有期契約の更新・雇止めのルール|雇止め法理・更新上限の明示・30日前予告が必要な人
有期労働契約を更新しない「雇止め」は、期間満了だから自由にできるわけではありません。労働契約法19条の雇止め法理、2024年4月から明示が必要になった更新上限、厚生労働省の基準による30日前の予告と雇止め理由の証明書、上限を後から設ける場合の説明まで、更新管理の実務を整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で、契約社員・パート・アルバイトの契約更新を管理する人事・労務担当者
- 難易度
- 実務
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この記事のポイント
- 反復更新で無期契約と同視できる場合や、更新の期待に合理的な理由がある場合、客観的に合理的な理由のない雇止めは認められず、従前と同じ条件で更新されたとみなされる(労働契約法19条)
- 更新上限(通算期間・更新回数)を設ける場合は、契約締結・更新のたびに労働条件として明示する。後から上限を新設・短縮するときは、あらかじめ理由を説明する
- 3回以上更新、または通算1年超などの人を雇止めするときは、満了日の30日前までに予告する。請求があれば雇止めの理由の証明書を交付する
契約社員やパート・アルバイトの多くは、6か月や1年の有期労働契約で働いています。契約期間が満了したときに更新しないことを「雇止め」といいます。
期間満了で終わるのだから会社の判断で自由にできる、と考えがちですが、何度も更新してきた人や、更新を期待させる言動があった人を雇止めすると、無効とされることがあります。この記事では、雇止めの法的ルールと、更新管理で会社がやるべきことを整理します。
有期契約に関する主なルール
| ルール | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 契約期間の上限 | 1回の契約期間は原則3年まで(高度の専門的知識等を持つ人、満60歳以上の人は5年まで) | 労働基準法14条 |
| 期間途中の解雇 | やむを得ない事由がなければ、契約期間中に解雇できない | 労働契約法17条1項 |
| 短すぎる期間の配慮 | 必要以上に短い期間を定めて反復更新しないよう配慮する | 労働契約法17条2項 |
| 無期転換 | 通算5年を超える人が申し込めば、無期契約に転換する | 労働契約法18条 |
| 雇止め法理 | 一定の場合、合理的な理由のない雇止めは認められない | 労働契約法19条 |
| 更新基準・上限の明示 | 更新の有無、更新の判断基準、更新上限を明示する | 労働基準法施行規則5条 |
| 雇止めの予告・理由の証明 | 30日前の予告、雇止め理由の証明書の交付など | 有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準 |
無期転換ルールの詳細は無期転換ルールの実務を参照してください。
雇止め法理(労働契約法19条)
次のいずれかにあたる有期契約で、労働者が契約期間満了までに更新を申し込んだ場合(または満了後遅滞なく契約締結を申し込んだ場合)、会社が拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、会社は従前と同じ労働条件で申込みを承諾したものとみなされます。
| 号 | 対象 | もとになった判例 |
|---|---|---|
| 1号 | 過去に反復更新され、雇止めが無期契約の解雇と社会通念上同視できる | 東芝柳町工場事件(最高裁昭和49年7月22日) |
| 2号 | 契約期間満了時に、更新されると期待することに合理的な理由がある | 日立メディコ事件(最高裁昭和61年12月4日) |
どんな事情で判断されるか
厚生労働省の「労働契約法のあらまし」は、1号・2号にあたるかは、次の事情を総合的に考慮して個々の事案ごとに判断されるとしています。
- 雇用の臨時性・常用性(正社員と同じ基幹的な業務か)
- 更新の回数、雇用の通算期間
- 契約期間の管理の状況(更新手続きが形だけになっていないか)
- 雇用継続の期待を持たせる会社の言動の有無(「長く働いてほしい」「更新は形式だけ」など)
後から上限を宣言しても期待は消えない
あらましは、労働者がいったん雇用継続への合理的な期待を抱いた後に、会社が契約期間の満了前に更新年数や更新回数の上限を一方的に宣言しても、そのことだけで直ちに2号の該当性が否定されることにはならない、と解説しています。
また、労働者の「更新の申込み」は形式を問わず、雇止めに対する何らかの反対の意思表示が会社に伝わればよいとされています。
更新上限と更新基準の明示
契約締結・更新のたびに明示する事項
2024年4月から、有期労働契約を締結・更新するときは、更新上限の有無と内容(通算契約期間または更新回数の上限)も、書面で明示する労働条件に加わりました。
| 明示事項 | 記載例 |
|---|---|
| 契約期間 | 2026年11月1日〜2027年4月30日 |
| 更新の有無 | 更新する場合があり得る/自動的に更新する/更新しない |
| 更新の判断基準 | 契約期間満了時の業務量、勤務成績・態度、能力、会社の経営状況、従事している業務の進捗状況 |
| 更新上限 | 通算契約期間は○年まで/更新回数は○回まで |
| 無期転換申込機会(対象者のみ) | 無期転換申込権が発生する契約の更新時に明示 |
記載方法は労働条件通知書の書き方を参照してください。2026年10月からは、パート・有期雇用労働者に「正社員との待遇の相違の内容・理由について説明を求めることができる旨」の明示も必要です(パート・有期雇用の労働条件明示事項の追加)。
上限を新設・短縮するときの説明
有期労働契約の締結後に、更新上限を新たに設ける場合、または短縮する場合は、その理由を、あらかじめ(新設・短縮をする前のタイミングで)労働者に説明しなければなりません。説明は個別の面談などで丁寧に行い、説明した日と内容を記録に残しておきましょう。
無期転換を避ける目的で、通算5年の直前に一律の更新上限を新設する運用は、紛争になりやすい典型例です。上限を設けるなら、最初の契約時から明示しておくのが基本です。
雇止めをするときの手続き
30日前の予告が必要な人
あらかじめ「更新しない」と明示している場合を除き、次の有期労働契約を更新しないときは、契約期間満了日の少なくとも30日前までに予告しなければなりません。
- 3回以上更新されている
- 1年以下の契約が更新・反復更新され、最初の契約から継続して通算1年を超える
- 1年を超える契約期間の契約を結んでいる
予告は、後日の紛争を避けるため書面(雇止め通知書)で行いましょう。
雇止めの理由の証明書
雇止めの予告後に、労働者が雇止めの理由について証明書を請求したときは、遅滞なく交付します。雇止めの後に請求された場合も同様です。理由は「契約期間の満了」とは別の理由を書く必要があります。
| 理由の例 |
|---|
| 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため |
| 契約締結当初から更新回数の上限を設けており、本契約はその上限に係るものであるため |
| 担当していた業務が終了・中止したため |
| 事業縮小のため |
| 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため |
| 職務命令に対する違反行為、無断欠勤など勤務不良のため |
契約期間についての配慮
1回以上更新し、かつ1年を超えて継続して雇用している人の契約を更新するときは、契約の実態と本人の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めることとされています。
更新管理の実務フロー
- 有期契約者の一覧に、契約期間、更新回数、通算期間、更新上限、無期転換申込権の発生時期を記録する
- 満了の2か月前をめどに、上司から更新可否の意見を集める(判断基準に沿って)
- 更新する場合は、満了前に新しい労働条件通知書を交付する
- 更新しない場合は、30日前の予告が必要か確認し、雇止め通知書を交付する
- 雇止めの理由を説明し、請求があれば証明書を交付する
- 退職後の手続き(離職票など)を行う
雇止めによる離職は、契約内容や本人の更新希望の有無によって、雇用保険の離職理由の扱いが変わります。離職証明書の記入は離職票・離職証明書の書き方を参照してください。契約期間中に辞めてもらう場合は解雇になり、解雇予告などの手続きが必要です(解雇予告と解雇予告手当)。
まとめ
- 反復更新や更新への合理的な期待がある場合、合理的な理由のない雇止めは認められない
- 更新の有無・判断基準・更新上限は、契約のたびに書面で明示する。上限を後から新設・短縮するときは事前に理由を説明する
- 3回以上更新、通算1年超などの人の雇止めは、30日前までに予告する。請求があれば理由の証明書を交付する
- 更新手続きを形だけにせず、判断基準に沿って毎回判断し、記録を残す