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代表取締役等住所非表示措置の申出方法と影響|登記事項証明書の表示、添付書面、金融機関での住所確認

2024年10月1日から、株式会社は代表取締役等の住所を登記事項証明書に市区町村までしか表示しない「代表取締役等住所非表示措置」を申し出られます。申出ができる登記、上場会社以外の会社が添付する3種類の書面、証明書の表示の変わり方、金融機関や不動産取引への影響、措置が終わる場合を、商業登記規則と法務省の案内で整理します。

対象読者
社長から「登記簿に自宅住所が載らないようにできないか」と相談された、従業員30〜300名の株式会社の総務担当者
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • 代表取締役等住所非表示措置は、株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人の住所を、登記事項証明書・登記事項要約書・登記情報提供サービスで市区町村(東京23区は特別区、指定都市は区)までの表示にする措置(商業登記規則第31条の3、2024年10月1日施行)
  • 申出は、就任・重任・住所変更など代表者の住所が登記される登記の申請と同時にしかできない。上場会社以外は、本店の実在性を示す書面、代表者の住民票の写し等、実質的支配者の本人特定事項を示す書面の3つを添付する
  • 措置をとっても住所の登記義務は残り、登記事項証明書で代表者の住所を証明できなくなる。法務省は、融資や不動産取引で不都合が生じたり、必要書類が増えたりすることがあるとして、申出前の慎重な検討を求めている

株式会社の代表取締役の住所は登記事項で、登記事項証明書を取れば誰でも見ることができます。社長から「自宅の住所が誰にでも見られるのは困る。載せないようにできないか」と相談されることがあります。

2024年10月1日からは、一定の要件のもとで、代表取締役などの住所の一部を証明書に表示しない「代表取締役等住所非表示措置」を申し出られるようになりました。ただし、申出ができる時期は限られ、取引や融資の場面で影響が出ることもあります。この記事では、制度の中身、申出の手順、事業への影響を、商業登記規則と法務省の案内に沿って整理します。登記変更の全体の段取りは役員変更・本店移転など登記変更の期限と総務の段取りで扱っています。

代表取締役等住所非表示措置とは

商業登記規則第31条の3が定める措置で、株式会社の代表取締役、代表執行役、代表清算人(以下「代表取締役等」)の住所について、登記事項証明書などに行政区画以外の部分を記載しないようにするものです。法務省の案内では、表示されるのは市区町村まで(東京都は特別区まで、指定都市は区まで)です。

項目 内容
対象の会社 株式会社(合同会社など持分会社は対象外)
対象の人 代表取締役、代表執行役、代表清算人
表示が変わるもの 登記事項証明書、登記事項要約書、登記情報提供サービス
表示される範囲 最小行政区画(市区町村。東京23区は特別区、指定都市は区)まで
施行日 2024年10月1日(令和6年法務省令第28号)

注意したいのは、登記の義務そのものは変わらない点です。法務省は、措置をとっても会社法上の登記義務は免除されず、代表者の住所が変われば変更の登記が必要で、登記の申請書には住所を書く必要があると案内しています。証明書に表示されないだけで、登記所には住所が記録されています。

また法務省のリーフレットは、官公署から請求があった場合は住所の情報を提供すること、利害関係人は住所が記載された書面を閲覧できることも示しています。

申出ができるのは住所が登記される登記の申請と同時だけ

申出は単独ではできず、代表取締役等の住所が登記される登記の申請と同時にする必要があります(商業登記規則第31条の3第1項)。

申出ができる登記の例 補足
設立の登記 設立時から非表示にできる
代表取締役等の就任の登記 代表者の交代時
代表取締役等の住所移転による変更の登記 社長の引越し時
代表取締役の重任・再任の登記 住所に変更がなくても申出ができる(法務省の案内)
本店を他の登記所の管轄区域に移転した場合の新本店所在地での登記 住所に変更がなくても申出ができる(同)

非公開会社でも、役員の任期は最長10年です。次の重任登記まで待てない場合は、措置のためだけに登記を起こすことはできない点に注意してください。任期の管理は登記変更の段取りを参照してください。

申請書に書くこと

法務省の案内では、登記の申請書に次の事項を記載します。オンライン申請では「その他の申請書記載事項」欄に記入します。

  • 代表取締役等住所非表示措置を希望する旨
  • 対象となる人の資格、氏名、住所
  • 添付する書面(実質的支配者リストの保管の申出をしている場合は、その旨と申出先)

法務省のページに、代表取締役の住所移転の登記とあわせて申し出る場合などの記載例(PDF)が掲載されています。

上場会社以外の会社が添付する3つの書面

上場会社以外の株式会社は、次の3つの書面を添付します(商業登記規則第31条の3第1項第1号、法務省の案内)。すでに措置が講じられている会社は、(2)だけで足ります。

書面 該当するもの ポイント
(1) 本店の実在性を示す書面 会社が受取人として記載された配達証明書と、商号・本店所在場所が記載された郵便物受領証/登記申請を受任した資格者代理人(司法書士など)が本店の実在を確認した書面 配達証明書等の商号・本店所在場所が登記記録と合わないと措置はとれない
(2) 代表取締役等の氏名・住所の証明書 住民票の写し、戸籍の附票の写し、印鑑証明書など 登記申請書に添付していれば改めての添付は不要
(3) 実質的支配者の本人特定事項を示す書面 司法書士が犯罪収益移転防止法に基づき確認した記録の写し/公証人の認証を受けた供述書面(申請年度か前年度の認証)/設立時の定款認証で申告した実質的支配者の申告受理及び認証証明書(設立年度か翌年度の申請) 一定期間内に実質的支配者リストの保管の申出をしていれば添付不要

(1)の配達証明は、自社の本店宛てに配達証明付きの郵便を出して作る方法です。配達証明の仕組みは内容証明郵便の出し方でも触れています。(3)は、実質的支配者リスト制度を利用している会社なら負担が小さくなります。

上場会社の場合は、上場されていることを認めるに足りる書面(金融商品取引所のホームページの写し等)を添付します。

登記事項証明書はどう変わるか

措置が講じられると、登記事項証明書の代表取締役欄の住所は「東京都千代田区」のように市区町村までの表示になり、町名・番地以下は出ません。対象になるのは、申出とあわせて申請した登記で記録される住所に限られます。

措置が続く場合と、申出し直しが必要な場合

場面 扱い
住所に変更のない重任・再任の登記 申出をしなくても措置は続く
管轄外への本店移転で、住所が同じ 同上
代表者が引越し、住所変更の登記をする 改めて申出が必要。申出をしないと新しい住所は全部表示される
新しい代表者が就任する その人について申出が必要

社長が引っ越したときに、住所変更登記だけを出して申出を忘れると、新住所がそのまま表示されます。登記の依頼書や社内の手順書に「非表示措置の有無」を書いておくと安心です。

事業への影響を確認してから申し出る

法務省は、措置をとると登記事項証明書で会社代表者の住所を証明できなくなるため、金融機関から融資を受ける際に不都合が生じたり、不動産取引などで必要な書類(会社の印鑑証明書など)が増えたりすることが想定されるとして、申出前の慎重かつ十分な検討を求めています。

総務で想定しておきたい場面は次のとおりです。具体的な必要書類は相手方によって違うため、事前に確認してください。

場面 起こりうること 準備
金融機関の融資・口座開設 登記事項証明書で代表者の住所を確認できないため、追加書類を求められることがある 取引金融機関に事前に相談する
不動産の売買・登記 会社の印鑑証明書など、必要書類が増えることがある 担当の司法書士に確認する
新規取引先の審査 相手方が代表者の住所確認を求めることがある 説明の仕方を決めておく
許認可・入札 申請先が求める書類を確認する 各申請先の案内を確認する

登記事項証明書の種類と取り方は登記事項証明書・印鑑証明書の取り方、取引先側の確認の考え方は新規取引先の確認と与信管理を参照してください。

措置が終わる場合

次の場合、登記官が職権で措置を終了させます(法務省の案内)。

終了の事由 内容
希望しない旨の申出 所定の申出書を提出する。登記申請と同時でなくてもよい。申出書(または委任状)には会社が登記所に提出している印鑑を押す
本店の実在性が認められない 登記官が本店宛てに通知を送り、一定期間内に返送等がなければ終了。弁護士等の資格者からの情報提供などで通知なしに終了することもある
上場会社でなくなった 株式譲渡制限の定めの設定の登記などで判断される
閉鎖された登記記録を復活させる事由がある 清算結了後に未了の財産が見つかった場合など

融資の手続などで一時的に住所を表示させたい場合は、希望しない旨の申出で措置を終わらせることになります。再び非表示にするには、次に住所が登記される登記の申請時に、改めて申し出る必要があります。本店移転や郵便物の受け取り体制が変わるときは、本店の実在性の確認に答えられるようにしておきましょう。

まとめ

  • 代表取締役等住所非表示措置は、株式会社の代表取締役等の住所を登記事項証明書などで市区町村までの表示にする措置(商業登記規則第31条の3、2024年10月施行)
  • 申出は、設立・就任・住所変更・重任など住所が登記される登記の申請と同時に限られる。申請書に希望する旨・対象者・添付書面を記載する
  • 上場会社以外は、本店の実在性(配達証明書など)、住民票の写し等、実質的支配者の本人特定事項の3つの書面を添付する
  • 住所の登記義務は残る。代表者が引っ越したときは、変更登記と同時に改めて申出をしないと新住所が表示される
  • 融資や不動産取引で必要書類が増えることがあるため、取引金融機関や司法書士に確認してから申し出る

この記事に出てくる用語

印鑑証明書
会社が法務局に届け出た代表者印(会社実印)が本物であることを証明する書面です。重要な契約や登記の申請で、代表者印の押印とセットで提出を求められます。
商業登記
会社の商号・本店・目的・役員・資本金などを法務局の登記簿に記録し、取引の相手方が確認できるように公示する制度です。登記事項に変更があれば2週間以内に変更登記をします。
実質的支配者リスト
株式会社が自社の実質的支配者(議決権の50%超、いなければ25%超を持つ個人など)を記載した一覧を法務局に提出し、登記官の認証文付きの写しを受け取れる制度です。
定款
会社の目的・商号・本店所在地・機関設計・役員の任期など、会社の基本ルールを定めた文書です。会社の「憲法」とも呼ばれ、変更には株主総会の特別決議が必要です。
登記事項証明書
法務局が発行する、会社の登記内容を証明する書面です。いわゆる「登記簿謄本」にあたり、銀行口座の開設や入札、許認可の申請などで提出を求められます。

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