介護離職を防ぐ会社の対応:介護休業・介護休暇の基本と個別周知・意向確認の進め方
介護休業(通算93日・3回まで)、介護休暇(年5日・時間単位)、残業や深夜業の制限、短時間勤務等の措置と、2025年4月から義務になった個別周知・意向確認、40歳時点の情報提供、雇用環境整備を、相談を受けたときの実務の流れに沿って整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で両立支援を担当する人事・労務担当者
- 難易度
- 実務
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- 読了9分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 介護休業は対象家族1人につき通算93日・3回まで分割可。介護休暇は年5日(2人以上は10日)で時間単位でも取れる
- 2025年4月から、介護に直面した旨の申出があった従業員への個別周知・意向確認と、40歳前後の情報提供、雇用環境整備が全企業の義務
- 介護は長期化しやすい。休業で「介護の体制づくり」をし、その後は休暇・残業制限・短時間勤務等で働き続ける設計を伝える
親の介護は、ある日突然始まります。介護をしている従業員は40〜50代の中核人材であることが多く、制度を知らないまま一人で抱え込み、退職を選んでしまうケースは少なくありません。
2025年4月の育児・介護休業法改正で、会社には「介護に直面した従業員に制度を個別に知らせ、意向を確認する」ことなどが義務づけられました。この記事では、制度の基本と、従業員から相談を受けたときの実務の流れを整理します。改正内容の全体像は改正育児・介護休業法で会社がやることの総点検と法改正ページ(2025年4月施行分)もあわせてご覧ください。
介護の両立支援制度の全体像
対象になる家族と「要介護状態」
制度の対象になる家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
「要介護状態」とは、けがや病気、身体・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。介護保険の要介護認定を受けていることは必須ではなく、厚生労働省が示す「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」に照らして判断します。
制度の一覧
| 制度 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 介護休業 | 対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して休業 | 原則、開始予定日の2週間前までに申出。賃金の支払義務はない |
| 介護休暇 | 年5日(対象家族が2人以上なら年10日) | 1日または時間単位で取得できる。通院の付き添い、ケアマネジャーとの打ち合わせなどに |
| 所定外労働の制限 | 請求があれば所定労働時間を超えて働かせない | 介護終了まで何回でも請求できる |
| 時間外労働の制限 | 請求があれば月24時間・年150時間を超える時間外労働をさせない | 同上 |
| 深夜業の制限 | 請求があれば午後10時〜午前5時に働かせない | 同上 |
| 所定労働時間短縮等の措置 | 短時間勤務、フレックスタイム制、時差出勤、介護費用の援助のいずれかを会社が用意 | 利用開始から3年の間で2回以上利用できるようにする |
| テレワーク | 要介護状態の家族を介護する従業員が選べるようにする | 努力義務(2025年4月から) |
このほか、介護休業などを理由とする解雇その他の不利益取扱いは禁止されており、上司・同僚による介護休業等に関するハラスメントの防止措置も会社の義務です(ハラスメント防止措置の総点検を参照)。
介護休業は「自分で介護をするための休み」ではなく、「介護サービスの手続きや家族での役割分担など、介護の体制を整えるための期間」と考えるのが基本です。93日を一度に使い切らず、状態が変わったときに備えて分割して使う考え方を従業員に伝えましょう。
有期雇用の従業員も対象
パート・契約社員などの有期雇用の従業員も、介護休業の開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに、契約が満了することが明らかでなければ取得できます。労使協定で対象外にできる従業員(入社1年未満など)を定めている場合は、協定の内容も確認してください。
2025年4月から義務になった3つの措置
1. 申出があったときの個別周知・意向確認
従業員から「家族の介護に直面した」という申出があったら、会社は次の内容を個別に知らせ、制度を使うかどうかの意向を確認します。
- 介護休業・介護両立支援制度等の内容
- 申出先(担当部署・担当者)
- 介護休業給付金に関すること
方法は、面談(オンライン可)、書面の交付、本人が希望した場合のFAX・電子メール等です。取得や利用を控えさせるような言い方は認められません。
2. 40歳前後での早期の情報提供
介護に直面する前の段階で、制度を知ってもらうための情報提供も義務になりました。時期は「40歳に達する日の属する年度」または「40歳に達した日の翌日から1年間」のいずれかです。40歳は介護保険の第2号被保険者になり、介護保険料の徴収が始まる年齢でもあります。給与計算で介護保険料の控除を始めるタイミングと合わせて案内すると、漏れを防げます(月次の給与計算の流れも参照)。
3. 雇用環境の整備
介護休業などを申し出やすくするために、次のいずれか1つ以上を行います(複数が望ましいとされています)。
- 介護休業・両立支援制度等に関する研修の実施
- 相談体制の整備(相談窓口の設置)
- 自社の取得・利用事例の収集と提供
- 制度の利用促進に関する方針の周知
厚生労働省は、個別周知・意向確認書や事例紹介、方針周知の記載例(Word・PowerPoint)を公開しています。小規模な会社は、記載例をもとに1枚ものの案内を作り、社内ポータルと面談の両方で使い回すのが効率的です。
相談を受けたときの実務の流れ
| ステップ | 担当者がやること | 期限・目安 |
|---|---|---|
| 1. 相談・申出を受ける | 介護の状況(誰が・どんな状態か・介護保険の申請状況)を聞き取る | 相談を受けたらすぐ |
| 2. 個別周知・意向確認 | 制度・申出先・給付金を説明し、利用の意向を確認。記録を残す | 申出後、速やかに |
| 3. 社外の窓口を案内 | 家族が住む地域の地域包括支援センター、ケアマネジャーへの相談を勧める | 介護保険の手続きは早めに |
| 4. 休業・制度の申出を受ける | 介護休業申出書などを受け取り、期間を確定。業務の引き継ぎを調整 | 介護休業は原則2週間前まで |
| 5. 給付金の手続き | 介護休業給付金の支給申請をハローワークへ | 休業終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日まで |
| 6. 復帰と継続支援 | 介護休暇・残業制限・短時間勤務等への切り替えを相談 | 復帰前に面談 |
介護休業給付金の手続き
雇用保険の被保険者が介護休業を取得し、一定の要件を満たすと、ハローワークから介護休業給付金が支給されます。支給額は原則として「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です(上限額あり。上限額は毎年8月に見直されるため、最新額はハローワークの案内で確認してください)。
会社は、事業所を管轄するハローワークに「介護休業給付金支給申請書」と「休業開始時賃金月額証明書」などを提出します。電子申請も可能です。申請期限は、介護休業の終了日(休業が3か月を超えるときは開始日から3か月を経過した日)の翌日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日までです。同じ家族について、通算93日・3回までが支給の対象です。
給付金は会社の賃金とあわせて調整されるため、休業中に賃金を支払う場合は、事前にハローワークの案内で減額のルールを確認しておきましょう。
就業規則・社内の準備チェックリスト
- □ 育児・介護休業規程に、介護休業・介護休暇・各種制限・短時間勤務等の措置を定めている
- □ 介護休暇の労使協定から「継続雇用6か月未満の除外」を削除している
- □ 介護に直面した旨の申出を受ける窓口と、個別周知・意向確認の書式がある
- □ 40歳前後の従業員を毎年抽出し、情報提供を行う仕組みがある
- □ 研修・相談窓口・事例提供・方針周知のうち1つ以上を実施している
- □ 管理職が「相談を受けたら人事につなぐ」ことを知っている
規程の変更が必要なら、変更後の就業規則を労働基準監督署へ届け出ます(常時10人以上の事業場)。手順は就業規則の作成・変更と届出を参照してください。介護休業の取得や両立支援制度の導入に取り組む中小企業は、両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)の対象になる場合があります(雇用関係助成金の探し方と注意点)。
まとめ
- 介護休業は通算93日・3回まで、介護休暇は年5日(2人以上は10日)で時間単位取得も可能
- 申出があったら、制度・申出先・給付金を個別に知らせて意向を確認し、記録を残す
- 40歳前後での情報提供と、研修・相談窓口などの雇用環境整備も義務。「相談しやすい職場」をつくることが介護離職を防ぐ第一歩です