する。株主全員の書面同意で総会を省略することもできる。譲渡制限を新たに設ける変更は特殊決議
  • 公証人の認証は設立時だけ。成立後の変更は総会決議で効力が生じる
  • 目的・商号・本店・公告方法・発行可能株式総数など登記事項の変更は、2週間以内に変更登記をする。任期や事業年度の変更は登記不要
  • 本店所在地を最小行政区画まで書いている会社は、市区町村をまたぐ移転で定款変更が必要
  • 変更後は現行定款を作り直して備え置き、議事録・登記事項証明書と一致しているか確認する

この記事で使えるテンプレート

CSV 総務 社内規程 一覧・改定管理表 就業規則・賃金規程・育児介護休業規程・ハラスメント防止規程など、社内規程を一覧にして改定履歴を管理する表です。根拠法令、監督署への届出の要否、最終改定日、周知方法、次回見直し時期を記録できます。

この記事に出てくる用語

株主総会
株式会社の最高意思決定機関で、株主が集まって計算書類の承認、役員の選任、定款変更などを決議する会議です。毎事業年度の終了後に開く「定時株主総会」と、必要に応じて開く臨時株主総会があります。
決算公告
株式会社が定時株主総会の後、貸借対照表(大会社は損益計算書も)を官報・新聞・電子公告などで公開することです。会社法で義務づけられており、怠ると過料の対象になります。
商業登記
会社の商号・本店・目的・役員・資本金などを法務局の登記簿に記録し、取引の相手方が確認できるように公示する制度です。登記事項に変更があれば2週間以内に変更登記をします。
書面決議
株主総会や取締役会を実際に開かず、提案に対して全員が書面または電磁的記録で同意することで、決議があったものとみなす手続です。
定款
会社の目的・商号・本店所在地・機関設計・役員の任期など、会社の基本ルールを定めた文書です。会社の「憲法」とも呼ばれ、変更には株主総会の特別決議が必要です。
登記事項証明書
法務局が発行する、会社の登記内容を証明する書面です。いわゆる「登記簿謄本」にあたり、銀行口座の開設や入札、許認可の申請などで提出を求められます。
登録免許税
登記や登録、免許などを受けるときに国に納める税金です。会社の設立・役員変更・本店移転・増資などの商業登記を申請するときに納めます。
取締役会
3人以上の取締役で構成され、会社の業務執行の決定や代表取締役の選定・監督を行う会議体です。置くかどうかは定款で決め、置いている会社を「取締役会設置会社」といいます。

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