採用代行(RPO)の選び方|任せる業務の範囲、職業安定法の委託募集・個人情報の確認、比較のポイント
採用代行(RPO)は、求人の作成や応募者対応、面接の日程調整などの採用業務を外部に委託するサービスです。任せる範囲の決め方、職業安定法の委託募集と個人情報の扱いの確認、契約と比較のポイントを、特定の事業者に寄らずに整理します。
- 対象読者
- 求人の掲載、応募者への連絡、面接の日程調整までを一人で抱え、採用業務の一部を外部に任せたいと考えている従業員30〜300名の企業の人事担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 任せる業務は「求人の作成・掲載」「応募者への連絡と日程調整」「書類の一次確認」「スカウトの送信」などに分けて決める。採否の判断と労働条件の決定は自社に残す
- 委託先が自社に代わって求職者に応募を勧誘するなど募集に従事する場合、職業安定法の委託募集の許可・届出が関係することがある。業務の範囲ごとに委託先と確認し、迷ったら労働局に相談する
- 応募者の個人情報を扱わせるため、契約で利用目的・安全管理・再委託・契約終了時の削除を決め、委託先を監督する
求人の掲載、応募者への返信、面接の日程調整、不採用の連絡。採用が動き出すと、人事担当者の時間はこうした連絡に取られます。本来時間をかけたい面接や入社後のフォローが後回しになることも少なくありません。
採用代行(RPO:Recruitment Process Outsourcing)は、採用業務の一部または全部を外部に委託するサービスです。この記事では、特定の事業者に寄らず、委託の範囲の決め方、法律上の確認、比較のポイントを整理します。料金は業務の範囲と採用人数で大きく変わるため、自社の条件を示して見積もりを取ることを前提にしています。
採用代行で任せられる業務
| 業務 | 内容の例 | 自社に残すこと |
|---|---|---|
| 採用計画の整理 | 採用人数・時期・媒体の案づくり | 採用人数と予算の決定 |
| 求人の作成・掲載 | 求人原稿の作成、求人媒体への掲載・更新 | 労働条件の決定と、原稿の最終確認 |
| 応募者への連絡 | 応募の受付、書類の依頼、面接日程の調整 | 連絡の文面のルール |
| 書類の一次確認 | 応募条件を満たすかの確認 | 確認の基準の決定、採否の判断 |
| スカウトの送信 | 求人媒体のデータベースからの候補者への送信 | 送る相手の条件と文面の承認 |
| 面接の運営 | 面接の案内、会場・Web会議の準備 | 面接と採否の判断 |
| 内定者への連絡 | 入社までの書類の案内 | 内定・労働条件の通知 |
**採否の判断と労働条件の決定は、自社に残します。**委託先が一次確認をする場合も、基準は自社で決め、公正な採用選考の考え方に反する項目(本籍や家族の職業など)を基準にしないよう伝えます。
まず今の採用業務を数える
委託の前に、1回の採用で何にどれだけ時間がかかっているかを数えます。
- 応募数、書類確認、面接の件数
- 応募者1人あたりの連絡の回数と時間
- 時間がかかっている作業(日程調整、返信、媒体の更新など)
数えてみると、採用管理システムで減らせる作業も見つかります(→採用管理システムの選び方)。システムで足りるのか、人に任せる必要があるのかを分けて考えます。
法律上の確認
職業安定法の委託募集
職業安定法は、「労働者の募集」を、雇おうとする者が自らまたは他人に委託して、労働者になろうとする者に被用者となるよう勧誘することと定めています。そのうえで、自社の従業員以外の者に報酬を与えて募集に従事させるときは厚生労働大臣の許可、報酬を与えないときは届出が必要としています(第36条)。また、募集に従事する者への報酬の与え方にも制限があります(第40条)。
採用代行のどの業務がこれに当たるかは、委託先が自社に代わって求職者に働きかけるかなど、業務の中身によって変わります。
- □ 委託先は、どの業務について委託募集の許可・届出が必要と考えているか
- □ 職業紹介(求人者と求職者のあっせん)に当たる業務が含まれていないか。含まれる場合、委託先は職業紹介事業の許可を持っているか
- □ 報酬の決め方(固定・成果に応じた額など)について、法令との関係を委託先がどう説明しているか
判断に迷うときは、契約の前に委託先の説明を書面で受け取り、所轄の労働局に相談します。人材紹介会社を使う場合との違いは人材紹介会社の活用も参考にしてください。
求人の表示と応募者の個人情報
職業安定法は、募集を行う者と募集受託者に、求人の情報について虚偽や誤解を生じさせる表示をしないこと、情報を正確かつ最新に保つことを求めています。求職者の個人情報は、業務の目的の達成に必要な範囲で収集・保管・使用することも定められています。委託先が書いた求人原稿でも、内容の責任は自社にあると考え、掲載前に確認します(→求人広告の表示のルール)。
個人情報の委託先の監督
応募者の履歴書や連絡先を委託先に扱わせることは、個人データの取扱いの委託に当たります。個人情報保護法は、委託先に対する必要かつ適切な監督を求めています。
比較のポイント
| 観点 | 確認すること |
|---|---|
| 業務の範囲 | どこからどこまでを行うか。範囲外の作業の扱い |
| 体制 | 担当者の人数、担当が替わるときの引き継ぎ |
| 連絡の方法 | 応募者への連絡は誰の名前で、どの手段で行うか |
| 報告 | 応募数・対応状況・選考の進み具合の報告の頻度と形式 |
| 使うシステム | 自社の採用管理システムを使うか、委託先のものを使うか。権限の範囲 |
| 法令の確認 | 委託募集・職業紹介の許可・届出についての説明 |
| 個人情報 | 安全管理の方法、再委託の有無、契約終了時のデータの返却・削除 |
| 料金の決め方 | 月額・業務量・成果に応じた額など。見積もりの前提条件 |
見積もりを依頼するときに伝えること
条件をそろえて複数の委託先に見積もりを依頼すると、比べやすくなります。
| 伝えること | 例 |
|---|---|
| 採用の対象 | 職種、雇用形態、勤務地、採用人数 |
| 時期 | 募集開始の時期、入社してほしい時期 |
| 使っている媒体・システム | 求人媒体、採用管理システム、自社の採用ページ |
| 任せたい業務 | 上の「任せられる業務」の表から選んだもの |
| 今の数字 | 過去の応募数、面接数、採用数の目安 |
| 自社で行うこと | 面接の担当者、採否の判断者、労働条件の決定者 |
見積もりを受け取ったら、金額だけでなく、前提にしている応募数や作業量、範囲外の作業の扱いを比べます。応募が想定より多いとき・少ないときに料金や体制がどう変わるかも確認します。
委託を始めたあとの運用
- 週に1回など、応募と選考の状況を報告してもらう日を決める
- 応募者への連絡の文面は、最初に自社で承認したものを使ってもらう
- 不採用の連絡や辞退の対応など、応募者の印象に関わる場面のルールを決める(→不採用通知の書き方)
- 3か月ほどで、任せた業務の範囲と成果を見直す
委託先に任せても、応募者から見れば「その会社の対応」です。連絡の早さや言葉づかいは、採用の結果にも影響します。
契約で決めること
- 委託する業務の範囲と、自社が判断する事項
- 応募者の個人情報の利用目的、安全管理措置、再委託の可否と条件
- 契約終了時の応募者データの返却・削除と、その報告
- 事故が起きたときの報告の期限と方法
- 常駐で作業する場合、委託先の担当者に自社が直接指示しない形(偽装請負の防止)
業務委託契約の確認ポイントは業務委託契約書のチェック、契約書の管理は契約書の管理にまとめています。
まとめ
- 任せる業務を分けて決め、採否の判断と労働条件の決定は自社に残す
- 委託先が募集に従事する場合の委託募集の許可・届出、職業紹介に当たる業務の有無を確認し、迷ったら労働局に相談する
- 求人原稿は掲載前に自社で確認し、表示のルールを守る
- 応募者の個人情報は、契約で安全管理・再委託・契約終了時の削除を決め、委託先を監督する
この記事で使えるテンプレート
総務 契約書管理台帳 取引先との契約書を一覧で管理する台帳です。契約期間・自動更新の有無・解約予告期限・保管場所(紙/電子)・印紙の有無・担当部署を記録し、更新や解約の判断漏れを防ぎます。この記事に出てくる用語
- 安全管理措置
- 個人データの漏えい・滅失・毀損を防ぐために会社が講じる措置です。基本方針の策定、規律の整備、組織的・人的・物理的・技術的な措置などがあり、規模にかかわらずすべての会社に義務づけられています。
- 偽装請負
- 契約の形式は請負や業務委託なのに、実態は発注者が受託者の労働者に直接指揮命令している状態です。実質的には労働者派遣にあたり、労働者派遣法や職業安定法に違反するおそれがあります。
- 公正採用選考
- 応募者の適性と能力だけを基準に採用を決める、という厚生労働省が示す採用選考の考え方です。本籍・家族・思想信条など、本人に責任のない事項や本来自由であるべき事項で判断しないことを求めています。
- 個人情報保護法
- 個人情報を扱う事業者が守るべきルール(利用目的の特定、安全管理措置、第三者提供の制限、漏えい時の報告など)を定めた法律です。従業員数にかかわらず、個人情報を事業に使うすべての会社が対象です。
- 個人データ
- 検索できるように体系的に整理された個人情報の集まり(個人情報データベース等)を構成する個人情報のことです。社員名簿や顧客台帳、名刺管理ソフトの中の情報などが該当します。
- 採用内定
- 会社が応募者に採用を約束することです。多くの場合、内定通知の時点で「始期付・解約権留保付の労働契約」が成立したと考えられます。
- 職業安定法
- 求人の募集、職業紹介、求職者の個人情報の扱いなどのルールを定めた法律です。会社が求人を出すときの労働条件の明示や、虚偽の表示の禁止もここに定められています。