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ユニオン(合同労組)から団体交渉を申し入れられたときの初動|拒否してはいけない理由と回答までの手順

退職した元社員や在職中の社員が社外の労働組合(ユニオン)に加入し、団体交渉を申し入れてくることがあります。正当な理由のない団体交渉の拒否や不誠実な交渉は不当労働行為として禁止されています。申入書を受け取ってから第1回の交渉までにやること、してはいけない対応、交渉の進め方を整理します。

対象読者
労働組合がない従業員30〜300名の企業で、初めて団体交渉の申入書を受け取った労務担当者・経営者
難易度
応用
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • 社外の合同労組でも、自社の従業員が加入していれば団体交渉に応じる必要がある。正当な理由のない拒否や、形だけ応じて実質的に交渉しない不誠実団交は不当労働行為(労働組合法第7条第2号)
  • 申入書を受け取ったら、まず組合名・要求事項・回答期限を確認し、事実関係を調べ、日時・場所・出席者を書面で回答する。要求をそのまま受け入れる必要はないが、根拠を示して説明する姿勢が必要
  • 組合加入を理由とする不利益取扱いや、脱退の働きかけなども禁止。早い段階で弁護士や社会保険労務士への相談を検討する

ある日、聞き慣れない労働組合の名前で「団体交渉申入書」がFAXや郵便で届く。差出人は社外の合同労組(ユニオン)で、自社の社員や退職した元社員が加入したと書かれている――。労働組合のない会社にとって、初めての団体交渉は戸惑うことばかりです。

最初の対応を誤ると、それ自体が法律違反となり、紛争が長引きます。この記事では、申入書を受け取ってから第1回の交渉までにやることを整理します。

合同労組(ユニオン)とは

合同労組は、会社ごとではなく、地域や業種単位で、企業を問わず個人で加入できる労働組合です。社内に組合がなくても、従業員が1人で加入できます。

よくある誤解 実際
社外の組合だから交渉に応じなくてよい 自社の従業員が加入していれば、会社はその組合との団体交渉に応じる必要がある
組合員が1人だけなら相手にしなくてよい 人数にかかわらず、正当な理由なく拒むことはできない
自社の社員以外も加入している組合なので断れる 中央労働委員会は、その企業で働く労働者以外の者が組合に加入していることを理由とする拒否を、不当労働行為の例として挙げている

退職した元社員が、在職中の未払残業代や解雇・退職勧奨の経緯を問題にして加入するケースもあります。退職者に関する申入れを「もう社員ではない」という理由だけで拒否すると、争いになるおそれがあります。応じるかどうかは自己判断せず、専門家に相談してください。

禁止されている行為(不当労働行為)

労働組合法第7条は、使用者が次の行為をすることを禁止しています。

号 禁止される行為 例
第1号 組合員であることなどを理由とする解雇その他の不利益取扱い 組合加入を理由に配置転換・降格する
第2号 正当な理由のない団体交渉の拒否 申入れを無視する、形だけ応じて実質的に交渉しない(不誠実団交)
第3号 組合の結成・運営への支配介入 「組合を抜ければ考える」と脱退を働きかける
第4号 労働委員会への申立てなどを理由とする不利益取扱い 申立てをした社員を不利益に扱う

組合は、不当労働行為があったとして都道府県の労働委員会に救済を申し立てることができます。労働委員会は、事実が認められれば、団体交渉に応じることなどを命じる救済命令を出します。申立ては行為の日(継続する行為はその終了日)から1年以内とされています(労働組合法第27条第2項)。

申入書を受け取ったら:最初の1週間でやること

1. 申入書の内容を確認する

確認する項目 見るポイント
組合名・代表者・連絡先 組合の正式名称と窓口
組合員 誰が加入しているか(氏名が書かれていることが多い)
要求事項 未払賃金、解雇の撤回、ハラスメントの調査など
交渉の日時・場所の提案 組合事務所や社内を指定してくることがある
回答期限 短い期限が書かれていることが多い

あわせて「組合加入通知書」が届くこともあります。

2. 社内の窓口と関係者を決める

  • 窓口を1人に決める(社長・人事責任者など)。現場の管理職が個別に組合員と話をしない
  • 対象社員の上司に、組合加入を理由に態度を変えないよう伝える
  • 弁護士や社会保険労務士など、相談できる専門家に早めに連絡する

3. 事実関係を調べる

要求事項に関係する記録を集めます。

要求の例 確認する記録
未払残業代 勤怠記録、PCログ、賃金台帳、36協定(→未払残業代を請求されたとき)
解雇の撤回 解雇通知書、指導記録、就業規則(→普通解雇の進め方)
退職勧奨の経緯 面談記録(→退職勧奨の進め方)
ハラスメント 相談記録、調査記録(→ハラスメント防止措置)

労働時間の記録は、法定三帳簿として保存しているものを確認します。

4. 書面で回答する

回答期限に間に合わない場合でも、無視は避けます。「団体交渉には応じる。日時・場所は次のとおり提案する」と書面(FAXやメールでも可)で回答します。

回答で決めること 考え方
日時 準備に必要な期間を考え、具体的な候補日を示す。引き延ばしと受け取られる先送りは避ける
場所 社外の貸会議室など、中立的な場所を提案するのが一般的
時間 1回あたりの時間(例:2時間)を提案する
出席者 会社側の出席者(決定権のある人や説明できる人を含める)

交渉の進め方と注意点

要求を受け入れる義務はない

団体交渉に応じる義務は、要求をのむ義務ではありません。会社に求められるのは、誠実に交渉することです。要求に応じられない場合は、その理由を、資料などの根拠を示して説明します。

誠実な交渉と見られにくい対応 改善の方向
「検討します」を繰り返し、回答しない 期日を決めて回答する
決定権のない人だけが出席し、何も答えられない 説明・判断できる人を出席させる
資料の開示を一切拒む 合理的な範囲で根拠資料を示す(個人情報への配慮は必要)
結論ありきで説明をしない 会社の考えと理由を説明する

その場で書面に署名しない

交渉の場で、組合が用意した確認書や議事録への署名を求められることがあります。その場で署名すると、労働協約として会社を拘束する場合があります。内容を持ち帰って確認し、必要なら専門家と相談してから対応します。

記録を残す

交渉ごとに、日時、出席者、組合の要求、会社の回答、次回の予定を記録します。録音する場合は、双方で合意しておきます。

解決の形

交渉の結果、合意できれば合意書(協定書)を作成します。合意できない場合、組合側から労働委員会へのあっせん申請や救済申立て、または組合員個人が労働審判などを申し立てることがあります(→労働審判を申し立てられたとき)。

まとめ

  • 社外の合同労組でも、従業員が加入していれば団体交渉に応じる必要がある。正当な理由のない拒否や不誠実団交は不当労働行為
  • 申入書は無視せず、要求事項と期限を確認し、事実関係を調べ、日時・場所・出席者を書面で回答する
  • 要求をのむ義務はないが、根拠を示して説明する。その場で書面に署名しない
  • 組合加入を理由とする不利益取扱いや脱退の働きかけは禁止。管理職にも徹底し、早めに専門家に相談する

この記事に出てくる用語

降格
役職や等級を下げることです。人事権の行使としての降格と、懲戒処分としての降格があり、賃金が下がる場合は根拠と相当性が問われます。
36協定
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて残業させたり、法定休日に働かせたりするために、会社と労働者の過半数代表が結び、労働基準監督署に届け出る労使協定です。
就業規則
労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
退職勧奨
会社が社員に退職を勧め、合意による退職を目指すことです。解雇とは違い、本人は断ることができます。
賃金台帳
労働者ごとに賃金計算の基礎となる事項や支払額を記録する帳簿で、労働基準法で作成と保存が義務づけられています。法定三帳簿の一つです。
配置転換
同じ会社の中で、職務の内容や勤務場所を変えることです。勤務地が変わるものを特に転勤といいます。

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