歩合給の残業代の計算方法|割増は0.25倍だけ?固定給との併用・保障給・最低賃金の確認
歩合給(出来高払制)にも残業代は必要です。単価は「歩合給の総額÷総労働時間」で出し、時間外労働には通常0.25倍の割増部分だけを支払います。固定給と併用する場合の分け方、計算例、労働基準法27条の保障給、最低賃金の確認方法を整理します。
- 対象読者
- 営業職・ドライバーなどに歩合給を支払っている会社の給与計算担当者
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この記事のポイント
- 歩合給の割増単価は「その賃金計算期間の歩合給の総額÷その期間の総労働時間(残業時間を含む)」。所定労働時間で割る固定給とは計算が違う
- 歩合給は働いた時間全体の成果として支払われるため、時間外労働の「1.0」部分は支払済みとされ、割増部分(0.25、月60時間超は0.5など)を支払う
- 出来高払制では、労働時間に応じた一定額の保障給が必要(労基法27条)。最低賃金も歩合給部分を総労働時間で割って確認する
「歩合給の人には残業代はいらない」「歩合に残業代が含まれている」と考えている会社は少なくありません。しかし、歩合給(出来高払制)であっても、法定労働時間を超えて働けば割増賃金が必要です。
一方で、歩合給の残業代は月給制と計算の仕方が違い、多くの場合は月給制より少ない額になります。この記事では、労働基準法施行規則と厚生労働省の解説に沿って、計算方法と制度設計の注意点を整理します。
歩合給にも残業代が必要な理由
労働基準法第37条は、時間外・休日・深夜労働に割増賃金の支払いを義務づけています。賃金の形態による例外はありません。歩合給制の従業員に対しても、時間外労働をさせるには36協定が必要で、割増賃金も支払います。
例外は、管理監督者など労働時間の規定が適用されない人(労基法第41条)だけです。それでも深夜割増は必要です。「歩合給だから」という理由だけで残業代を払わない運用は、未払いになります。
割増単価の出し方:総労働時間で割る
歩合給の1時間あたりの単価は、労働基準法施行規則第19条第1項第6号で次のように決まっています。
歩合給の単価 = その賃金計算期間の歩合給の総額 ÷ その期間の総労働時間数
固定給(月給)との違いを表にまとめます。
| 項目 | 固定給(月給) | 歩合給(出来高払) |
|---|---|---|
| 割る時間 | 1か月平均所定労働時間 | その月の総労働時間(残業時間を含む) |
| 時間外労働で支払う率 | 1.25(1.0+0.25) | 0.25(割増部分のみ) |
| 単価の変動 | 毎月ほぼ同じ | 歩合給の額と労働時間で毎月変わる |
なぜ0.25倍だけでよいのか
歩合給は、残業時間を含めて働いた時間全体の成果に対して支払われます。そのため、時間外労働に対する「通常の賃金(1.0)」の部分は歩合給の中ですでに支払われていると考え、割増部分だけを支払います。厚生労働省の解説も同じ考え方です。
割増率は通常の割増率から1.0を除いた部分を使います。
| 区分 | 歩合給部分に掛ける率 |
|---|---|
| 時間外労働(月60時間まで) | 0.25 |
| 時間外労働(月60時間超の部分) | 0.5 |
| 法定休日労働 | 0.35 |
| 深夜労働(22時〜5時) | 0.25 |
| 時間外労働かつ深夜 | 0.5 |
割増率の基本は残業代(割増賃金)の正しい計算方法、休日・深夜の考え方は休日労働・深夜労働の割増賃金を参照してください。
計算例
歩合給だけの場合
前提:その月の歩合給40万円、総労働時間200時間(うち時間外労働20時間)。
- 単価:400,000円 ÷ 200時間 = 2,000円
- 時間外の割増賃金:2,000円 × 0.25 × 20時間 = 10,000円
同じ月に法定休日に8時間働いていれば、2,000円 × 0.35 × 8時間 = 5,600円を加えます。
固定給と歩合給を併用する場合
固定給と歩合給がある場合は、それぞれ別に計算して合計します(労基則第19条第1項第7号)。
前提:基本給22万円(1か月平均所定労働時間160時間)、歩合給10万円、総労働時間180時間(時間外労働20時間)。
| 部分 | 単価 | 割増賃金 |
|---|---|---|
| 固定給 | 220,000 ÷ 160 = 1,375円 | 1,375 × 1.25 × 20 = 34,375円 |
| 歩合給 | 100,000 ÷ 180 ≒ 555.56円 | 555.56 × 0.25 × 20 ≒ 2,778円 |
| 合計 | — | 約37,153円 |
端数処理は、就業規則や賃金規程の定めに従います。1時間あたりの単価や1か月の合計額の端数処理で認められる方法は、残業代の計算方法で確認できます。
歩合給の計算期間(売上の締め日)と給与の締め日がずれている会社では、「どの期間の歩合給を、どの期間の総労働時間で割るか」を規程で決めておきます。歩合が確定するのが翌月以降になる場合は、確定した月に割増分を精算する方法を明確にしておきましょう。
「残業代込みの歩合給」は認められるか
「歩合給には残業代が含まれている」という説明だけでは、残業代を支払ったことにはなりません。固定残業代と同じく、通常の賃金部分と割増賃金部分が明確に区別でき、法定の計算額以上が支払われている必要があります。
売上から一定の計算で残業代相当額を差し引く仕組みなど、実質的に残業しても賃金総額が変わらない設計は、割増賃金を支払ったと評価されないおそれがあります。設計を変えるときは、固定残業代(みなし残業)を正しく運用する条件の考え方も参考にし、労働基準監督署や専門家に確認してから導入してください。
保障給:出来高が少ない月の最低ライン
労働基準法第27条は、出来高払制その他の請負制で使用する労働者について、労働時間に応じた一定額の賃金の保障を義務づけています。売上がゼロの月に賃金もゼロ、という設計はできません。
保障給の額は法律で決まっていませんが、厚生労働省の解説では、通常の実収賃金とあまり離れない程度とし、少なくとも平均賃金の6割程度を保障することが妥当とされています。就業規則や賃金規程に、保障給の額や計算方法を書いておきます。
| 規程に書くこと | 例 |
|---|---|
| 歩合給の計算方法 | 対象となる売上・件数、歩合率、計算期間 |
| 保障給 | 1時間あたりの保障額、または平均賃金に対する割合 |
| 割増賃金の計算 | 歩合給部分は総労働時間で割り、割増率のみを支払う |
| 支払時期 | 歩合の確定時期と給与支払日の関係 |
賃金規程の書き方は賃金規程のひな形を参考にしてください。
最低賃金の確認
歩合給部分の時間額は、最低賃金の確認でも「歩合給の総額÷総労働時間」で出します。固定給がある場合は、固定給を所定労働時間で割った時間額と合計して比べます。
歩合給の割合が大きい人は、残業が多い月ほど時間額が下がります。売上が落ちた月や繁忙月は、給与計算のたびに確認しましょう。換算方法の詳細は最低賃金の計算方法にまとめています。
よくある質問
歩合給の人の労働時間も管理する必要がありますか
必要です。歩合給の割増単価は総労働時間で割って出すため、労働時間が分からないと計算できません。外回りの営業職でも、勤怠システムや日報で始業・終業の時刻を記録します(労働時間の適正な把握義務)。事業場外みなし労働時間制を使う場合は、事業場外みなし労働時間制の要件を満たしているか確認してください。
歩合給は平均賃金の計算でも特別な扱いがありますか
あります。出来高払制の賃金は、平均賃金の最低保障(賃金総額÷労働日数×60%)の対象です(労基法第12条第1項第1号)。休業手当や解雇予告手当を計算するときは、平均賃金の計算方法で確認してください。
まとめ
- 歩合給にも残業代は必要。単価は「歩合給の総額÷総労働時間」で出す
- 歩合給部分は時間外労働で0.25(月60時間超は0.5)、休日0.35など、割増部分だけを支払う
- 固定給と併用する場合は、固定給部分と歩合給部分を別々に計算して合計する
- 出来高払制では保障給を規程に定める。最低賃金も歩合給部分を総労働時間で割って毎月確認する
この記事で使えるテンプレート
労務 賃金規程(ひな形・基本構成) 賃金の構成、基本給と諸手当、締切日・支払日、支払方法と控除、割増賃金の計算方法と割増率、欠勤・遅刻早退の控除、中途入退社の日割り、休業手当、非常時払い、昇給・賞与までを条文にした賃金規程のひな形です。金額や日付は空欄にしています。この記事に出てくる用語
- 解雇予告手当
- 30日前の解雇予告をしないで解雇するときに、会社が支払う平均賃金30日分以上のお金です。予告日数が30日に足りない場合は、足りない日数分を支払います。
- 管理監督者
- 労働基準法の労働時間・休憩・休日の規定が適用されない「監督若しくは管理の地位にある者」です。役職名ではなく、職務内容・権限・待遇の実態で判断されます。
- 休業手当
- 会社の都合(使用者の責に帰すべき事由)で労働者を休ませたときに支払う手当で、平均賃金の60%以上が必要です。
- 固定残業代
- 一定時間分の時間外労働などの割増賃金を、実際の残業の有無にかかわらず定額で支払う仕組みです。実際の残業代が定額を超えたら差額を支払う必要があります。
- 最低賃金
- 最低賃金法にもとづき国が定める賃金の最低額で、会社はこれ以上の賃金を支払う必要があります。都道府県ごとの地域別最低賃金と、特定の産業の特定最低賃金があります。
- 36協定
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて残業させたり、法定休日に働かせたりするために、会社と労働者の過半数代表が結び、労働基準監督署に届け出る労使協定です。
- 就業規則
- 労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
- 所定労働時間
- 就業規則や労働契約で会社が決めた、始業から終業までの時間から休憩時間を除いた労働時間です。法定労働時間の範囲内で定めます。
- 深夜業
- 午後10時から午前5時までの間の労働です。25%以上の割増賃金が必要で、深夜業に常時従事する人には6か月ごとの健康診断が義務づけられています。
- 時間外労働
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働のことです。36協定の締結・届出と、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。
- 事業場外みなし労働時間制
- 外回りの営業など、会社の外で働き労働時間を算定しにくい場合に、所定労働時間などを働いたものとみなす制度です。
- 平均賃金
- 解雇予告手当や休業手当などを計算するときの基準になる1日あたりの賃金です。原則として直前3か月の賃金総額をその期間の総日数で割って求めます。
- 法定休日
- 労働基準法で与えることが義務づけられた休日で、毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上です。この日に働かせると35%以上の割増賃金が必要です。
- 法定労働時間
- 労働基準法で定められた労働時間の上限で、原則として休憩時間を除き1日8時間・1週40時間です。これを超えて働かせるには36協定の締結・届出が必要です。
- 労働基準監督署
- 労働基準法・労働安全衛生法などが守られているかを監督する厚生労働省の機関です。36協定や就業規則の届出先で、労災保険の給付の窓口でもあります。
- 割増賃金
- 時間外労働・休日労働・深夜労働をさせたときに、通常の賃金に上乗せして支払う賃金です。率は労働基準法と政令で定められています。