30〜100名企業の人事評価制度のつくり方:等級・評価・報酬のシンプル設計
30〜100名規模の会社が、運用できる人事評価制度をつくるための手順を解説します。等級・評価・報酬の3つをシンプルにつなぐ考え方、評価シートの項目、導入時の就業規則・賃金規程の見直しまで整理しました。
- 対象読者
- 従業員30〜100名で、はじめて人事評価制度を整える企業の経営者・人事担当者
- 難易度
- 応用
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- 読了10分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 人事評価制度は「等級(期待する役割)」「評価(できたかどうか)」「報酬(処遇への反映)」の3つをつなげて設計する
- 30〜100名規模なら、等級は4〜6段階、評価項目は成果と行動で合計6〜8個程度に絞ると運用しやすい
- 賃金に影響する制度を入れるときは、就業規則・賃金規程の変更と従業員への丁寧な説明が必要
社員が30人を超えるころから、「社長がすべての社員を見て給与を決める」やり方が難しくなります。昇給の理由を説明できない、管理職によって評価が違う、といった不満も出てきます。
この記事では、30〜100名規模の会社が無理なく運用できる人事評価制度のつくり方を、等級・評価・報酬の3つに分けて解説します。
人事評価制度の3つの柱
人事評価制度は、次の3つの仕組みをつなげたものです。どれか1つだけをつくっても、うまく機能しません。
| 仕組み | 役割 | 決めること |
|---|---|---|
| 等級制度 | 社員に期待する役割・レベルを示す | 等級の数、各等級の役割、昇格の条件 |
| 評価制度 | 期待に対してどれだけできたかを測る | 評価項目、評価の基準、評価者、時期 |
| 報酬制度 | 評価の結果を給与・賞与に反映する | 等級ごとの給与の幅、昇給・賞与の決め方 |
「評価シートを作れば制度ができる」と考えがちですが、先に**等級(何を期待するか)**を決めないと、何を評価すべきかが定まりません。
ステップ1:等級制度をつくる
等級の数は4〜6段階を目安に
30〜100名規模なら、等級は4〜6段階程度が運用しやすい目安です。多すぎると等級ごとの違いを説明できなくなります。
| 等級 | 役割のイメージ | 対象の例 |
|---|---|---|
| 1等級 | 指示を受けて定型業務を正確に行う | 新卒・未経験の中途 |
| 2等級 | 担当業務を自分で計画して進める | 一般社員 |
| 3等級 | 後輩を指導し、チームの業務を改善する | 主任・リーダー |
| 4等級 | チームの目標を達成し、メンバーを育てる | 課長 |
| 5等級 | 部門の方針を決め、経営に参画する | 部長 |
役割は「行動」で書く
各等級の役割は、「何をしている人か」がわかる行動で書きます。厚生労働省が公開している「職業能力評価基準」には、業種・職種ごとにレベル別の能力や行動の例がまとめられており、文言を考えるときの参考になります。
ステップ2:評価制度をつくる
評価項目は「成果」と「行動」の2本立て
| 区分 | 内容 | 項目数の目安 |
|---|---|---|
| 成果評価 | 期初に立てた目標をどれだけ達成したか | 2〜3個 |
| 行動評価 | 等級に求められる行動ができたか | 4〜5個 |
項目は合計6〜8個程度に絞ります。項目が多いと、評価者が一つひとつを丁寧に見られなくなります。
評価の基準をそろえる
5段階評価の場合、各段階の意味をシートに書いておきます。
| 評価 | 意味 |
|---|---|
| S | 期待を大きく上回った(上位等級の水準) |
| A | 期待を上回った |
| B | 期待どおり |
| C | 期待をやや下回った |
| D | 期待を大きく下回った |
「Bは標準=期待どおり」と全員が理解していることが大切です。評価者研修を短時間でも行い、具体的な事例で目線を合わせましょう。
評価の流れ
- 期初:上司と本人で目標を決める(目標面談)
- 期中:月1回程度、進み具合を話す
- 期末:本人が自己評価し、上司が評価する
- 調整:管理職や経営者で評価のばらつきを確認する
- フィードバック:上司が本人に結果と理由を伝える
半年ごとに評価する会社が多く、年度の下期評価の準備は秋〜冬に始まります(11月にやることも参考に)。
ステップ3:報酬制度とつなげる
等級ごとに給与の幅(レンジ)を決める
各等級の基本給に、下限と上限を設けます。
| 等級 | 基本給の下限 | 基本給の上限 |
|---|---|---|
| 1等級 | 〇〇万円 | 〇〇万円 |
| 2等級 | 〇〇万円 | 〇〇万円 |
| 3等級 | 〇〇万円 | 〇〇万円 |
金額は、現在の社員の給与分布と、地域・業種の相場をもとに決めます。今の給与がレンジから外れる人が出る場合は、移行のルール(調整手当で差額を補うなど)を決めておきます。
昇給・賞与への反映
- 昇給:評価ごとに昇給額(号俸の数)を決める(例:S=4号、A=3号、B=2号)
- 賞与:会社の業績で原資を決め、評価に応じて配分する
- 昇格:一定期間の評価結果(例:2期連続A以上)と上司の推薦で判断する
評価が低かったことを理由に給与を下げる仕組みを入れる場合は、特に慎重な設計と説明が必要です。
導入時に注意すること
就業規則・賃金規程を見直す
賃金の決定・計算の方法や昇給に関する事項は、就業規則に記載が必要な事項です(労働基準法89条)。新しい制度で賃金の決め方が変わる場合は、賃金規程を改定し、労働基準監督署に届け出ます(常時10人以上の事業場)。
不利益変更にならないか確認する
制度の変更によって給与が下がる人が出る場合、就業規則の変更が「不利益変更」となり、合理性が問われます(労働契約法9条・10条)。変更の必要性、不利益の程度、経過措置、従業員への説明の内容などが考慮されます。導入前に、社労士や弁護士に相談することをおすすめします。
パート・有期の社員との均衡
正社員とパート・有期雇用の社員の間で、基本給・賞与などに不合理な待遇差を設けることは禁止されています(同一労働同一賃金)。評価制度を正社員だけに導入する場合も、職務内容や配置の変更範囲の違いに基づいて説明できるか確認しておきましょう。
最初の1年は「試行」にする
いきなり給与に反映するのではなく、最初の1回(または1年)は評価だけ行い、給与には反映しない「試行期間」を設けると、制度の問題点を洗い出せます。
まとめ
- 人事評価制度は、等級・評価・報酬の3つをつなげて設計する
- 等級は4〜6段階、評価項目は成果と行動で6〜8個程度に絞る
- 賃金に影響する場合は、就業規則・賃金規程の変更と丁寧な説明、不利益変更への配慮が必要
- 最初は試行期間を設け、運用しながら改善する
新しく入った社員の目標設定は「30-60-90日プラン」から評価制度につなげると、スムーズに運用できます。