障害者職業生活相談員の選任と届出|5人以上雇用する事業所の義務、資格要件、JEEDの資格認定講習
障害者である労働者を5人以上雇用する事業所は、障害者職業生活相談員を選任し、ハローワークに届け出なければなりません。選任の期限(3か月以内)、資格要件、資格者がいないときのJEEDの資格認定講習(オンデマンド・無料)、相談員の役割と社内での位置づけを、障害者雇用促進法と施行規則に沿って整理します。
- 対象読者
- 障害のある従業員が増えてきた、従業員30〜300名の企業の人事担当者
- 難易度
- 実務
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この記事のポイント
- 障害者(身体・知的・精神)である労働者を5人以上雇用する事業所では、選任すべき事由が生じた日から3か月以内に障害者職業生活相談員を選び、遅滞なくハローワークに届け出る
- 資格は、学歴と障害者の職業生活の相談・指導の実務経験の組合せで決まる。該当者がいなければ、JEEDの資格認定講習(オンデマンド形式、受講料無料)を修了した人を選任する
- 相談員は職務内容・作業環境・人間関係・余暇などの相談と指導を行う。担当者を1人決めて終わりにせず、合理的配慮の窓口や管理職との連携の仕組みに組み込む
障害者雇用を進めて、ある事業所の障害のある従業員が5人になった。このとき必要になるのが「障害者職業生活相談員」の選任です。法定雇用率の計算や雇用状況報告に比べて目立たない手続のため、気づかないまま過ぎてしまうことがあります。
この記事では、選任義務の条件、資格要件、講習の受け方、選任後の運用を整理します。障害者雇用全体の流れは障害者雇用の始め方を参照してください。
選任が必要になる事業所
障害者雇用促進法第79条第2項は、事業主に対し、厚生労働省令で定める数以上の障害者である労働者を雇用する事業所で、障害者職業生活相談員を選任し、障害のある労働者の職業生活に関する相談・指導を行わせることを義務づけています。施行規則第38条で、その数は5人とされています。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 対象 | 障害者である労働者を5人以上雇用する事業所 | 法第79条第2項、規則第38条 |
| 対象となる障害者 | 身体障害者、知的障害者、精神障害者 | 法第79条 |
| 選任の期限 | 選任すべき事由が発生した日から3か月以内 | 規則第40条第1項 |
| 届出 | 選任後、遅滞なく、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所長へ | 規則第40条第2項・第3項 |
| 届出事項 | 相談員の氏名、資格を有することを明らかにする事実、事業所の労働者数と障害者の数 | 規則第40条第2項 |
判断は会社全体ではなく事業所ごとです。本社に3人、工場に5人いる場合、選任義務があるのは工場です。短時間勤務の人をどう数えるかなど、人数の数え方に迷う場合は、管轄のハローワークに確認してください。在籍者の障害の把握方法は障害者手帳の有無の確認で解説しています。
法定雇用率の対象となる事業主には、別に「障害者雇用推進者」を選任する努力義務もあります(法第78条第2項)。推進者は雇用の計画や報告を担う会社全体の担当者、相談員は事業所で障害のある従業員の相談・指導を担う担当者、と役割が異なります。
相談員になれる人(資格要件)
施行規則第39条は、相談員の資格を次のように定めています(要約)。
| 区分 | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 厚生労働大臣が行う講習(資格認定講習)の修了者 | 不要 |
| 大学・高等専門学校の卒業者など | 卒業後、障害者の職業生活に関する相談・指導の実務に1年以上 |
| 高等学校・中等教育学校の卒業者など | 卒業後、同じ実務に2年以上 |
| 上記以外の者 | 同じ実務に3年以上 |
このほか、職業能力開発総合大学校の一定の指導員訓練の修了者などの区分もあります。実務経験で選任する場合は、どの業務を何年担当したかを説明できるよう記録を残しておきます。
社内に該当者がいなければ、選任予定者に資格認定講習を受講させます。
JEEDの資格認定講習の受け方
民間企業の担当者向けの講習は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が実施しています(公務部門向けは厚生労働省が実施)。JEEDの案内によると、概要は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 障害者を5名以上雇用する事業所で、相談員として選任が予定されている人など |
| 形式 | 「JEED eラーニング」でのオンデマンド講習(受講期間は約2週間)。都道府県支部による集合形式の任意受講科目もある |
| 受講料 | 無料(通信費や任意科目の交通費などは受講者負担) |
| 申込み | 事業所の担当者が「JEED研修電子申請サービス」から申し込む。個人申込みは不可 |
| 修了 | 全科目の視聴完了、確認テスト100点、アンケート提出で修了証書を交付 |
受付は上限に達すると早めに締め切られ、受講可否の通知は申込期間終了後おおむね4週間後とされています。障害のある従業員が4人の段階で採用予定があるなら、5人目の入社前に講習を予定しておくと、3か月以内の選任に間に合わせやすくなります。最新の日程はJEEDのページで確認してください。
相談員の役割
JEEDは、相談員が行う相談・指導の内容として次の例を挙げています。
- 適職の選定、職業能力の向上など職務内容に関すること
- 障害に応じた施設・設備の改善など作業環境の整備に関すること
- 労働条件、職場の人間関係など職場生活に関すること
- 余暇活動に関すること
- その他、職場適応の向上に関すること
社内での位置づけ方
相談員を「届出上の担当者」にとどめず、次のように運用に組み込むと機能しやすくなります。
- 合理的配慮の相談窓口と一体にする。申出の受付から配慮内容の決定までを相談員が把握する(合理的配慮の進め方)
- 定期面談を決める。入社後3か月は月1回、その後は四半期に1回など、相談がなくても話す機会を作る
- 管理職との連絡ルールを決める。本人の同意を得て、業務上必要な範囲で配属先の上司と情報を共有する
- 外部支援機関の連絡先を一覧にする。地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、就労支援機関の担当者など
- 相談記録を残す。健康情報を含むため、閲覧できる人を限定して保管する
相談員が異動・退職するときは、後任を選任して改めて届け出ます。1人に依存しないよう、可能なら2人目の有資格者を育てておくと安心です。
よくある質問
Q. 相談員は人事担当者でなければいけませんか。 法律上、職種の指定はありません。資格要件を満たす、その事業所で雇用する労働者から選びます。障害のある従業員と日常的に接点があり、配属先の上司とも話しやすい立場の人(現場のリーダーや総務担当など)を選ぶと運用しやすくなります。
Q. 障害のある従業員が5人を下回ったら、届出は必要ですか。 施行規則に、人数が減ったときの届出の定めは見当たりません。ただし再び5人以上になったときに備えて、相談員の体制は維持しておくと手続が楽です。扱いに迷う場合は管轄のハローワークに確認します。
Q. 相談員に手当を付ける必要はありますか。 法律上の義務はありません。役割を明確にするため、業務分掌に記載し、評価や役割手当で報いる方法もあります。
関連する手続
| 手続 | 時期 | 参考 |
|---|---|---|
| 障害者雇用状況報告 | 毎年6月1日現在の状況を7月15日までに報告(常時雇用労働者が一定数以上の事業主) | 障害者雇用の始め方 |
| 障害者の解雇の届出 | 解雇するとき速やかに(労働者の責めに帰すべき理由による場合などを除く) | 法第81条 |
| 雇用に関する書類の保存 | 退職等から3年間 | 規則第43条 |
障害者雇用の取組が進んだら、もにす認定の取得も検討できます。
まとめ
- 障害者である労働者を5人以上雇用する事業所は、3か月以内に障害者職業生活相談員を選任し、ハローワークに届け出る
- 資格は学歴と実務経験で決まる。該当者がいなければJEEDの資格認定講習(オンデマンド・無料)を受講させる
- 5人目の採用が見えた段階で講習を予定し、選任期限に間に合わせる
- 相談員は合理的配慮の窓口・定期面談・外部機関との連携の中心に置き、異動時は後任を選任して届け出る
この記事に出てくる用語
- 合理的配慮
- 障害のある人が働くうえでの支障を取り除くために、障害の特性に応じて会社が講じる措置です。障害者雇用促進法で、募集・採用時と採用後の両方について義務づけられています。
- 障害者雇用促進法
- 障害者の雇用の促進と職業の安定を図るための法律です。法定雇用率による雇用義務、障害者雇用納付金、差別の禁止と合理的配慮などを定めています。正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」です。
- 短時間勤務制度
- 3歳に満たない子を養育する労働者などが申し出たときに、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮する制度です。育児・介護休業法で会社に義務づけられています。
- ハローワーク
- 厚生労働省の公共職業安定所の愛称です。職業紹介や求人の受付のほか、雇用保険の加入・喪失や給付の手続きの窓口になっています。
- 法定雇用率
- 会社が雇用しなければならない障害者の割合です。民間企業は2026年7月から2.7%で、従業員37.5人以上の企業に1人以上の雇用義務があります。