有期契約の途中で辞めたい・辞めてもらいたいとき|契約期間中の解雇は「やむを得ない事由」が必要、本人からの退職と1年経過後の特例
有期労働契約は、期間の途中で終わらせるのが原則として難しい契約です。会社からの解雇には「やむを得ない事由」が必要で(労働契約法17条)、無期雇用の解雇より厳しく判断されます。本人からの退職の扱い、1年を超える契約の1年経過後の特例(労基法附則137条)、合意解約で進めるときの手順を、法令と厚生労働省の解説で整理します。
- 対象読者
- 契約社員・パートから「契約期間の途中だが辞めたい」と言われた、または期間途中で契約を終わらせたいと考えている、従業員30〜300名の企業の労務担当者
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この記事のポイント
- 会社は、やむを得ない事由がある場合でなければ、有期契約の期間中に労働者を解雇できない(労働契約法17条1項)。厚生労働省は、この「やむを得ない事由」は無期雇用の解雇が認められる場合よりも狭いと解説している
- 労働者の側も、期間の定めがある以上、やむを得ない事由がなければ期間途中で一方的に辞めることはできないのが民法の原則(民法628条)。ただし1年を超える契約では、契約初日から1年経過後はいつでも退職を申し出られる(労基法附則137条。高度専門職・60歳以上などを除く)
- 実務では、本人と話し合って退職日を決める「合意解約」で進めるのが基本。合意の内容は書面に残し、会社からの解約の申入れによる場合は雇用保険の離職理由にも注意する
「契約期間はあと4か月残っているが、家庭の事情で今月末で辞めたい」。契約社員やパートからこう相談されることがあります。逆に、会社の側から「勤務態度が悪いので、契約満了を待たずに辞めてもらえないか」と考える場面もあります。
有期労働契約(期間の定めのある労働契約)は、期間を約束した契約なので、途中で終わらせるルールは無期雇用と違います。この記事では、会社から終わらせる場合と本人から辞める場合に分けて、法律上のルールと実務の進め方を整理します。期間満了で終わらせる雇止めは有期契約の更新・雇止めのルールで扱っています。
まず法律のルールを押さえる
有期契約の途中解約に関わる条文は次のとおりです。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 民法628条 | 期間を定めた雇用でも、やむを得ない事由があるときは、各当事者は直ちに契約を解除できる。その事由が一方の過失による場合は、相手方に損害賠償の責任を負う |
| 労働契約法17条1項 | 使用者は、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間、労働者を解雇できない |
| 労基法附則137条 | 1年を超える期間の有期契約を結んだ労働者は、契約初日から1年を経過した日以後は、使用者に申し出ていつでも退職できる(高度の専門的知識等を持つ労働者、60歳以上の労働者などを除く) |
| 労基法14条 | 有期契約の期間の上限は原則3年(高度専門職・60歳以上は5年) |
期間の定めのない雇用なら、労働者は2週間前の申入れで辞められます(民法627条)。有期契約はこの規定ではなく、628条の「やむを得ない事由」が原則になる点が大きな違いです。
会社から期間途中で終わらせる場合
無期雇用の解雇より厳しく判断される
厚生労働省の「労働契約法のあらまし」は、17条1項の「やむを得ない事由」について、契約期間は労使が合意して決めたもので守られるべきであることから、無期雇用の解雇が有効になる場合(客観的に合理的な理由があり社会通念上相当である場合)よりも狭いと解説しています。
さらに、次の点も示されています。
- 契約書に「〇〇の場合は期間中でも解雇できる」と書いてあっても、それに当たるだけで「やむを得ない事由」があるとは認められず、実際の解雇ごとに個別に判断される
- 「やむを得ない事由」があることを主張・立証する責任は会社が負う
つまり、「契約期間中だから雇止めより簡単に辞めさせられる」ということはなく、むしろ逆です。勤務態度や能力の問題であれば、期間途中で解雇するより、指導を重ねたうえで期間満了時の更新の判断で対応するほうが現実的です。
それでも解雇するときの手続
やむを得ない事由があると判断して解雇する場合も、解雇予告のルール(労基法20条)は適用されます。少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払います。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 解雇の理由 | 重大な非違行為、事業の継続が困難になったなど、期間満了を待てない事情があるか |
| 解雇予告 | 30日前の予告または予告手当(解雇予告と解雇予告手当) |
| 残りの期間の賃金 | 解雇が無効と判断されると、残りの契約期間分の賃金を請求される可能性がある |
| 理由の証明 | 請求があれば解雇理由証明書を交付する(退職証明書・解雇理由証明書) |
本人から期間途中で辞めたいと言われた場合
法律上の原則と実務の対応
民法628条の原則どおりに読むと、本人もやむを得ない事由がなければ期間途中で一方的に辞めることはできません。やむを得ない事由の典型は、本人の病気やけがで働けない、家族の介護が必要になった、会社側に重大な法令違反がある、といった場合です。
ただし実務では、辞めたいという人を引き止めても、職場に良い結果はほとんどありません。次の順で対応するのが現実的です。
「途中で辞めたら損害賠償を請求する」と伝えるのは避けましょう。民法628条には損害賠償の定めがありますが、会社が実際の損害を立証する必要があり、あらかじめ違約金を定めることは労基法16条で禁止されています。
1年を超える契約の特例
契約期間が1年を超える有期契約(たとえば3年契約)では、契約の初日から1年を経過した日以後は、本人が申し出ればいつでも退職できます(労基法附則137条)。この場合はやむを得ない事由は必要ありません。ただし、高度の専門的知識等を持つ労働者として5年契約を結んだ人や、60歳以上で契約した人などは対象外です。
| 契約の形 | 1年経過前 | 1年経過後 |
|---|---|---|
| 1年以内の契約(6か月更新など) | やむを得ない事由が必要(民法628条) | 特例なし(各契約ごとに判断) |
| 1年を超える契約(3年など) | やむを得ない事由が必要 | 申出によりいつでも退職できる |
| 60歳以上の5年契約など | やむを得ない事由が必要 | 特例の対象外 |
合意解約で進めるときの注意点
会社・本人のどちらから言い出した場合でも、話し合って退職日を決める「合意解約」にすると、後の争いを防げます。
- 合意の内容を書面にする:退職日、最終出勤日、有給休暇の扱い、貸与品の返却を書く
- 会社からの申入れなら、そのことを記録する:会社が持ちかけた合意解約は、雇用保険の離職理由が会社都合(事業主からの働きかけによる退職)として扱われることがある。離職証明書の記載は事実に合わせる(離職票・離職証明書の書き方)
- 退職を迫らない:会社から持ちかける場合は退職勧奨にあたるため、本人の自由な意思を尊重する(退職勧奨の進め方)
- 有給休暇の残日数を確認する:退職日までの消化を希望されたら、原則として拒めない
まとめ
- 有期契約の期間中に会社から解雇するには「やむを得ない事由」が必要で、無期雇用の解雇よりも狭く判断される(労働契約法17条)
- 契約書に解雇事由を書いておいても、それだけで期間途中の解雇が有効になるわけではない
- 本人からの退職も、原則はやむを得ない事由が必要。ただし1年を超える契約は、1年経過後は申出でいつでも退職できる(労基法附則137条)
- 実務は合意解約で進め、退職日・有給休暇・引き継ぎを書面で確認する。会社から持ちかける場合は離職理由と退職勧奨の扱いに注意する
この記事で使えるテンプレート
人事 退職願(従業員記入用) 従業員に記入してもらう退職願の社内様式です。退職希望日・最終出社日・有給休暇の取得予定・退職後の連絡先など、退職手続きに必要な情報を1枚で回収できます。 人事 解雇予告通知書・解雇理由証明書 労働基準法20条の解雇予告(30日前予告・解雇予告手当)を書面で伝える解雇予告通知書と、22条2項の解雇理由証明書のセットです。予告日・解雇日・予告手当の計算欄と、受領確認欄を付けています。この記事に出てくる用語
- 解雇予告
- 会社が労働者を解雇するときに、少なくとも30日前に解雇することを予告する義務です。予告しない場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払います。
- 解雇予告手当
- 30日前の解雇予告をしないで解雇するときに、会社が支払う平均賃金30日分以上のお金です。予告日数が30日に足りない場合は、足りない日数分を支払います。
- 解雇理由証明書
- 解雇された(または解雇予告を受けた)労働者から請求されたときに、会社が交付しなければならない、解雇の理由を記載した証明書です。
- 雇用保険
- 労働者が失業したときや、育児・介護で休業したときなどに給付を行う公的保険です。週20時間以上働き、31日以上雇用見込みがある人が原則として加入します。
- 退職勧奨
- 会社が社員に退職を勧め、合意による退職を目指すことです。解雇とは違い、本人は断ることができます。
- 退職届
- 社員が退職の意思を会社に伝える書面です。一般に、会社の承諾を求める「退職願」と、一方的に退職を通知する「退職届」とに分けて扱われます。
- 年次有給休暇
- 一定期間働いた労働者に与えられる、賃金が支払われる休暇です。6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すると10日付与され、勤続に応じて最大20日まで増えます。
- 平均賃金
- 解雇予告手当や休業手当などを計算するときの基準になる1日あたりの賃金です。原則として直前3か月の賃金総額をその期間の総日数で割って求めます。
- 雇止め
- 有期労働契約の期間が満了したときに、会社が契約を更新せずに終了させることです。更新の実態や期待によっては、雇止めが認められないことがあります。
- 有期労働契約
- 「1年契約」のように、働く期間の終わりが決まっている労働契約です。契約社員・パート・アルバイトなどで多く使われます。
- 離職票
- 退職者が基本手当(失業手当)を受けるためにハローワークへ提出する書類です。会社が提出した離職証明書にもとづき、ハローワークが交付します。
- 労働契約法
- 労働契約の成立・変更・終了についての基本的なルールを定めた法律です。解雇権濫用の禁止、就業規則による労働条件の変更、無期転換ルール、雇止め法理などを定めています。