1on1ミーティングの始め方:管理職への展開方法と、続けるための仕組みづくり
1on1ミーティングを「管理職任せ」にすると、数か月で形骸化しがちです。目的の決め方、頻度と時間、話すテーマの例、管理職向けの説明会とガイドの作り方、評価面談との違い、記録とプライバシーの扱いまで、人事が段取りする手順を整理します。
- 対象読者
- 社内で1on1を導入したい従業員30〜300名の企業の人事担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 1on1は部下のための時間。目的を「育成」「早期の不調の把握」などに絞り、評価面談とは切り離す
- 最初は月1回・30分から。管理職には説明会と1枚のガイドを用意し、最初の3か月は人事が実施状況を確認する
- 話した内容の記録は本人と上司だけが見る前提にし、健康やハラスメントの相談が出たときのつなぎ先を決めておく
1on1ミーティング(上司と部下が定期的に1対1で話す場)は、部下の成長を支え、不満や不調に早く気づくための仕組みとして広がっています。一方、「何を話せばいいか分からない」「忙しくて続かない」という声も多く聞かれます。人事が段取りを整えれば、小さな会社でも無理なく続けられます。
1on1の目的を決める
最初に「何のために1on1をするのか」を一文で決めます。目的が曖昧だと、管理職によって中身がばらばらになります。
| 目的の例 | 1on1で話すこと |
|---|---|
| 育成 | 仕事の進め方の振り返り、身につけたいスキル、次に挑戦したいこと |
| コンディションの把握 | 業務量、体調、職場の人間関係、困っていること |
| キャリアの支援 | 将来やりたい仕事、異動の希望、資格取得の計画 |
| 新入社員の定着 | 職場に慣れたか、分からないことがないか |
すべてを一度に狙わず、2つ程度に絞るのがコツです。なお、厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析」では、仕事に前向きに取り組めている状態(ワーク・エンゲイジメント)に着目して「働きがい」を分析しており、職場づくりを考える参考になります。
評価面談とは分ける
1on1は部下のための時間です。評価や指示の場にすると、部下は本音を話さなくなります。
| 項目 | 1on1 | 評価面談 |
|---|---|---|
| 主役 | 部下 | 上司(会社) |
| 頻度 | 月1〜2回 | 半期・年1回 |
| 話の中心 | 部下が話したいこと、困っていること | 目標の達成度、評価の結果 |
| 結果の扱い | 評価には直接使わない | 昇給・賞与に反映する |
評価の進め方は「人事評価制度のつくり方」で整理しています。
頻度・時間・場所の目安
- 頻度:月1回から始める。新入社員や異動直後の人は、最初の3か月だけ隔週にする
- 時間:30分。15分では話が深まらず、60分は続かない
- 場所:会議室やオンライン会議など、周りに聞かれない場所
- 予定:3か月分を先にカレンダーに入れる。上司の都合で延期した場合は、同じ週のうちに再設定する
新入社員の1on1は、オンボーディングの面談と兼ねると効率的です(「少人数の会社でもできるオンボーディング」、オンボーディング計画表)。
話すテーマの例
管理職が困るのは「何を聞けばいいか」です。質問の例をガイドに載せておきます。
| テーマ | 質問の例 |
|---|---|
| 近況 | 「この1か月で、うまくいったことは何ですか」 |
| 困りごと | 「いま一番時間を取られている仕事は何ですか」 |
| 業務量 | 「今の仕事量は、10段階でいうとどのくらいですか」 |
| 成長 | 「次に任せてほしい仕事はありますか」 |
| 上司への要望 | 「私にもっとしてほしいこと、やめてほしいことはありますか」 |
上司が話す時間は全体の3割程度にとどめ、解決策をすぐに示すより、部下が考えを整理するのを手伝う姿勢が大切です。
管理職への展開方法
1. 経営者の了解をとる
1on1は管理職の時間を使う取組です。「月に部下の人数×30分」の時間を業務として認めてもらうため、目的と期待する効果を経営者に説明し、了解をとります。
2. 管理職向けの説明会を開く
60〜90分程度の説明会で、次の内容を伝えます。
- 1on1の目的と、評価面談との違い
- 進め方(予定の入れ方、時間配分、記録のつけ方)
- 質問の例と、避けたい話し方(説教、詰問、プライベートへの踏み込み)
- 部下から健康やハラスメントの相談を受けたときの対応
- ロールプレイ(管理職同士で10分ずつ)
3. 1枚のガイドを配る
説明会の内容を、A4で1〜2枚の「1on1ガイド」にまとめます。目的、頻度、質問の例、記録のルール、相談を受けたときの連絡先を載せます。
4. 最初の3か月は人事が伴走する
| 時期 | 人事がやること |
|---|---|
| 1か月目 | 全管理職の初回実施を確認する。困ったことを聞く |
| 2か月目 | 実施率を確認し、未実施の管理職に個別に声をかける |
| 3か月目 | 部下側に短いアンケート(「役に立ったか」など)をとり、ガイドを見直す |
実施率は、日付と実施の有無だけを記録する簡単な一覧で管理します。中身まで人事が集めると、部下は話しにくくなります。
記録とプライバシー
- 記録は本人と上司だけが見ることを原則にし、最初に部下に伝える
- 記録には事実と次回までの約束事を短く書く。本人の性格や家庭の事情を評価するような書き方はしない
- 人事に共有するのは、本人の同意がある場合か、安全や健康に関わる緊急の場合に限る
体調不良や長時間労働の訴え、ハラスメントの相談が出たときは、上司が一人で抱え込まないことが大切です。誰に・どうつなぐかをガイドに書いておきましょう。
| 相談の内容 | つなぎ先の例 |
|---|---|
| 心身の不調 | 人事、産業医・保健師(選任している場合)、外部の相談窓口 |
| ハラスメント | 社内の相談窓口(ハラスメント相談記録票で記録) |
| 長時間労働 | 人事・労務(労働時間の実態を確認) |
| 退職の意向 | 人事(「退職の申し出を受けたら」) |
メンタルヘルスの基礎知識や、上司による部下のケア(ラインケア)の学習教材は、厚生労働省の「こころの耳」で公開されています。ハラスメントの相談対応は「ハラスメント防止措置の総点検」も参照してください。
うまくいかないときの見直し
| よくある問題 | 見直しの例 |
|---|---|
| 予定が延期され続ける | 時間を15分短くしてでも、毎月必ず実施する。経営者から管理職に声をかけてもらう |
| 業務の進捗確認だけになる | 進捗は別の会議で扱い、1on1では最初の5分だけにする |
| 部下が話さない | 事前に「話したいことを1つ考えてきて」と伝える。質問シートを使う |
| 管理職の負担が大きい | 部下が多い管理職は隔月にする、リーダーに一部を任せる |
1on1で出てきた「学びたいこと」は、研修計画に反映できます(「中小企業の年間研修計画のつくり方」)。職場全体の状態を把握したい場合は、「従業員エンゲージメント調査を小さく始める」もあわせて検討してください。
まとめ
- 1on1は部下のための時間。目的を2つ程度に絞り、評価面談とは分ける
- 月1回・30分から始め、管理職には説明会と1枚のガイドを用意する。最初の3か月は人事が実施状況を確認する
- 記録は本人と上司だけが見る前提にし、健康やハラスメントの相談のつなぎ先を決めておく