介護の個別周知・意向確認と40歳の情報提供の資料をAIで作る:自社の制度に合わせた案内と面談メモの手順
2025年4月から、介護に直面した旨を申し出た従業員への個別周知・意向確認と、40歳前後の従業員への情報提供が会社の義務になりました。その案内資料と面談メモを、生成AIで自社の規程に合わせて下書きする手順を解説します。法令で求められる事項との照合と、家族の状態を入力しない注意点もまとめます。
- 対象読者
- 介護に直面した従業員への説明や、40歳になる従業員への制度の案内を、一人で準備している従業員30〜300名の企業の人事・労務担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 介護に直面した旨の申出があったら、介護休業などの制度、申出先、介護休業給付金を個別に知らせ、利用の意向を確認する。40歳前後の従業員には、同じ内容を早めに情報提供する
- AIには、自社の規程の要点から「従業員向けのやさしい案内」と「面談の進行メモ」を作らせる。法令で知らせるべき事項が入っているかは人が照合する
- 介護が必要な家族の病名・要介護度・住所、従業員の氏名はAIに入力しない。資料は個人の情報を含まない共通版として作る
「親が倒れて、来週から休むかもしれません」。介護の相談は突然来ます。そのときに、制度を一から調べて説明資料を作るのは大変です。
2025年4月の育児・介護休業法の改正で、会社には、介護に直面した従業員への個別周知・意向確認と、40歳前後の従業員への早期の情報提供が義務づけられました。この記事では、その案内資料と面談メモを、生成AIで自社の制度に合わせて下書きする手順を紹介します。制度の内容は介護離職を防ぐ会社の対応で詳しく解説しています。
会社がやること
| 場面 | 会社がやること | 時期 |
|---|---|---|
| 介護に直面した旨の申出があったとき | 制度の内容、申出先、介護休業給付金を個別に知らせ、利用の意向を確認する | 申出を受けたあと速やかに |
| 40歳前後 | 同じ事項を情報提供する | 40歳に達する日の属する年度、または40歳に達した日の翌日から1年間のいずれか |
個別周知の方法は、面談(オンラインを含む)、書面の交付、本人が希望した場合のFAX・電子メールなどです。制度の利用を控えさせるような説明をしてはいけません(厚生労働省「改正内容の解説」)。
AIに任せること・任せないこと
| 作業 | AIの使い方 | 人が行うこと |
|---|---|---|
| 案内資料の下書き | ○ 自社の規程の要点から、やさしい言葉の案内を作らせる | 規程・労使協定と数字や条件が合っているか照合する |
| 面談の進行メモ | ○ 聞くこと・伝えることの順番を整理させる | 面談で本人の事情を聞き、記録する |
| 法令で知らせる事項の確認 | 参考のみ | 厚生労働省の資料で確認する |
| 個別の事情への判断 | 使わない | 休業の期間、勤務の調整は本人と話して決める |
入力しない情報
資料は「誰にでも渡せる共通版」として作ります。個人の事情は面談のときに人が聞き取り、記録は社内で保管します。
手順1:自社の制度の要点をまとめる
AIに渡すのは、規程の条文そのものよりも、要点を箇条書きにしたものが扱いやすくなります。
- 介護休業:対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割できる
- 介護休暇:年5日(対象家族が2人以上なら10日)、時間単位で取れる
- 残業・深夜業の制限、短時間勤務などの措置:自社で選んでいる措置
- 申出先:部署名・担当者・連絡方法
- 労使協定で対象外にしている従業員の範囲
- 介護休業給付金:雇用保険から支給される(申請は会社経由)
自社で法律を上回る制度(日数の上乗せ、有給の特別休暇など)があれば、それも書きます。
手順2:案内資料を作らせる
あなたは中小企業の人事担当者を支援するアシスタントです。
次は当社の介護に関する制度の要点です。介護に直面した従業員に渡す
A4・1〜2枚の案内を、やさしい言葉で作ってください。
条件:
・「介護休業」「介護休暇」「残業などの制限」「短時間勤務など」
「介護休業給付金」「相談・申出の窓口」の見出しで分ける
・介護休業は「介護の体制を整えるための期間」であることを説明する
・制度の利用を控えさせるような表現は使わない
・要点にない数字や条件は書かない。不明な点は【要確認】と書く
(手順1の要点を貼る)
「要点にない数字は書かない」と指示すると、AIが一般的な知識で数字を補うのを防ぎやすくなります。それでも出力の数字は、必ず規程と照らし合わせます。
手順3:40歳の情報提供版に作り替える
40歳前後の従業員は、まだ介護に直面していない人がほとんどです。同じ内容を、早めに知っておく意味が伝わる形に変えます。
上の案内を、40歳になる従業員向けの情報提供の資料に作り替えてください。
「今すぐ使う制度ではないが、いざというときに知っておくと離職を防げる」
という趣旨の導入文を加え、相談窓口を目立つ位置に置いてください。
40歳は介護保険の第2号被保険者になり、給与から介護保険料の控除が始まる年齢です。控除の開始に合わせて案内すると、対象者の漏れを防げます(→40歳からの介護保険料)。
手順4:面談の進行メモを作らせる
介護に直面した旨の申出を受けた従業員と面談するときの進行メモを作ってください。
「最初に伝えること」「制度の説明」「本人に確認すること」
「意向の確認」「次の連絡」の順に、話す内容を箇条書きにしてください。
本人の家族の病状を詳しく聞き出す項目は入れないでください。
面談の記録は、厚生労働省の様式例をもとにした社内の書式に残します。当サイトの介護・育児の意向確認書や介護両立の面談記録も使えます。
案内を届ける方法と時期を決める
資料ができても、届ける仕組みがないと活用されません。次のように、場面ごとに届け方を決めておきます。
| 場面 | 届け方の例 | 担当 |
|---|---|---|
| 介護の相談・申出を受けたとき | 面談で案内資料を渡して説明し、意向確認の記録を残す | 人事担当者 |
| 40歳になる従業員 | 年度初めに対象者を抽出し、資料をメールで送る | 人事・給与担当者 |
| 全従業員向け | 社内ポータルに資料を掲載し、相談窓口を周知する | 総務担当者 |
| 管理職向け | 部下から相談を受けたときの対応を研修で伝える | 人事担当者 |
管理職が最初の相談を受けることも多いため、「相談を受けたら人事につなぐ」「制度の利用を控えさせる言い方をしない」の2点を、管理職向けの短い資料にしておくと安心です。これもAIで、案内資料をもとに管理職向けに書き直させると作りやすくなります。
上の案内をもとに、部下から介護の相談を受けた管理職向けの
「最初の対応」メモを作ってください。
「聞くこと」「言ってはいけないこと」「人事への連絡方法」の3つに絞ってください。
法令の事項と照合する
AIの出力を使う前に、次を確かめます。
- □ 介護休業・介護両立支援制度等の内容が書かれているか
- □ 申出先(部署・担当者)が書かれているか
- □ 介護休業給付金について書かれているか
- □ 日数・回数・申出期限が自社の規程と一致しているか
- □ 労使協定で対象外にしている従業員の扱いが正しいか
- □ 制度の利用を控えさせるような表現がないか
よくある失敗
| 失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| AIの一般的な説明をそのまま渡す | 自社の制度と違う日数や条件が伝わる | 要点にない数字は書かせず、規程と照合する |
| 相談者の事情を詳しく入力する | 家族の病状などの個人情報がAIに渡る | 共通版の資料だけAIで作る |
| 40歳の情報提供を忘れる | 義務を果たせず、制度を知らないまま離職につながる | 介護保険料の控除開始と合わせて案内する |
| 面談で休業を勧めすぎる、控えさせる | 本人の意向と違う働き方になる | 制度を説明し、意向を確認する |
まとめ
- 介護に直面した旨の申出があったら、制度・申出先・介護休業給付金を個別に知らせ、意向を確認する。40歳前後の従業員にも情報提供する
- AIには、自社の規程の要点から案内資料と面談の進行メモを下書きさせる
- 日数・条件・法令で知らせる事項は、人が規程と厚生労働省の資料(「介護休業制度」特設サイトなど)で照合する
- 従業員の氏名や家族の病状・要介護度は入力せず、資料は共通版として作る
両立支援の案内や面談記録の作成にAIをどう組み込むか相談したいときは、Otsumu株式会社のAIツール診断をご利用ください。
この記事で使えるテンプレート
労務 育児・介護 個別周知・意向確認書 育児・介護休業法で義務づけられた個別周知・意向確認・意向聴取を、面談または書面で行うための確認書です。妊娠・出産等の申出時、子が3歳になる前、介護に直面したときの3場面に対応し、本人の回答欄も付けています。 労務 介護両立 面談記録(介護に直面した旨の申出時・40歳の情報提供の記録つき) 家族の介護に直面した従業員と面談し、介護休業制度等の個別周知・意向確認を記録するためのシートです。介護の状況、使う予定の制度、勤務の調整、介護休業給付金の説明欄に加え、40歳到達時の情報提供の実施記録と、雇用環境整備の措置の確認欄を付けています。この記事に出てくる用語
- 介護休暇
- 要介護状態の家族の介護や世話のために、年5日(対象家族が2人以上なら年10日)まで取得できる休暇です。時間単位でも取得できます。
- 介護休業
- 要介護状態にある家族を介護するための休業で、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます。
- 介護休業給付
- 雇用保険の被保険者が家族の介護のために介護休業を取ったときに支給される給付です。休業開始時賃金の67%が目安で、対象家族1人につき93日まで支給されます。
- 個別周知・意向確認
- 妊娠・出産や介護に直面したことを申し出た従業員に対して、会社が両立支援制度を個別に知らせ、利用の意向を確認する義務です。
- 雇用保険
- 労働者が失業したときや、育児・介護で休業したときなどに給付を行う公的保険です。週20時間以上働き、31日以上雇用見込みがある人が原則として加入します。
- 就業規則
- 労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
- 深夜業
- 午後10時から午前5時までの間の労働です。25%以上の割増賃金が必要で、深夜業に常時従事する人には6か月ごとの健康診断が義務づけられています。
- 短時間勤務制度
- 3歳に満たない子を養育する労働者などが申し出たときに、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮する制度です。育児・介護休業法で会社に義務づけられています。
- 労使協定
- 会社と、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数代表者)との間で結ぶ書面の協定です。法律の原則を例外的に変える効果があります。
出典・参考資料
この業務、AIでどこまで減らせるか診断します。Otsumu の「AIツール診断」で、自社の業務フローから自動化できる作業を洗い出します。
無料で相談する