南海トラフ地震臨時情報が出たら会社はどうするか|巨大地震注意・警戒の違い、1週間の対応、事前に決めておく社内ルール
南海トラフ沿いで大きな地震などが起きると、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報」を発表します。調査中・巨大地震警戒・巨大地震注意・調査終了の違い、発表の目安(最短2時間程度)、警戒なら1週間の警戒対応と続く1週間の注意対応、注意なら1週間程度の対応という流れを確認し、2025年8月に改訂された内閣府のガイドラインと自治体の企業向けチェック項目をもとに、会社が事前に決めておくことを整理します。
- 対象読者
- 南海トラフ地震の被害が想定される地域に拠点がある、従業員30〜300名の企業の総務担当者
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この記事のポイント
- 臨時情報は「調査中」の後、プレート境界でM8.0以上の地震が起きたと評価されれば「巨大地震警戒」、M7.0以上の地震やゆっくりすべりなどなら「巨大地震注意」として、最短で2時間程度で発表される
- 巨大地震警戒では1週間の警戒対応の後、さらに1週間の注意対応。巨大地震注意では1週間程度、日頃からの備えを再確認する。発表されても後発地震が起きるかは不確実で、社会経済活動の継続とのバランスを各主体が判断する
- 内閣府は「臨時情報が発表された時の対応は、あらかじめ決めておく」ことが極めて有効としている。発表時の連絡体制、出社・出張・イベントの判断、備蓄と安否確認の再点検を社内ルールにしておく
2024年8月、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が運用開始後はじめて発表されました。各地でさまざまな対応・反応があり、会社でも「出張は中止すべきか」「イベントはどうするか」「社員に何を伝えるか」と判断に迷う場面がありました。
内閣府はこれを受けて、2025年8月にガイドラインを改訂し、「臨時情報が発表された時の対応は、あらかじめ決めておく」ことが極めて有効だとしています。この記事では、臨時情報の仕組みと、総務が事前に決めておく社内ルールを整理します。防災・BCP全体は中小企業の防災・BCPを参照してください。
臨時情報の種類と発表の目安
気象庁は、南海トラフ沿いで異常な現象を観測すると「南海トラフ地震臨時情報」を、キーワードを付けて発表します。
| キーワード | 発表される場合 |
|---|---|
| 調査中 | 監視領域内でM6.8以上の地震が起きた場合などに、評価検討会を開いて調査を始めるとき |
| 巨大地震警戒 | 想定震源域内のプレート境界で、モーメントマグニチュード8.0以上の地震が起きたと評価されたとき |
| 巨大地震注意 | 監視領域内でモーメントマグニチュード7.0以上の地震が起きたと評価されたとき(巨大地震警戒に当たる場合を除く)、またはゆっくりすべりが観測されたとき |
| 調査終了 | 巨大地震警戒・巨大地震注意のいずれにも当たらないと評価されたとき |
巨大地震警戒・巨大地震注意は、現象の発生後、最短で2時間程度で発表されます。最初の地震の揺れや津波の対応が落ち着かないうちに発表される可能性がある点を、想定に入れておきます。
発表後の対応期間
| 情報 | 対応の流れ |
|---|---|
| 巨大地震警戒 | 後発の地震が起きないまま1週間たつと、警戒の呼びかけが解除され、さらに1週間、注意の対応が呼びかけられる(合計2週間程度) |
| 巨大地震注意 | 1週間程度(ゆっくりすべりの場合は、変化が続く期間と同程度)。その後は通常の生活に戻る |
巨大地震警戒の場合、市町村があらかじめ定めた「事前避難対象地域」では、住民に1週間の事前避難が呼びかけられます。事業所や社員の自宅がこの地域に入っているかは、市町村の地域防災計画やハザードマップで確認します。
「確実に起きる」情報ではない
内閣府のガイドラインは、臨時情報は大規模地震の可能性が平常時と比べて相対的に高まったことを知らせるもので、後発の大規模地震が起きるかどうかは不確実だと説明しています。そのうえで、事業者は「地域や利用者等の安全確保」と「社会経済活動の継続」とのバランスを考慮しつつ、自ら判断することが重要だとしています。会社ごとに対応を決めておく必要があるのはこのためです。
事前に決めておく社内ルール
① 発表時の連絡体制
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 判断する人 | 社長(不在時は総務部長)が対策本部を立ち上げるか判断する |
| 社内への周知 | 発表から何時間以内に、どの手段(安否確認サービス・メール・チャット)で、何を伝えるか |
| 対象拠点 | 事前避難対象地域や津波浸水想定区域にある拠点・社員の把握 |
連絡網と安否確認の手段は安否確認の仕組みづくりと安否確認連絡網で整えておきます。
② 出社・出張・イベントの判断基準
2024年8月の巨大地震注意の際には、自治体や企業で、来場者の安全確保策を講じたうえでイベントを実施した事例などがありました。会社としては、次の項目について「注意」と「警戒」で分けて基準を決めておきます。
- 被害想定地域への出張・外出(延期・続行の基準、移動中の連絡方法)
- 来客・イベント・社外向け行事(安全確保策、中止の判断者)
- 津波浸水想定区域や沿岸の拠点での業務、高所作業・斜面での作業
- テレワークへの切り替え、時差出勤(→台風・大雪の日の出社判断と同じ考え方で整理できる)
③ 日頃からの備えの再確認
神奈川県は、企業が臨時情報の発表時などに再確認する項目として、次のようなものを挙げています。
- 従業員の安否確認手段を決める
- 避難経路と避難のルールを定め、出入口の障害物を取り除く
- 機械・パソコン・机・椅子などの転倒・移動防止、窓ガラスの飛散防止
- 高い棚に危険物を置かない
- 重要な書類・データのバックアップを、同じ災害で被災しにくい場所に置く
- 発電機の稼働と燃料の備蓄、水・食料の備蓄を確認する
- 緊急時の参集、意思決定、指揮命令の体制を確認する
- 顧客・従業員・取引先・行政との連絡手段と連絡先を準備する
臨時情報の1週間は、この再確認を全社で行う期間と位置づけ、防災チェックリストと防災備蓄品の管理表で点検します。オフィス家具の固定はオフィス家具の転倒防止も参照してください。
④ 発表時の初動の流れ(例)
| タイミング | 総務の動き |
|---|---|
| 「調査中」の発表 | 情報収集を始め、対策本部の立ち上げに備えて判断者に連絡する |
| 「巨大地震警戒」「巨大地震注意」の発表 | 判断者が会社の対応レベルを決定し、全社員に一斉連絡する。出張中・外出中の社員の所在を確認する |
| 当日〜翌営業日 | 出張・イベント・勤務形態の判断を各部署に伝える。備えの再確認を指示する |
| 対応期間中 | 内閣府・気象庁の合同記者会見や関連解説情報を確認し、必要に応じて対応を見直す |
| 対応期間の終了 | 平常の体制に戻すことを周知し、対応の記録と反省点をBCPに反映する |
内閣府のガイドラインの改訂では、臨時情報の発表後、準備が整い次第、内閣府・気象庁の合同記者会見で情報の内容と防災対応が説明されるとしています。社内への連絡文は、この説明を待たずに出せるよう、ひな形を用意しておきます。
推進地域にある施設の対策計画
南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法第7条は、「南海トラフ地震防災対策推進地域」内で、政令で定める施設や事業を管理・運営する者に、南海トラフ地震防災対策計画の作成を求めています。施行令第3条には、消防法で防火管理が必要な一定の防火対象物で不特定多数の人が出入りするものなどが挙げられています。
自社の建物が対象になるかは、推進地域の指定状況と建物の用途によって変わります。対象になる場合の作成方法(消防計画との関係を含む)は、所轄の消防署や都道府県の防災担当に確認してください。防火管理の基本は防火管理者の選任と消防計画で解説しています。
社員への伝え方
- 臨時情報は「必ず地震が起きる」という予知ではないこと
- 会社として決めている対応(出張・イベント・勤務の扱い)
- 家庭での備え(家具の固定、避難場所、非常持出品、家族との連絡方法)の再確認
- 地震が起きたらすぐに身を守り、津波の危険がある場所では直ちに避難すること
まとめ
- 臨時情報には調査中・巨大地震警戒・巨大地震注意・調査終了があり、最短2時間程度で発表される
- 警戒なら1週間の警戒と続く1週間の注意、注意なら1週間程度の対応が呼びかけられる
- 後発地震の発生は不確実。安全確保と事業継続のバランスを会社が判断するため、対応をあらかじめ決めておく
- 連絡体制、出社・出張・イベントの基準、備えの再確認の3つを社内ルールにし、推進地域の施設は対策計画の要否を確認する
この記事で使えるテンプレート
総務 防災・BCP 備えチェックリスト 地震・風水害などの災害に備えて、総務が点検すべき項目をまとめたチェックリストです。体制・連絡網、防火管理、オフィスの安全対策、備蓄品、事業継続(BCP)、訓練までを確認できます。 総務 緊急連絡網・安否確認 連絡先一覧 地震・台風などの災害時に従業員の安否を確認するための連絡先一覧です。連絡網の順番、複数の連絡手段、緊急連絡先、帰宅・出社の目安、安否確認の結果欄までを1行にまとめています。 総務 防災備蓄品 管理表(必要数・期限・入替え管理) 水・食料・簡易トイレ・毛布などの防災備蓄品を品目ごとに管理する表です。保管場所、現在の数量、従業員数から計算した必要数、過不足、賞味・使用期限、入替え予定月、点検日まで1行で管理できます。 総務 南海トラフ地震臨時情報 社内対応手順表 南海トラフ地震臨時情報(調査中・巨大地震注意・巨大地震警戒)が発表されたときに、誰が判断し、何時間以内に何を社員へ伝え、出社・出張・来客をどう扱うかを1枚にまとめる手順表です。注意と警戒で分けた対応表、初動の時系列、連絡文の短文例、対応期間の記録欄を付けています。この記事に出てくる用語
- 安否確認
- 地震などの災害が起きたとき、従業員とその家族の安全や出社の可否を会社が確認することです。連絡網や安否確認サービスを使い、発動基準と手順を事前に決めておきます。
- 消防計画
- 防火管理者が作成する、火災予防と火災発生時の行動を定めた計画です。自衛消防の組織、避難経路、消防用設備の点検、訓練の実施時期などを記載し、消防署に届け出ます。
- 南海トラフ地震臨時情報
- 南海トラフ沿いで異常な現象が観測され、大規模な地震が起きる可能性がふだんより高まったと評価されたときに、気象庁が発表する情報です。「巨大地震警戒」と「巨大地震注意」などがあります。
- BCP
- 「Business Continuity Plan」の略で、地震・水害・感染症・システム障害などの緊急事態が起きても、重要な業務を止めない、または早く再開するための計画です。