取締役会・株主総会議事録の作り方と保存:記載事項・署名押印・電子化・書面決議の議事録
取締役会と株主総会の議事録は、会社法施行規則で記載事項が決まっています。取締役会議事録への出席取締役・監査役の署名または記名押印、電子署名による電子化、書面決議(みなし決議)の議事録、10年間の本店備置き、登記で使うときの押印と印鑑証明書の注意点を条文に沿って整理します。
- 対象読者
- 取締役会や株主総会の議事録作成を担当する総務担当者
- 難易度
- 実務
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この記事のポイント
- 議事録の記載事項は会社法施行規則(株主総会は第72条、取締役会は第101条)で決まっている。日時・場所、議事の経過の要領と結果、出席者、議長の氏名などを漏れなく書く
- 取締役会議事録は、出席した取締役と監査役の署名または記名押印が必要。電子化する場合は電子署名で代える。株主総会議事録は会社法上の署名義務はない
- 議事録はどちらも会議の日から10年間本店に備え置く。登記に使う議事録は商業登記規則の押印・印鑑証明書の要件を先に確認する
議事録は「会議があったこと」と「何を決めたか」を証明する書類です。登記の添付書類になり、株主や債権者から閲覧を求められることもあります。毎回同じ形で作れるように、記載事項と保存のルールを一度整理しておきましょう。
この記事では、取締役会議事録と株主総会議事録の作り方を、会社法と会社法施行規則の条文に沿って解説します。総会全体の段取りは中小企業の定時株主総会の段取りで整理しています。
2つの議事録の違い
| 項目 | 取締役会議事録 | 株主総会議事録 |
|---|---|---|
| 作成の根拠 | 会社法第369条第3項 | 会社法第318条第1項 |
| 記載事項 | 会社法施行規則第101条 | 会社法施行規則第72条 |
| 署名・記名押印 | 出席した取締役・監査役が署名または記名押印(電子の場合は電子署名) | 会社法上の義務なし(定款で定めている会社が多い) |
| 備置き | 取締役会の日から10年間、本店(第371条第1項) | 総会の日から10年間、本店。写しを5年間支店(第318条第2項・第3項) |
| 閲覧 | 株主は権利行使に必要なとき(監査役設置会社などは裁判所の許可が必要) | 株主・債権者は営業時間内いつでも |
取締役会議事録の記載事項
会社法施行規則第101条第3項で、主に次の事項を書くことになっています。
| 記載事項 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 開催日時・場所 | オンラインで参加した取締役・監査役がいれば、その出席方法(「Web会議システムにより出席」など) |
| 招集の経緯(特別な場合) | 取締役や監査役の請求で招集した場合などはその旨 |
| 議事の経過の要領と結果 | 議案ごとに、説明の要旨と「全員一致で承認可決」などの結果 |
| 特別利害関係のある取締役の氏名 | その取締役は議決に加われない(会社法第369条第2項) |
| 法令に基づく意見・発言の概要 | 監査役の意見、競業取引の報告など該当するもの |
| 出席した会計参与・会計監査人・株主の氏名 | 出席した場合 |
| 議長の氏名 | 議長がいる場合 |
取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数で行います(定款でこれを上回る割合を定めることもできます。第369条第1項)。議事録には出席人数と定足数を満たしたことを書いておくと、後から確認しやすくなります。
議事録に異議をとどめなかった取締役は、その決議に賛成したものと推定されます(第369条第5項)。反対した取締役がいる場合は、反対の旨を正確に記載します。
署名・記名押印
議事録を書面で作る場合、出席した取締役と監査役が署名または記名押印します(第369条第3項)。欠席者は不要です。電磁的記録(PDFなど)で作る場合は、署名または記名押印に代わる措置として電子署名をします(同条第4項、会社法施行規則第225条)。電子署名は、作成者を示すもので、改変されていないか確認できるものとされています。電子契約サービスの署名機能を使う会社も増えています(→電子契約サービスの選び方)。
定例の報告にも議事録が要る
代表取締役と業務執行取締役は、3か月に1回以上、職務執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(第363条第2項)。この報告は、全員への通知で報告を省略する方法(第372条第1項)が使えないため(同条第2項)、少なくとも3か月に1回は実際に取締役会を開き、議事録を残します。
株主総会議事録の記載事項
会社法施行規則第72条第3項の記載事項は、開催日時・場所(出席方法を含む)、議事の経過の要領と結果、監査役などが述べた意見・発言の概要、出席した取締役・監査役などの氏名、議長の氏名、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名です。取締役会議事録と違い「作成した取締役の氏名」が必要な点に注意します。
記載例(議事の経過の要領)
議長は、第1号議案「第○期計算書類承認の件」を上程し、当期の貸借対照表および損益計算書の内容を説明した。議長がその承認を議場に諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の賛成をもって原案どおり承認可決された。
議案ごとに「何を上程し、どう説明し、何の賛成で、どう決まったか」が分かれば十分です。発言を一言一句記録する必要はありません。会議の記録を生成AIで下書きする場合は会議の議事録をAIで作るも参考にしてください。
書面決議・報告省略の議事録
会議を開かずに決議する方法でも議事録は作ります。記載事項は会議を開いた場合と異なります。
| 方法 | 要件 | 議事録の記載事項 |
|---|---|---|
| 取締役会の書面決議(第370条) | 定款の定めがあり、取締役全員が書面・電磁的記録で同意(監査役設置会社は監査役が異議を述べないこと) | 決議があったとみなされた事項の内容、提案した取締役の氏名、みなされた日、作成した取締役の氏名(施行規則第101条第4項) |
| 株主総会の書面決議(第319条) | 議決権を持つ株主全員が書面・電磁的記録で同意 | 上と同様の事項(施行規則第72条第4項) |
| 報告の省略(第320条・第372条) | 全員への通知(総会は全株主の同意も) | 報告があったとみなされた事項、みなされた日など |
同意書(電磁的記録を含む)も、議事録とあわせて10年間本店に備え置きます(第319条第2項・第371条第1項)。取締役会の書面決議は、定款に定めがなければ使えません。まず定款を確認しましょう。
登記に使う議事録の注意点
役員の選任や本店移転などで登記をするときは、議事録が添付書類になります(→役員変更・本店移転など登記変更の期限と総務の段取り)。商業登記規則第61条では、次のような場合に押印した印鑑の証明書を求めています。
| 登記の内容 | 印鑑証明書が必要な押印 |
|---|---|
| 株主総会で代表取締役を定めた場合 | 議長と出席取締役が株主総会議事録に押した印鑑 |
| 取締役会で代表取締役を選定した場合 | 出席した取締役と監査役が取締役会議事録に押した印鑑 |
いずれも、変更前の代表取締役が登記所に届け出ている印鑑と同じ印鑑が押されている場合は不要です(同条第6項ただし書)。そのため、議事録には会社の実印(代表者印)を押しておく運用がよく見られます。印鑑の管理は印章管理と押印規程のつくり方を参照してください。
また、株主総会の決議が必要な登記では、議決権数の上位10名か、議決権割合が3分の2に達するまでの株主のいずれか少ない人数を記載した「株主リスト」の添付が必要です(同条第3項)。書面決議の場合も対象です。
登記に必要な書面は、登記の種類や会社の機関設計で変わります。法務局が公開している申請書の様式と記載例を見てから議事録を作ると、作り直しを防げます。
保存と管理のルール
| 項目 | 決めておくこと |
|---|---|
| 原本の形式 | 紙で作るか、電子署名付きのPDFで作るか |
| 保管場所 | 本店の金庫・キャビネット、または電子の保管フォルダ(アクセス権を限定) |
| ファイル名 | 「2026-06-25_取締役会議事録」など日付から始める |
| 期間 | 会議の日から10年間(実務上は永久保存とする会社も多い) |
| 閲覧対応 | 株主・債権者からの請求があったときの窓口と手順 |
議事録はほかの重要書類と同じく、文書管理規程の保存期間表に入れておきます(→文書管理と保存期間の一覧、社内規程 一覧・改定管理表)。
まとめ
- 議事録の記載事項は会社法施行規則で決まっている。取締役会は第101条、株主総会は第72条を見てひな形を作る
- 取締役会議事録は出席した取締役・監査役が署名または記名押印する。電子化するなら電子署名で代える
- 3か月に1回以上の職務執行状況の報告は省略できない。少なくとも四半期ごとに取締役会を開いて記録する
- 書面決議・報告省略でも議事録は作る。同意書とあわせて10年間本店に備え置く
- 登記に使う議事録は、印鑑証明書が必要な押印と株主リストを先に確認する