契約書と印紙税の基本:課税文書の見分け方・税額・消印と過怠税、電子契約が不課税になる理由
印紙税は、法律で定められた「課税文書」を紙で作成したときにかかる税金です。総務がよく扱う請負契約書・継続的取引の基本契約書・領収書の税額、写しや副本の扱い、消印の方法、貼り忘れたときの過怠税、電子契約が不課税になる理由を国税庁の情報で整理します。
- 対象読者
- 契約書の製本・押印・郵送を担当する総務担当者、印紙の貼り忘れや金額に不安がある管理部門
- 難易度
- 実務
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この記事のポイント
- 印紙税は、印紙税法の課税物件表に掲げられた文書(課税文書)を作成したときにかかる。契約書の名称ではなく内容で判断し、作成した人(共同作成なら連帯して)が納める
- 総務がよく扱うのは、請負に関する契約書(第2号)、継続的取引の基本となる契約書(第7号・4千円)、売上代金の受取書(第17号・5万円未満は非課税)
- 貼り忘れは原則として本来の税額の3倍、自主的に申し出れば1.1倍の過怠税。電子契約は「文書」の作成にあたらないため印紙税はかからない
契約書の製本や押印を担当していると、「この契約書に印紙は必要か」「金額はいくらか」と迷う場面がよくあります。印紙税は、貼り忘れると本来の税額より重い過怠税がかかる一方、不要な文書に貼っても自動的には戻ってきません。
この記事では、総務がよく扱う契約書と領収書を中心に、印紙税の基本を国税庁の情報で確認しながら整理します。契約書の保管や更新管理は契約書管理の基本を参照してください。
印紙税の基本
印紙税は、印紙税法の「課税物件表」に掲げられた20種類の文書(課税文書)を作成したときにかかる税金です。押さえておきたいポイントは次のとおりです。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 判断の基準 | 文書の名称(契約書・覚書・注文請書など)ではなく、記載された内容で判断する |
| 納める人 | 課税文書の作成者(印紙税法第3条第1項)。2社で共同して作成した契約書は、両社が連帯して納める義務を負う(同条第2項) |
| 納め方 | 収入印紙を貼り、印章または署名で消印する |
| 部数 | 契約当事者がそれぞれ保管する正本は、1通ずつ課税される |
「覚書」「念書」「注文請書」といった名称でも、契約の成立や変更を証明する内容であれば課税文書になります。逆に、課税物件表に掲げられていない文書(たとえば雇用契約書や労働条件通知書)は、一般に印紙税はかかりません。
総務がよく扱う課税文書と税額
第2号文書:請負に関する契約書
工事請負契約書、工事注文請書のほか、仕事の完成に対して報酬を払う契約(システム開発、内装工事、広告物の制作など)が該当します。
| 契約金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 400円 |
| 200万円を超え300万円以下 | 1千円 |
| 300万円を超え500万円以下 | 2千円 |
| 500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
| 1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 |
5千万円を超える金額の税額は、国税庁の一覧表で確認してください。建設工事の請負に関する契約書と、不動産の譲渡に関する契約書(第1号文書)は、2014年4月1日から2027年3月31日までに作成されたもので一定額を超えるものについて、税率の軽減措置があります。オフィス移転で内装工事を発注するときなどは、軽減後の税額を確認しましょう。
第7号文書:継続的取引の基本となる契約書
取引先と継続して売買・請負などを行うための基本契約書(取引基本契約書など)は、1通4千円です。契約期間が3か月以内で、更新の定めのないものは除かれます。
清掃や設備保守などの業務委託基本契約は、内容によって第2号(請負)や第7号に当たることがあります。判断に迷う場合は、国税庁の質疑応答事例を探すか、所轄の税務署に確認します。
第17号文書:売上代金の受取書(領収書)
商品代金やサービスの対価を受け取ったときに出す領収書は、第17号文書です。
| 受取金額(売上代金) | 印紙税額 |
|---|---|
| 5万円未満 | 非課税 |
| 5万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 400円 |
| 200万円を超え300万円以下 | 600円 |
| 300万円を超え500万円以下 | 1千円 |
| 500万円を超え1千万円以下 | 2千円 |
| 受取金額の記載のないもの | 200円 |
貸付金の返済や保証金など売上代金以外の受取書は、5万円以上で一律200円です。また、営業に関しない受取書は非課税です。1千万円を超える金額の税額は国税庁の一覧表で確認してください。
領収書を電子メールやPDFで発行した場合は、紙の文書を作成していないため印紙税はかかりません。領収書の発行件数が多い会社は、電子発行への切り替えも検討しましょう。
写し・副本・コピーの扱い
契約書を2通作らず、1通の原本とコピーで済ませる会社もあります。国税庁は、「写し」「副本」と書かれた文書でも、契約の成立を証明する目的で作られたものは課税文書になるとしています。
| 文書の状態 | 印紙税 |
|---|---|
| 原本をコピー機で複写しただけのもの(署名押印なし) | 課税されない |
| コピーに相手方の署名や押印があるもの | 課税される |
| 「原本と相違ない」などの証明があるもの | 課税される |
| 所持する人だけが押印したもの | 課税されない |
| FAXや電子メールで送られ、受信側で印刷したもの | 課税されない(写しと同様に扱う) |
印紙の消印と過怠税
消印の方法
収入印紙は、貼るだけでは納付したことになりません。文書と印紙の彩紋にかけて、判明に印紙を消す必要があります。消印は、作成者や代理人、使用人などの印章または署名で行います。日付印や社名・役職名入りのゴム印でもかまいませんが、「印」と書いたり斜線を引いたりしただけでは消印になりません。鉛筆での署名のように簡単に消せるものも認められません。2社が共同して作成した契約書は、どちらか1社が消印すれば足ります。
貼り忘れたときの過怠税
| 状態 | 過怠税 |
|---|---|
| 印紙を貼らなかった(税務調査で判明) | 本来納めるべき印紙税額の3倍 |
| 自主的に税務署へ申し出た(調査を予知したものでない) | 本来納めるべき印紙税額の1.1倍 |
| 印紙は貼ったが消印していない | 消印していない印紙の額面と同額 |
過怠税は、法人税の計算上、損金に算入できません。貼り忘れに気づいたら、所轄の税務署に「印紙税不納付事実申出書」を提出します。
間違えて貼ったとき
課税文書でない文書に印紙を貼った場合や、税額を超える印紙を貼った場合は、税務署に申請して還付を受けられます。還付を請求できる日から5年で時効になります。
電子契約は印紙税がかからない
国税庁の質疑応答事例では、印紙税の課税対象は課税物件表に掲げる「文書」に限られ、電子署名を付して電子メールで送信した電磁的記録はこれに含まれないため、印紙税はかからないとされています。
| 契約の方法 | 印紙税 |
|---|---|
| 紙の契約書に署名押印して交付 | 課税文書なら課税 |
| 電子契約サービスで締結(PDFに電子署名) | 課税されない |
| PDFをメールで送り、相手が印刷して保管 | 課税されない |
| メールで送った後、紙の原本も別に交付した | 紙の原本が課税される |
電子契約に切り替えると、印紙代だけでなく製本・郵送の手間も減ります。導入の検討には電子契約サービスの選び方を、押印の要否の考え方は印章管理と押印規程のつくり方を参考にしてください。電子契約で締結した契約書は、電子帳簿保存法の電子取引データとして保存要件を満たして保存します。
総務の実務チェックリスト
- 契約書管理台帳に「印紙税額」「貼付の有無」の欄を設ける
- 自社でよく使う契約書のひな形ごとに、該当する号と税額を一覧にしておく
- 収入印紙の在庫を管理し、使用した印紙を記録する
- 2通作成する契約書は、両方の正本に印紙が貼られているか確認する
- 新しい取引先との基本契約は電子契約を優先して提案する
まとめ
- 印紙税は課税物件表の文書を紙で作成したときにかかる。名称ではなく内容で判断する
- 請負契約書(第2号)は金額で税額が決まり、継続的取引の基本契約書(第7号)は4千円、売上代金の領収書(第17号)は5万円未満が非課税
- 契約の成立を証明する目的の写し・副本は課税される。単なるコピーは課税されない
- 消印を忘れずに。貼り忘れは3倍(自主申出なら1.1倍)の過怠税で、損金にならない
- 電子契約や電子発行の領収書は印紙税がかからない