中小企業の面接の進め方と評価シート:聞いてはいけない質問と公正採用選考
少人数の会社でも実践できる面接の進め方と評価シートのつくり方を解説します。厚生労働省が示す「就職差別につながるおそれのある14事項」をもとに、面接で聞いてはいけない質問と言い換えの例も整理しました。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で採用面接を設計・運営する人事担当者・経営者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了9分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 面接は「評価項目を先に決める→全員に同じ質問をする→シートで記録する」の順で設計すると、判断のぶれが減る
- 本籍・家族・宗教・支持政党・尊敬する人物・愛読書などは、適性・能力と関係がなく、聞いてはいけない
- 求職者の個人情報は、業務の目的に必要な範囲で集めて管理するのが職業安定法のルール
中小企業の採用面接は、社長や現場の責任者が「感覚」で判断していることが少なくありません。悪いことではありませんが、面接官によって評価がばらつき、採用後に「思っていた人と違った」となる原因にもなります。
この記事では、少人数の会社でもすぐに取り入れられる面接の進め方と評価シートのつくり方、そして面接で聞いてはいけない質問を整理します。
面接の前に決めておくこと
求める人物像を3〜5項目に絞る
評価項目が多すぎると、面接官が覚えきれずに結局「印象」で決めてしまいます。募集する仕事で本当に必要な要素を3〜5項目に絞りましょう。
| 評価項目の例 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 業務経験・スキル | 募集業務に近い経験の有無、具体的な実績 |
| コミュニケーション | 質問の意図をつかみ、わかりやすく説明できるか |
| 主体性 | 自分で考えて行動した経験があるか |
| 自社とのなじみ | 働き方・価値観が会社の方針と合うか |
| 学ぶ姿勢 | 新しい知識の習得に前向きか |
「自社とのなじみ」は、面接官の好みに流れやすい項目です。会社として大切にしている行動(例:報連相をこまめにする、顧客の声を優先する)に言い換えておくと、判断がぶれにくくなります。
募集時に労働条件を明示する
求人票や募集広告でも、業務内容・労働時間・賃金などの労働条件を明示する必要があります(職業安定法5条の3)。2024年4月からは、募集時にも「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」、有期契約の場合は「更新上限の有無と内容」の明示が求められています。
面接の進め方
基本の流れ(1回30〜60分)
- アイスブレイク(3分):来社のお礼、面接の流れの説明
- 会社・仕事の説明(5〜10分):仕事内容、働き方、入社後の流れ
- 質問(20〜30分):評価項目ごとに用意した質問をする
- 応募者からの質問(5〜10分):疑問を解消してもらう
- 今後の連絡(2分):結果連絡の時期と方法を伝える
全員に同じ質問をする
評価のばらつきを減らすいちばんの方法は、評価項目ごとに質問をあらかじめ決めて、全員に同じ順番で聞くことです(構造化面接と呼ばれます)。
質問は「過去の行動」を聞く形にすると、具体的な答えが返ってきやすくなります。
- 「前職で、業務の進め方を自分から改善した経験があれば教えてください」
- 「そのとき、周囲の人にはどのように説明しましたか」
- 「結果はどうなりましたか。今ならどうしますか」
面接官は2人以上が望ましい
1人だと見落としや思い込みが起きやすくなります。2人で面接し、それぞれがシートに記入してから話し合うと、判断の根拠を言葉にできます。
評価シートのつくり方
評価シートは、評価項目ごとに「5段階の点数」と「根拠となった発言のメモ」を書く形が使いやすいです。
| 評価項目 | 点数(1〜5) | 根拠(発言・行動のメモ) |
|---|---|---|
| 業務経験・スキル | _ | |
| コミュニケーション | _ | |
| 主体性 | _ | |
| 自社とのなじみ | _ | |
| 総合評価 | 採用/保留/不採用 |
点数の目安(例:5=期待を大きく上回る、3=期待どおり、1=期待を大きく下回る)をシートに書いておくと、面接官ごとの甘辛の差が小さくなります。
評価シートや面接メモも、応募者の個人情報です。保管場所と保存期間、不採用者の書類の扱い(返却・廃棄)を社内で決めておきましょう。
面接で聞いてはいけない質問
厚生労働省は、応募者の適性と能力だけを基準とする「公正な採用選考」を求めています。次の14事項は、就職差別につながるおそれがあるとして、応募用紙に書かせたり、面接で尋ねたりしないよう示されています。
本人に責任のない事項
- 本籍・出生地に関すること(戸籍謄本や本籍が記載された住民票の提出を含む)
- 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、学歴、収入、資産など)
- 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)
- 生活環境・家庭環境などに関すること
本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)
- 宗教に関すること
- 支持政党に関すること
- 人生観・生活信条に関すること
- 尊敬する人物に関すること
- 思想に関すること
- 労働組合への加入状況や活動歴、学生運動など社会運動に関すること
- 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
採用選考の方法
- 身元調査などの実施
- 適性・能力と関係のない事項を含む応募書類の使用
- 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
ついしてしまいがちな質問と言い換え
| 避けたい質問 | 問題点 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 「ご両親は何をされていますか」 | 家族に関すること | 聞かない |
| 「出身はどちらですか」 | 本籍・出生地に関すること | 聞かない(雑談でも避ける) |
| 「尊敬する人は誰ですか」 | 思想・信条に関すること | 「仕事で大切にしていることは何ですか」 |
| 「愛読書は何ですか」 | 思想・信条に関すること | 「業務に役立てている情報源はありますか」 |
| 「結婚や出産の予定はありますか」 | 適性・能力と関係がなく、性別による差別につながるおそれ | 「入社後の勤務時間や働き方で確認したいことはありますか」 |
| 「持ち家ですか」 | 住宅状況に関すること | 聞かない |
結婚・出産の予定を女性にだけ尋ねることは、男女雇用機会均等法が禁じる性別による差別にあたるおそれもあります。雑談のつもりでも、応募者にとっては評価の一部に感じられるものです。
個人情報は必要な範囲で集める
職業安定法では、会社が求職者の個人情報を集めるときは、業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして集め、適正に管理することが求められています。応募書類の様式も、上の14事項を含んでいないか見直しましょう。
面接後の対応
- 結果連絡:伝えた期日までに連絡する。遅れる場合は途中でも連絡を入れる
- 内定通知:労働条件を書面で示し、承諾の意思を確認する
- 不採用者の書類:あらかじめ定めた方法で返却・廃棄する
内定後の手続きは「入社手続きの全体像」、労働条件の書き方は「労働条件通知書の書き方」を参考にしてください。
まとめ
- 評価項目を3〜5個に絞り、全員に同じ質問をして評価シートに根拠を残す
- 本籍・家族・住宅・宗教・支持政党・尊敬する人物・愛読書などは聞かない
- 応募書類と個人情報の扱いも、公正採用選考の観点から見直す