総務 #契約書管理#情報セキュリティ#リスク管理#業務委託

秘密保持契約書(NDA)のチェックポイント|取引先から届いたときに総務が確認する条項と、営業秘密として守るための管理

秘密保持契約書(NDA)は、取引の検討や業務委託の前に結ぶことが多い契約です。一方的か双方向か、秘密情報の定義、目的外使用の禁止、開示できる範囲、有効期間と存続条項、返還・廃棄、損害賠償を中心に確認します。不正競争防止法の営業秘密の3要件と、契約後の情報管理まで整理します。

対象読者
取引先から秘密保持契約書(NDA)が届き、法務担当がいないまま内容の確認と締結を任されている、従業員30〜300名の企業の総務担当者
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • まず「どちらが開示するか(片務か双務か)」と「秘密情報の定義(表示したものだけか、口頭も含むか)」を確認する。自社が受け取る側なら、定義が広すぎないか、例外(公知・既知・独自開発)があるかを見る
  • 目的外使用の禁止、開示できる範囲(役員・従業員・委託先・専門家)、有効期間と終了後の存続期間、返還・廃棄、損害賠償と差止め、管轄は必ず確認する
  • 不正競争防止法の営業秘密として保護されるには、秘密管理性・有用性・非公知性の3要件が必要。NDAを結ぶだけでなく、受け取った情報と渡した情報の管理台帳とアクセス制限で「秘密として管理」している状態をつくる

「来週の打合せまでにNDAを締結してほしい」。取引先からひな形が届き、総務が確認を任されることは珍しくありません。秘密保持契約は定型的に見えますが、自社が情報を渡す側か受け取る側かで、気をつける条項が変わります。

この記事では、不正競争防止法・民法・個人情報保護法の条文をもとに、NDAで確認する条項と、締結後の情報管理を整理します。契約書全般の管理は契約書管理の基本、業務委託契約は業務委託契約書を総務がチェックするポイントを参照してください。

最初に確認する2点

片務か双務か

型 内容 向いている場面
片務契約 一方だけが秘密保持義務を負う 自社が一方的に情報を受け取る(または渡す)とき
双務契約 双方が義務を負う 共同開発や業務提携の検討など、互いに情報を出すとき

相手が開示側の片務契約を出してきた場合でも、自社からも見積の内訳や顧客情報を出すなら、双務に直してもらいます。

秘密情報の定義

定義の仕方 受け取る側からみた注意点
「秘密」と表示した書面・データに限る 範囲が明確。口頭で伝えた情報は、後日書面で特定する条項があるかを確認
開示された一切の情報 範囲が広すぎて管理できない。例外規定が特に重要

例外規定として、次の情報を秘密情報から除く条項があるかを確認します。

  • 開示を受けた時点で公知だった情報、受領後に自社の責任によらず公知になった情報
  • 開示を受ける前から自社が保有していた情報
  • 正当な権限を持つ第三者から秘密保持義務を負わずに取得した情報
  • 開示された情報によらず独自に開発した情報

必ず確認する条項

条項 確認すること
目的 「本件取引の検討のため」など、使用目的が特定されているか。目的外使用の禁止
開示できる範囲 役員・従業員のうち知る必要がある者、弁護士・税理士などの専門家、委託先へ開示できるか。その場合に同等の義務を課す定め
法令による開示 裁判所・官公庁の命令などで開示が必要な場合の例外と、相手への通知
管理方法 「善良な管理者の注意」など、自社で実行できる水準か。複製の制限
有効期間 契約期間と、終了後も秘密保持義務が続く期間(例:終了後3年)。「無期限」は受け取る側の負担が大きい
返還・廃棄 契約終了時や相手の請求時に返還・廃棄する定め。廃棄証明書の要否
損害賠償・差止め 賠償の範囲、違約金(賠償額の予定)の有無と金額
個人情報 個人データを受け渡す場合の取扱い。第三者提供か委託かの整理
準拠法・管轄 紛争時の裁判所。相手の本店所在地の地方裁判所になっていないか

損害賠償と違約金

債務不履行による損害賠償は、民法第415条が基本です。契約で賠償額を予定しておくこともできます(民法第420条)。違約金の条項があると、実際の損害の立証がなくても請求される可能性があるため、金額が過大でないかを確認します。

個人情報が含まれる場合

NDAの対象に顧客名簿や従業員情報などの個人データが含まれる場合、それを相手に渡すことが第三者提供(本人の同意が原則必要=個人情報保護法第27条)なのか、委託(委託先の監督が必要=同第25条)なのかを整理します。委託であれば、NDAとは別に、委託先の安全管理措置を確認する条項や契約が必要です(個人データの取扱いを委託するときの委託先の監督)。

営業秘密として守るには

不正競争防止法第2条第6項は、営業秘密を「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定めています。

要件 内容 会社がやること
秘密管理性 秘密として管理されている 「秘」表示、アクセスできる人の限定、NDA・誓約書
有用性 事業活動に有用 技術情報・顧客情報・価格情報など
非公知性 公然と知られていない 公開資料に載せない

営業秘密に当たれば、不正な取得・使用・開示に対して差止め(第3条)や損害賠償(第4条)を請求できます。逆に、社内で誰でも見られる共有フォルダに置いていた情報は、秘密管理性が否定されるおそれがあります。社員との関係では、入社・退職時の誓約書で手当てします(退職者の競業避止義務と秘密保持)。

社内の流れ

  1. 相手からひな形を受け取ったら、目的・開示する情報・受け取る情報を担当部署に確認する
  2. 上の条項表で確認し、修正したい点をコメントで返す
  3. 決裁権限規程に沿って承認を得る(決裁権限規程)
  4. 締結後、契約書管理台帳に有効期間と存続期間を登録する(契約書管理台帳)
  5. 受け取った秘密情報の保管場所と閲覧者を決め、終了時に返還・廃棄する

印紙税

秘密保持だけを定める契約書は、国税庁の印紙税額一覧表に掲げる課税文書に当たらないのが一般的です。ただし、業務委託の内容(請負の金額や継続的取引の条件)を同じ契約書に盛り込むと、課税文書になることがあります。判断は契約書と印紙税の基本と国税庁の一覧表で確認してください。

よくある質問

相手のひな形をそのまま使ってよいか

相手のひな形は、相手に有利な内容になっていることがあります。特に、秘密情報の定義が広く例外規定がない、有効期間が無期限、違約金が高額、管轄が相手の所在地のみ、といった点は修正を依頼する余地があります。修正の依頼は、どの条項をどう直したいかを具体的に示して返すと、やり取りが早く進みます。

電子契約で締結してよいか

秘密保持契約も、ほかの契約と同じく当事者の合意で成立するため、電子契約サービスで締結できます。締結後のデータは、ほかの契約書と同じ台帳で管理します。サービスの選び方は電子契約サービスの選び方を参照してください。

締結前に情報を渡してしまったら

契約の締結前に渡した情報を対象に含めるかどうかは、契約の定め方によります。「本契約締結前に開示された情報を含む」という条項を入れるかを相手と確認します。今後は、資料を渡す前に締結を済ませる社内ルールにしておきます。

まとめ

  • 最初に片務か双務か、秘密情報の定義と例外規定を確認する
  • 目的外使用の禁止、開示できる範囲、有効期間と存続期間、返還・廃棄、損害賠償・違約金、個人情報の扱い、管轄を確認する
  • 営業秘密として保護されるには秘密管理性・有用性・非公知性が必要。NDAに加えて、管理台帳とアクセス制限で秘密として管理する
  • 締結後は台帳に存続期間まで登録し、終了時の返還・廃棄まで管理する

この記事で使えるテンプレート

CSV 総務 契約書管理台帳 取引先との契約書を一覧で管理する台帳です。契約期間・自動更新の有無・解約予告期限・保管場所(紙/電子)・印紙の有無・担当部署を記録し、更新や解約の判断漏れを防ぎます。 DOCX 総務 決裁権限規程(決裁権限表つき) 決裁の定義、起案・合議・決裁の流れ、代決と後閲、緊急時の扱い、決裁記録の保存を条文にし、人事・経理・契約・購買・総務などの区分ごとに金額基準と承認者(取締役会・社長・担当役員・部長・課長)を一覧にした決裁権限表を付けた決裁権限規程のひな形です。

この記事に出てくる用語

安全管理措置
個人データの漏えい・滅失・毀損を防ぐために会社が講じる措置です。基本方針の策定、規律の整備、組織的・人的・物理的・技術的な措置などがあり、規模にかかわらずすべての会社に義務づけられています。
委託先の監督
給与計算や名刺管理、書類の廃棄などで個人データの取扱いを外部に委託するとき、委託元の会社が委託先の安全管理を確認・監督する義務です。
印紙税
契約書や領収書など、印紙税法で定められた文書(課税文書)を作成したときにかかる国税です。通常は収入印紙を貼って消印することで納めます。
課税文書
印紙税法の課税物件表に掲げられた20種類の文書のうち、非課税文書にあたらないもので、印紙税がかかる文書です。請負契約書、継続的取引の基本契約書、領収書などが代表例です。
決裁権限規程
社内の決裁事項ごとに、金額の基準と、起案・審査・承認を誰が行うかを一覧にした社内規程です。職務権限表とも呼ばれ、稟議やワークフローの承認経路のもとになります。
個人情報保護法
個人情報を扱う事業者が守るべきルール(利用目的の特定、安全管理措置、第三者提供の制限、漏えい時の報告など)を定めた法律です。従業員数にかかわらず、個人情報を事業に使うすべての会社が対象です。
個人データ
検索できるように体系的に整理された個人情報の集まり(個人情報データベース等)を構成する個人情報のことです。社員名簿や顧客台帳、名刺管理ソフトの中の情報などが該当します。
第三者提供
会社が持つ個人データを、本人と自社以外の者に渡すことです。原則として本人の同意が必要で、提供したときや受け取ったときは記録を作成します。
電子契約
紙の契約書に署名・押印する代わりに、PDFなどの電子データに電子署名などを付けて契約を結ぶ方法です。印紙税がかからず、締結までの時間と郵送コストを減らせます。
秘密保持契約
取引の検討や業務委託の際に開示する情報を、目的外に使ったり第三者に漏らしたりしないことを約束する契約です。英語の略称からNDAとも呼ばれます。

用語集の一覧を見る →

出典・参考資料

無料メルマガ

法改正アラート:改正の1ヶ月前に「やることリスト」が届く

月1回の定期号と、施行直前号でお届けします。今月やること・新着テンプレートもまとめて確認できます。