ハラスメント防止措置の総点検|パワハラ・セクハラ・マタハラと2026年10月義務化のカスハラ対策
パワハラ・セクハラ・マタハラ等の防止措置は、中小企業を含むすべての事業主の義務です。2026年10月1日からはカスハラ対策と求職者等へのセクハラ防止も義務になりました。指針が求める措置を一覧にし、自社の対応を点検する方法をまとめます。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業でハラスメント対策・相談窓口を担当する人事・労務担当者
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この記事のポイント
- パワハラ(中小企業は2022年4月から)、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの防止措置は、すべての事業主の義務
- 2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策と、就活生など求職者等へのセクハラ防止措置も義務化された
- 措置の柱は「方針の明確化と周知」「相談体制」「事後の迅速・適切な対応」「プライバシー保護と不利益取扱いの禁止」。カスハラは「対処の内容」と「悪質な行為への対処方針」も必要
職場のハラスメント防止は、会社の規模にかかわらず法律上の義務です。2026年10月1日からは、顧客や取引先からの迷惑行為(カスタマーハラスメント)への対策と、就職活動中の学生など求職者等へのセクハラ防止も義務に加わりました。
「規程はあるが、相談窓口が機能しているか分からない」という会社も多いはずです。この記事では、ハラスメントの種類ごとに義務の内容を整理し、自社の対応を点検できる形でまとめます。
事業主に義務づけられているハラスメント防止措置
| ハラスメントの種類 | 根拠となる法律 | 義務化の時期 |
|---|---|---|
| セクシュアルハラスメント | 男女雇用機会均等法 | 施行済み |
| 妊娠・出産等に関するハラスメント | 男女雇用機会均等法 | 施行済み |
| 育児休業・介護休業等に関するハラスメント | 育児・介護休業法 | 施行済み |
| パワーハラスメント | 労働施策総合推進法 | 大企業2020年6月、中小企業2022年4月 |
| カスタマーハラスメント | 労働施策総合推進法 | 2026年10月1日 |
| 求職者等に対するセクハラ | 男女雇用機会均等法 | 2026年10月1日 |
いずれも「措置義務」です。ハラスメントを起こさないよう、会社として体制を整える義務があります。違反している場合は、都道府県労働局から助言・指導・勧告を受けることがあります。
それぞれの定義をおさえる
パワーハラスメント
職場において行われる、次の3つの要素をすべて満たすものです。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な指示・指導は、パワハラに当たりません。代表的な類型として、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の6つが示されています(限定列挙ではありません)。
「優越的な関係」は上司から部下だけではありません。専門知識をもつ同僚や部下の言動、集団による行為も含まれます。
セクシュアルハラスメント
職場で行われる性的な言動により、労働者が労働条件で不利益を受けたり、就業環境が害されたりするものです。男女とも、また同性間でも対象になります。
妊娠・出産、育児・介護休業等に関するハラスメント
上司・同僚の言動により、妊娠・出産した女性労働者や、育児休業・介護休業等を申し出た・取得した男女労働者の就業環境が害されるものです。「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」があります。
なお、妊娠や育児休業の取得を理由に会社が解雇・降格・契約不更新などを行うことは、ハラスメントではなく不利益取扱いとして法律で禁止されています。
カスタマーハラスメント(2026年10月〜)
次の3つの要素をすべて満たすものです。
- 顧客、取引の相手方、施設の利用者など、事業に関係を有する者(顧客等)の言動
- 従業員の業務の性質などに照らして、社会通念上許容される範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
対面だけでなく、電話やSNSなどインターネット上の言動も含まれます。一方、苦情のすべてがカスハラになるわけではありません。社会通念上許容される範囲の申入れは正当なクレームです。また、障害者が合理的配慮を求めることなどはカスハラに当たらない点も指針に明記されています。
店舗がない会社でも、取引先の担当者、問い合わせをする人、近隣住民なども「顧客等」に含まれます。BtoBの会社も対象です。
求職者等に対するセクハラ(2026年10月〜)
自社の従業員による性的な言動で、求職者等の就職活動などが阻害されるものです。採用面接、会社説明会、OB・OG訪問、インターンシップ、教育実習などの場面が想定され、オンライン上のやり取りも含まれます。
共通の措置を点検する
パワハラ・セクハラ・マタハラ等に共通して、指針は次の措置を求めています。
1. 方針の明確化と周知・啓発
- ハラスメントの内容と「行ってはならない」という方針を明確にし、管理職を含む全従業員に周知する
- 行為者には厳正に対処する方針と、懲戒の内容を就業規則などに定めて周知する
2. 相談体制の整備
- 相談窓口をあらかじめ定めて周知する(担当者の指名、外部機関への委託も可)
- 担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。ハラスメントに当たるか微妙なケースも広く受け付ける
3. 事後の迅速かつ適切な対応
- 事実関係を迅速かつ正確に確認する
- 被害者への配慮の措置を行う(配置の変更、メンタルヘルスの相談など)
- 行為者への措置を適正に行う
- 再発防止の措置を講じる(事実が確認できなかった場合も、方針の再周知などを行う)
4. あわせて講ずべき措置
- 相談者・行為者等のプライバシーを保護し、その旨を周知する
- 相談したことや事実確認に協力したことを理由に、不利益な取扱いをしない旨を定めて周知する
- マタハラ等については、業務体制の整備など、原因・背景を解消するための措置も必要
相談を受けたら、ハラスメント相談記録票で内容・相談者の意向・説明した事項・対応の経過を記録しておくと、事実確認と再発防止に役立ちます。
カスハラで追加になる措置
カスハラの措置は基本的にパワハラ等と同じ構成ですが、厚生労働省のリーフレットでは、次の点が他のハラスメントと異なる内容として示されています。
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| 方針 | カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、周知する |
| 対処の内容 | カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を労働者に周知する |
| 抑止のための措置 | 特に悪質と考えられるカスハラへの対処の方針をあらかじめ定めて周知し、対処できる体制を整える |
指針では、対処の内容の例として次のようなものが挙げられています。
- 管理監督者にすぐ報告し、その場の対応について指示を仰ぐ
- 可能な限り一人で対応させない。必要に応じて上司が代わって対応する
- やり取りを録音・録画する(個人情報保護法を守って取り扱う)
- 十分に説明しても要求が繰り返される場合、一定時間の経過で退店を求める、電話を切る
- 暴行・傷害・脅迫など犯罪に当たり得る言動は警察に通報する
- 現場で対応が難しい場合は本社・本部に共有し、指示を仰ぐ
悪質な行為への対処の例には、警告文の送付、法令の範囲内でのサービス提供の停止、出入り禁止、仮処分命令の申立てなどがあります。
方針は社内向けだけでなく、ウェブサイトなどで顧客向けに示すことも効果的とされています。詳しい改正内容はカスハラ対策義務化の解説を参照してください。
採用活動でのセクハラ防止
求職者等へのセクハラでは、共通の措置に加えて、求職活動等に関するルールをあらかじめ明確にし、従業員と求職者等の両方に周知することが求められています。例えば次のようなルールです。
- 面談の時間と場所の指定(業務時間内・社内やオンラインの公式な場に限るなど)
- 面談の実施体制(1対1を避けるなど)
- やり取りに使うSNSやツールの指定(個人のSNSで連絡しない)
相談窓口は求職者等にも周知します。人事担当者以外を窓口担当にすることも考えられます。面接官やリクルーターを務める従業員には、採用面接の注意点とあわせて研修しておくと安心です。面接全般の注意点は面接の進め方と評価シートにまとめています。
点検チェックリスト
- □ 就業規則にパワハラ・セクハラ・マタハラ等・カスハラ・求職者等セクハラの禁止と懲戒の規定がある
- □ 方針(トップメッセージなど)を全従業員に周知している。カスハラは「労働者を守る」方針を明記している
- □ 相談窓口の担当者・連絡先を、パート・派遣社員を含む全員が知っている
- □ 相談窓口の担当者向けに、対応手順(マニュアル)と記録様式がある
- □ カスハラの対処の内容(報告・複数対応・録音・打ち切り・通報)を現場に周知している
- □ 悪質なカスハラへの対処方針と、対応できる体制(本社・法務・弁護士との連携)がある
- □ 採用活動のルール(面談場所・時間・連絡手段)を決め、求職者等にも窓口を案内している
- □ プライバシー保護と不利益取扱いの禁止を定め、周知している
- □ 研修を定期的に実施している
就業規則の改定が必要な場合は、就業規則の作成・変更と届出の手順を参考に、意見聴取と届出まで進めてください。育児・介護休業に関する制度全体の点検は改正育児・介護休業法の総点検もあわせてご覧ください。
まとめ
- パワハラ・セクハラ・マタハラ等の防止措置は、中小企業を含むすべての事業主の義務
- 2026年10月1日から、カスハラ対策と求職者等へのセクハラ防止措置も義務化された
- 共通の柱は「方針の明確化と周知」「相談体制」「事後対応」「プライバシー保護・不利益取扱いの禁止」
- カスハラは、労働者を守る方針、対処の内容、悪質な行為への対処方針まで定めて周知する
- 厚生労働省のマニュアルや研修資料を活用し、自社の規模に合った手順書と記録様式を用意する
この記事で使えるテンプレート
労務 ハラスメント相談記録票 社内のハラスメント相談窓口で使う相談記録票です。相談内容を5W1Hで整理し、相談者の意向、説明した事項(プライバシー保護・不利益取扱いの禁止)、事実確認と対応の経過までを記録できます。2026年10月施行のカスハラ対策義務化にも対応しています。出典・参考資料
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」
- 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
- 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)
- 厚生労働省 リーフレット「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」(詳細版)
- 厚生労働省 あかるい職場応援団「改正労働施策総合推進法等特設ページ」
- 厚生労働省 あかるい職場応援団「ハラスメントに関する法律とハラスメント防止のために講ずべき措置」
- 厚生労働省 あかるい職場応援団「パワーハラスメントとは」
- 厚生労働省 あかるい職場応援団「カスタマーハラスメントとは」