育児・介護中の残業免除・時間外労働の制限・深夜業の制限|3つの制度の違い、請求の期限、断れる場合
育児・介護休業法には、所定外労働の制限(残業免除)、時間外労働の制限(月24時間・年150時間まで)、深夜業の制限(午後10時〜午前5時)の3つの制度があります。対象者、請求の期限と期間、会社が断れる「事業の正常な運営を妨げる場合」、労使協定で除外できる人、不利益取扱いの禁止まで、条文に沿って比較します。
- 対象読者
- 子育てや介護をしている社員から「残業を減らしたい」「夜勤を外してほしい」と申し出があった、従業員30〜300名の企業の労務担当者
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この記事のポイント
- 小学校就学前の子を養育する社員と、要介護状態の家族を介護する社員は、残業免除(所定外労働の制限)、時間外労働の制限(月24時間・年150時間)、深夜業の制限を請求できる
- 請求は開始予定日の1か月前までに、期間を明らかにして行う。期間は残業免除と時間外労働の制限が1か月以上1年以内、深夜業の制限が1か月以上6か月以内。回数の上限はない
- 会社が断れるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られる。勤続1年未満・週2日以下の人は除外でき、残業免除の除外には労使協定が必要。請求や制限を理由とする不利益取扱いは禁止
「保育園のお迎えがあるので残業はできません」「親の介護で夜勤は外してほしい」。こうした申し出は、育児・介護休業法の制度に当てはめると、どれを使うのかで会社の義務が変わります。似た名前の制度が3つあり、取り違えやすいところです。
この記事では、育児・介護休業法と同施行規則の条文をもとに、3つの制限の違い、請求の受け方、会社が断れる場合を整理します。2025年改正の全体は改正育児・介護休業法の対応、介護との両立は介護離職を防ぐ会社の対応を参照してください。
3つの制度の比較
| 所定外労働の制限(残業免除) | 時間外労働の制限 | 深夜業の制限 | |
|---|---|---|---|
| 条文(育児/介護) | 第16条の8/第16条の9 | 第17条/第18条 | 第19条/第20条 |
| 内容 | 所定労働時間を超えて働かせない | 法定時間外労働を月24時間・年150時間以内にする | 午後10時〜午前5時に働かせない |
| 育児の対象 | 小学校就学前の子を養育する人 | 同左 | 同左 |
| 介護の対象 | 要介護状態の対象家族を介護する人 | 同左 | 同左 |
| 1回の期間 | 1か月以上1年以内 | 1か月以上1年以内 | 1か月以上6か月以内 |
| 請求の期限 | 開始予定日の1か月前まで | 同左 | 同左 |
| 除外できる人 | 勤続1年未満、週の所定労働日数2日以下(労使協定が必要) | 勤続1年未満、週の所定労働日数2日以下(法律上の除外) | 勤続1年未満、週2日以下、所定労働時間の全部が深夜の人、深夜に常態として子を保育(家族を介護)できる16歳以上の同居家族がいる人 |
| 会社が断れる場合 | 事業の正常な運営を妨げる場合 | 同左 | 同左 |
残業免除の対象は、2025年4月から「3歳未満の子」から「小学校就学前の子」に広がっています。
残業免除と時間外労働の制限は同時に使えない
所定外労働の制限と時間外労働の制限は、期間が重複しないように請求しなければなりません(第16条の8第2項、第17条第2項)。「残業ゼロ」なら残業免除、「多少の残業はできるが月24時間までにしたい」なら時間外労働の制限、と本人の事情に合わせて選んでもらいます。深夜業の制限は、どちらとも併用できます。
回数の上限はない
いずれの制度も、1回の期間の上限はありますが、請求できる回数に上限はありません。子が小学校に入学するまで(介護は介護が必要な間)、期間を区切って繰り返し請求できます。
請求を受けたときの流れ
- 請求書を受け取る(開始予定日・終了予定日を明記したもの)。様式は就業規則・育児介護休業規程で定めておく
- 対象者か、除外に当たらないかを確認する。必要に応じて子の出生や要介護状態を証明する書類の提出を求める
- 開始日までに、上司と業務分担を調整する
- シフトや36協定の運用で、制限時間を超えないように管理する
厚生労働省の「育児・介護休業等に関する規則の規定例」には、各制度の規定例と請求書の様式例があります。規程の整備は育児・介護休業規程を参考にしてください。
請求が終わる場合
期間の途中でも、次の場合は制限が終了します(第16条の8第4項など)。
介護の対象家族
介護を理由とする請求の対象になる「対象家族」は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母と、祖父母、兄弟姉妹、孫です(法第2条第4号、規則第3条)。「要介護状態」は、負傷、疾病または身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます(法第2条第3号、規則第2条)。介護保険の要介護認定を受けていなくても対象になり得ます。
36協定・勤怠管理との関係
時間外労働の制限は、36協定で延長できる時間の範囲内であっても、請求した社員については月24時間・年150時間を超えて延長してはならないという定めです(第17条第1項)。条文は労働時間の延長(法定時間外労働)を対象にしています。勤怠システムで、請求者ごとに月24時間・年150時間のアラートを設定しておくと管理しやすくなります。残業免除の請求者は、所定労働時間を超えた時点で超過になるため、終業時刻に退勤できる業務量になっているかを上司と確認します。
「事業の正常な運営を妨げる場合」の考え方
3つの制度とも、会社が請求を拒めるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。条文に具体例はなく、その社員の担当業務、代わりの人の確保の可能性などを踏まえて判断されると説明されるのが一般的です。
- 「忙しい時期だから」「人手が足りないから」というだけでは、拒む理由として弱い
- まず代替要員の配置や業務の分担で対応できないかを検討する
- 拒む場合は、理由を具体的に説明し、記録を残す
拒否の判断に迷う場合は、所轄の労働局(雇用環境・均等部(室))に相談できます。安易に拒むと、法違反として行政指導の対象になることがあります。
不利益取扱いの禁止
請求したこと、または制限により残業・深夜業をしなかったことを理由とする解雇その他不利益な取扱いは禁止されています(第16条の10、第18条の2、第20条の2)。
| 注意したい場面 | 考え方 |
|---|---|
| 残業代が減る | 働かなかった時間の賃金が出ないのは不利益取扱いではない |
| 人事評価 | 残業しないこと自体をマイナス評価にしない。成果や能力で評価する |
| 賞与・昇給 | 制度利用を理由に、働いた時間に比例する以上に減らさない |
| 配置転換 | 本人の希望や合理的な理由がないのに、制度利用を理由に不利な異動をしない |
評価のつけ方は短時間勤務者の人事評価と賞与も参考になります。妊娠中・出産後1年以内の女性からの時間外・深夜業の免除の請求は、労働基準法第66条の別の制度です(妊娠・出産を申し出た従業員への対応)。
まとめ
- 小学校就学前の子の養育や家族の介護をする社員は、残業免除、時間外労働の制限(月24時間・年150時間)、深夜業の制限を請求できる
- 請求は開始予定日の1か月前まで。期間は残業免除・時間外が1か月以上1年以内、深夜が1か月以上6か月以内で、回数の上限はない。残業免除と時間外労働の制限は期間を重ねられない
- 会社が断れるのは事業の正常な運営を妨げる場合に限られる。除外対象は勤続1年未満・週2日以下などで、残業免除の除外には労使協定が必要
- 請求や制限を理由とする不利益取扱いは禁止。評価や賞与で制度利用をマイナスにしない
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労務 育児・介護休業規程(ひな形・2025年改正対応の主要条文) 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)・介護休業、子の看護等休暇、残業免除の対象拡大、柔軟な働き方を実現するための措置、個別周知・意向確認までを条文にした育児・介護休業規程のひな形です。厚生労働省の規定例をもとに、主要条文に絞って整理しています。 労務 育児・介護 個別周知・意向確認書 育児・介護休業法で義務づけられた個別周知・意向確認・意向聴取を、面談または書面で行うための確認書です。妊娠・出産等の申出時、子が3歳になる前、介護に直面したときの3場面に対応し、本人の回答欄も付けています。 人事 育休復帰面談シート(復帰前・復帰後の両立支援と手続きの確認) 育児休業から復帰する従業員と、復帰前・復帰後に面談するためのシートです。勤務時間帯・勤務地・業務量など仕事と育児の両立に関する意向、使う予定の制度(短時間勤務・残業免除・子の看護等休暇など)、社会保険と雇用保険の手続きの確認欄をまとめています。この記事に出てくる用語
- 育児休業
- 子を養育するために、原則として子が1歳になるまで取得できる休業です。育児・介護休業法にもとづき、保育所に入れないなどの場合は最長2歳まで延長できます。
- 育児・介護休業法
- 育児休業・介護休業や、子の看護等休暇・介護休暇、短時間勤務などの両立支援制度を定めた法律です。正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」です。
- 介護休業
- 要介護状態にある家族を介護するための休業で、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます。
- 36協定
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて残業させたり、法定休日に働かせたりするために、会社と労働者の過半数代表が結び、労働基準監督署に届け出る労使協定です。
- 産後パパ育休
- 子の出生後8週間以内に、4週間(28日)まで取得できる育児休業です。法律上の名称は「出生時育児休業」で、通常の育児休業とは別に取得できます。
- 産前産後休業
- 出産予定日の6週間前(多胎は14週間前)から請求により休める産前休業と、出産の翌日から8週間の産後休業のことです。期間中は社会保険料が免除されます。
- 就業規則
- 労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
- 所定労働時間
- 就業規則や労働契約で会社が決めた、始業から終業までの時間から休憩時間を除いた労働時間です。法定労働時間の範囲内で定めます。
- 深夜業
- 午後10時から午前5時までの間の労働です。25%以上の割増賃金が必要で、深夜業に常時従事する人には6か月ごとの健康診断が義務づけられています。
- 時間外労働
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働のことです。36協定の締結・届出と、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。
- 人事評価
- 社員の仕事の成果や行動、能力を一定の基準で評価し、昇給・賞与・昇格や育成に反映させる仕組みです。等級制度・報酬制度とつなげて設計します。
- 配置転換
- 同じ会社の中で、職務の内容や勤務場所を変えることです。勤務地が変わるものを特に転勤といいます。
- 労使協定
- 会社と、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数代表者)との間で結ぶ書面の協定です。法律の原則を例外的に変える効果があります。