会社の登記を頼む司法書士の選び方:役員変更・本店移転などの依頼範囲、見積りの内訳、期限管理で比べる
役員の任期満了、本店移転、商号や目的の変更など、会社の登記は変更から2週間以内の申請が必要です。司法書士に依頼するときに比べる点(対応する登記の範囲、議事録など添付書面の作成、見積りの内訳、役員任期の管理、オンライン申請への対応)と、依頼前に社内で準備することを、特定の事務所に偏らずに整理します。
- 対象読者
- 役員の改選や本店移転などの商業登記を、毎回違う司法書士に頼んでいる、または初めて依頼先を決める、従業員30〜300名の企業の総務担当者
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この記事のポイント
- 会社の登記は、変更が生じてから2週間以内に本店所在地で申請する(会社法第915条)。期限内に確実に申請できる体制かを最優先に比べる
- 比べる点は、対応する登記の範囲、議事録・株主リストなど添付書面の作成支援、見積りの内訳(報酬・登録免許税・実費)、役員任期の管理、連絡の手段と速さ
- 司法書士は日本司法書士会連合会の名簿に登録して業務を行う(司法書士法第8条)。依頼前に登録を確認し、社内では決議の日程と必要書類を早めにそろえる
役員の再任、本店の移転、商号や事業目的の変更など、会社の登記は数年に一度しか発生しないものが多く、そのたびに「前回どこに頼んだか」を探すことになりがちです。依頼先が決まっていないと、総会の後に慌てて事務所を探し、2週間の期限に間に合わないこともあります。
この記事では、商業登記を頼む司法書士を選ぶときの確認項目を、特定の事務所に偏らずに整理します。登記が必要になる場面と期限は役員変更・本店移転など登記変更の期限と総務の段取りを参照してください。
司法書士に頼めること
司法書士法第3条は、司法書士の業務として、登記や供託の手続の代理、法務局に提出する書類の作成、これらに関する相談などを定めています。会社の総務から見ると、主に次の場面で依頼します。
| 場面 | 依頼する内容の例 |
|---|---|
| 役員の選任・再任・辞任 | 役員変更登記、総会・取締役会の議事録の作成支援、株主リストの作成支援 |
| 本店移転・支店の設置 | 本店移転登記(管轄が変わる場合を含む)、取締役会議事録の作成支援 |
| 商号・目的の変更 | 定款変更の決議書類、変更登記 |
| 増資・株式に関する変更 | 募集株式の発行の登記、関係書類の作成 |
| 不動産の取得・担保設定 | 社屋や土地の所有権移転登記、抵当権の設定・抹消 |
登記は会社自身で申請することもでき、法務省はオンラインでの申請方法も案内しています。ただし、議事録や株主リストなどの添付書面に不備があると補正が必要になるため、登記の頻度が少ない会社ほど専門家に任せる意味があります。
比べるときの確認項目
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 登録 | 日本司法書士会連合会の名簿に登録されているか(同連合会のサイトで検索できる) |
| 対応する登記の範囲 | 商業登記を日常的に扱っているか。不動産登記中心の事務所もある |
| 添付書面の作成支援 | 議事録・株主リスト・就任承諾書などの案を作ってもらえるか。社内の書式との調整 |
| 期限への対応 | 決議から申請までの標準的な日数、急ぎの場合の対応 |
| 見積りの内訳 | 報酬、登録免許税、登記事項証明書などの実費が分けて示されるか |
| 任期の管理 | 役員の任期満了の時期を知らせてくれるか(任期管理を依頼できるか) |
| 連絡の手段 | メール・電子データでのやり取り、押印書類の郵送の流れ |
| 他の専門家との連携 | 本店移転後の税務署・年金事務所などへの届出について、税理士や社会保険労務士と連携できるか |
報酬は事務所ごとに異なるため、同じ内容(例:役員3名の再任と、1名の新任)で複数の事務所から見積りを取り、内訳を比べます。登録免許税は、登記の種類ごとに税額が決まっており、国税庁の税額表で確認できます。報酬と税金を混ぜた総額だけで比べないようにします。
本店を別の法務局の管轄区域に移す場合は、新所在地での登記の申請を旧所在地の登記所を経由して、旧所在地での申請と同時に行います(商業登記法第51条)。手続が増えるため、管轄外の移転の経験があるかも確認しておくと安心です。
依頼を断られることはあるか
司法書士法第21条は、司法書士は正当な事由がある場合でなければ依頼(簡易裁判所での訴訟代理などに関するものを除く)を拒むことができないと定めています。ただし、繁忙期で期限に間に合わない場合などは、事情を説明されることがあります。株主総会の多い時期の依頼は、日程が決まった時点で早めに相談します。
依頼前に社内で準備すること
- 登記の原因となる決議の日程(総会・取締役会)と、決議の内容を決める
- 現在の登記事項証明書を取る(→登記事項証明書の取り方)
- 定款、株主名簿、前回の登記で使った議事録の控えを用意する
- 役員の就任承諾書や本人確認書類など、司法書士から求められる書類を確認する
- 登記が終わったら、新しい登記事項証明書を取り、取引先・金融機関・社内の届出先を更新する
株主総会の決議を経る登記では、株主リストの添付が必要です(法務省の案内参照)。株主名簿が最新になっていないと作れないため、普段から名簿を更新しておきます。総会の段取りは定時株主総会の段取りにまとめています。
期限を守る仕組み
会社法第915条は、登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければならないと定めています。登記を怠ると、過料の対象になり得ます(第976条)。役員の任期満了による再任でも登記は必要です。
依頼先の司法書士を決めておき、役員の任期一覧と次の改選時期を共有しておくと、総会の日程が決まった時点で依頼の段取りに入れます。社内でも、総務の年間スケジュールに改選時期を入れておきます。
依頼先を決めたあとの運用
依頼先を決めたら、次の情報を総務の引継ぎ資料に残しておきます。担当者が替わっても、同じ事務所に同じ水準で依頼できるようにするためです。
| 残しておく情報 | 内容の例 |
|---|---|
| 事務所の連絡先 | 担当の司法書士名、電話・メール、書類の郵送先 |
| 過去の依頼の記録 | 登記の種類、決議日、申請日、完了日、費用の内訳 |
| 社内の書式 | 議事録・就任承諾書の書式と保存場所 |
| 次の予定 | 役員の任期満了の時期、予定している定款変更 |
あわせて、役員の任期と次の改選時期を表にして、総会の招集準備を始める時期を総務の年間スケジュールに入れておきます。
よくある失敗
- 総会が終わってから依頼先を探し始め、書類の準備に時間がかかって2週間を過ぎてしまう
- 見積りを総額だけで比べ、登録免許税の額が違う前提(登記の種類や件数の違い)に気づかない
- 前回の議事録の書式をそのまま使い、今回の決議内容に合わない記載が残る
- 役員の再任は「同じ人だから登記は不要」と考え、任期満了の登記を忘れる
- 本店移転で管轄の法務局が変わることを見落とし、日程の見込みが甘くなる
- 依頼の記録を残さず、次の改選時にまた一から事務所を探す
打合せで聞いておくとよいこと
初めて依頼する事務所には、見積りと一緒に次の点を聞いておくと、比較しやすくなります。
- 最近1年に扱った商業登記の主な種類(役員変更・本店移転・目的変更など)
- 書類のやり取りの方法(電子データ・郵送・来所)と、押印が必要な書類の範囲
- 申請から登記完了までの連絡のしかた(完了の報告、登記事項証明書の送付の有無)
- 次回以降の任期の管理や、定款の見直しの相談に応じてもらえるか
まとめ
- 会社の登記は変更から2週間以内。決議の前から依頼先を決めておく
- 比べるのは、商業登記の対応範囲、添付書面の作成支援、見積りの内訳、任期の管理、連絡の手段
- 登録を連合会のサイトで確認し、同じ条件で複数の見積りを取る。報酬と登録免許税を分けて比べる
- 社内では、決議の日程、登記事項証明書、定款・株主名簿・前回の議事録を早めにそろえる
この記事に出てくる用語
- 株主総会
- 株式会社の最高意思決定機関で、株主が集まって計算書類の承認、役員の選任、定款変更などを決議する会議です。毎事業年度の終了後に開く「定時株主総会」と、必要に応じて開く臨時株主総会があります。
- 株主名簿
- 株主の氏名・住所、持株数、取得日などを記載した会社の帳簿です。会社法で作成と本店への備置きが義務づけられ、株式の譲渡は名簿に記載しないと会社に対抗できません。
- 商業登記
- 会社の商号・本店・目的・役員・資本金などを法務局の登記簿に記録し、取引の相手方が確認できるように公示する制度です。登記事項に変更があれば2週間以内に変更登記をします。
- 定款
- 会社の目的・商号・本店所在地・機関設計・役員の任期など、会社の基本ルールを定めた文書です。会社の「憲法」とも呼ばれ、変更には株主総会の特別決議が必要です。
- 登記事項証明書
- 法務局が発行する、会社の登記内容を証明する書面です。いわゆる「登記簿謄本」にあたり、銀行口座の開設や入札、許認可の申請などで提出を求められます。
- 登録免許税
- 登記や登録、免許などを受けるときに国に納める税金です。会社の設立・役員変更・本店移転・増資などの商業登記を申請するときに納めます。
- 取締役会
- 3人以上の取締役で構成され、会社の業務執行の決定や代表取締役の選定・監督を行う会議体です。置くかどうかは定款で決め、置いている会社を「取締役会設置会社」といいます。
- 年金事務所
- 日本年金機構の地域の窓口で、健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険の加入や保険料に関する会社の届出を受け付けます。