特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)|60歳以上・障害者・母子家庭の母等を雇う会社の要件と支給額
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、60歳以上の人、障害者、母子家庭の母等をハローワーク等の紹介で継続雇用する会社に、中小企業なら最大60万〜240万円を半年ごとに支給します。対象者と2026年5月からの高年齢者の要件見直し、支給額表、6か月ごとの申請期限、受給できない主なケースを整理します。
- 対象読者
- 高年齢者・障害者・ひとり親などをハローワーク経由で採用しようとしている、従業員30〜300名の企業の人事担当者
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この記事のポイント
- ハローワークや職業紹介事業者の紹介で、就職困難者を雇用保険の一般被保険者等として、65歳以上まで・2年以上継続して雇うことが確実な場合に対象になる。直接応募や求人サイト経由は対象外
- 中小企業の支給額は、60歳以上・母子家庭の母等が60万円(1年)、重度以外の身体・知的障害者が120万円(2年)、重度障害者・精神障害者等が240万円(3年)。短時間労働者は額が下がる。2026年5月1日以降の紹介では、60歳以上の人は個別支援を受けていることも必要
- 支給申請は6か月ごとの支給対象期ごとに、末日の翌日から2か月以内。期間の途中で離職すると、その期は原則支給されない
経験豊富な60代、障害のある人、子育て中のひとり親。こうした人を採用するとき、国は「特定求職者雇用開発助成金」で会社を支援しています。なかでも特定就職困難者コース(通称「特開金」)は、中小企業が使いやすい代表的な雇入れ助成金です。
ただし、受給の可否は「誰の紹介で、どう雇ったか」でほぼ決まります。採用が決まってから助成金に気づいても間に合いません。この記事では、要件・支給額・申請の流れを、厚生労働省の案内に沿って整理します。助成金全般の探し方は中小企業の雇用関係助成金の探し方を参照してください。
対象になる労働者
ハローワーク、地方運輸局、特定地方公共団体、有料・無料職業紹介事業者などの紹介により雇い入れた、次の人が対象です。
| 区分 | 主な対象者 |
|---|---|
| ① | 60歳以上の人、母子家庭の母等、父子家庭の父、中国残留邦人等永住帰国者、ウクライナ避難民、補完的保護対象者など |
| ② | 身体障害者・知的障害者(③を除く) |
| ③ | 重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者 |
採用日時点で65歳未満であることが原則ですが、①の60歳以上の人は65歳以上でも対象になります。
2026年5月1日以降の紹介から、60歳以上の人の要件が変わりました(パンフレット)。 それまでは雇入れ時に60歳以上であれば対象でしたが、5月1日以降に紹介された人は、紹介日にハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていることも必要です。紹介時に、助成金の対象者であることが明示されているかを確認してください。
主な要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 紹介による雇入れ | 職業紹介より前に選考を始めた人は対象外。直接募集・求人サイト経由・ハローワークのオンライン自主応募も対象外 |
| 雇用形態 | 正規雇用、無期雇用、または対象者が望む限り更新できる有期雇用(自動更新)。勤務成績で更新を判断する有期契約は対象外 |
| 継続雇用の確実性 | 雇用保険の一般被保険者(または高年齢被保険者)として、65歳以上に達するまで、かつ2年以上継続して雇用することが確実と認められること |
| 対象者の認識 | 会社が、助成金の対象者として紹介を受け、そのことを承知して雇い入れていること(後から対象者と分かっても対象外) |
| 在職者でないこと | 紹介時点で在職している人は原則対象外(③を週30時間以上で雇う場合を除く) |
試用期間を設けること自体は差し支えありませんが、第1期の支給申請時にまだ試用期間中の場合や、試用期間と本採用で雇用契約が別になっている場合は対象外とされています(試用期間の運用)。
支給額
中小企業事業主の額です(かっこ内は中小企業以外)。
| 対象労働者 | 週30時間以上 | 短時間(週20時間以上30時間未満) | 助成対象期間(中小企業) |
|---|---|---|---|
| ① 60歳以上・母子家庭の母等 | 60万円(50万円)=30万円×2期 | 40万円(30万円)=20万円×2期 | 1年 |
| ② 身体・知的障害者 | 120万円(50万円)=30万円×4期 | 80万円(30万円)=20万円×4期 | 2年 |
| ③ 重度障害者・45歳以上の障害者・精神障害者 | 240万円(100万円)=40万円×6期 | 80万円(30万円)=20万円×4期 | 3年(短時間は2年) |
- 各期の支給額は、その期に支払った賃金の額が上限
- 所定労働時間より実労働時間が著しく短い場合や、週の賃金額が「最低賃金×30時間」を下回る場合は減額されることがある
- 中小企業の範囲は業種ごとに資本金・従業員数で決まる(雇用関係助成金に共通)
額や要件は年度ごとに見直されるため、申請前に厚生労働省のページと労働局の最新のパンフレットを確認してください。
申請の流れと期限
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 求人の提出 | ハローワーク等に求人を出す |
| 2. 紹介・雇入れ | 対象者として紹介を受け、雇い入れる。雇用保険の資格取得届を出す |
| 3. 支給申請(第1期) | 支給対象期(6か月)の末日の翌日から2か月以内(支給要領)に、事業所を管轄する労働局またはハローワークへ |
| 4. 第2期以降 | 同じ手続きを支給対象期ごとに繰り返す(2〜6回) |
支給対象期は、賃金締切日がある場合は「雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日」から6か月ごとに区切ります。たとえば月末締めの会社が4月1日に雇い入れた場合、締切日の翌日に雇い入れたことになるため、起算日は4月1日です。15日締めの会社が4月1日に雇い入れた場合は、4月16日が起算日になり、第1期は10月15日まで、申請期間は10月16日〜12月15日です。
主な提出書類は、支給申請書、賃金台帳、出勤簿、対象者であることの証明書類、雇用契約書(雇入れ通知書)、対象労働者雇用状況等申立書、支給要件確認申立書です。2026年4月1日以降の申請では、賃金台帳の提出が確認できないと不支給になります。法定三帳簿を整えておきましょう。
受給できない主なケース
- 雇入れ日の前後6か月間に、事業主都合の解雇(退職勧奨を含む)をしている
- 雇入れ日の前後6か月間に、倒産・解雇などで特定受給資格者となった離職者が、雇入れ日の被保険者数の6%を超えている(3人以下の場合を除く)
- 過去3年間に、本コースの支給決定を受けた人を、助成対象期間中に事業主都合で解雇・雇止めしている
- 対象者が、事業主の3親等以内の親族や、過去3年間にその事業所で働いたことがある人
- 労働保険料を滞納している、対象者に賃金を支払っていない
- 支給対象期の途中で対象者が離職した(その期は原則支給されない。本人の責めによる解雇などを除く)
不正受給をすると、全額返還のうえ5年間はほかの助成金も受けられなくなります。関係書類は支給決定から5年間保存します。
採用前に確認するチェックリスト
助成金は採用の判断材料の一つにすぎませんが、要件は採用前にしか整えられません。次の項目を、求人を出す段階で確認しておきます。
- □ ハローワーク等に求人を出しており、応募は紹介経由に限っているか
- □ 紹介状に、本助成金の対象者であることが示されているか(60歳以上の人は個別支援の有無も)
- □ 雇用契約は正規・無期、または本人が望む限り更新する有期契約か
- □ 雇入れ日の前後6か月に、会社都合の解雇や退職勧奨の予定がないか
- □ 支給対象期の区切りと申請期間を、賃金締切日から計算してカレンダーに入れたか
- □ 賃金台帳・出勤簿・雇用契約書を、支給決定から5年間保存できる形で管理しているか
ほかの制度との組み合わせ
- トライアル雇用から移行する場合:母子家庭の母等、父子家庭の父、中国残留邦人等永住帰国者、障害者をトライアル雇用で雇い、終了後も継続して雇う場合は、本助成金の一部を受給できる場合がある
- 障害者雇用:法定雇用率の計算や納付金・調整金は障害者雇用の始め方で解説している
- シニア採用:60歳以上の人の配置や賃金設計はシニア人材の活躍、高年齢雇用継続給付との関係は定年と継続雇用を参照
まとめ
- 特定就職困難者コースは、60歳以上・障害者・母子家庭の母等をハローワーク等の紹介で継続雇用する会社への助成金
- 採用前に求人を出し、対象者として紹介を受けることが前提。直接応募や後から気づいたケースは対象外
- 中小企業は60万〜240万円を6か月ごとに分けて支給。2026年5月1日以降の紹介では、60歳以上の人は個別支援を受けていることも必要
- 申請は支給対象期ごとに末日の翌日から2か月以内。賃金台帳・出勤簿を整え、期限をカレンダーで管理する
この記事で使えるテンプレート
人事 雇用契約書(正社員用) 正社員の採用時に使う雇用契約書のひな形です。労働基準法で書面明示が必要な事項と、2024年4月から追加された「就業場所・業務の変更の範囲」を盛り込み、労働条件通知書を兼ねる形にしています。 人事 労働条件通知書(パート・有期雇用用) パートタイム・有期雇用の従業員向け労働条件通知書です。2024年4月改正の明示事項(変更の範囲・更新上限・無期転換)と、パートタイム・有期雇用労働法で求められる昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口、2026年10月から追加された「待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」を盛り込んでいます。 人事 定年後再雇用 契約書(嘱託) 定年後に嘱託社員として再雇用するときの有期雇用契約書のひな形です。更新上限、無期転換の特例、待遇差の説明を求められる旨など、有期契約・パート有期法で必要な明示事項を盛り込んでいます。この記事に出てくる用語
- 高年齢雇用継続給付
- 60歳以降の賃金が60歳到達時点より大きく下がった人に、65歳になるまで雇用保険から支給される給付です。2025年4月から給付率が縮小されました。
- 雇用契約書
- 会社と労働者が労働契約の内容に合意したことを示すため、双方が署名・記名押印などをする書面です。法律上の作成義務はありませんが、トラブル防止のために多くの会社が作ります。
- 雇用保険
- 労働者が失業したときや、育児・介護で休業したときなどに給付を行う公的保険です。週20時間以上働き、31日以上雇用見込みがある人が原則として加入します。
- 最低賃金
- 最低賃金法にもとづき国が定める賃金の最低額で、会社はこれ以上の賃金を支払う必要があります。都道府県ごとの地域別最低賃金と、特定の産業の特定最低賃金があります。
- 資格取得届
- 従業員が社会保険や雇用保険に加入するときに会社が提出する届出です。健康保険・厚生年金保険は年金事務所へ5日以内、雇用保険はハローワークへ翌月10日までに提出します。
- 出勤簿
- 労働者ごとの出勤日や始業・終業時刻を記録する書類で、賃金台帳・労働者名簿とあわせて「法定三帳簿」と呼ばれます。
- 所定労働時間
- 就業規則や労働契約で会社が決めた、始業から終業までの時間から休憩時間を除いた労働時間です。法定労働時間の範囲内で定めます。
- 試用期間
- 入社後の一定期間、本人の適性や能力を見て本採用するかを判断する期間です。法律上は「解約権留保付の労働契約」と考えられ、本採用の見送りは解雇にあたります。
- 退職勧奨
- 会社が社員に退職を勧め、合意による退職を目指すことです。解雇とは違い、本人は断ることができます。
- 賃金台帳
- 労働者ごとに賃金計算の基礎となる事項や支払額を記録する帳簿で、労働基準法で作成と保存が義務づけられています。法定三帳簿の一つです。
- 特定受給資格者
- 倒産や解雇など、会社側の事情で再就職の準備をする時間がないまま離職した人のことです。雇用保険の基本手当で、受給資格や給付日数が有利に扱われます。
- ハローワーク
- 厚生労働省の公共職業安定所の愛称です。職業紹介や求人の受付のほか、雇用保険の加入・喪失や給付の手続きの窓口になっています。
- 法定雇用率
- 会社が雇用しなければならない障害者の割合です。民間企業は2026年7月から2.7%で、従業員37.5人以上の企業に1人以上の雇用義務があります。
- 雇止め
- 有期労働契約の期間が満了したときに、会社が契約を更新せずに終了させることです。更新の実態や期待によっては、雇止めが認められないことがあります。
- 労働保険
- 労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。労働者を1人でも雇うと加入が必要で、保険料は年度更新でまとめて申告・納付します。