譲渡制限株式の譲渡承認の手続き|株主から請求が来たら2週間以内に通知、承認機関・不承認時の買取りと株主名簿の書換え
定款で株式の譲渡に会社の承認が必要と定めている株式会社(非公開会社)では、株主や取得者から譲渡承認の請求を受けたら、決められた機関で決定し、請求の日から2週間以内に通知しなければ承認したものとみなされます。請求書の記載事項、承認機関、不承認のときの会社または指定買取人による買取りと供託、売買価格の決め方、株主名簿の書換えまでを、会社法の条文で整理します。
- 対象読者
- 株主(元役員・創業者の親族など)から「株式を譲りたいので承認してほしい」という書面が届いた、非上場の株式会社の総務担当者
- 難易度
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この記事のポイント
- 譲渡制限株式の株主は、他人に譲り渡そうとするとき、会社に承認するか否かの決定を請求できる(会社法136条)。株式を取得した人からの請求は、原則として株主名簿上の株主と共同で行う(同137条)
- 承認の決定は、取締役会設置会社では取締役会、それ以外は株主総会の決議で行う(定款に別段の定めがあればそれによる。同139条)。請求の日から2週間以内に決定内容を通知しないと、承認したものとみなされる(同145条1号)
- 不承認の場合に請求者が買取りを求めていれば、会社が買い取るか(株主総会の特別決議)、指定買取人を指定する。会社は1株当たり純資産額×株式数を供託し、通知の日から40日以内(指定買取人は10日以内)に買取りの通知をしないと承認したものとみなされる。会社の買取りには分配可能額の制限がある
非上場の株式会社の多くは、定款に「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会(株主総会)の承認を受けなければならない」という定めを置いています。この定めがある株式を譲渡制限株式といいます。
ある日、退任した役員や創業者の親族から「持っている株式を〇〇さんに譲りたいので承認してほしい」という書面が届くことがあります。会社法には、この請求に対する回答の期限があり、期限を過ぎると承認したものとみなされます。この記事では、請求を受けてから株主名簿を書き換えるまでの手順を条文に沿って整理します。株主名簿の作り方は株主名簿の作り方と管理で扱っています。
譲渡制限株式とは
会社法は、発行する全部の株式の内容として、譲渡による取得について会社の承認を要することを定款で定められるとしています(107条1項1号)。すべての株式に譲渡制限がある会社を「公開会社でない株式会社」(非公開会社)と呼びます。現在の定款と登記事項証明書で、譲渡制限の定めと承認機関を確認しておきましょう(登記事項証明書の取り方、定款変更の手続き)。
誰が請求できるか
| 請求する人 | 根拠 | ポイント |
|---|---|---|
| 譲り渡そうとする株主 | 136条 | 譲渡の前に、相手方が取得することの承認を請求する |
| 株式を取得した人 | 137条 | 取得後に、取得したことの承認を請求する。原則として、株主名簿上の株主(またはその相続人など)と共同で請求する |
請求書に書かれているべき事項(138条)
- 譲り渡そうとする(取得した)譲渡制限株式の数(種類株式発行会社では種類と種類ごとの数)
- 譲り受ける人(取得した人)の氏名または名称
- 承認しない場合に、会社または指定買取人が買い取ることを請求するときは、その旨
請求書を受け取ったら、受付日を記録してください。後で説明する2週間・40日の期限は、この請求の日から数えます。郵送で届いた場合は封筒も保管し、内容証明で届いた場合は受領の記録を残します(内容証明郵便の出し方と届いたときの対応)。
承認するかどうかを決める
承認するか否かの決定は、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議によります。ただし、定款で別の機関(代表取締役など)を定めている場合はそれに従います(139条1項)。
決定したら、請求した人に決定内容を通知します(139条2項)。
| 期限 | 内容 | 期限を過ぎると |
|---|---|---|
| 請求の日から2週間(定款でこれより短い期間を定めた場合はその期間) | 承認するか否かの決定内容を通知する | 承認したものとみなされる(145条1号) |
取締役会設置会社で取締役会を開く場合は、招集通知の期間(原則として会日の1週間前まで。368条1項。取締役・監査役全員の同意があれば招集手続を省略できる)も考慮すると、2週間は短い期間です。請求が届いたら、すぐに取締役会の日程を押さえてください。議事録の作り方は取締役会・株主総会議事録の作り方と保存を参照してください。
会社と請求者が合意すれば、みなし承認の期限について別段の定めをすることができます(145条ただし書)。期限内の決定が難しい場合は、請求者と期限の延長を書面で合意しておく方法があります。
承認しない場合の買取り
請求書に「承認しない場合は会社または指定買取人が買い取ること」を求める旨が書かれていて、会社が承認しないと決定したときは、会社が買い取るか、買い取る人(指定買取人)を指定しなければなりません(140条)。
| 買い取る人 | 決定機関 | 通知期限 | 供託 |
|---|---|---|---|
| 会社 | 株主総会の特別決議(140条2項、309条2項1号)。請求者は原則として議決権を行使できない(140条3項) | 承認しない旨の通知の日から40日以内(定款でより短い期間を定めた場合はその期間) | 1株当たり純資産額×買い取る株式数を本店所在地の供託所に供託し、供託を証する書面を請求者に交付(141条2項) |
| 指定買取人 | 株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議。株主総会で決める場合は特別決議(140条5項、309条2項1号)。定款に別段の定めがあればそれによる | 承認しない旨の通知の日から10日以内(定款でより短い期間を定めた場合はその期間) | 指定買取人が同様に供託(142条2項) |
これらの期限内に買取りの通知がないと、承認したものとみなされます(145条2号。指定買取人が10日以内に通知した場合を除く)。
会社が買い取るときの財源規制
会社が買い取る場合、買取りの対価として株主に交付する金銭等の帳簿価額の総額は、効力発生日の分配可能額を超えてはなりません(461条1項1号)。分配可能額の計算は経理・税理士と確認してください。
売買価格の決め方
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 協議 | 売買価格は、会社(指定買取人)と請求者の協議で決める(144条1項) |
| 裁判所への申立て | 買取りの通知の日から20日以内に、どちらからでも裁判所に売買価格の決定を申し立てられる(144条2項) |
| 申立てがない場合 | 協議が調わず申立てもなければ、1株当たり純資産額×株式数が売買価格になる(144条5項) |
株券発行会社の場合は、請求者が供託を証する書面を受け取った日から1週間以内に株券を供託する手続きもあります(141条3項)。
承認後の株主名簿の書換え
承認した場合(承認したものとみなされた場合を含む)、取得者は会社に株主名簿の書換えを請求できます(133条・134条)。原則として、取得者と株主名簿上の株主が共同で請求します。
| 作業 | 内容 |
|---|---|
| 株主名簿の書換え | 取得者の氏名・住所、株式数、取得日を記載する |
| 株主名簿記載事項証明書 | 株券不発行会社では、請求があれば交付する |
| 関係書類の保管 | 請求書、議事録、通知書の控え、供託書の写しを一式で保管する |
| 法人税申告書の別表 | 株主構成が変わるため、経理に共有する |
| 実質的支配者リスト | 議決権の過半数を持つ人が変わる場合は、申出内容の更新を検討する(実質的支配者リスト制度) |
なお、相続や合併など一般承継による取得は、譲渡承認の対象ではありません(134条4号)。相続人に対しては、定款に定めがあれば、会社が売渡しを請求する制度(174条以下)があります。
請求を受けたときのチェックリスト
- 請求書の受付日を記録した
- 定款で承認機関と、みなし承認の期間の定めを確認した
- 請求書に株式数・譲受人・買取請求の有無が書かれているか確認した
- 2週間以内に決議できる日程を確保した
- 不承認の場合の買取方針(会社か指定買取人か)、分配可能額、供託金を検討した
- 決定内容を書面で通知し、控えを保管した
- 株主名簿を書き換え、経理と共有した
承認・不承認の判断や価格の交渉は、紛争になりやすい場面です。司法書士・弁護士に早めに相談してください(顧問弁護士の選び方)。
まとめ
- 譲渡制限株式の株主や取得者は、会社に譲渡の承認を請求できる。請求の日から2週間以内に決定内容を通知しないと、承認したものとみなされる
- 承認機関は、取締役会設置会社なら取締役会、それ以外は株主総会(定款に別段の定めがあればそれによる)
- 不承認で買取請求がある場合は、会社(株主総会の特別決議・財源規制あり)か指定買取人が買い取る。供託と、40日(指定買取人は10日)以内の通知が必要
- 承認後は株主名簿を書き換え、請求書・議事録・通知書の控えを一式で保管する
この記事に出てくる用語
- 株主総会
- 株式会社の最高意思決定機関で、株主が集まって計算書類の承認、役員の選任、定款変更などを決議する会議です。毎事業年度の終了後に開く「定時株主総会」と、必要に応じて開く臨時株主総会があります。
- 株主名簿
- 株主の氏名・住所、持株数、取得日などを記載した会社の帳簿です。会社法で作成と本店への備置きが義務づけられ、株式の譲渡は名簿に記載しないと会社に対抗できません。
- 実質的支配者リスト
- 株式会社が自社の実質的支配者(議決権の50%超、いなければ25%超を持つ個人など)を記載した一覧を法務局に提出し、登記官の認証文付きの写しを受け取れる制度です。
- 譲渡制限株式
- 株式を他人に譲り渡すときに会社の承認が必要と定款で定めた株式です。すべての株式が譲渡制限株式の会社を「公開会社でない会社(非公開会社)」といい、中小企業の多くが該当します。
- 定款
- 会社の目的・商号・本店所在地・機関設計・役員の任期など、会社の基本ルールを定めた文書です。会社の「憲法」とも呼ばれ、変更には株主総会の特別決議が必要です。
- 登記事項証明書
- 法務局が発行する、会社の登記内容を証明する書面です。いわゆる「登記簿謄本」にあたり、銀行口座の開設や入札、許認可の申請などで提出を求められます。
- 取締役会
- 3人以上の取締役で構成され、会社の業務執行の決定や代表取締役の選定・監督を行う会議体です。置くかどうかは定款で決め、置いている会社を「取締役会設置会社」といいます。
- 内容証明郵便
- いつ、どんな内容の文書を、誰から誰あてに差し出したかを日本郵便が証明する郵便です。契約の解除通知や未払代金の督促など、通知した事実を証拠に残したいときに使います。