オンライン面接の運用ルール|録画の同意・本人確認・通信トラブル時の対応と、公正採用選考の注意点
オンライン面接は応募者・会社の双方の負担を減らせますが、録画の扱い、なりすましの防止、通信トラブル、画面に映る私生活への配慮など、対面にはない注意点があります。個人情報保護法・職業安定法の考え方を押さえたうえで、事前案内・当日の進行・録画データの管理までの運用ルールを整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で、Web会議ツールを使った面接を運用している人事担当者・面接官
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 録画・録音をする場合は、目的・保存期間・閲覧する人を事前に伝え、同意を得てから行う。同意しない応募者を不利に扱わない
- 本人確認は、事前に提出された写真との照合と、氏名・生年月日など最小限の確認で行う。身分証の画面提示を求める場合も、画像を保存しない・本籍などの情報を見ないなど、取得する情報を必要な範囲に絞る
- 画面に映る自宅の様子や同居家族などは、評価や質問の対象にしない。通信が切れた場合の連絡方法と再開の手順を、事前に応募者へ伝えておく
一次面接はオンライン、最終面接は対面、という形がすっかり定着しました。移動の負担がなく、遠方の応募者とも会えるのは大きな利点です。一方で、「録画してよいのか」「本人かどうか確かめるには」「回線が切れたらどうする」といった、対面にはなかった問題も出てきます。
この記事では、オンライン面接を社内で運用するときに決めておくルールを整理します。面接の進め方や評価シートの作り方、聞いてはいけない質問の基本は「面接の進め方と評価シート」を参照してください。
まず押さえる法律の考え方
応募者の情報は、目的を明らかにして必要な範囲で集める
職業安定法5条の5は、求人者などに対し、業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして求職者の個人情報を収集し、その目的の範囲内で保管・使用することを求めています(本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合を除く)。
また個人情報保護法では、利用目的をできる限り特定し(17条)、個人情報を取得したときは、あらかじめ公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知または公表する必要があります(21条)。面接の録画データも、特定の個人を識別できる個人情報です。
公正な採用選考
厚生労働省は、応募者の適性・能力に関係のない事項で採否を決めないよう求めています。本人に責任のない事項(家族、住宅状況、生活環境など)や、本来自由であるべき事項(思想・信条など)を把握しないことが基本です。オンライン面接では、画面に応募者の自宅の様子が映ることがあるため、特に注意が必要です。
求職者等へのセクハラ防止
2026年10月1日から、面接やインターンシップなどの場面での求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置がすべての事業主の義務になりました。オンライン面接でも、容姿や服装、私生活に関する発言、面接後の私的な連絡などは厳禁です(カスハラ対策・求職者等へのセクハラ防止の義務化)。
事前に決めておくルール
| 項目 | 決めること | 例 |
|---|---|---|
| ツール | 使うWeb会議ツール、会社のアカウントで発行するか | 会社契約のアカウントでURLを発行。個人アカウントは使わない |
| 面接官 | 人数、役割(進行・記録) | 2名。1名が進行、1名が記録 |
| 録画・録音 | するか、しないか。する場合の目的・保存期間・閲覧者 | 原則しない。する場合は同意を得て、選考終了後3か月で削除 |
| 本人確認 | 確認の方法 | 事前提出の写真と照合、冒頭に氏名と生年月日を確認 |
| 通信トラブル | 連絡方法と再開の手順 | 5分以内に再接続できなければ電話で連絡、日程を再調整 |
| 評価 | 評価シートの記入の時期 | 面接終了後30分以内に各自記入してから話し合う |
録画・録音の扱い
録画する目的をはっきりさせる
録画の目的には、面接に参加できなかった役員が後で確認する、評価の振り返りに使う、面接官の研修に使う、などがあります。目的が決まらないなら、録画しないのが基本です。面接官の研修用に使う場合は、選考とは別の目的になるため、そのことも含めて伝える必要があります。
同意の取り方
- 面接案内のメールで事前に伝える:「選考の公平性のため、面接を録画します。録画は面接官と役員のみが視聴し、選考終了後3か月以内に削除します」
- 面接の冒頭で口頭でも確認する:録画を開始する前に「録画してもよろしいですか」と確認し、了承を得てから開始する
- 同意しない場合の扱いを決めておく:録画せずにメモで対応する。同意しないことで評価を下げない
応募者は、選考で不利になることを恐れて「同意しない」と言いにくい立場にあります。録画しない選択肢があることを、案内の段階で明確に伝えましょう。
録画データの管理
- 保存場所は会社の管理するストレージに限定し、個人のPCやスマートフォンに保存しない
- 閲覧できる人を決め、共有リンクは期限付き・社内限定にする
- 保存期間を過ぎたら削除し、削除した日を記録する
- Web会議ツールの自動文字起こしやAI要約を使う場合は、データの保存先や学習への利用の有無など、サービスの利用条件を確認する(面接の記録をAIで整理する)
応募者の個人情報の管理台帳には、録画データも記載しておきます(個人情報管理台帳、個人情報・マイナンバー管理の基本)。
本人確認となりすまし防止
オンライン面接では、別人が受験する、回答を横で誰かが教えるといったリスクがあります。ただし、確認のために必要以上の個人情報を集めないことも大切です。
| 方法 | 取得する情報 | 注意点 |
|---|---|---|
| 事前提出の写真と照合 | 応募書類の写真 | もっとも負担が少ない |
| 冒頭で氏名・生年月日を確認 | 応募書類と同じ情報 | 新たな情報は取得しない |
| 身分証を画面に提示してもらう | 氏名・顔写真 | 画面の録画・スクリーンショットはしない。本籍など必要のない部分は見ない・控えない |
| 最終面接は対面にする | — | 内定前に一度は対面で会う運用にすると確実 |
身分証の写しの提出を求めるのは、採用が決まってからで十分です。入社手続きで必要な書類は「入社手続きの全体像」で確認してください。外国人の応募者の就労資格の確認も、内定前後の手続きで行います(外国人を雇うときの手続き)。
当日の進め方
事前案内に書くこと
- 日時、所要時間、URL、パスコード
- 推奨する環境(カメラとマイクが使えること、通信環境の安定した場所)
- 録画の有無と、する場合の目的・保存期間
- 通信が切れた場合の連絡先(電話番号)
- 背景をぼかす・バーチャル背景を使ってよいこと
面接の流れ(30〜45分)
- 接続確認と音声のチェック(2分)
- 面接官の紹介、本人確認、録画の確認(3分)
- 会社・仕事の説明(5〜10分)
- 質問(15〜20分)。全員に同じ質問をする
- 応募者からの質問(5〜10分)
- 今後の流れと結果連絡の時期の説明(2分)
画面に映るものへの配慮
- 部屋の様子、同居家族の声や姿、ペットなどは、評価にも質問にも使わない
- 「ご家族はいらっしゃいますか」「ご実家ですか」などの質問はしない
- 服装や容姿についての発言はしない
- バーチャル背景や背景ぼかしを使っていても、評価に影響させない
通信トラブルへの対応
- 音声が途切れた場合は、チャットで「聞こえにくいので再接続をお願いします」と伝える
- 5分以内に再接続できなければ電話で連絡し、続けるか日程を再調整するかを決める
- 通信トラブルによる中断を評価の対象にしない
面接官向けのチェックリスト
- 会社のアカウントでURLを発行した
- 録画の有無と、する場合の同意の取り方を確認した
- 評価シートと質問項目を手元に用意した(面接評価シート)
- 面接中に他のアプリの通知が表示されないようにした
- 背景に社内の機密情報が映らないことを確認した
- 面接後30分以内に評価シートを記入する時間を確保した
まとめ
- 応募者の情報は、目的を明らかにして必要な範囲で集める(職業安定法5条の5、個人情報保護法17条・21条)
- 録画・録音は、目的・保存期間・閲覧者を事前に伝えて同意を得てから。同意しない人を不利に扱わず、保存期間が過ぎたら削除する
- 本人確認は、写真との照合と最小限の確認で行い、身分証の画像は保存しない。内定前に一度は対面で会う運用も有効
- 画面に映る自宅や家族の様子は評価・質問の対象にしない。求職者等へのセクハラ防止は2026年10月から義務