解雇予告と解雇予告手当|30日前の予告・日数の数え方・除外認定・予告が不要な人
従業員を解雇するときは、少なくとも30日前の予告か、平均賃金30日分以上の解雇予告手当が必要です。予告と手当の組み合わせ方、日数の数え方、労働基準監督署の除外認定、予告が不要な人、解雇制限期間と解雇理由証明書まで、労働局の資料をもとに整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で、解雇や雇止めの手続きを担当する人事・労務担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了9分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 解雇は少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う。予告日数が足りない分を手当で補うこともできる
- 天災等で事業継続が不可能な場合や、労働者の重大・悪質な責任による解雇は、労働基準監督署長の除外認定を受ければ予告・手当が不要になる
- 予告や手当を守っても、解雇そのものの有効性は別に判断される。業務上の傷病休業中や産休中とその後30日間は原則として解雇できない
従業員を解雇するとき、労働基準法は30日前の予告か、解雇予告手当の支払いを求めています。懲戒解雇であっても、原則としてこのルールは変わりません。
この記事では、解雇予告と解雇予告手当の実務、予告が不要になる例外、あわせて確認したい解雇制限を整理します。
解雇予告の基本ルール
労働基準法20条は、会社が労働者を解雇しようとする場合、次のいずれかを求めています。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 解雇予告 | 少なくとも30日前に解雇を予告する |
| 解雇予告手当 | 予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金を支払う |
| 組み合わせ | 予告の日数が30日に足りない分を、平均賃金の日数分で支払う |
例えば、10日前に予告した場合は、足りない20日分の平均賃金を解雇予告手当として支払えば足ります。
日数の数え方
- 予告した日は数えず、翌日から数えて30日が経過した日以降に解雇できます
- 30日には休日も含みます(暦日で数える)
- 予告は「○月○日付で解雇する」と、解雇日を特定して伝えます
口頭でも予告は有効ですが、後の争いを防ぐため、解雇予告通知書を交付し、受領の記録を残しましょう。
解雇予告手当の計算と支払時期
解雇予告手当は「平均賃金×不足する日数」で計算します。平均賃金は、解雇を通告した日を算定事由発生日として計算します。計算方法は平均賃金の計算方法を参照してください。
即日解雇の場合、解雇予告手当は解雇の申渡しと同時に支払うのが原則です。給与の締め日まで待つ扱いにはなりません。解雇予告手当は退職所得として扱われるため、源泉徴収の際は退職所得の受給に関する申告書の有無を確認します。
除外認定:予告も手当も不要になる場合
次の2つの場合は、所轄の労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受ければ、予告や解雇予告手当なしで解雇できます。
| 認定の事由 | 内容 |
|---|---|
| 天災事変その他やむを得ない事由 | 火災・震災などで事業の継続が不可能になった場合 |
| 労働者の責に帰すべき事由 | 予告の保護を与える必要がないほど、労働者の行為が重大または悪質な場合 |
申請の注意点
- 申請先は事業場の所在地を管轄する労働基準監督署です
- 申請書(様式第3号など)のほか、労働者名簿、就業規則の該当部分、事実の経緯がわかる資料などを添えます
- 原則として解雇の前に認定を受ける必要があります
- 福井労働局の資料では、標準処理期間は原則2週間とされています
懲戒解雇だからといって、必ず認定が受けられるわけではありません。認定されない場合は解雇予告手当が必要です。また、除外認定は解雇が民事上有効かどうかを判断するものではありません。
解雇予告が不要な人(労基法21条)
次の人は、原則として解雇予告の対象外です。ただし、一定期間を超えて引き続き使用されると予告が必要になります。
| 対象 | 予告が必要になる場合 |
|---|---|
| 日々雇い入れられる人 | 1か月を超えて引き続き使用された場合 |
| 2か月以内の期間を定めて使用される人 | 所定の期間を超えて引き続き使用された場合 |
| 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される人 | 所定の期間を超えて引き続き使用された場合 |
| 試みの使用期間中の人 | 14日を超えて引き続き使用された場合 |
試用期間が3か月でも、入社15日目以降に本採用を見送る場合は解雇予告が必要です。詳しくは試用期間の設計と本採用見送りの注意点で解説しています。
あわせて確認すること
解雇制限期間(労基法19条)
次の期間は、原則として解雇できません。
- 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間と、その後30日間
- 産前産後休業の期間と、その後30日間
例外は、打切補償を支払う場合や、天災事変などで事業継続が不可能になり労働基準監督署長の認定を受けた場合に限られます。
解雇の有効性(労働契約法16条)
予告や手当の手続きを守っても、解雇が有効になるわけではありません。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利の濫用として無効になります。懲戒解雇の場合は、懲戒処分の進め方の手順(事実調査・弁明の機会・相当性の検討)を踏むことが前提です。
解雇理由証明書
労働者から請求があった場合、会社は解雇の理由を記載した証明書を遅滞なく交付しなければなりません。予告期間中に請求された場合も同様です。
解雇時の手続きの流れ
- 解雇の理由と、就業規則上の根拠を確認する
- 解雇制限期間にあたらないか確認する
- 予告日と解雇日を決め、必要なら解雇予告手当を計算する(除外認定を申請する場合は事前に)
- 解雇予告通知書を交付する
- 請求があれば解雇理由証明書を交付する
- 退職日以降、社会保険・雇用保険の資格喪失手続きを行う
雇用保険の離職票では、解雇は会社都合の離職理由として扱われます。記入方法は離職票・離職証明書の書き方、退職時の手続き全体は退職時の手続き一覧を参照してください。
よくある質問
予告期間中は働かせる必要がある?
予告期間中も労働契約は続いているため、通常どおり働いてもらい、賃金を支払います。会社の都合で予告期間中に出勤させない場合は、その日について休業手当(平均賃金の60%以上)が必要になります(休業手当の計算)。
有期契約を更新しない場合も解雇予告が必要?
契約期間の満了で終了する「雇止め」は解雇とは別のものです。ただし、厚生労働省の告示により、3回以上更新している場合や、1年を超えて継続勤務している場合は、少なくとも30日前までに雇止めを予告する必要があります(あらかじめ更新しない旨を明示している場合を除く)。無期転換との関係は無期転換ルールを参照してください。
退職勧奨に応じてもらった場合は?
本人が退職勧奨に応じて合意のうえで退職する場合は、解雇ではないため解雇予告手当は不要です。ただし、強い圧力で退職を迫った場合は、合意の有効性が争われることがあります。合意内容は退職合意書で記録しましょう。
まとめ
- 解雇は30日前に予告するか、平均賃金30日分以上の解雇予告手当を支払う。不足日数分を手当で補うこともできる
- 除外認定を受ければ予告・手当は不要だが、事前の申請が原則で、重大・悪質な事由に限られる
- 試用期間中でも、14日を超えて使用した人には予告が必要
- 業務上の傷病休業中・産休中とその後30日間は原則として解雇できない。予告とは別に、解雇の有効性も検討する