休職規程の作り方|休職期間・自然退職・再発時の通算規定と復職判定のルール
休職制度は法律で義務づけられたものではなく、会社が就業規則で内容を決める制度です。だからこそ、休職事由、休職期間、給与と社会保険料の扱い、復職の判断、再発時の通算、期間満了時の自然退職まで、規程にはっきり書いておく必要があります。厚生労働省のモデル就業規則をもとに、設計のポイントと規定例を整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で、就業規則や休職規程の見直しを担当する人事・労務担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了9分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 休職の定義・期間・復職については労働基準法に定めがなく、会社が就業規則で決める。定める場合は労働条件として明示が必要
- 休職期間は勤続年数に応じて段階を設けるのが一般的。復職後すぐに同じ病気で再び休む場合に備え、前後の期間を通算する規定を置く
- 期間満了時に「退職とする」と定めておけば自然退職として扱える。ただし業務上の傷病による休業は解雇制限があり、休職規程で処理できない
休職規程は、普段はほとんど読まれません。ところが、メンタルヘルス不調などで実際に休職者が出ると、「休職は何か月までか」「復職を誰が決めるのか」「期間が切れたらどうなるのか」がすべて規程の文言で決まります。
この記事では、厚生労働省のモデル就業規則を土台に、休職規程で決めておくべき項目と、トラブルになりやすい点を整理します。休職者への実際の対応の流れはメンタルヘルス不調による休職・復職の進め方を参照してください。
休職制度の位置づけ
モデル就業規則の解説では、休職を「業務外での疾病等主に労働者側の個人的事情により相当長期間にわたり就労を期待し得ない場合に、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱い」と説明しています。そのうえで、休職の定義、期間の制限、復職などについて労働基準法に定めはないとしています。
つまり、休職制度を設けるかどうか、どんな内容にするかは会社が決めます。一方で、次のルールは守る必要があります。
- 休職について定めをする場合は、採用時に労働条件として明示する(労働基準法施行規則5条1項11号「休職に関する事項」)
- 全従業員に適用する定めは、就業規則に記載する(常時10人以上の事業場は届出も必要。就業規則の作成と届出)
規程で決める項目の一覧
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 対象者 | 試用期間中の人、有期契約の人を含めるか |
| 休職事由 | 私傷病による欠勤が続く場合、その他特別な事情 |
| 休職に入る要件 | 欠勤が何日(何か月)続いたら休職とするか、診断書の提出 |
| 休職期間 | 勤続年数に応じた上限 |
| 休職中の扱い | 給与、社会保険料の本人負担分、勤続年数への算入、報告義務 |
| 復職 | 診断書の提出、会社指定医の受診、最終判断は会社 |
| 通算 | 復職後に同一・類似の傷病で再び休職した場合の扱い |
| 期間満了 | 復職できない場合は退職とする |
休職事由と休職に入るタイミング
モデル就業規則は、休職事由として次の2つを挙げています。
- 業務外の傷病による欠勤が○か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき
- 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき
2の「特別な事情」には、公職への就任や刑事事件で起訴された場合などが当たると解説されています。
実務では、1の「欠勤○か月」の数え方でもめやすいので注意します。メンタルヘルス不調では、出勤と欠勤を繰り返すことがよくあります。「連続して」だけでなく「欠勤が断続的に続き、通常の勤務ができない状態が一定期間続いたとき」も対象になるよう書いておくと運用しやすくなります。会社が休職を命じる形にし、医師の診断書の提出を求める根拠も規程に入れておきます。
休職期間の決め方
モデル就業規則の休職期間は「○年以内」と空欄になっており、会社が決めます。中小企業では、勤続年数に応じて段階を設ける例が多く見られます。
| 勤続年数 | 休職期間の例 |
|---|---|
| 1年未満 | 休職制度の対象外、または3か月 |
| 1年以上5年未満 | 6か月 |
| 5年以上 | 1年 |
期間を決める際は、健康保険の傷病手当金(支給開始日から通算1年6か月。傷病手当金の申請)とのバランスも考えます。休職期間が極端に短いと、回復前に退職となり紛争の原因になります。逆に長すぎると、代替要員の確保や社会保険料の負担が続きます。
試用期間中の人や入社直後の人を休職の対象外とする場合は、その旨を規程に明記します。書いていなければ、全員に同じ期間が適用されると読まれる可能性があります。
休職中の給与・社会保険料・勤続年数
モデル就業規則では、休職期間中は「原則として賃金を支給しない」とし、有給にする場合は具体的に定めるよう解説しています。無給にする場合、本人は健康保険の傷病手当金を申請することになります。
休職中も社会保険の被保険者資格は続くため、保険料の本人負担分が発生します。給与から控除できないので、次のどれで徴収するかを規程や休職時の説明書面で決めておきます。
- 毎月、会社指定の口座に振り込んでもらう
- 会社が立て替え、復職後の給与から控除する(控除には労使協定が必要)
- 傷病手当金を会社経由で受け取る場合に相殺する(本人の同意が必要)
勤続年数(退職金の算定、年次有給休暇の付与)に休職期間を含めるかも決めておきます。なお、年次有給休暇の出勤率の計算で、私傷病による休職期間をどう扱うかは別途確認が必要です。
復職の判断
モデル就業規則は、休職事由が消滅したときは「原則として元の職務に復帰させる」とし、元の職務に戻すのが困難または不適当な場合は他の職務に就かせることがあると定めています。
規程には、次の点を入れておきます。
- 復職を希望する場合は、主治医の診断書を提出する
- 会社は、産業医または会社が指定する医師の受診や、主治医への情報提供依頼への協力を求めることができる
- 復職の可否は、医師の意見を踏まえて会社が判断する
- 必要に応じて、試し出勤や短時間勤務などの段階的な復帰を行うことがある
厚生労働省の手引きは、主治医の判断は日常生活の回復を見ていることが多く、職場で必要な業務遂行能力まで回復しているとは限らないとしています。会社指定医の受診を求める根拠を規程に置いておくことが重要です。
再発時の通算規定
メンタルヘルス不調は、復職後に再び悪化することが少なくありません。通算規定がないと、復職するたびに休職期間がリセットされ、休職と復職が長期間繰り返されることがあります。
規定例は次のとおりです。
復職後6か月以内に、同一または類似の傷病により欠勤し、または通常の労務提供ができない状態となったときは、直ちに休職を命じ、休職期間は復職前の休職期間と通算する。
「同一または類似」とするのは、診断名が変わることがあるためです。通算する期間(復職後6か月以内など)は会社の実情に合わせて決めます。
期間満了時の自然退職
モデル就業規則は「休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする」と定め、退職事由の一つにも休職期間の満了を挙げています。このように定めておけば、期間満了時に解雇の手続きをとらずに退職(自然退職)として扱えます。
運用上の注意点は次のとおりです。
- 期間満了の1か月程度前に、満了日と退職となる旨、復職を希望する場合の手続きを書面で通知する
- 「完全に元どおり働けること」だけを復職の基準にしない。職種を限定していない契約では、他の業務への配置の可能性も検討する
- 業務上の傷病による休業は対象外。業務上の傷病で療養のため休業する期間とその後30日間は、労働基準法19条により原則解雇できず、休職期間満了による退職も問題になる(解雇予告と解雇制限)
退職となった場合の手続きは退職時の手続き一覧を参照してください。
規程を見直すときの手順
- 現行の就業規則の休職条文を読み、上の表の項目で抜けがないか確認する
- 改定案を作り、過半数代表者の意見を聴く
- 就業規則変更届に意見書を添えて労働基準監督署に届け出る
- 従業員に周知する(不利益変更にあたる場合は、変更の必要性と内容の相当性を説明する)
休職期間の短縮など従業員に不利な変更は、休職中の人への適用も含めて慎重に検討します。規程の一覧管理には社内規程の体系の考え方も参考になります。
まとめ
- 休職は法律ではなく就業規則で内容を決める制度。休職事由・期間・復職・満了時の扱いを明記する
- 休職期間は勤続年数に応じて設計し、傷病手当金の支給期間とのバランスも考える
- 復職の判断は会社が行う。会社指定医の受診や主治医への情報提供依頼の根拠を規程に置く
- 再発に備えた通算規定と、期間満了時の自然退職規定をセットで定める。業務上の傷病には適用できない