年5日の有給休暇取得義務と管理簿の作り方|時季指定・計画年休・罰則を解説
年10日以上の有給休暇が付与される従業員には、年5日を確実に取得させる義務があります。対象者の考え方、時季指定と計画年休の使い方、年次有給休暇管理簿の記載事項と保存期間、罰則までを整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で勤怠・休暇管理を担当する人事・労務担当者
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この記事のポイント
- 年10日以上の有給休暇が付与される従業員には、付与日(基準日)から1年以内に5日を取得させる義務がある
- 本人の取得や計画年休で5日に届かない分は、会社が本人の意見を聴いて時季を指定する。時季指定をするなら就業規則への記載が必要
- 年次有給休暇管理簿(時季・日数・基準日)を従業員ごとに作り、保存する
2019年4月から、すべての会社に「年5日の年次有給休暇を確実に取得させる義務」が課されています。中小企業にも猶予はなく、守れなければ罰則の対象になります。10月は厚生労働省の「年次有給休暇取得促進期間」です。年度の後半に入ったこのタイミングで、取得状況を点検しておきましょう。
この記事では、年5日の取得義務の対象者、時季指定と計画年休の使い方、年次有給休暇管理簿の作り方を整理します。
年5日の取得義務とは
対象になる従業員
対象は、法定の年次有給休暇が10日以上付与される従業員です。管理監督者や有期雇用の従業員も含まれます。
| 区分 | 年10日以上付与されるタイミング |
|---|---|
| 正社員・フルタイムの従業員 | 入社6か月後(出勤率8割以上)の最初の付与から |
| 週4日勤務(週30時間未満) | 勤続3年6か月以上 |
| 週3日勤務(週30時間未満) | 勤続5年6か月以上 |
週30時間以上働く人は、週の所定労働日数にかかわらずフルタイムと同じ日数が付与されます。パート・アルバイトでも、勤続年数によって対象になる点に注意してください。
期限は「基準日から1年以内」
有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に、5日を取得させる必要があります。会社の年度(4月〜3月など)ではなく、従業員ごとの基準日で管理するのが原則です。
入社日ごとに基準日がばらばらだと管理が大変なため、基準日を全社で統一(例:毎年4月1日)する会社もあります。この場合、法定より前倒しで付与する必要があり、前倒しの方法によっては5日の取得期限の数え方に特例があります。詳しくは厚生労働省の「わかりやすい解説」で確認してください。
5日に数えられるもの・数えられないもの
| 5日に数えられる | 5日に数えられない |
|---|---|
| 本人が請求して取得した日 | 時間単位で取得した有給休暇 |
| 計画年休で取得した日 | 会社独自の特別休暇(夏季休暇・慶弔休暇など) |
| 会社が時季指定して取得させた日 | |
| 半日単位で取得した日(0.5日として) |
本人の取得と計画年休で5日に達していれば、会社が時季を指定する必要はありません。また、5日を超えて時季指定することはできません。
会社の時季指定
時季指定の手順
- 基準日から一定期間(例:半年)経過した時点で、取得日数が5日未満の人を抽出する
- 本人に、取得を希望する時季を聴く(意見聴取)
- 本人の希望をできるだけ尊重して、取得日を指定する
- 指定した日を本人に通知し、管理簿に記録する
意見聴取は面談のほか、メールや休暇計画表への記入でもかまいません。
就業規則への記載が必要
会社が時季指定を行う場合は、時季指定の対象者と方法を就業規則に記載しなければなりません。休暇は就業規則の絶対的必要記載事項だからです。規程例は次のとおりです。
年次有給休暇が10日以上与えられた労働者に対しては、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、労働者が年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得した日数分を5日から控除するものとする。
就業規則を変更したら、過半数代表者の意見書を添えて労働基準監督署に届け出ます(常時10人以上の事業場)。
計画年休(計画的付与)の活用
計画年休は、労使協定を結んで、会社があらかじめ有給休暇の取得日を決める制度です。
- 有給休暇のうち5日を超える部分が対象(5日は本人が自由に使える分として残す)
- 全社一斉、部署・班ごとの交代制、個人別の計画表などの方式がある
- 労使協定は労働基準監督署への届出は不要
夏季休暇や年末年始の前後に計画年休を組み込むと、連休をつくりつつ5日の取得義務も満たせます。
計画年休の日に、有給休暇の残日数が足りない従業員(入社して間もない人など)がいる場合は、特別休暇を与えるか、休業手当を支払うなどの対応が必要です。
年次有給休暇管理簿の作り方
記載事項
会社は、従業員ごとに年次有給休暇管理簿を作成しなければなりません。記載が必要な事項は次の3つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基準日 | 有給休暇を付与した日 |
| 日数 | 基準日から1年間に取得した日数(付与日数・残日数もあわせて管理すると便利) |
| 時季 | 実際に取得した日付 |
労働者名簿や賃金台帳とあわせて調製することもでき、勤怠システムで管理しても問題ありません。必要なときにいつでも出力できる状態にしておきます。
保存期間
管理簿は、有給休暇を与えた期間中と、その期間の満了後も保存が必要です。労働基準法の改正で保存期間は5年とされていますが、経過措置により当分の間は3年とされています。
罰則
| 違反の内容 | 罰則 |
|---|---|
| 年5日の有給休暇を取得させなかった | 30万円以下の罰金 |
| 時季指定を行うのに就業規則に記載していない | 30万円以下の罰金 |
| 本人が請求した時季に有給休暇を与えなかった(時季変更権の行使にあたらない場合) | 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
年5日の義務違反は、対象となる従業員1人につき1罪として扱われます。労働基準監督署の調査では、まず是正勧告で改善を求めるのが一般的ですが、管理簿がないと取得状況を説明できません。
担当者がやること(年間の流れ)
- 基準日ごとに対象者リストを作る
- 四半期ごと、または基準日から半年経過時点で取得日数を確認する
- 取得が少ない人とその上司に声をかける。必要に応じて時季指定する
- 管理簿を更新し、保存する
まとめ
- 年10日以上付与される従業員には、基準日から1年以内に5日を取得させる
- 足りない分は意見を聴いて時季指定。時季指定するなら就業規則に記載する
- 年次有給休暇管理簿(基準日・日数・時季)を作成し、保存する
付与日数や取得期限の確認には有給休暇 計算ツールが使えます。退職時の残日数の扱いは退職時の手続き一覧、残業時間の管理は36協定の基本と上限規制もあわせてご覧ください。