年間の安全衛生計画をAIで下書きする:第14次労働災害防止計画の重点事項を参考に、目標・実施事項・評価の表を作る
安全衛生に関する計画の作成・実施・評価・改善は、衛生委員会(安全委員会)で調査審議する事項です。国の第14次労働災害防止計画の重点事項を参考に、自社の労災やヒヤリハットの傾向から年間計画の目標・実施事項・評価の表を生成AIで下書きし、委員会で決める手順を整理します。
- 対象読者
- 衛生委員会で来年度の安全衛生計画を審議する予定の、従業員30〜300名の企業の総務・労務担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 労働安全衛生規則は、安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関することを、衛生委員会・安全委員会の付議事項としている
- 第14次労働災害防止計画(2023〜2027年度)は、転倒や腰痛など作業行動に起因する災害、高年齢労働者の災害、労働者の健康確保などを重点事項に挙げている。自社の実態に合うものを選ぶ
- AIには、匿名化した労災・ヒヤリハットの件数の傾向から、目標・実施事項・時期・担当・評価方法の表の叩き台を作らせる。被災者の情報や健康診断の個人の結果は入力しない
衛生委員会の議題で「来年度の安全衛生計画」が毎年出てくるのに、前年の計画をほぼそのまま写しているという会社は少なくありません。計画が実態に合っていないと、評価も形だけになります。
この記事では、国の第14次労働災害防止計画を参考に、自社の労災やヒヤリハットの傾向から年間の安全衛生計画を生成AIで下書きする手順を整理します。衛生委員会の運営そのものは衛生委員会の運営、議事録づくりは衛生委員会の議事録をAIで作るを参照してください。
安全衛生計画と委員会の関係
労働安全衛生規則は、衛生委員会で調査審議する事項に「安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関すること」を含めています(第22条)。安全委員会でも、安全に係る部分について同じ事項が付議事項になっています(第21条)。
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生委員会の設置が義務です。年間の計画を委員会で審議し、実施し、翌年に評価して見直す流れを作ると、委員会の議題も組み立てやすくなります。50人未満の事業場でも、計画を作っておくと取組を続けやすくなります。
国の計画の重点事項を参考にする
厚生労働省は、2023年度から2027年度までの5年間を期間とする第14次労働災害防止計画を定めています。重点事項は次の8つです。
| 重点事項 |
|---|
| 1 自発的に安全衛生対策に取り組むための意識啓発 |
| 2 労働者(中高年齢の女性を中心に)の作業行動に起因する労働災害防止対策の推進 |
| 3 高年齢労働者の労働災害防止対策の推進 |
| 4 多様な働き方への対応や外国人労働者等の労働災害防止対策の推進 |
| 5 個人事業者等に対する安全衛生対策の推進 |
| 6 業種別の労働災害防止対策の推進 |
| 7 労働者の健康確保対策の推進 |
| 8 化学物質等による健康障害防止対策の推進 |
計画は、事業者が取り組む割合などの目標(アウトプット指標)として、たとえば転倒災害対策(ハード・ソフト両面からの対策)に取り組む事業場の割合を2027年までに50%以上とすることや、メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を2027年までに80%以上とすることを掲げています。国の目標をそのまま自社の目標にする必要はありませんが、何に力を入れるべきかを考える参考になります。
AIに任せること・任せないこと
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| AIに任せる | 労災・ヒヤリハットの件数の傾向の整理、重点テーマの候補、目標・実施事項・時期・担当・評価方法の表の叩き台、委員会への説明文 |
| 人が決める | 重点テーマ、目標の数値、予算、担当者、委員会での決定 |
| AIに入力しない | 被災者の氏名・傷病の詳細、健康診断やストレスチェックの個人の結果、面接指導の記録 |
AIに渡すのは、「転倒 4件(うち通路 3件)」のような件数と分類だけで足ります。
手順1:自社の傾向を整理する
過去1〜3年分の労災、ヒヤリハット、健康診断の集団の結果(有所見率など)を、件数と分類にまとめます。
当社(従業員120名、倉庫と事務所がある卸売業)の過去2年の
労災とヒヤリハットの件数です。
(例:労災 転倒4件・腰痛2件・切れ・こすれ1件、ヒヤリハット 通路でのつまずき12件、
フォークリフトとの接触の危険5件、脚立からの転落の危険3件)
この傾向から、来年度の安全衛生計画で重点にすべきテーマの候補を3つ挙げ、
それぞれの理由を書いてください。
厚生労働省の第14次労働災害防止計画の重点事項のどれに関係するかも書いてください。
AIが挙げた候補は、現場の感覚と合っているかを、職場巡視をしている担当者や産業医の意見と照らして確認します。全国の傾向は、厚生労働省の「労働災害発生状況」でも確認できます。
手順2:計画の表を作る
重点テーマが決まったら、表の形にします。AIには枠組みを作らせ、数値と担当者は人が入れます。
| 重点テーマ | 目標 | 実施事項 | 時期 | 担当 | 評価方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| 転倒の防止 | 転倒による休業災害0件 | 通路の段差の解消、4S活動、靴の見直し | 4〜6月 | 総務・各職場 | 労災件数、ヒヤリハット件数 |
| 腰痛の予防 | 腰痛の訴えの減少 | 重量物の取扱いの見直し、作業前の体操 | 通年 | 倉庫責任者 | 健康相談の件数、職場巡視の記録 |
| メンタルヘルス | ストレスチェックの受検率向上 | 実施の周知、集団分析の結果の職場への説明 | 9〜12月 | 人事・産業医 | 受検率、集団分析の結果 |
| 熱中症の予防 | 熱中症による休業0件 | 暑さ指数の確認、休憩場所の整備 | 5〜9月 | 総務 | 発生件数、点検記録 |
評価方法を最初に決めておくのが大切です。翌年の評価のときに「何で効果を測るか」で迷わずに済みます。
手順3:月ごとの予定に落とし込む
年間計画を、月ごとの委員会の議題や行事と結びつけます。
| 月 | 行事・議題の例 |
|---|---|
| 4月 | 計画の周知、新入社員の雇入れ時教育 |
| 6〜7月 | 熱中症予防の準備、全国安全週間(7月)の準備 |
| 9〜10月 | 全国労働衛生週間(10月)、ストレスチェック |
| 12〜1月 | 年末年始の災害防止、上半期の評価 |
| 3月 | 年間の評価と次年度計画の審議 |
雇入れ時教育の記録は安全衛生教育の実施記録が使えます。職場の危険の洗い出しにはリスクアセスメントをAIで進めるも参考にしてください。
手順4:委員会で審議し、評価する
AIで作った表は、あくまで委員会に出す原案です。委員会では、現場の委員から「この実施事項は現実的か」「担当者の負担はどうか」を聞き、修正して決定します。
年度末には、評価方法に沿って結果を確認します。
- 目標を達成できたか、できなかった場合の理由
- 実施事項を予定どおり行えたか
- 新しく出てきた課題(新しい設備、高年齢の従業員の増加など)
評価の結果は、次年度の計画の出発点になります。評価の文章の下書きもAIに任せられますが、数字と結論は人が確認します。
AIの出力で注意すること
- 国の計画の数値目標を、自社の義務のように書くことがある。国の目標は参考であり、自社の目標は委員会で決める
- 実施事項が多すぎて、担当者の負担を考えていない計画になりやすい。重点テーマは3〜4つに絞る
まとめ
- 安全衛生に関する計画の作成・実施・評価・改善は、衛生委員会・安全委員会の付議事項
- 国の第14次労働災害防止計画の8つの重点事項を参考に、自社の労災・ヒヤリハットの傾向から重点テーマを選ぶ
- AIには傾向の整理、重点テーマの候補、計画の表の枠組みを任せ、目標・担当・決定は人と委員会が行う
- 被災者の情報や、健康診断・ストレスチェックの個人の結果はAIに入力しない
安全衛生の計画づくりや委員会の資料作成にAIをどう使うか相談したいときは、Otsumu株式会社のAIツール診断をご利用ください。
この記事で使えるテンプレート
労務 安全衛生教育 実施記録 雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育や特別教育などを、受講者ごとに1行で記録する一覧表です。教育の種類、実施日、科目(雇入れ時教育の8項目)、時間、講師、確認方法、保存期限まで記録でき、特別教育の記録の3年保存にも使えます。この記事に出てくる用語
- 安全衛生教育
- 労働災害を防ぐために、雇入れ時や作業内容の変更時などに行う教育です。労働安全衛生法で、業種や規模にかかわらず会社に義務づけられています。
- 衛生委員会
- 常時50人以上の労働者を使用する事業場で設置が義務づけられた、労働者の健康障害の防止などについて労使で調査審議する委員会です。毎月1回以上開催します。
- 産業医
- 労働者の健康管理について専門的な立場から指導・助言を行う医師です。常時50人以上の労働者を使用する事業場は選任が義務づけられています。
- ストレスチェック
- 労働者に心理的な負担の程度を把握するための検査を年1回行い、本人に結果を通知して、セルフケアや職場環境の改善につなげる制度です。
- 面接指導
- 長時間労働などで疲労が蓄積した労働者や、ストレスチェックで高ストレスと判定された労働者に、医師が面談して必要な指導を行うことです。
出典・参考資料
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