早期退職優遇制度と希望退職の募集|制度の違い、募集要項の作り方、雇用保険の離職理由と届出
早期退職優遇制度は、定年前の退職を選んだ人に退職金を上乗せする恒常的な制度です。希望退職の募集は、人員整理のために期間を区切って退職者を募る臨時の措置です。両者の違い、募集要項に書く項目、面談の進め方、雇用保険の離職理由の扱い、30人以上の離職や45歳以上の離職で必要になる届出を整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で、早期退職制度の導入や人員の見直しを検討している人事担当者・経営者
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この記事のポイント
- 恒常的な「早期退職優遇制度」への応募による退職は、雇用保険では原則として会社都合(特定受給資格者)にならない。人員整理のための「希望退職の募集」に応じた退職は、特定理由離職者などの扱いになりうる。どちらの制度か、募集の目的と期間を明確にする
- 募集要項には、対象者、募集人数と期間、退職日、優遇内容(割増退職金・有給休暇の扱い・再就職支援)、会社の承認の要否を書く。退職を強要する面談は違法な退職勧奨になりうる
- 1か月以内に30人以上の離職が見込まれる場合は再就職援助計画や大量雇用変動届、45歳以上70歳未満の5人以上が事業主都合などで離職する場合は多数離職届が必要になる
「50歳以上の社員に、退職金を上乗せして早めの退職を選べる制度を作れないか」「業績悪化で人員を減らす必要がある。希望退職を募るにはどうすればよいか」。どちらも「早期退職」と呼ばれますが、制度の性格も、雇用保険や届出の扱いも違います。
この記事では、2つの制度の違いと、実施するときに人事が準備することを整理します。個別に退職を打診する場合は退職勧奨の進め方を参照してください。
2つの制度の違い
| 項目 | 早期退職優遇制度 | 希望退職の募集 |
|---|---|---|
| 性格 | 恒常的な制度(常設) | 臨時の措置(期間限定) |
| 主な目的 | キャリアの選択肢、セカンドキャリア支援、年齢構成の調整 | 業績悪化などによる人員整理 |
| 対象 | 一定の年齢・勤続以上の社員 | 部門・年齢などを限定することが多い |
| 優遇内容 | 退職金の上乗せ(規程で定めた率) | 割増退職金、再就職支援など(募集ごとに決める) |
| 根拠 | 退職金規程・早期退職規程 | 募集要項(経営判断) |
| 雇用保険の離職理由 | 原則として自己都合と同じ扱い(特定受給資格者にならない) | 特定理由離職者などになりうる(下記) |
雇用保険の離職理由
ハローワークの基準では、事業主から退職を勧奨されて離職した人は特定受給資格者(会社都合)にあたりますが、「従来から恒常的に設けられている『早期退職優遇制度』等に応募して離職した場合は、これに該当しない」とされています。一方、企業整備による人員整理などで希望退職者の募集に応じて離職した人は、特定理由離職者の範囲に挙げられています。
| 退職の経緯 | 扱い(ハローワークの判断による) |
|---|---|
| 恒常的な早期退職優遇制度に応募 | 特定受給資格者に該当しない |
| 人員整理のための希望退職に応募 | 特定理由離職者などになりうる |
| 会社から個別に退職を勧奨された | 特定受給資格者 |
最終的な判断はハローワークが行います。離職証明書には経緯を正確に書き、募集要項などの資料を保存しておきます(→離職票の書き方、失業給付の説明)。
募集要項に書くこと
希望退職を募集する場合も、早期退職優遇制度を規程にする場合も、次の項目を明確にします。
| 項目 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 目的 | 経営状況、人員見直しの理由(希望退職の場合) |
| 対象者 | 年齢・勤続年数・部門・雇用形態。不合理な差別にならない基準にする |
| 募集人数 | 希望退職の場合。上限に達したら締め切るか |
| 募集期間 | 申込みの受付期間 |
| 退職日 | 一律か、個別に決めるか。引き継ぎ期間を考慮 |
| 優遇内容 | 割増退職金の計算方法、年次有給休暇の残日数の扱い、再就職支援サービス |
| 会社の承認 | 「会社が業務上必要と認める者は承認しない場合がある」とするか |
| 申込み後の撤回 | 撤回できる期限 |
| 問い合わせ先 | 人事の窓口、個別相談の受付方法 |
会社の承認を条件にする理由
会社の承認を条件にしないと、残ってほしい人材から先に応募し、承認しないとトラブルになります。「会社が承認した場合に優遇を適用する」と要項に明記しておくのが一般的です。承認しない場合も、本人が通常の自己都合退職を選ぶ自由は妨げられません(→退職届の撤回と退職の申出)。
割増退職金の税務
退職に際して支払う割増退職金も、退職を理由として一時に支払われるものなので、退職所得として扱われるのが通常です。退職所得の受給に関する申告書の提出を受け、源泉徴収します(→退職所得の源泉徴収、退職金制度の設計)。
説明と面談の進め方
- 経営層からの説明:会社の状況、制度の目的、対象者、今後の見通しを全体に説明する
- 個別面談:制度の内容と、本人の場合の退職金額の試算を示す
- 検討期間:家族と相談できる期間を設ける
- 申込み・承認:書面で申込みを受け、会社が承認する
- 退職手続き:退職日、引き継ぎ、最終給与、退職金の支払(→退職手続きの流れ)
面談で応募しない意思を示した人に何度も面談を繰り返す、応募しないと不利な配置にすると示唆する、といった対応は、違法な退職勧奨と判断されるおそれがあります。面談の回数・時間・発言は記録し、応募はあくまで本人の自由な意思によるものとします。
大量の離職を伴う場合の届出
希望退職などで多くの離職者が出る場合は、ハローワークへの届出が必要になることがあります。
| 届出・計画 | 要件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 再就職援助計画の作成・認定申請 | 経済的事情による事業規模の縮小等で、1つの事業所で1か月以内に常時雇用する労働者30人以上の離職が見込まれる | 労働施策総合推進法第24条、同法施行規則第7条の2 |
| 大量雇用変動届 | 1つの事業所で1か月以内に、自己の都合や本人の責めによらない離職者が30人以上 | 同法第27条、施行規則第8条 |
| 多数離職届 | 45歳以上70歳未満の人のうち、解雇その他の事業主の都合などで1か月以内に5人以上が離職する | 高年齢者雇用安定法第16条、同法施行規則第6条の2 |
| 求職活動支援書の交付 | 45歳以上70歳未満で解雇等により離職する人が希望したとき | 高年齢者雇用安定法第17条 |
- 再就職援助計画は、労働者の過半数代表の意見を聴いて作成し、ハローワークに提出して認定を受けます。認定の申請をすると、大量雇用変動届を出したものとみなされます
- 多数離職届は、最後の離職が生じる日の1か月前までに提出します
人員整理のための希望退職への応募が「事業主の都合」による離職に含まれるか、届出の要否は、管轄のハローワークに事前に確認してください。
早期退職優遇制度を常設する場合
恒常的な制度として設ける場合は、退職金規程に次のような条項を置きます。
- 対象:勤続〇年以上かつ満〇歳以上〇歳未満の社員
- 申出:退職希望日の〇か月前までに書面で申し出る
- 優遇:退職金の算定にあたり、〇年分の勤続年数を加算する(または〇%を加算する)
- 承認:会社の承認を要する
定年後の継続雇用制度(→定年と継続雇用)や、シニアの活躍支援(→シニア社員の活躍)とあわせて、「辞める」以外の選択肢も示すと、制度の目的が社員に伝わりやすくなります。
まとめ
- 恒常的な早期退職優遇制度と、臨時の希望退職の募集は、目的も雇用保険上の扱いも違う
- 募集要項には、対象者・期間・退職日・優遇内容・承認の要否・撤回期限を書く
- 面談は本人の自由な意思を尊重し、回数と発言を記録する
- 1か月以内に30人以上の離職や、45歳以上の5人以上の離職では、ハローワークへの届出を確認する
- 割増退職金は退職所得として源泉徴収する
この記事で使えるテンプレート
人事 退職手続きチェックリスト 社会保険の資格喪失届、雇用保険の資格喪失届・離職証明書、源泉徴収票、住民税の異動届、貸与品の回収、アカウント停止まで、退職手続きを期限つきで確認できるチェックリストです。 人事 退職証明書(労働基準法22条の記載事項つき) 労働基準法22条1項の5項目(使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由)を、本人が請求した項目だけ記入できる退職証明書です。請求項目の確認欄と、交付記録欄を付けています。 人事 退職願(従業員記入用) 従業員に記入してもらう退職願の社内様式です。退職希望日・最終出社日・有給休暇の取得予定・退職後の連絡先など、退職手続きに必要な情報を1枚で回収できます。この記事に出てくる用語
- 過半数代表者
- 労働者の過半数で組織する労働組合がない事業場で、労使協定の締結や就業規則の意見聴取の相手方になる、労働者の過半数を代表する人です。
- 継続雇用制度
- 定年に達した社員を、本人が希望すれば引き続き雇用する制度です。定年でいったん退職して新たに契約を結ぶ「再雇用制度」と、退職せずに雇用を続ける「勤務延長制度」があります。
- 源泉徴収
- 給与や報酬などを支払う人が、支払の際に所得税を差し引いて国に納める仕組みです。差し引いた税額は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。
- 高年齢者雇用安定法
- 定年の年齢、65歳までの雇用確保措置、70歳までの就業確保措置などを定めた法律です。正式名称は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」です。
- 雇用保険
- 労働者が失業したときや、育児・介護で休業したときなどに給付を行う公的保険です。週20時間以上働き、31日以上雇用見込みがある人が原則として加入します。
- 退職勧奨
- 会社が社員に退職を勧め、合意による退職を目指すことです。解雇とは違い、本人は断ることができます。
- 退職所得の受給に関する申告書
- 退職金を受け取る人が、退職所得控除を反映した源泉徴収を受けるために、支払者に提出する申告書です。提出がないと、退職金の額に一律20.42%の税率で源泉徴収されます。
- 定年
- 一定の年齢に達したことを理由に労働契約が終了する制度です。定年を定める場合は60歳以上にしなければなりません。
- 特定受給資格者
- 倒産や解雇など、会社側の事情で再就職の準備をする時間がないまま離職した人のことです。雇用保険の基本手当で、受給資格や給付日数が有利に扱われます。
- 特定理由離職者
- 有期契約の雇止めや、病気・家庭の事情など正当な理由のある自己都合で離職した人のことです。雇用保険の基本手当で、受給資格の要件などが緩和されます。
- 年次有給休暇
- 一定期間働いた労働者に与えられる、賃金が支払われる休暇です。6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すると10日付与され、勤続に応じて最大20日まで増えます。
- ハローワーク
- 厚生労働省の公共職業安定所の愛称です。職業紹介や求人の受付のほか、雇用保険の加入・喪失や給付の手続きの窓口になっています。
- 離職票
- 退職者が基本手当(失業手当)を受けるためにハローワークへ提出する書類です。会社が提出した離職証明書にもとづき、ハローワークが交付します。