整理解雇の進め方|人員削減の必要性・解雇回避努力・人選の合理性・手続の妥当性の4要素と、30人以上の離職で必要な届出
経営不振による人員削減のための解雇(整理解雇)は、労働者側に落ち度がないため、労働契約法第16条のもとで裁判所が厳しく判断します。厚生労働省が示す4つの要素(人員削減の必要性、解雇回避の努力、人選の合理性、手続の妥当性)に沿って、解雇の前にやること、選定基準の決め方、説明・協議、解雇予告、1か月に30人以上が離職する場合の再就職援助計画・大量雇用変動届までを整理します。
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- 業績悪化で人員削減を検討せざるを得ない、従業員30〜300名の企業の人事担当者・経営者
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この記事のポイント
- 整理解雇の有効性は、人員削減の必要性、解雇回避の努力、人選の合理性、解雇手続の妥当性の4つの要素から総合的に判断される。どれかが欠けると無効とされるおそれが高い
- 解雇の前に、役員報酬の削減、残業・採用の抑制、配置転換・出向、雇用調整助成金の活用、希望退職の募集などを検討し、記録に残す。対象者は客観的な基準で選び、本人・労働組合に十分説明する
- 解雇するときは30日前の予告または予告手当が必要。1か月に30人以上の離職が見込まれる場合は、再就職援助計画または大量雇用変動届をハローワークに出す。障害のある人を解雇するときも届出がある
受注の急減や不採算部門の撤退で、人件費を減らさざるを得ない局面があります。会社の経営上の理由で行う解雇を整理解雇といいます。整理解雇は従業員に落ち度がない解雇なので、能力不足や規律違反による解雇より厳しく判断されます。準備不足のまま進めると、解雇が無効とされ、解雇期間中の賃金の支払いを命じられることもあります。
この記事では、整理解雇の有効性の判断枠組みと、解雇の前後に会社がやることを整理します。能力不足などを理由とする解雇は普通解雇の進め方、合意による退職を目指す場合は退職勧奨の進め方を参照してください。
法律の枠組み
労働契約法第16条は、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利を濫用したものとして無効とすると定めています。整理解雇もこの条文で判断されます。
厚生労働省は、裁判例の積み重ねにより、整理解雇の有効性は次の4つの事項に着目して判断されるとしています。かつては1つでも欠ければ無効とする「4要件説」が有力でしたが、近年は4つを考慮すべき要素とする「4要素説」が有力とされています。ただし厚生労働省の解説は、どちらの考え方でも結論にそれほど違いはないとしています。
| 要素 | 厚生労働省・鳥取労働局の説明(要旨) |
|---|---|
| ① 人員削減の必要性 | 不況・経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること |
| ② 解雇回避の努力 | 配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと |
| ③ 人選の合理性 | 対象者を決める基準が客観的・合理的で、運用も公正であること |
| ④ 解雇手続の妥当性 | 労働組合または労働者に、解雇の必要性と時期、規模・方法について納得を得るために説明・協議すること |
以下、要素ごとに会社が準備することを見ていきます。
① 人員削減の必要性を示す
「なぜ、この時期に、この人数を減らす必要があるのか」を数字で説明できるようにします。
- 売上・利益・資金繰りの推移(決算書、月次試算表、資金繰り表)
- 部門別の採算と、人件費の占める割合
- 削減人数の算定根拠(必要な人員体制との差)
人員削減と同時期に新規採用を続けていたり、役員報酬や賞与がそのままだったりすると、必要性に疑問を持たれやすくなります。
② 解雇回避の努力を尽くす
解雇の前に、会社として取れる手段を検討し、実施した内容と結果を記録に残します。
| 手段 | 内容の例 |
|---|---|
| 経費・役員報酬の削減 | 役員報酬の減額、交際費・広告費などの削減 |
| 労働時間・採用の調整 | 残業の削減、新規採用・中途採用の停止、有期契約の更新の見直し |
| 休業 | 一時的な休業と休業手当の支払い(→休業手当)。雇用調整助成金の活用(→雇用調整助成金) |
| 配置転換・出向 | 不採算部門から他部門・関連会社への異動 |
| 希望退職の募集 | 退職金の上乗せなどの条件を示して募集する(→早期退職優遇制度、希望退職の募集要項) |
どの手段が必要かは会社の状況によって異なりますが、何も検討せずにいきなり解雇に進むことは避けます。
③ 対象者の選定基準を決める
対象者は、事前に客観的な基準を決め、それを公平に当てはめて選びます。基準の例は次のとおりです。
- 勤務成績・人事評価(一定期間の評価結果を数値で比較する)
- 欠勤日数・懲戒歴など、勤務状況の記録
- 勤続年数、再就職のしやすさ、家計への影響など生活面への配慮
「会社に協力的でない」「上司と合わない」のような主観的な基準や、労働組合員であること、育児休業・介護休業の取得、性別などを理由とする選定は、それ自体が法律で禁止されている不利益取扱いや差別に当たるおそれがあります。基準と当てはめの過程は書面に残しておきます。
④ 説明・協議を尽くす
労働組合があれば組合と、ない場合は従業員の代表や対象者本人と、必要性・時期・規模・選定基準・退職条件について説明し、協議します。資料を示し、質問に答え、協議の日時と内容を記録します。労働協約に解雇の協議条項がある場合は、それに従います(→労働協約)。
解雇するときの手続き
解雇予告と解雇制限
解雇するときは、少なくとも30日前の予告か、平均賃金30日分以上の解雇予告手当が必要です(労働基準法第20条)。業務上の傷病で休業している期間とその後30日間、産前産後休業の期間とその後30日間は、原則として解雇できません(第19条)。手順と日数の数え方は解雇予告と解雇予告手当を、通知書は解雇予告通知書を使ってください。
本人から請求があれば、解雇理由を記載した証明書を遅滞なく交付します(第22条)。
30人以上の離職が見込まれるとき
厚生労働省は、事業所で相当数の離職者が出る場合の届出を次のように案内しています。
| 制度 | 要件 | 期限・提出先 |
|---|---|---|
| 再就職援助計画 | 事業規模の縮小等により、1か月以内に30人以上が離職を余儀なくされる見込み | 最初の離職の1か月前までに作成し、ハローワークの認定を受ける |
| 大量雇用変動届(大量離職届) | 自己の都合または自己の責めに帰すべき理由によらない離職者が1か月以内に30人以上 | 最後の離職の1か月前までにハローワークへ |
再就職援助計画の認定を申請した場合は、その日に大量雇用変動の届出をしたものとみなされます。30人未満でも、再就職援助計画はできるだけ作成するよう求められています。
障害のある人を解雇するとき
障害者雇用促進法第81条は、障害者である労働者を解雇する場合(本人の責めに帰すべき理由による解雇などを除く)は、その旨をハローワークに届け出なければならないと定めています。
離職票と再就職支援
会社の経営上の理由による解雇は、離職票の離職理由が会社都合になります。離職票の記載と、本人への失業給付の説明は離職票の手続きを参照してください。再就職支援会社の利用や、求人情報の提供など、会社としてできる支援も検討します。
進め方の流れ
- 経営状況の分析と削減人数の算定(①)
- 解雇回避策の検討・実施と記録(②)
- 希望退職の募集・退職勧奨(応じない人に強要しない)
- 選定基準の決定と当てはめ(③)
- 労働組合・従業員への説明と協議(④)
- 解雇予告、届出(再就職援助計画・大量雇用変動届・障害者の解雇届)
- 離職票の作成、再就職支援
整理解雇は、紛争になると判断が分かれやすい分野です。進める前に、弁護士や労働局の総合労働相談コーナーに相談することをすすめます。
まとめ
- 整理解雇は、人員削減の必要性・解雇回避の努力・人選の合理性・手続の妥当性の4要素で判断される
- 解雇の前に、経費削減・休業・配置転換・希望退職などの回避策を尽くし、記録に残す
- 対象者は客観的な基準で選び、労働組合・従業員に十分説明し協議する
- 解雇予告を守り、1か月30人以上の離職では再就職援助計画または大量雇用変動届を出す
この記事で使えるテンプレート
人事 解雇予告通知書・解雇理由証明書 労働基準法20条の解雇予告(30日前予告・解雇予告手当)を書面で伝える解雇予告通知書と、22条2項の解雇理由証明書のセットです。予告日・解雇日・予告手当の計算欄と、受領確認欄を付けています。 人事 早期退職優遇制度(希望退職)募集要項・応募申込書 期間を定めて早期退職(希望退職)者を募集するときの社内向け募集要項と応募申込書です。目的、対象者、募集人数・期間、割増退職金などの優遇措置、退職日、会社の承認、応募が任意であること、雇用保険の離職理由の扱い、よくある質問までまとめています。この記事に出てくる用語
- 育児休業
- 子を養育するために、原則として子が1歳になるまで取得できる休業です。育児・介護休業法にもとづき、保育所に入れないなどの場合は最長2歳まで延長できます。
- 解雇予告
- 会社が労働者を解雇するときに、少なくとも30日前に解雇することを予告する義務です。予告しない場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払います。
- 解雇予告手当
- 30日前の解雇予告をしないで解雇するときに、会社が支払う平均賃金30日分以上のお金です。予告日数が30日に足りない場合は、足りない日数分を支払います。
- 介護休業
- 要介護状態にある家族を介護するための休業で、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます。
- 基本手当
- 雇用保険の被保険者が離職し、働く意思と能力があるのに就職できないときに支給される給付で、一般に「失業手当」と呼ばれます。
- 休業手当
- 会社の都合(使用者の責に帰すべき事由)で労働者を休ませたときに支払う手当で、平均賃金の60%以上が必要です。
- 交際費
- 得意先や仕入先など事業に関係のある人への接待、供応、慰安、贈答などのための費用です。法人税の計算では損金に算入できる額に上限があります。
- 産前産後休業
- 出産予定日の6週間前(多胎は14週間前)から請求により休める産前休業と、出産の翌日から8週間の産後休業のことです。期間中は社会保険料が免除されます。
- 在籍型出向
- 元の会社(出向元)との雇用関係を残したまま、別の会社(出向先)でも雇用関係を結び、出向先の指揮命令を受けて働く形です。
- 人事評価
- 社員の仕事の成果や行動、能力を一定の基準で評価し、昇給・賞与・昇格や育成に反映させる仕組みです。等級制度・報酬制度とつなげて設計します。
- 整理解雇
- 経営不振や事業の縮小などで人員を削減するために行う解雇です。労働者側に落ち度がないため、有効性が厳しく判断されます。
- 退職勧奨
- 会社が社員に退職を勧め、合意による退職を目指すことです。解雇とは違い、本人は断ることができます。
- 配置転換
- 同じ会社の中で、職務の内容や勤務場所を変えることです。勤務地が変わるものを特に転勤といいます。
- ハローワーク
- 厚生労働省の公共職業安定所の愛称です。職業紹介や求人の受付のほか、雇用保険の加入・喪失や給付の手続きの窓口になっています。
- 平均賃金
- 解雇予告手当や休業手当などを計算するときの基準になる1日あたりの賃金です。原則として直前3か月の賃金総額をその期間の総日数で割って求めます。
- 離職票
- 退職者が基本手当(失業手当)を受けるためにハローワークへ提出する書類です。会社が提出した離職証明書にもとづき、ハローワークが交付します。