キャリア面談とセルフ・キャリアドックの進め方|厚労省の制度概要と、中小企業で始める手順
キャリア面談は、社員が自分の今後の働き方を考え、会社とすり合わせる場です。厚生労働省が普及を進めている「セルフ・キャリアドック」の定義と導入の流れ、キャリアコンサルタントの位置づけ、無料の導入支援、面談の時期・質問例・記録の扱いを、中小企業向けに整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で、社員のキャリア支援や面談制度を整えたい人事担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了9分
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この記事のポイント
- セルフ・キャリアドックは、年齢や昇進などのキャリアの節目に、キャリアコンサルティング面談やキャリア研修を行い、社員の主体的なキャリア形成を支援する企業の取組。厚労省の委託事業で無料の導入支援が受けられる
- キャリアコンサルタントは登録制の名称独占資格で、守秘義務がある。社内の上司が行うキャリア面談とは役割を分け、評価と切り離して設計する
- 中小企業では、入社3年目・40歳前後・50代後半などの節目と、育休復帰・異動のタイミングから始めると続けやすい。面談で聞いた内容の共有範囲は事前に本人に伝える
「この会社で、この先どうなれるのかがわからない」。若手や中堅の退職理由として、よく聞かれる言葉です。一方で、評価面談では目の前の目標の話が中心になり、数年先の働き方を話す機会はなかなかありません。
この記事では、社員のキャリアを考える面談の仕組みと、厚生労働省が普及を進めている「セルフ・キャリアドック」の概要、中小企業での始め方を整理します。
キャリア面談とは
キャリア面談は、社員が自分のこれまでの経験と今後の希望を整理し、会社が期待する役割とすり合わせる面談です。
| 面談の種類 | 目的 | 頻度の目安 | 主な話し手 |
|---|---|---|---|
| 評価面談 | 期間中の成果と評価を伝える | 半年〜1年に1回 | 上司 |
| 1on1 | 日々の業務の困りごとや成長の支援 | 月1回程度 | 部下 |
| キャリア面談 | 中長期の働き方・能力開発の方向を考える | 節目ごと、または年1回 | 本人 |
評価面談の中でキャリアの話をすると、社員は評価への影響を気にして本音を言いにくくなります。キャリア面談は評価と切り離して行うのが基本です。1on1の進め方は「1on1ミーティングの始め方」を参照してください。
セルフ・キャリアドックとは
厚生労働省の委託事業のサイトでは、セルフ・キャリアドックを次のように説明しています。
セルフ・キャリアドックとは、年齢や昇進などのキャリアの節目にキャリアコンサルティング面談やキャリア研修などを行い、従業員のリスキリングの支援を含めた主体的なキャリア形成を支援する取組みのことです。
人間ドックのように、節目ごとにキャリアを点検する仕組み、というイメージです。
導入の流れ
同サイトでは、導入の流れを次の4段階で示しています。実施後は結果を振り返り、改善策とあわせて最初の段階に戻る循環になっています。
| 段階 | 内容 | 中小企業での具体例 |
|---|---|---|
| 1. ビジョン・方針の明確化 | リスキリング支援を含む人材育成のビジョン・方針を決める | 「5年後に必要な人材」と「社員に期待すること」を経営者と言葉にする |
| 2. 実施計画策定・インフラの整備 | 実施計画を作り、体制を整える | 対象者・時期・面談者・記録の扱いを決め、規程や社内通知で定める |
| 3. 事前準備 | 実施に向けた準備 | 対象者への説明、面談シートの準備、管理職への周知 |
| 4. 実施 | 面談・研修の実施 | キャリア研修(半日)→個別面談(45〜60分)→フォロー |
無料の導入支援
厚生労働省の委託事業「キャリア形成・リスキリング推進事業」では、全国47都道府県に拠点を設け、セルフ・キャリアドックの導入を無料で支援しています。国家資格キャリアコンサルタントが、経営者や人事担当者と人材育成のビジョンや課題を整理し、導入の計画を提案する形です。最新の支援内容と申込み方法は、同事業のサイトで確認してください。
キャリアコンサルタントの位置づけ
キャリアコンサルティングとは、厚生労働省の説明では「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」です。
キャリアコンサルタントは、登録制の名称独占資格です。登録した人だけがその名称を使え、5年ごとに更新講習を受けて更新します。また、相談内容について守秘義務があります。
| 面談者 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 社外のキャリアコンサルタント | 専門的な技法、社員が本音を話しやすい | 費用がかかる。会社に共有する範囲を契約で決める |
| 社内の有資格者(人事など) | 社内事情に詳しい、費用が少ない | 評価・人事異動の情報と切り分ける |
| 上司 | 業務と結びつけやすい | 評価への影響を気にして本音が出にくい |
中小企業では、節目の面談だけ社外のキャリアコンサルタントに依頼し、日常の支援は上司の1on1で行う組み合わせが現実的です。
法律上の位置づけ
職業能力開発促進法では、事業主は必要に応じて、労働者が自分の職業生活設計に即して能力開発を行えるよう、キャリアコンサルティングの機会の確保などの措置を講ずるものとされています(10条の3)。また、能力開発の計画の作成(11条)と、職業能力開発推進者の選任(12条)が努力義務になっています。キャリア面談の仕組みを作るときは、推進者を人事担当者に決めておくと、社内の役割がはっきりします。
中小企業での始め方
対象の節目を決める
全員を一度に対象にすると負担が大きくなります。節目を2〜3つに絞って始めます。
| 節目 | 面談で考えること |
|---|---|
| 入社3年目前後 | 一通り仕事を覚えた後の方向(専門を深めるか、幅を広げるか) |
| 管理職への登用前後 | 管理職を目指すか、専門職として働くか |
| 育児休業からの復帰時 | 両立しながらの働き方と、今後の役割 |
| 40歳前後 | 中堅としての役割、学び直し |
| 50代後半 | 定年・再雇用後の役割と働き方 |
50代後半の面談は、定年後の再雇用の条件を考える前提にもなります(定年・継続雇用の実務)。育休復帰時の面談は、改正育児・介護休業法による働き方の意向確認とあわせて行うと効率的です。
面談の進め方(60分の例)
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 5分 | 目的と、記録・共有の範囲の説明 |
| 15分 | これまでの仕事の振り返り(やりがいを感じたこと、苦労したこと) |
| 15分 | 得意なこと・大切にしたいこと |
| 15分 | 3〜5年後にどうなっていたいか、そのために必要なこと |
| 10分 | 次の一歩(学ぶこと、経験したい仕事)を決める |
質問の例
- これまでの仕事で、一番力を発揮できたと感じたのはどんな場面ですか
- 今の仕事で、もっと伸ばしたい力は何ですか
- 3年後、どんな仕事をしていたいですか
- 働き方で気になっていること(家庭・健康など)はありますか。話せる範囲で構いません
- そのために、会社に期待する支援はありますか
記録と共有の範囲
面談で話された内容には、家庭の事情や健康、転職の迷いなど、本人が上司に知られたくない情報が含まれることがあります。
- 面談の前に「何を記録し、誰に共有するか」を本人に伝える
- 会社に共有するのは、本人が了解した「今後の希望」と「必要な支援」に絞る
- 社外のキャリアコンサルタントに依頼する場合は、報告の範囲を契約で決めておく
- 記録は、評価の資料とは分けて保管する
面談の結果を施策につなげる
面談をしても、何も変わらなければ社員の信頼を失います。
- 研修・学び直し:希望の多い能力開発のテーマを研修計画に入れる(研修計画の立て方、リスキリングの進め方)
- 異動・配置:本人の希望を、異動の検討材料にする(異動・配置転換の進め方)
- 制度の見直し:両立の悩みが多ければ、働き方の制度を見直す
- 全体の傾向:個人が特定されない形で傾向をまとめ、経営者に報告する
若手の離職を防ぐ施策の全体像は「若手の早期離職を防ぐ定着施策」で整理しています。
まとめ
- キャリア面談は、評価とは切り離して、中長期の働き方を本人が考える場にする
- セルフ・キャリアドックは、キャリアの節目に面談や研修を行う企業の取組。厚労省の委託事業で無料の導入支援がある
- キャリアコンサルタントは登録制の名称独占資格で守秘義務がある。社外・社内・上司の役割を分けて設計する
- 中小企業は2〜3つの節目から始め、記録と共有の範囲を事前に本人に伝える。面談の結果は研修・配置・制度の見直しにつなげる