労務 #給与計算#社会保険#雇用保険#源泉徴収#住民税

月次の給与計算の流れとチェックポイント|締め日から振込・給与明細・納付まで

毎月の給与計算を、締め・勤怠集計・支給額の計算・社会保険料と雇用保険料の控除・源泉所得税・住民税・振込・給与明細・納付の順に整理。令和8年度の雇用保険料率や保険料の端数処理など、ミスが起きやすいポイントも確認します。

対象読者
従業員30〜300名の企業で毎月の給与計算を担当する労務・経理担当者
難易度
基本
所要時間
読了9分
最終確認日

この記事のポイント

  • 給与計算は「勤怠の締め → 支給額 → 控除額 → 振込・明細 → 翌月の納付」の順に進める。毎月同じ手順書とチェックリストで回すのがミス防止の近道
  • 社会保険料は前月分を控除するのが原則(翌月徴収)。雇用保険料は毎月の賃金総額に料率をかけて計算する(令和8年度の一般の事業は労働者負担5/1,000)
  • 源泉所得税と住民税は原則として翌月10日、社会保険料は翌月末日が納付期限

給与計算は毎月必ずやってくる業務です。ひとつひとつの作業は難しくなくても、勤怠・保険料・税金・振込と工程が多く、どこか1か所の確認漏れがそのまま従業員の手取りのミスになります。

この記事では、月次の給与計算を時系列で整理し、工程ごとのチェックポイントをまとめます。給与ソフトやクラウドを使っている会社でも、「ソフトに何を入れ、何を確認するか」の整理に使えます。

月次の給与計算の全体像

締め日が月末、支給日が翌月25日の会社を例にすると、1か月の流れは次のとおりです。

時期 作業 主な確認先
締め日〜翌営業日 勤怠の締め・集計 勤怠システム、各部署
支給日の7〜10日前 変動情報の反映(入退社・昇給・住所・扶養など) 人事情報、届出の控え
支給日の5〜7日前 支給額・控除額の計算とダブルチェック 給与ソフト
支給日の3営業日前まで 振込データの送信(総合振込) 銀行の締切時刻
支給日まで 給与明細の交付 本人
翌月10日 源泉所得税・住民税の納付 税務署・市区町村
月末 社会保険料の納付(口座振替が一般的) 年金事務所

振込データの締切は銀行やサービスによって異なります。自社の「支給日から逆算した締切日」をカレンダーに書き出しておくと、毎月の段取りが安定します。

ステップ1:勤怠の締めと集計

集計する項目

給与計算の土台は勤怠です。最低限、次の項目を従業員ごとに集計します。

  • 出勤日数、欠勤日数、遅刻・早退の時間
  • 所定時間外労働の時間、法定時間外労働の時間、深夜労働の時間、法定休日労働の時間
  • 有給休暇の取得日数(年5日の取得義務の管理にも使う)
  • 特別休暇・休職などの不就労

法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた時間と、会社の所定労働時間を超えただけの時間(法定内残業)は、割増の扱いが異なります。区分して集計してください。計算方法は残業代(割増賃金)の正しい計算で詳しく解説しています。

締めのチェックポイント

  • 打刻漏れ・申請漏れが残っていないか(承認待ちのまま締めていないか)
  • 打刻時刻と残業申請の時刻に大きなずれがないか
  • 時間外労働が36協定の上限に近い人、月80時間を超えた人がいないか

労働時間は客観的な方法で把握することが求められています。詳しくは労働時間の適正な把握義務を参照してください。

ステップ2:支給額の計算

変動情報を先に反映する

計算を始める前に、その月の変動を反映します。ここでの漏れが最も多いミスです。

変動の種類 給与計算への影響
入社・退職 日割り計算、保険料の控除開始・終了
昇給・降給、手当の変更 基本給・手当の改定、随時改定(月額変更届)の確認
住所・通勤経路の変更 通勤手当の変更
扶養親族の増減 家族手当、源泉所得税の扶養親族等の数
産休・育休・休職 無給の扱い、保険料免除の有無

固定的賃金(基本給・手当など)が変わった場合は、3か月後に標準報酬月額が大きく変わる可能性があります。随時改定の対象になるかを判定する仕組みは、算定基礎届の記事で確認できます。

支給額の計算

支給額は「固定的な支給(基本給・手当)+変動的な支給(残業代・休日手当など)-不就労控除(欠勤・遅刻など)」で計算します。欠勤控除の計算方法(日割り・時間割りの基準)は、就業規則・賃金規程の定めに従います。定めがあいまいな場合は、まず規程を整えましょう。

賃金は、通貨で、直接労働者に、全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うのが原則です(労働基準法第24条)。法令で定められたもの以外を控除する場合(社宅費、親睦会費など)は、労使協定が必要です。

ステップ3:社会保険料・雇用保険料の控除

健康保険・厚生年金保険・介護保険

社会保険料は、標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2 が従業員負担です。その月の実際の支給額ではなく、標準報酬月額を使う点が雇用保険料との大きな違いです。

  • 前月分を控除する:保険料は月単位で、日本年金機構は「5月の給料支払日には4月分の保険料を差し引く」と案内しています(いわゆる翌月徴収)
  • 料率の改定時期:協会けんぽの令和8年度の保険料率は、3月分(4月納付分)から改定されています。翌月徴収の会社では、4月支給の給与から新しい率になります
  • 介護保険料:40歳以上65歳未満の人が対象です。40歳に到達した月(誕生日の前日が属する月)の分から発生します
  • 子ども・子育て支援金:令和8年4月分の保険料から、健康保険料とあわせて徴収されています。詳しくは子ども・子育て支援金の給与計算への影響を参照してください

端数処理:給与から被保険者負担分を控除する場合、1円未満の端数は50銭以下は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げます。労使で特約がある場合は、特約に従った処理もできます。

雇用保険料

雇用保険料は、毎月の賃金総額(通勤手当なども含む)× 労働者負担の料率で計算します。標準報酬月額は使いません。

令和8年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)の料率は次のとおりです。

事業の種類 労働者負担 事業主負担 合計
一般の事業 5/1,000 8.5/1,000 13.5/1,000
農林水産・清酒製造の事業 6/1,000 9.5/1,000 15.5/1,000
建設の事業 6/1,000 10.5/1,000 16.5/1,000

令和7年度(一般の事業は労働者負担5.5/1,000)から引き下げられています。料率は年度ごとに見直されるため、毎年4月の給与の前に厚生労働省・労働局の案内で確認してください。

社会保険・雇用保険の資格取得・喪失の届出が済んでいないと、控除の開始・終了がずれます。入退社の月は、入社時の加入手続き・退職時の手続きとあわせて確認しましょう。

ステップ4:源泉所得税と住民税の控除

源泉所得税

源泉所得税は、その月の課税支給額から社会保険料等を差し引いた金額と、扶養親族等の数をもとに「給与所得の源泉徴収税額表」で求めます。

  • 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人は甲欄、提出していない人は乙欄を使います
  • 通勤手当は、非課税限度額の範囲内であれば課税支給額に含めません
  • 扶養親族の増減があった月は、申告書の提出を受けてから税額を変えます

年末調整の時期の変更点は、2026年(令和8年分)年末調整の変更点とスケジュールを参照してください。

住民税(特別徴収)

住民税は、市区町村から5月ごろに届く「特別徴収税額決定通知書」の月割額を、6月から翌年5月までの12回に分けて給与から控除します。年度の途中で入社・退職した人や、税額が変更された人の通知書を見落とさないようにしましょう。

ステップ5:振込・給与明細・帳簿

振込前のダブルチェック

計算が終わったら、振込前に次の点を確認します。

  • 前月と比べて差額が大きい人がいないか(差額一覧を出して理由を確認する)
  • 支給総額・控除総額・差引支給額の合計が、振込データの合計と一致しているか
  • 入社者・退職者・休職者が正しく含まれ(除かれ)ているか
  • 振込先口座の変更が反映されているか

給与明細の交付

給与等を支払う会社は、受給者に給与等の支払明細書を交付する義務があります(所得税法)。電子交付(Web明細)にする場合は、あらかじめ電磁的方法の種類と内容を示して、本人の承諾を得る必要があります。国税庁のQ&Aでは、令和5年度税制改正で、期限までに回答がない場合に承諾があったものとみなす取扱いが設けられたことも案内されています。承諾後でも、本人から請求があれば書面で交付します。

賃金台帳の記入と保存

会社は賃金台帳を作成し、労働日数・労働時間数・時間外労働時間数などを記入します。賃金台帳の保存期間は、法律上は5年ですが、経過措置により当分の間は3年です。給与ソフトのデータを台帳として使う場合も、必要な項目がそろっているかを一度確認しておきましょう。

ステップ6:翌月の納付

納付するもの 納付先 期限
源泉所得税 税務署 給与を支払った月の翌月10日
住民税(特別徴収分) 各市区町村 給与から徴収した月の翌月10日
健康保険・厚生年金保険料 日本年金機構 翌月末日(口座振替が一般的)
労働保険料(雇用保険・労災保険) 労働基準監督署・労働局等 年度更新で年1回(延納は最大3回)

期限が土日祝日にあたる場合は、翌営業日が期限です。給与の支給人員が常時10人未満の会社は、税務署に申請して承認を受けると、源泉所得税を半年ごとにまとめて納める「納期の特例」が使えます(1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日)。

労働保険料は毎月納付するのではなく、毎年6月1日〜7月10日の年度更新で精算します。毎月控除した雇用保険料の合計は、年度更新の確認にも使うので、月ごとに集計しておきましょう。

まとめ

  • 給与計算は「締め → 変動情報の反映 → 支給 → 控除 → チェック → 振込・明細 → 納付」の流れで、毎月同じ手順で回す
  • 社会保険料は標準報酬月額をもとに前月分を控除し、雇用保険料は毎月の賃金総額に料率をかける。料率は毎年度確認する
  • 源泉所得税・住民税は翌月10日、社会保険料は翌月末日が納付期限。月ごとのやることは月次業務カレンダーでも確認できる

給与計算の作業量を減らしたい場合は、給与計算・労務管理クラウドの選び方も参考にしてください。

出典・参考資料

無料メルマガ

法改正アラート:改正の1ヶ月前に「やることリスト」が届く

月1回の定期号と、施行直前号でお届けします。今月やること・新着テンプレートもまとめて確認できます。