人事 #人事評価#個人情報#業務効率化#文書管理

人事データの一元管理|従業員台帳の項目設計、労働者名簿との関係、個人情報の取扱いルール

従業員の情報が、給与ソフト・勤怠システム・Excel・紙のファイルに分かれていると、更新漏れや二重入力、情報漏えいの原因になります。法律で作成が義務づけられた労働者名簿の記載事項と保存期間、従業員台帳の項目設計、閲覧権限の決め方、健康情報やマイナンバーの分けて管理すべき情報まで整理します。

対象読者
従業員30〜300名の企業で、従業員情報をExcelや複数のシステムに分散して管理している人事・総務担当者
難易度
実務
所要時間
読了9分
最終確認日

この記事のポイント

  • 労働者名簿は労働基準法107条で作成が義務づけられた帳簿。氏名・生年月日・履歴・性別・住所・業務の種類・雇入れ日・退職日と事由などを記載し、退職等の日から保存する
  • 一元管理の第一歩は「どの情報を、どこを正として持つか」を決めること。項目ごとに管理元・更新のきっかけ・閲覧できる人を一覧にする
  • 健康情報などの要配慮個人情報とマイナンバーは、一般の人事情報と分けて管理し、閲覧できる人を絞る。利用目的は就業規則や社内通知で明らかにしておく

従業員の住所が変わったのに、給与ソフトは更新したが緊急連絡先のExcelは古いまま。異動の履歴は人事担当者の頭の中にしかない。こうした状態は、少人数の会社ほど起きやすいものです。

人事データの一元管理とは、すべてを1つのシステムに入れることではなく、どの情報をどこで管理し、誰が更新し、誰が見られるのかを決めることです。この記事では、法律で作成が必要な帳簿との関係から、従業員台帳の項目設計、個人情報の取扱いルールまでを整理します。

法律で作成が必要な帳簿

人事データの土台になるのが、労働基準法で作成が義務づけられた帳簿です。

帳簿 根拠 主な記載事項
労働者名簿 労働基準法107条 氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇入れ日、退職日と事由、死亡日と原因
賃金台帳 労働基準法108条 賃金計算の基礎となる事項、賃金の額など
出勤簿など労働時間の記録 労働基準法109条(重要な書類) 始業・終業時刻など
年次有給休暇管理簿 労働基準法施行規則24条の7 時季、日数、基準日

労働者名簿の記載事項

労働者名簿は、事業場ごとに、日々雇い入れられる人を除く各労働者について作成します(労働基準法107条)。記載事項は、法律で定める氏名・生年月日・履歴のほか、労働基準法施行規則53条で次のように定められています。

  1. 性別
  2. 住所
  3. 従事する業務の種類(常時30人未満の事業では不要)
  4. 雇入れの年月日
  5. 退職の年月日とその事由(解雇の場合はその理由を含む)
  6. 死亡の年月日とその原因

記載事項に変更があったときは、遅滞なく訂正しなければなりません。

保存期間

労働者名簿や賃金台帳などは、労働基準法109条で5年間の保存が定められていますが、経過措置により当分の間は3年間とされています(労働基準法附則143条)。保存期間の起算日は書類ごとに決まっており、労働者名簿は「労働者の死亡、退職又は解雇の日」、賃金台帳は「最後の記入をした日」です(労働基準法施行規則56条)。

社会保険や税の書類はそれぞれ別の保存期間があります。書類ごとの保存期間は「文書管理と保存期間」で整理しています。

給与ソフトや人事システムの従業員マスタが、労働者名簿の記載事項をすべて満たしていれば、それを労働者名簿として使えます。退職の事由や履歴の欄がないことが多いので、項目を確認してください。

従業員台帳の項目設計

項目を「区分」に分ける

一元管理で最初にやるのは、管理している情報の棚卸しです。項目を次のように区分すると、閲覧権限や保存の方法を決めやすくなります。

区分 項目の例 機微度
基本情報 社員番号、氏名、生年月日、性別、住所、連絡先 中
雇用情報 雇用形態、入社日、所属、役職、等級、契約期間 中
履歴 学歴・職歴、異動・昇格の履歴、資格・研修受講歴 中
給与・社会保険 基本給、手当、口座、標準報酬月額、扶養家族 高
評価 評価結果、面談記録 高
勤怠・休暇 有給休暇の残日数、休職・育休の期間 中〜高
健康情報 健康診断結果、ストレスチェック、病歴、休職理由 特に高
マイナンバー 個人番号、扶養家族の個人番号 特に高(別管理)
退職情報 退職日、退職事由 中

項目ごとに「正」を決める

同じ情報を複数の場所で持っていると、どれが正しいかわからなくなります。項目ごとに、次の4点を決めて一覧にしておきましょう。

項目 管理元(正) 更新のきっかけ 更新する人
住所 給与ソフト 本人の住所変更届 人事担当
所属・役職 人事台帳(Excel) 辞令の発令 人事担当
扶養家族 給与ソフト 扶養異動の届出 給与担当
健康診断結果 健診データ(別フォルダ) 健診結果の受領 衛生管理者など限られた担当者

「正」以外の場所にある情報は、正から転記するだけにして、直接書き換えないルールにすると、食い違いが起きにくくなります。

入社・異動・退職を更新のきっかけにする

人事データの更新漏れは、手続きの流れとデータの更新が切り離されているときに起きます。入社手続き、辞令の発令、退職手続きのチェックリストに「台帳の更新」を1行入れておくだけで、更新漏れは大きく減ります。入社時のチェックは入社手続きチェックリスト、辞令の出し方は「人事異動の通知と辞令」を参照してください。

個人情報としての取扱いルール

従業員の情報も、個人情報保護法の対象です。会社として押さえるべき基本は次のとおりです。全体像は「個人情報・マイナンバー管理の基本」で解説しています。

ルール 内容 根拠
利用目的の特定 何のために使うかをできる限り特定する 個人情報保護法17条
利用目的の通知・公表 取得時に本人に通知するか公表する 同法21条
要配慮個人情報の取得 病歴などは、原則として本人の同意を得て取得する 同法20条2項
安全管理措置 漏えいなどを防ぐための措置を講じる 同法23条
第三者提供の制限 原則として本人の同意なく第三者に提供しない 同法27条

利用目的は就業規則や通知で明らかにする

従業員の情報の利用目的(給与計算、社会保険手続き、人事配置、評価、安全配慮など)は、就業規則や入社時の書類で明らかにしておきます。新しい目的で使う場合(例:退職者向けの連絡に使う)は、改めて本人に説明しましょう。

健康情報は分けて管理する

健康診断の結果や病歴、メンタルヘルスに関する情報は、要配慮個人情報にあたるものが多く、特に慎重な扱いが必要です。厚生労働省は、事業場ごとに健康情報等の取扱規程を定めることを求めており、手引きで規程の作り方を示しています。

  • 健康情報は、一般の人事台帳とは別のフォルダ・別のシステムで管理する
  • 閲覧できる人を、産業医・衛生管理者・人事の限られた担当者などに絞る
  • 上司に伝えるのは、就業上の配慮に必要な範囲(例:残業制限が必要)にとどめる

ストレスチェックの結果は、本人の同意なく会社が受け取ることはできません(ストレスチェックの実施)。健康診断の管理は「健康診断の実務」も参照してください。

マイナンバーは別管理にする

マイナンバーは、社会保険や税の手続きに使う目的以外では利用できません。人事台帳に一緒に入れず、給与ソフトのマイナンバー管理機能など、アクセスを限定した場所で管理しましょう。

閲覧権限の決め方

情報の区分ごとに、誰が見られるかをマトリクスにしておくと、システム設定やフォルダの権限設定がしやすくなります。

区分 人事担当 給与担当 所属長 本人
基本情報・雇用情報 ○ ○ 部下の分のみ ○
給与・社会保険 ○ ○ × ○
評価 ○ × 部下の分のみ 自分の結果
健康情報 限られた担当者のみ × 配慮事項のみ ○
マイナンバー 事務取扱担当者のみ 事務取扱担当者のみ × —

社内の個人情報の保管場所は個人情報管理台帳にまとめておくと、漏えい時の確認にも役立ちます。

システム化を検討するタイミング

Excelでの管理は、従業員が数十名までなら十分に回ります。次のような状況になったら、人事システムやクラウドの労務ソフトの導入を検討しましょう。

  • 同じ情報を3か所以上に入力している
  • 拠点が複数あり、ファイルの受け渡しが発生している
  • 評価や面談記録まで一元化したい
  • アクセス権限をファイル単位では管理しきれない

選び方は「給与・労務SaaSの選び方」「人事評価システムの選び方」で比較しています。

まとめ

  • 労働者名簿は法律で作成が義務づけられた帳簿。記載事項を満たしているか、従業員マスタの項目を確認する。保存は退職等の日から当分の間3年
  • 一元管理の第一歩は、項目ごとに「正」の管理元、更新のきっかけ、更新する人を決めること
  • 入社・異動・退職の手続きに「台帳の更新」を組み込んで、更新漏れを防ぐ
  • 健康情報とマイナンバーは一般の人事情報と分けて管理し、閲覧できる人を絞る

この記事で使えるテンプレート

CSV 総務 個人情報 管理台帳 社内で扱う個人データ(従業員名簿、給与データ、応募者情報、顧客名簿など)を一覧にする台帳です。個人情報保護委員会のガイドラインが例示する項目に、保管場所・保存期間・委託先・廃棄方法などを加えています。 DOCX 人事 入社手続きチェックリスト 雇用契約、社会保険・雇用保険の資格取得届、マイナンバー、扶養控除等申告書、PC・アカウント・備品・名刺の準備まで、人事・労務・総務の入社手続きを時系列で確認できるチェックリストです。

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