不採用の連絡と応募書類の取扱い|通知の時期と文面、理由を聞かれたとき、履歴書の返却・廃棄のルール
不採用の連絡は、採用活動の中でも後回しにされやすい業務です。しかし連絡の遅れや雑な対応は、会社の評判にも、応募者の個人情報の管理にも影響します。通知のタイミングと文面、不採用理由を聞かれたときの答え方、職業安定法と個人情報保護法から見た応募書類の保管・返却・廃棄のルールを整理します。
- 対象読者
- 採用選考の連絡や応募書類の管理を一人で担当している従業員30〜300名の企業の人事担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了7分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 選考結果を連絡する時期を面接時に伝え、その時期までに合否にかかわらず連絡する。不採用の通知は簡潔に、選考への参加へのお礼と結果を伝える
- 法令上、不採用の理由を説明する義務は定められていない。説明する場合も、選考基準の一般的な内容にとどめ、適性・能力と関係のない事項を理由にしない
- 応募者の個人情報は、募集の目的の範囲で保管・使用し、保管する必要がなくなったものは破棄・削除する措置をとる。返却するかどうかは募集時に明示しておく
採用担当者が一人の会社では、面接の日程調整や内定者フォローに追われ、不採用者への連絡が遅れがちです。「連絡が来ないので問い合わせた」という応募者からのメールで気づく、という経験がある担当者もいるでしょう。
不採用の連絡と応募書類の管理は、応募者にとっては会社の印象を決める場面であり、会社にとっては個人情報を適切に扱う義務がかかわる場面でもあります。この記事では、通知の進め方と、応募書類の保管・返却・廃棄のルールを整理します。
不採用の連絡
連絡の時期
| 場面 | 目安 |
|---|---|
| 書類選考 | 応募受付時に「○日以内に連絡」と伝え、その期限内に連絡する |
| 面接後 | 面接の最後に「○日までに結果を連絡します」と伝え、その日までに連絡する |
| 結果が遅れるとき | 予定日までに「選考に時間がかかっている」旨と新たな予定日を連絡する |
「合格者にだけ連絡する」という運用は、応募者が他社の選考を進めるうえで不親切です。合否にかかわらず連絡することを基本にしましょう。応募者への連絡文の作成を効率化する方法は応募者への連絡をAIで効率化するも参考になります。
連絡の手段と文面
メールでの連絡が一般的です。面接まで進んだ人や、選考に時間をかけてもらった人には、丁寧さを意識します。
文面に入れる要素は次のとおりです。
- 応募・選考参加へのお礼
- 選考の結果(採用を見送ること)
- 応募書類の扱い(返却しない場合は、責任をもって廃棄すること)
- 今後の活躍を願う結びの言葉
不採用の通知に、評価の詳細や、他の候補者との比較を書く必要はありません。書いた内容は記録として残り、意図しない受け取られ方をすることがあります。
タレントプールに登録するとき
「今回は見送るが、別のポジションで声をかけたい」という場合は、そのために個人情報を保管・利用してよいか、本人の同意を得ます。応募時に示した利用目的(今回の募集の選考)とは別の目的になるためです。同意を得た場合も、保管期間を決めておきます。
不採用の理由を聞かれたら
法令上、不採用の理由を応募者に説明する義務は定められていません。説明する場合も、選考基準の一般的な内容にとどめるのが無難です。
- 例:「今回は、○○の実務経験を重視して選考した結果、ほかの方を採用することになりました」
厚生労働省は、採用選考は応募者の適性と能力に基づいて行うことを求めています。本籍・出生地、家族の状況、思想・信条など、適性・能力と関係のない事項を選考の理由にすることは、それ自体が問題です。理由を聞かれて答えに詰まるような選考になっていないか、面接評価シートの評価項目を見直すきっかけにしましょう(→面接評価シート、採用面接の進め方)。
面接記録の開示を求められたら
面接評価の記録が、会社が検索できるように整理された個人データ(保有個人データ)に当たる場合、本人から個人情報保護法に基づく開示を請求される可能性があります。開示により業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合などは、全部または一部を開示しないことができますが、判断は個別に行います。対応の流れは個人情報の開示請求を受けたらを参照してください。
応募書類の取扱い
職業安定法のルール
職業安定法第5条の5は、労働者の募集を行う会社に対し、応募者の個人情報を、業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして収集し、その目的の範囲内で保管・使用することを求めています。あわせて、個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければなりません。
厚生労働省の指針は、適正な管理のための措置として、次のような内容を挙げています。
- 個人情報を必要な範囲で正確かつ最新のものに保つ
- 紛失・破壊・改ざんを防止する
- 正当な権限のない者のアクセスを防止する
- 収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄または削除する
また指針は、人種・民族・社会的身分・門地・本籍・出生地など社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想・信条、労働組合への加入状況を、原則として収集してはならないとしています。応募書類の様式に、こうした項目を入れないようにします(→採用選考時の健康情報の取扱い)。
個人情報保護法のルール
個人情報保護法第22条は、個人データを利用する必要がなくなったときは、遅滞なく消去するよう努めなければならないとしています。不採用が確定した応募者の書類は、まさに「利用する必要がなくなった」ものに当たります。
返却するか、廃棄するか
応募書類を返却する法律上の義務はありません。ただし、扱いを応募者に知らせておかないと、「返してほしい」と求められたときに対応が分かれます。
| 運用 | ポイント |
|---|---|
| 返却しない(廃棄する) | 募集要項や応募フォームに「応募書類は返却しません。選考終了後、当社で責任をもって廃棄します」と明示する |
| 返却する | 返却の対象(原本か、写しも含むか)と時期を決める。郵送時の宛先誤りに注意する |
| 一定期間保管する | 問い合わせ対応などのために保管する場合は、期間(例:選考終了後○か月)を社内で決め、期限が来たら廃棄する |
紙の書類はシュレッダーや溶解処理、データは採用管理システムや共有フォルダから削除します。廃棄した日を記録しておくと、管理の実績として説明できます(→機密書類の廃棄)。
担当者のチェックリスト
- □ 応募受付時・面接時に、結果を連絡する時期を伝えている
- □ 合否にかかわらず、予定の時期までに連絡している
- □ 不採用の通知に、応募書類の扱い(返却しない・廃棄する)を書いている
- □ 応募書類・面接記録の保管場所と保管期間、廃棄の担当者を決めている
- □ タレントプールに登録する場合は、本人の同意と保管期間を決めている
- □ 応募書類の様式に、適性・能力と関係のない項目が入っていない
- □ 応募者の個人情報を、個人情報の管理台帳に載せている(→個人情報管理台帳)
まとめ
- 結果を連絡する時期を伝え、合否にかかわらずその時期までに連絡する。不採用の通知は簡潔に
- 不採用理由の説明義務はない。説明するなら選考基準の一般的な内容にとどめる
- 応募者の個人情報は、募集の目的の範囲で保管・使用し、不要になったら破棄・削除する
- 返却するかどうかを募集時に明示し、保管期間と廃棄の記録を残す
この記事で使えるテンプレート
人事 面接評価シート 面接官ごとの評価を同じ基準でそろえるための面接評価シートです。評価項目・5段階評価・評価の根拠となった発言・総合判定を1行1候補者で記録でき、Excelで集計できます。 総務 個人情報 管理台帳 社内で扱う個人データ(従業員名簿、給与データ、応募者情報、顧客名簿など)を一覧にする台帳です。個人情報保護委員会のガイドラインが例示する項目に、保管場所・保存期間・委託先・廃棄方法などを加えています。この記事に出てくる用語
- 個人情報保護法
- 個人情報を扱う事業者が守るべきルール(利用目的の特定、安全管理措置、第三者提供の制限、漏えい時の報告など)を定めた法律です。従業員数にかかわらず、個人情報を事業に使うすべての会社が対象です。
- 個人データ
- 検索できるように体系的に整理された個人情報の集まり(個人情報データベース等)を構成する個人情報のことです。社員名簿や顧客台帳、名刺管理ソフトの中の情報などが該当します。
- 採用内定
- 会社が応募者に採用を約束することです。多くの場合、内定通知の時点で「始期付・解約権留保付の労働契約」が成立したと考えられます。
- 保有個人データ
- 会社が開示・訂正・利用停止などを行う権限を持っている個人データのことです。本人から開示等の請求を受ける対象になり、会社は公表事項の整備と請求への対応が必要です。
- 溶解処理
- 機密書類を箱ごと専門業者が回収し、製紙工場などで水と薬品で溶かして処理する廃棄方法です。大量の書類を開封せずに復元不可能な形で廃棄できます。