退職証明書・解雇理由証明書の交付|労基法22条の記載事項、請求できる時期、書いてはいけないこと
退職者から退職証明書を求められたら、会社は遅滞なく交付しなければなりません。解雇の場合は、予告の段階から解雇理由証明書を求められることもあります。労働基準法22条の5項目、本人が請求しない事項を書いてはいけないルール、離職票との違い、解雇理由の書き方、交付記録の残し方を整理します。
- 対象読者
- 退職者・解雇予定者から証明書の交付を求められた従業員30〜300名の企業の労務担当者
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この記事のポイント
- 退職証明書は、使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)のうち、本人が請求した事項を記載して遅滞なく交付する(労働基準法第22条第1項)
- 解雇予告をした日から退職日までに解雇理由の証明書を請求されたら、退職日を待たずに交付する。予告後に本人が別の理由で退職した場合は、その退職日以後は交付不要
- 本人が請求していない事項は書いてはならず、秘密の記号の記入も禁止。違反には罰則(30万円以下の罰金)がある
退職した元社員から「転職先に出すので退職証明書をください」と連絡が来ることがあります。離職票や源泉徴収票と違って毎回発行する書類ではないため、何を書けばよいか、いつまでに出せばよいか迷う担当者も多いはずです。
退職証明書と解雇理由証明書は、どちらも労働基準法第22条で交付が義務づけられています。この記事では、記載事項と期限、書いてはいけないこと、実務でよくある場面の対応を整理します。退職手続き全体は退職手続きの流れを参照してください。
2つの証明書の違い
| 項目 | 退職証明書(第22条第1項) | 解雇理由証明書(第22条第2項) |
|---|---|---|
| 請求できる人 | 退職した(する)労働者。退職理由は問わない | 解雇の予告を受けた労働者 |
| 請求できる時期 | 退職の場合 | 解雇予告の日から退職の日まで |
| 記載事項 | 使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)のうち本人が請求したもの | 解雇の理由 |
| 交付期限 | 遅滞なく | 遅滞なく |
| 交付が不要になる場合 | なし | 予告後に本人が解雇以外の理由で退職した場合、その退職日以後は不要 |
解雇の予告を受けた社員は、退職日を待たずに解雇の理由を書面で確認できます。退職日以後は、退職証明書の「退職の事由(解雇の理由を含む)」として請求することになります。
退職証明書の5項目
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 使用期間 | 2019年4月1日〜2026年9月30日 |
| 業務の種類 | 経理事務、法人営業など |
| その事業における地位 | 主任、課長など |
| 賃金 | 退職時の基本給・諸手当など、本人が求める範囲 |
| 退職の事由 | 自己都合による退職、契約期間満了、定年、解雇など。解雇の場合はその理由 |
5項目すべてを書く必要はありません。どの項目を書くかは本人が選びます。請求を受けたら、どの項目を記載するかを書面やメールで確認してから作成しましょう(→退職証明書のテンプレート)。
書いてはいけないこと
本人が請求していない事項
第22条第3項は、証明書に労働者の請求しない事項を記入してはならないと定めています。例えば「使用期間」と「業務の種類」だけを求められたのに、退職の事由や懲戒歴を書き添えることはできません。本人が退職理由を伏せたいときは、退職理由の欄のない証明書を出すことになります。
秘密の記号・第三者との申し合わせ
第22条第4項は、あらかじめ第三者と謀って、労働者の就業を妨げることを目的に、国籍・信条・社会的身分・労働組合運動に関する通信をすることや、証明書に秘密の記号を記入することを禁じています。
第22条第1項から第3項の違反には、30万円以下の罰金の定めがあります(第120条)。
期限と時効
条文上の期限は「遅滞なく」です。日数の定めはありませんが、作成に時間がかかる書類ではないため、請求を受けてから数日以内に交付するのが実務的です。
退職証明書を請求する権利は、労働基準法第115条の「その他の請求権」として、2年で時効により消滅すると解されています。ただし、2年を過ぎた請求でも、在籍の事実を確認できるなら応じて差し支えありません。応じるかどうかを判断するためにも、労働者名簿や賃金台帳は法定の期間どおり保存しておきます(→法定三帳簿の作り方と保存)。
解雇理由の書き方
解雇理由証明書や、退職証明書の「退職の事由」が解雇の場合は、就業規則の該当条項と、解雇の理由となった具体的な事実を書きます。
- 「就業規則第○条第○号(勤務成績が著しく不良で、改善の見込みがないとき)に該当するため」
- 該当する事実の概要(いつ・何があったか)
ここで書いた理由は、後に解雇の有効性が争われたとき、会社の主張の出発点になります。後から理由を付け足すと、説明の一貫性を疑われかねません。解雇を決める前の段階で、理由と根拠資料を整理しておくことが大切です(→普通解雇の進め方、懲戒処分の進め方)。
解雇予告そのものの手続き(30日前の予告・予告手当、除外認定)は解雇予告と解雇予告手当を参照してください。
よくある場面と対応
退職理由の認識が本人と違う
退職勧奨に応じて辞めた人が「会社都合と書いてほしい」と求め、会社は「自己都合」と考えている、といった食い違いはよく起きます。証明書には、会社が把握している事実をそのまま書きます。本人の希望に合わせて事実と違うことを書くのも、会社の見解を一方的に強調するのも避け、退職届の文言や面談記録など根拠を確認して記載しましょう(→退職勧奨の進め方)。
離職票と混同している
雇用保険の失業給付の手続きには、ハローワークが交付する離職票が必要です。退職証明書は離職票の代わりになりません。本人がどちらを必要としているのかを確認しましょう(→離職票の発行手続き)。国民健康保険への切り替えで求められるのは、健康保険の資格を喪失したことの証明であることが多く、これも退職証明書とは別の書類です。
退職後しばらくしてから請求された
転職先の入社手続きや、各種審査のために求められることがあります。本人確認をしたうえで、請求された項目について交付します。郵送する場合は、宛先を本人に確認し、交付日と送付方法を記録します。
交付の手順
- 請求を受け付ける(本人確認、記載を希望する項目の確認)
- 労働者名簿・賃金台帳・人事記録で内容を確認する
- 証明書を作成し、会社名・代表者名で発行する
- 本人に交付する(手渡し・郵送・電子データ)
- 写しと交付記録(請求日・交付日・記載項目・交付方法)を保存する
まとめ
- 退職証明書は、本人が請求した項目だけを記載して遅滞なく交付する。5項目のどれを書くかは本人が選ぶ
- 解雇予告を受けた社員は、退職日前でも解雇理由証明書を請求できる。理由は就業規則の条項と具体的な事実で書く
- 請求されていない事項や秘密の記号を書くことは禁止されており、罰則もある
- 離職票や健康保険の資格喪失の証明とは別の書類。本人が何を必要としているかを確認する
この記事で使えるテンプレート
人事 退職証明書(労働基準法22条の記載事項つき) 労働基準法22条1項の5項目(使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由)を、本人が請求した項目だけ記入できる退職証明書です。請求項目の確認欄と、交付記録欄を付けています。 人事 解雇予告通知書・解雇理由証明書 労働基準法20条の解雇予告(30日前予告・解雇予告手当)を書面で伝える解雇予告通知書と、22条2項の解雇理由証明書のセットです。予告日・解雇日・予告手当の計算欄と、受領確認欄を付けています。 人事 退職手続きチェックリスト 社会保険の資格喪失届、雇用保険の資格喪失届・離職証明書、源泉徴収票、住民税の異動届、貸与品の回収、アカウント停止まで、退職手続きを期限つきで確認できるチェックリストです。この記事に出てくる用語
- 解雇予告
- 会社が労働者を解雇するときに、少なくとも30日前に解雇することを予告する義務です。予告しない場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払います。
- 解雇理由証明書
- 解雇された(または解雇予告を受けた)労働者から請求されたときに、会社が交付しなければならない、解雇の理由を記載した証明書です。
- 基本手当
- 雇用保険の被保険者が離職し、働く意思と能力があるのに就職できないときに支給される給付で、一般に「失業手当」と呼ばれます。
- 健康保険
- 会社員などが加入する公的医療保険で、業務外の病気・けが、出産、死亡に対して給付を行います。保険者は協会けんぽと健康保険組合です。
- 源泉徴収票
- 会社が1年間に支払った給与・賞与の額と、源泉徴収した所得税の額などを記載した書類です。従業員に交付するほか、法定調書として税務署に提出します。
- 雇用保険
- 労働者が失業したときや、育児・介護で休業したときなどに給付を行う公的保険です。週20時間以上働き、31日以上雇用見込みがある人が原則として加入します。
- 就業規則
- 労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
- 退職勧奨
- 会社が社員に退職を勧め、合意による退職を目指すことです。解雇とは違い、本人は断ることができます。
- 退職証明書
- 退職した労働者から請求されたときに、会社が交付しなければならない、在職期間や退職の事由などを証明する書面です。雇用保険の離職票とは別の書類です。
- 退職届
- 社員が退職の意思を会社に伝える書面です。一般に、会社の承諾を求める「退職願」と、一方的に退職を通知する「退職届」とに分けて扱われます。
- 賃金台帳
- 労働者ごとに賃金計算の基礎となる事項や支払額を記録する帳簿で、労働基準法で作成と保存が義務づけられています。法定三帳簿の一つです。
- 定年
- 一定の年齢に達したことを理由に労働契約が終了する制度です。定年を定める場合は60歳以上にしなければなりません。
- ハローワーク
- 厚生労働省の公共職業安定所の愛称です。職業紹介や求人の受付のほか、雇用保険の加入・喪失や給付の手続きの窓口になっています。
- 離職票
- 退職者が基本手当(失業手当)を受けるためにハローワークへ提出する書類です。会社が提出した離職証明書にもとづき、ハローワークが交付します。
- 労働者名簿
- 事業場ごとに、労働者の氏名・生年月日・履歴などを記録する名簿で、労働基準法で作成と保存が義務づけられています。法定三帳簿の一つです。