外国人エンジニア・専門職の採用と在留資格「高度専門職」|ポイント制の仕組み、技人国との違い、会社の準備
外国人のエンジニアや専門職を採用するとき、在留資格は「技術・人文知識・国際業務」が一般的ですが、学歴・職歴・年収などのポイントが70点以上なら「高度専門職」も選べます。ポイント制の仕組み、在留期間5年や配偶者の就労などの優遇措置、転職時に変更申請が必要になる点、特別高度人材制度(J-Skip)、会社が準備する書類と社内の段取りを整理します。
- 対象読者
- 外国人のエンジニア・専門職の採用を検討している従業員30〜300名の企業の人事担当者
- 難易度
- 応用
- 所要時間
- 読了9分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 高度専門職は、学歴・職歴・年収・研究実績などの項目ごとのポイントの合計が70点以上の人に認められる。高度専門職1号ロ(高度専門・技術活動)は、年収が300万円に達しないと他の項目で70点を超えても認められない
- 1号には、在留期間5年、複合的な在留活動、配偶者の就労、一定条件での親・家事使用人の帯同、永住許可要件の緩和(70点以上で3年、80点以上で1年)、手続の優先処理などの優遇がある
- 1号は勤務先の機関が指定されるため、転職時は在留資格の変更申請が必要。更新時に70点に満たないと更新できない。会社は年収の見込みや職務内容を示す書類を準備し、本人と申請の段取りを共有する
ITエンジニア、研究開発、海外営業などで外国人を採用する会社が増えています。在留資格は「技術・人文知識・国際業務」(技人国)が一般的ですが、学歴や年収などの条件がそろう人なら「高度専門職」という選択肢もあります。高度専門職は在留期間や家族の帯同などで優遇があり、候補者にとって魅力になる一方、転職時の手続きなど、会社が知っておくべき違いもあります。
この記事では、高度人材ポイント制の仕組みと、採用する会社の準備を整理します。外国人雇用の基本的な手続きは外国人を雇うときの手続き、在留期間の管理は在留期間の更新と在留資格の管理を参照してください。
高度専門職とは
高度専門職は、高度な専門的能力を持つ外国人の受入れを進めるための在留資格です。活動の内容によって3つに分かれます。
| 区分 | 活動の内容 | 会社での例 |
|---|---|---|
| 高度専門職1号イ | 高度学術研究活動 | 研究機関・企業の研究者 |
| 高度専門職1号ロ | 高度専門・技術活動(自然科学・人文科学の知識や技術を要する業務) | エンジニア、専門職、企業内転勤者など |
| 高度専門職1号ハ | 高度経営・管理活動 | 会社の経営者・管理者 |
| 高度専門職2号 | 1号で3年以上活動した人が移行できる | 在留期間は無期限 |
会社員として採用する場合は、多くが1号ロに当たります。
ポイント制の仕組み
出入国在留管理庁は、学歴、職歴、年収、研究実績などの項目ごとにポイントを設け、合計が70点以上の人を高度外国人材として認めています。日本語能力や、イノベーション促進の支援措置を受けている機関での就労などには加算もあります。詳しい点数は、出入国在留管理庁の「ポイント計算表」で確認します。
1号ロでの主な注意点は次のとおりです。
- 年収の最低基準:年収が300万円に達しない場合、他の項目でポイントの合計が70点を超えていても高度外国人材とは認められない
- 年収の考え方:その活動によって受ける報酬の年額で考える。主に、高度専門職としての活動を行う勤務先から受ける報酬
- 更新時も70点が必要:在留中に常に70点以上を保つ必要はないが、在留期間の更新時に70点に満たないと更新は認められない
ポイントの計算は本人が行い、各項目の証明書類を申請時に提出します。会社は、年収の見込みや職務内容を示す書類で協力します。
技人国との違い
| 項目 | 技術・人文知識・国際業務 | 高度専門職1号ロ |
|---|---|---|
| 主な要件 | 学歴・実務経験と、従事する業務との関連性 | 1号ロに当たる活動であることと、ポイント70点以上(年収の最低基準あり) |
| 在留期間 | 5年、3年、1年、3か月のいずれか | 5年 |
| 活動の範囲 | 許可された活動の範囲内 | 複合的な在留活動が認められる |
| 配偶者の就労 | 配偶者は原則として資格外活動許可の範囲内 | 一定の要件のもとで配偶者も就労できる |
| 親・家事使用人の帯同 | 原則として認められない | 一定の条件のもとで認められる |
| 永住許可 | 原則として長期の在留歴が必要 | 70点以上なら3年、80点以上なら1年に在留歴の要件が緩和 |
| 転職 | 同じ在留資格の範囲の業務なら変更申請は不要(届出は必要) | 勤務先の機関が指定されるため、転職時は在留資格の変更申請が必要 |
高度専門職の優遇措置は、候補者にとって大きな魅力です。特に、家族を連れて来日する人や、将来の永住を考える人にとっては、在留資格の選択が入社の決め手になることもあります。
転職時の扱いに注意
高度専門職1号は、勤務先の機関が指定される在留資格です。出入国在留管理庁のQ&Aは、転職などで勤務先の機関が変わるときは、在留資格の変更申請が必要としています。
- 他社から高度専門職の人を中途採用する場合:入社前に、自社を勤務先とする在留資格の変更許可が必要。許可前に就労を始めないよう、入社日を調整する
- 自社の高度専門職の人が退職する場合:本人は転職先で変更申請を行う。会社は外国人雇用状況の届出(雇用保険の資格喪失届)を行う
特別高度人材制度(J-Skip)
2023年4月に始まった特別高度人材制度(J-Skip)は、ポイント制とは別に、学歴または職歴と年収が一定の水準以上であれば高度専門職の在留資格を認める仕組みです。
| 活動 | 要件 |
|---|---|
| 高度学術研究・高度専門・技術 | 修士号以上の取得と年収2,000万円以上、または従事する業務の実務経験10年以上と年収2,000万円以上 |
| 高度経営・管理 | 事業の経営・管理の実務経験5年以上と年収4,000万円以上 |
対象は限られますが、該当する人には、通常の高度専門職よりも拡充された優遇措置があります。
採用の流れと会社の準備
1. 在留資格の方向性を決める
内定前の面談で、候補者の学歴・職歴・現在の在留資格・家族の状況を確認し、技人国と高度専門職のどちらで申請するかを本人と相談します。ポイントの見込み計算は、本人に出入国在留管理庁の計算表で試算してもらいます。
2. 労働条件を確定させる
年収はポイントと最低基準の判断に使われるため、内定通知書・労働条件通知書で年収の見込みを明確にします(→内定通知書)。賞与を含めるか、固定残業代の扱いなど、年収の内訳を説明できるようにしておきます。給与水準の決め方は中途採用者の給与の決め方も参考にしてください。
3. 申請書類をそろえる
| 状況 | 申請 |
|---|---|
| 海外から呼び寄せる | 在留資格認定証明書交付申請 |
| 日本にいる人(留学生・他の在留資格・転職者) | 在留資格変更許可申請 |
会社が用意する主な書類は、会社の概要を示す資料、雇用契約書・労働条件通知書、職務内容の説明などです。提出書類は、勤務先の規模などによる区分(カテゴリー)で異なるため、出入国在留管理庁のページで確認します。申請の取次ぎを行政書士に依頼する会社も多くあります。
4. 入社日と許可の時期を合わせる
許可が出る前に就労を始めることはできません。留学生の新卒採用では、3月卒業予定者の変更申請は例年12月から受け付けられています。中途採用の場合も、申請から許可までの期間を見込んで入社日を設定しましょう。
5. 入社後の管理
- 在留カードの確認と、外国人雇用状況の届出(雇用保険の資格取得届で兼ねる)
- 在留期間の満了日を台帳で管理し、更新の数か月前から準備する
- 更新時にポイントが70点以上あるか、年収や職務内容が変わっていないか確認する
- 生活面の支援(住居、銀行口座、行政手続き)の窓口を決める(→外国人雇用チェックリスト)
昇給や職務変更でポイントが変わることがあります。逆に、職務の縮小や年収の減少で更新時に70点を下回ると、高度専門職としては更新できません。人事異動や給与改定の際は、在留資格への影響も確認しましょう。
まとめ
- 高度専門職は、ポイント合計70点以上の人に認められる在留資格。会社員の多くは1号ロで、年収300万円の最低基準がある
- 在留期間5年、配偶者の就労、親・家事使用人の帯同(一定条件)、永住要件の緩和などの優遇があり、候補者への訴求点になる
- 勤務先が指定されるため、転職時は在留資格の変更申請が必要。更新時も70点以上が必要
- 年収・職務内容を書面で明確にし、許可の時期と入社日を合わせ、入社後は在留期間とポイントの変化を管理する
この記事で使えるテンプレート
人事 外国人雇用 手続きチェックリスト 外国人を雇うときの在留カード確認、就労可否の判断、外国人雇用状況の届出、在留期限の管理、退職時の届出までを1枚で確認できるチェックリストです。本人ごとの確認記録としても使えます。 人事 内定通知書・内定承諾書 採用内定を伝える内定通知書と、内定者から返送してもらう内定承諾書のセットです。入社予定日、提出書類、内定取消事由、承諾期限を明記でき、労働条件通知書とあわせて送る前提で作っています。この記事に出てくる用語
- 外国人雇用状況の届出
- 外国人を雇い入れたときと離職したときに、氏名・在留資格・在留期間などをハローワークに届け出る手続です。すべての事業主に義務づけられています。
- 固定残業代
- 一定時間分の時間外労働などの割増賃金を、実際の残業の有無にかかわらず定額で支払う仕組みです。実際の残業代が定額を超えたら差額を支払う必要があります。
- 雇用契約書
- 会社と労働者が労働契約の内容に合意したことを示すため、双方が署名・記名押印などをする書面です。法律上の作成義務はありませんが、トラブル防止のために多くの会社が作ります。
- 雇用保険
- 労働者が失業したときや、育児・介護で休業したときなどに給付を行う公的保険です。週20時間以上働き、31日以上雇用見込みがある人が原則として加入します。
- 採用内定
- 会社が応募者に採用を約束することです。多くの場合、内定通知の時点で「始期付・解約権留保付の労働契約」が成立したと考えられます。
- 在留カード
- 中長期在留者に交付される身分証明書で、氏名、在留資格、在留期間、就労制限の有無などが記載されています。外国人を雇うときは、原本で在留資格と就労の可否を確認します。
- 在留資格
- 外国人が日本に在留して行うことができる活動や身分・地位を類型化したものです。就労できるかどうか、どんな仕事ができるかは在留資格ごとに決まっており、採用時に必ず確認します。
- 資格外活動許可
- 在留資格で認められた活動以外に、収入を伴う活動をするために受ける出入国在留管理庁の許可です。留学生や家族滞在の人がアルバイトをするには、この許可が必要です。
- 資格取得届
- 従業員が社会保険や雇用保険に加入するときに会社が提出する届出です。健康保険・厚生年金保険は年金事務所へ5日以内、雇用保険はハローワークへ翌月10日までに提出します。
- 資格喪失届
- 従業員が退職したときなどに、社会保険・雇用保険の被保険者でなくなったことを届け出る書類です。社会保険は5日以内、雇用保険は10日以内に提出します。
- 配置転換
- 同じ会社の中で、職務の内容や勤務場所を変えることです。勤務地が変わるものを特に転勤といいます。
- 労働条件通知書
- 会社が労働者を雇い入れるときに、賃金・労働時間・就業場所などの労働条件を書面で知らせるための文書です。労働基準法の「労働条件の明示」を果たすために使います。