人事 #障害者雇用#労務管理#定着#公正採用選考

障害のある従業員への合理的配慮の進め方|申出の受け方、話合い、過重な負担の判断と記録

障害者雇用促進法は、募集・採用時と採用後の両方で、障害の特性に配慮した措置(合理的配慮)を事業主に義務づけています。厚生労働省の合理的配慮指針に沿って、申出の受け方、話合いと措置の決め方、過重な負担の判断要素、相談体制の整備、障害別の配慮例を整理します。

対象読者
障害のある従業員・応募者の受け入れを担当する人事担当者
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • 合理的配慮は、障害者手帳の有無にかかわらず、障害により職業生活に相当の制限を受ける人が対象。募集・採用時は本人の申出から、採用後は会社が支障となっている事情を確認するところから始まる
  • 措置は本人と話し合って決め、意向を十分に尊重する。過重な負担にあたる場合は理由を説明し、負担にならない範囲の別の措置を検討する
  • 相談窓口を決めて周知し、プライバシー保護と、相談を理由とする不利益取扱いの禁止を就業規則などで明らかにする

障害のある人を採用したとき、あるいは在職中の従業員がけがや病気で障害を負ったとき、人事担当者が向き合うのが「合理的配慮」です。障害者雇用促進法は、障害の特性に配慮した措置を講じることを事業主の義務としています。

一方で、何をどこまでやればよいのか、決まった答えはありません。この記事では、厚生労働省の合理的配慮指針に示された手順に沿って、実務の進め方を整理します。法定雇用率や納付金の仕組みは障害者雇用の始め方を参照してください。来客・顧客など事業の相手方への配慮は障害者差別解消法によるもので、来客・顧客への合理的配慮で解説しています。

合理的配慮とは

場面 法律の定め(障害者雇用促進法)
募集・採用 障害者からの申出により、障害の特性に配慮した必要な措置を講じる(第36条の2)
採用後 障害の特性に配慮した、職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じる(第36条の3)
共通 措置を講じるにあたっては障害者の意向を十分に尊重する。相談に応じ適切に対応する体制を整備する(第36条の4)

いずれも「事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるとき」は除かれます。対象は障害者手帳を持っている人に限られません。身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があり、長期にわたり職業生活に相当の制限を受ける人が対象です。

進め方の手順

募集・採用時

  1. 申出を受ける:応募者が、採用選考で支障となっている事情と希望する配慮を申し出る。具体的な措置が分からなければ、支障の内容だけでもよい。準備に時間がかかるので、面接日の前などに余裕をもって申し出てもらう
  2. 話し合う:会社と応募者で、実施できる措置を話し合う。応募者が措置を示せない場合は、会社から実施可能な案を示す
  3. 決めて伝える:意向を十分に尊重して措置を決める。同程度に効果のある措置が複数あれば、話し合ったうえで会社が実施しやすいものを選んでもよい
  4. 理由を説明する:申出の措置が過重な負担にあたる場合はその旨を伝え、求めがあれば理由を説明する

採用選考の案内には「選考にあたって配慮を希望する方はお申し出ください」と書き、連絡先を明記しておくと申出を受けやすくなります(面接のやり方)。

採用後

  1. 支障となっている事情を確認する:採用時に障害が分かっていれば採用時に、在職中に障害を負った・分かった場合はその時点で速やかに確認する。障害の状態や職場の状況は変わるので、定期的に確認する。本人からはいつでも申し出られることを伝える
  2. 話し合う:本人の意向を確認しにくい場合は、本人の同意を得て就労支援機関の職員などに同席してもらう方法もある
  3. 決めて伝える:措置の内容を伝える。実施に時間がかかる場合は、その旨も伝える
  4. 理由を説明する:過重な負担にあたる場合は、その旨と理由を説明し、負担にならない範囲の別の措置を検討する

合理的配慮は、職務の遂行に関係する措置です。眼鏡や車いすなど、日常生活のために必要な物を会社が用意する義務はありません。また、在職中に障害を負い、配慮をしても重要な職務を遂行できない場合は、別の職務に就かせることも検討します。

過重な負担の判断

指針は、次の要素を総合的に勘案し、個別に判断するとしています。

要素 内容
事業活動への影響 生産活動やサービス提供への影響
実現困難度 立地・施設の所有形態などによる、機器の導入や工事の難しさ
費用・負担の程度 複数の障害者に講じる場合は、その総額も考慮
企業の規模 規模に応じた負担の程度
企業の財務状況 財務状況に応じた負担の程度
公的支援の有無 助成金などの公的支援を利用できる場合は、利用を前提に判断

「前例がない」「他の社員が不公平に感じる」だけでは過重な負担の理由になりません。費用面は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の助成金や、地域障害者職業センターのジョブコーチ支援などを先に調べてから判断します。

障害別の配慮の例

指針の別表から、主な例を抜粋します。

障害 配慮の例
視覚障害 拡大文字や音声読み上げソフトの導入、職場内の机の配置や危険箇所の確認
聴覚・言語障害 筆談・メールでの業務指示、面接時の手話通訳などの配置、危険箇所や危険の発生を視覚で確認できるようにする
肢体不自由 机の高さの調整、移動の負担を減らす配置、スロープや手すりの設置
内部障害 体調に配慮した業務量の調整、通院のための休暇取得への配慮
知的障害 図を使った業務マニュアル、1つずつ指示を出す、業務量を段階的に増やす
精神障害 業務の優先順位や目標を明確にする、できるだけ静かな休憩場所の確保、本人の状況に応じた業務量の調整
発達障害 指示を文書で伝える、スケジュールや作業手順を明確にする、感覚過敏への対応(耳栓・サングラスの使用を認める)

周囲の従業員に障害の内容を説明する場合は、本人の同意を得たうえで、必要な範囲で伝えます。

相談体制の整備

指針は、次のような措置を求めています。

  • 相談窓口(担当者・部署、外部機関でも可)を決め、従業員に周知する
  • 相談窓口の担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにする
  • 相談者のプライバシーを保護し、そのことを周知する
  • 相談したこと、事実確認に協力したことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしないことを就業規則などに定め、周知する

ハラスメント相談窓口と一体で運用してもかまいません(ハラスメント防止措置)。相談内容と決めた措置、見直し予定日は記録に残し、担当者が替わっても経緯がわかるようにします。障害の内容は健康情報にあたるため、閲覧できる人を限定して管理します(人事データの一元管理)。

記録しておく項目

項目 例
申出・確認の日付と方法 2026年10月1日 面談で本人から申出
支障となっている事情 口頭の指示を覚えておくのが難しい
本人の希望 指示をチャットで送ってほしい
決めた措置 業務指示はチャットで送り、口頭の場合も要点をメモで渡す
実施しなかった措置と理由 ―
次回の確認時期 3か月後の面談

まとめ

  • 合理的配慮は手帳の有無を問わず義務。採用時は本人の申出、採用後は会社からの確認で始める
  • 措置は話し合って決め、意向を尊重する。過重な負担は6つの要素で判断し、理由を説明して代わりの措置を探す
  • 相談窓口の周知、プライバシー保護、不利益取扱いの禁止を規程で明らかにする
  • 経緯と措置を記録し、定期的に見直す

この記事で使えるテンプレート

DOCX 労務 ハラスメント相談記録票 社内のハラスメント相談窓口で使う相談記録票です。相談内容を5W1Hで整理し、相談者の意向、説明した事項(プライバシー保護・不利益取扱いの禁止)、事実確認と対応の経過までを記録できます。2026年10月施行のカスハラ対策義務化にも対応しています。

この記事に出てくる用語

合理的配慮
障害のある人が働くうえでの支障を取り除くために、障害の特性に応じて会社が講じる措置です。障害者雇用促進法で、募集・採用時と採用後の両方について義務づけられています。
就業規則
労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
障害者雇用促進法
障害者の雇用の促進と職業の安定を図るための法律です。法定雇用率による雇用義務、障害者雇用納付金、差別の禁止と合理的配慮などを定めています。正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」です。
法定雇用率
会社が雇用しなければならない障害者の割合です。民間企業は2026年7月から2.7%で、従業員37.5人以上の企業に1人以上の雇用義務があります。

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出典・参考資料

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