人事評価の目標設定の書き方|SMARTの使い方、職種別の例文、期首面談での目標のすり合わせ
目標があいまいだと、期末の評価で「達成したかどうか」を判断できず、評価への不満につながります。目標を具体的にするSMARTの考え方、営業・事務・管理部門の目標の例、期首面談でのすり合わせ方、期中の見直しと記録のコツを整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で、評価制度を運用する人事担当者・管理職
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 目標は「何を・いつまでに・どの水準まで・どのように」まで書くと、期末に達成度を判断できる。SMART(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)はそのチェックリストとして使う
- 数字で測れない事務・管理部門の目標は、「期限」「成果物」「品質の基準」で具体化する
- 目標は期首面談で上司と本人がすり合わせて確定し、状況が変われば期中に見直す。見直した記録を残しておくと期末の評価がぶれにくい
「今期の目標:売上アップに貢献する」「業務効率化に努める」。評価シートにこう書かれていると、期末に評価者は困ります。何をもって達成とするかが決まっていないからです。
目標設定は評価制度の中で最も手間がかかり、最も差が出る工程です。この記事では、評価者と本人が同じ基準で振り返れる目標の書き方を整理します。制度全体の作り方は人事評価制度の作り方を参照してください。
良い目標の条件
国家公務員の人事評価ガイドは、目標を「期末に達成状況等を判定できるよう、できる限り具体的(何を、いつまでに、どの水準まで、どのように)」にするよう求めています。民間企業でもそのまま使える考え方です。
| 要素 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| 何を | 取り組む業務・テーマ | 入社手続きの書類 |
| いつまでに | 期限 | 2027年3月末まで |
| どの水準まで | 達成の基準 | 紙の書類を8種類から2種類に減らす |
| どのように | 方法・手段 | 電子申請と社内フォームに切り替える |
SMARTをチェックリストとして使う
SMART(スマート)は、目標を具体的にするための5つの観点の頭文字です。目標を書いたら、次の表で確認します。
| 観点 | 意味 | 確認の質問 |
|---|---|---|
| S:Specific | 具体的 | 第三者が読んでも、何をするか分かるか |
| M:Measurable | 測定可能 | 期末に「できた・できない」を判断できるか |
| A:Achievable | 達成可能 | 本人の等級・権限・時間で届くか(低すぎないか) |
| R:Relevant | 関連性 | 会社・部署の方針とつながっているか |
| T:Time-bound | 期限 | いつまでに、が書かれているか |
よくある失敗と直し方
| 直す前 | 問題 | 直した後 |
|---|---|---|
| 売上アップに貢献する | 水準・期限がない | 担当エリアの新規取引先を下期中に5社開拓する |
| 業務効率化に努める | 何をどうするか不明 | 月次の勤怠締め作業を、9月までに3営業日から2営業日に短縮する |
| 採用を強化する | 測れない | 中途採用で営業職2名の内定承諾を12月末までに得る |
| 社内規程を整備する | 範囲と完成の基準がない | 育児・介護休業規程と賃金規程を法改正に合わせて改定し、3月の取締役会で承認を得る |
「努める」「強化する」「推進する」で終わる目標は、ほとんどの場合、測定できません。動詞を「完了する」「〇件にする」「〇日短縮する」に置き換えると具体的になります。
職種別の目標の例
営業・販売
数字で測りやすい一方、売上だけだと市況の影響を受けます。結果の目標に加えて、行動の目標を1つ入れるとバランスが取れます。
- 結果:既存顧客の年間取引額を前年比105%にする
- 行動:主要顧客20社に、四半期ごとに1回以上の訪問・提案を行う
事務・管理部門
数字にしにくい業務は、期限・成果物・品質の基準で具体化します。
| 業務 | 目標の例 |
|---|---|
| 給与計算 | 毎月の給与計算で、支給後の訂正を年間0件にする(ダブルチェック表を6月までに整備) |
| 労務 | 年次有給休暇の5日取得義務の対象者全員について、9月時点の取得状況を確認し、未達者の上司に通知する |
| 総務 | 契約書の管理台帳を作成し、全契約の更新期限を12月までに登録する |
| 人事 | 新入社員のオンボーディング計画を作成し、4月入社者から運用する |
管理職
自分の業務の目標に加えて、部下の育成やチーム運営の目標を1つ以上設定します。人事評価ガイドでも、管理・監督職にはマネジメント目標を1つ以上設定するよう示しています。
- 部下3名と月1回の1on1を実施し、各自の育成テーマを期中に1つずつ設定する(→1on1ミーティングの始め方)
- チームの月平均の時間外労働を前年同期より減らす
目標の数と重みづけ
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 目標の数 | 3〜5個。多すぎると期中に追えない |
| ウエイト | 合計100%で配分。最重要の目標に30〜40% |
| 難易度 | 等級に応じた水準に。少し背伸びが必要な目標を1つ入れる |
難易度の基準は等級制度の役割定義とそろえます。同じ「達成」でも、等級が高い人には高い水準を求めるのが原則です。
期首面談で目標を確定する
目標は、本人が案を作り、上司が面談で確認して確定するのが一般的です。
- 会社・部署の方針を共有する:期首の前に、部署目標を部下に伝えておく
- 本人が目標案を書く:評価シート(→人事評価シート)に記入
- 期首面談ですり合わせる:SMARTの観点で確認し、水準・期限・ウエイトを話し合う
- 確定・記録する:合意した内容を評価シートに残し、双方が保管する
上司が一方的に目標を決めると、本人の納得感が下がります。逆に本人任せだと、達成しやすい低い目標になりがちです。「この水準なら等級にふさわしいか」を面談で話し合うことが大切です。
期中の見直しと記録
状況が変われば見直してよい
組織変更、担当替え、取引先の事情などで前提が変われば、目標を見直します。見直さずに期末を迎えると、本人に責任のない理由で「未達」になり、不満の原因になります。見直したときは、日付・理由・変更前後の内容を記録します。
日々の事実をメモしておく
期末に半年前のことを思い出すのは困難です。評価者は、目標に関わる出来事を月に1回程度メモしておきます。1on1の記録(→1on1シート)を活用すると負担が増えません。期末の評価のつけ方は評価者研修、結果の伝え方は評価フィードバック面談で解説しています。
目標の達成度だけで評価を決めると、難しい目標に挑戦した人が不利になります。目標の難易度や取り組みのプロセスも評価に反映するルールを、制度として決めておきましょう。
能力開発とつなげる
職業能力開発促進法は、事業主に対し、労働者が自ら職業能力開発の目標を定めやすくするための情報提供や、キャリアコンサルティングの機会の確保などを求めています(第10条の3、必要に応じて講ずる措置)。目標設定の面談で、今期の業務目標とあわせて「身につけたい能力」を1つ話し合うと、評価が育成につながります(→キャリア相談の仕組み)。
まとめ
- 目標は「何を・いつまでに・どの水準まで・どのように」まで書く
- SMARTは目標を点検するチェックリストとして使う。「努める」で終わる目標は直す
- 事務・管理部門は期限・成果物・品質の基準で具体化する
- 目標は3〜5個、ウエイトを付け、期首面談ですり合わせて確定する
- 前提が変わったら期中に見直し、理由と日付を記録する
この記事で使えるテンプレート
人事 人事評価シート(目標管理) 目標管理(MBO)による人事評価シートです。期初の目標設定、期中の進捗確認、期末の本人評価・評価者評価、行動評価、総合評価とフィードバックまでを1つの様式で運用できます。 人事 1on1ミーティング記録シート 上長と部下の1on1ミーティングを1回1行で記録するシートです。テーマ、本人が話したこと、上長からの支援、次回までのアクション、コンディションを残し、継続的な対話と人事評価・面談の材料に使えます。この記事に出てくる用語
- オンボーディング
- 新しく入社した人が職場に慣れ、力を発揮できるようになるまでを支える受け入れの仕組みです。入社手続きだけでなく、入社後数か月の目標設定や面談も含みます。
- 介護休業
- 要介護状態にある家族を介護するための休業で、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます。
- 採用内定
- 会社が応募者に採用を約束することです。多くの場合、内定通知の時点で「始期付・解約権留保付の労働契約」が成立したと考えられます。
- 時間外労働
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働のことです。36協定の締結・届出と、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。
- 人事評価
- 社員の仕事の成果や行動、能力を一定の基準で評価し、昇給・賞与・昇格や育成に反映させる仕組みです。等級制度・報酬制度とつなげて設計します。
- 等級制度
- 社員を能力・役割・職務などの基準でいくつかの段階(等級)に分け、処遇や期待する役割の目安にする仕組みです。人事評価・賃金制度の土台になります。
- 取締役会
- 3人以上の取締役で構成され、会社の業務執行の決定や代表取締役の選定・監督を行う会議体です。置くかどうかは定款で決め、置いている会社を「取締役会設置会社」といいます。
- 年次有給休暇
- 一定期間働いた労働者に与えられる、賃金が支払われる休暇です。6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すると10日付与され、勤続に応じて最大20日まで増えます。
- 1on1
- 上司と部下が1対1で定期的に行う面談です。評価のための面談ではなく、部下の成長や困りごとの把握を目的にするのが一般的です。