平均賃金の計算方法|3か月の賃金総額÷暦日数・最低保障額・除外する期間と賃金
平均賃金は、解雇予告手当・休業手当・年次有給休暇の賃金・減給の制裁の上限などを計算する基準です。原則の計算式、時給・日給の人の最低保障額、算定期間から除く期間と賃金、端数処理、入社3か月未満の場合までを労働局の資料をもとに計算例つきで整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で、給与計算や解雇・休業・懲戒の実務を担当する労務担当者
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- 実務
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この記事のポイント
- 平均賃金は「事由発生日以前3か月間の賃金総額÷その期間の暦日数」。賃金締切日があるときは直前の締切日から遡る
- 時給・日給・出来高給の人は「賃金総額÷労働日数×60%」の最低保障額と比べ、高い方を使う
- 賞与など3か月を超える期間ごとの賃金や臨時の賃金は総額から除く。業務上の傷病休業や育児休業などの期間は日数・賃金とも除く
解雇予告手当や休業手当を計算しようとすると、必ず出てくるのが平均賃金です。「月給の30分の1」と考えがちですが、計算方法は労働基準法12条で細かく決まっています。
この記事では、平均賃金を使う場面と計算方法を、計算例とともに整理します。
平均賃金を使う場面
平均賃金は、従業員の生活を保障するための手当や補償を計算する基準です。
| 場面 | 平均賃金の使い方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 解雇予告手当 | 30日分以上 | 労基法20条 |
| 休業手当 | 休業1日につき60%以上 | 労基法26条 |
| 年次有給休暇の賃金 | 平均賃金で支払うと定めた場合 | 労基法39条 |
| 災害補償 | 休業補償などの計算基準 | 労基法76条〜 |
| 減給の制裁 | 1回の額は平均賃金1日分の半額まで、総額は1賃金支払期の賃金総額の10分の1まで | 労基法91条 |
それぞれの実務は、解雇予告と解雇予告手当、休業手当の計算、懲戒処分の進め方で解説しています。
原則の計算方法
平均賃金=算定事由発生日以前3か月間の賃金総額÷その3か月間の総日数(暦日数)
算定期間の決め方
- 「以前3か月間」は、算定事由が発生した日の前日から遡ります
- 賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から遡って3か月です
- 総日数は労働日数ではなく暦日数です
算定事由の発生日は、場面ごとに決まっています。
| 場面 | 算定事由発生日 |
|---|---|
| 解雇予告手当 | 解雇を通告した日 |
| 休業手当・年休の賃金 | 休業日・年休日(2日以上にわたるときは最初の日) |
| 災害補償 | 事故が発生した日、または診断で疾病が確定した日 |
| 減給の制裁 | 制裁の意思表示が相手に到達した日 |
計算例(月給制)
賃金締切日が毎月末日の会社で、10月15日に解雇を通告した場合です。直前の締切日は9月30日なので、算定期間は7月1日〜9月30日(92日)です。
| 月 | 暦日数 | 賃金(通勤手当・残業代を含む総支給額) |
|---|---|---|
| 7月 | 31日 | 300,000円 |
| 8月 | 31日 | 300,000円 |
| 9月 | 30日 | 320,000円 |
| 合計 | 92日 | 920,000円 |
平均賃金=920,000円÷92日=10,000円
賃金総額は、税金や社会保険料を控除する前の額です。通勤手当、皆勤手当、時間外手当、年休の賃金も含めます。
時給・日給の人の最低保障額
時給制・日給制・出来高払制の人は、欠勤や労働日数の少なさで平均賃金が極端に低くなることがあります。そのため最低保障額が定められています。
最低保障額=賃金総額÷その期間の労働日数×60%
原則の計算と最低保障額を比べ、高い方が平均賃金です。
計算例(時給制)
算定期間92日のうち実際に働いた日が40日、賃金総額が288,000円の場合です。
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 原則:288,000円÷92日 | 3,130円43銭 |
| 最低保障:288,000円÷40日×60% | 4,320円 |
高い方の4,320円が平均賃金になります。
月給と時給の手当が混在する場合は、月決めの部分は暦日数で割り、日・時間で決まる部分は最低保障の計算をして、両者を合算した額と比べます。
算定から除くもの
除く期間(日数・賃金とも控除)
次の期間がある場合は、その日数と、その期間中の賃金を両方とも除いて計算します。
- 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
- 産前産後休業の期間
- 会社の責任による休業の期間
- 育児休業・介護休業の期間
- 試みの使用期間(試用期間)
年次有給休暇を取った日は除きません。日数も賃金もそのまま含めます。
除く賃金(総額から控除)
| 除く賃金 | 例 |
|---|---|
| 臨時に支払われた賃金 | 結婚手当、私傷病手当、見舞金、退職金 |
| 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金 | 年2回の賞与など(3か月ごとに支払う賞与は算入) |
| 法令・労働協約の定めによらない現物給与 | — |
6か月分の通勤定期券代は、各月に支払われたものとみなして算入します。
端数処理と特殊なケース
端数処理
- 平均賃金は銭未満を切り捨てます(例:3,130円43銭)
- 平均賃金をもとに計算した支払額(休業手当など)は、円未満を四捨五入するのが一般的です
入社3か月未満の場合
雇入れ後3か月に満たない場合は、入社日以降の期間と賃金で計算します。この場合も、賃金締切日があれば直前の締切日から遡ります。
日々雇い入れられる人
日雇いの人は別の計算方法があり、原則として「本人の1か月間の賃金総額÷その間の労働日数×73/100」で計算します。
計算の手順チェックリスト
- 算定事由発生日を確定する
- 直前の賃金締切日から3か月の算定期間を決める
- 除く期間(業務上傷病・産休・育休など)がないか確認する
- 賃金台帳から総支給額を集め、賞与・臨時の賃金を除く
- 暦日数で割り、銭未満を切り捨てる
- 時給・日給の人は最低保障額と比べる
賃金台帳の記載が正確であることが前提です。月次の給与計算の流れもあわせて確認しましょう。
よくある質問
解雇予告手当は具体的にいくらになる?
上の月給制の例(平均賃金10,000円)で、予告なしに即日解雇する場合は、10,000円×30日=300,000円以上です。10日前に予告した場合は、不足する20日分の200,000円以上になります。
試用期間中に算定事由が発生したら?
試用期間は原則として算定期間から除きますが、試用期間中に算定事由が発生した場合は、試用期間中の日数と賃金で平均賃金を計算します(労働基準法施行規則3条)。
労災保険の給付基礎日額とは違う?
労災保険の休業補償給付などで使う給付基礎日額は、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額です。労災が発生したときの手続きは労災が発生したときの対応を参照してください。
年休の賃金を平均賃金で払ってもよい?
年次有給休暇の賃金は、就業規則などで「平均賃金」「通常の賃金」「健康保険の標準報酬日額(労使協定が必要)」のいずれかに定めます。平均賃金は通常の賃金より低くなることが多いため、実務では通常の賃金とする会社が多く見られます。
まとめ
- 平均賃金は「直前の締切日から3か月の賃金総額÷暦日数」で計算する
- 時給・日給・出来高給の人は、労働日数で割った額の60%と比べ、高い方を使う
- 賞与・臨時の賃金は総額から除き、業務上傷病・産休・育休・試用期間などは日数と賃金を両方除く
- 銭未満は切り捨て。解雇予告手当・休業手当・減給の上限など、使う場面ごとに算定事由発生日が違う