オフィスの家具転倒防止・地震対策|キャビネット・複合機の固定、避難通路と安全スペース、点検の進め方
地震によるけがの原因の3〜5割は、家具類の転倒・落下・移動とされています。オフィスでは、背の高いキャビネットや書架、キャスター付きの複合機が危険になります。東京消防庁の資料をもとに、レイアウトの見直し、避難通路と安全スペースの確保、家具の固定方法、賃貸オフィスでの注意点、定期点検の進め方を整理します。
- 対象読者
- オフィスの地震対策やレイアウト変更を担当する従業員30〜300名の企業の総務担当者
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- 基本
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- 読了7分
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この記事のポイント
- 東京消防庁の調査では、地震によるけがの原因の3〜5割が家具類の転倒・落下・移動によるもの。高層階ほど家具の移動が多く発生する傾向がある
- まずレイアウトを見直す。主な避難通路は直線で幅1.2m以上を確保し、出入口や通路の周辺、デスクのまわりに背の高い家具を置かない。物を置かない安全スペースを作る
- キャビネット・書架・複合機は壁や床に固定し、キャスターはロックする。賃貸オフィスでは固定工事の前に管理会社に確認し、レイアウト変更のたびに点検する
地震のとき、オフィスで危険なのは建物の倒壊だけではありません。背の高いキャビネットが倒れる、引き出しが飛び出す、キャスター付きの複合機が動いて通路をふさぐ。こうした家具類の転倒・落下・移動は、けがの大きな原因になります。
家具の固定は、一度やれば終わりではなく、席替えや増員、レイアウト変更のたびに崩れていきます。この記事では、総務担当者が進めるオフィスの家具転倒防止対策を、レイアウト、固定、点検の順に整理します。防災体制全体は中小企業の防災・BCPを参照してください。
なぜ家具の対策が必要か
東京消防庁は、次のような調査結果を公表しています。
- 地震によるけがの原因の3〜5割が、家具類の転倒・落下・移動によるもの
- 東日本大震災後のアンケートでは、都内の中高層建物のオフィスの**20%**で、家具類の転倒・落下・移動が発生した
- 階層が高くなるほど家具類の移動が多く発生する傾向がある(長周期地震動の影響と考えられる)
家具類の対策は、働く人や来訪者のけがを防ぐだけでなく、データや書類などの経営資源を守り、事業を続けるうえでも大切だとされています。
東京都内の事業所は防災計画に定める
東京都震災対策条例により、都内の事業所は用途や規模にかかわらず、事業所ごとに事業所防災計画を作成しなければなりません。家具類の転倒防止は、その計画に定める事項とされています。都外の事業所でも、防災計画や消防計画に家具の対策を盛り込んでおくと、点検の根拠になります(→防火管理者の選任と消防計画)。
ステップ1:レイアウトを見直す
固定より先に、危険な家具を危険な場所に置かないことが基本です。東京消防庁は、オフィスのレイアウトについて次の点を示しています。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 避難通路の確保 | メインとなる避難通路は直線状に、幅1.2m以上を確保する |
| 出入口・通路の周辺 | 転倒・移動しやすい家具を置かない |
| 安全スペース | 廊下、エレベーターホール、会議室など、なるべく物を置かない場所を作る。緊急地震速報が出たら、そこに退避して姿勢を低くする |
| デスクまわり | デスクまわりやオフィスの中央に背の高い家具を置かない。家具は人のいる場所からできるだけ離し、背の低いものを選ぶ。パソコンなど机上の機器の固定も確認する |
| 家具の向き | 引き出しが飛び出して避難の妨げにならないよう、向きに注意する |
| 避難誘導灯 | 前に物を置かず、どこからでも見えるようにする |
席替えやフリーアドレスの導入でレイアウトを変えるときは、この表をチェックリストとして使いましょう(→会議室・オフィスレイアウトの見直し)。
ステップ2:家具を固定する
東京消防庁のハンドブックは、キャビネット、書架・物品棚・移動ラック、複合機・デジタル印刷機、ローパーテーションなど、オフィス家具の種類ごとに固定方法を紹介しています。一般的な対策の例は次のとおりです。
| 家具 | 対策の例 |
|---|---|
| キャビネット・書庫 | 壁や床に金具で固定する。上下2段に重ねたものは連結する。重い物は下段に入れる |
| 書架・物品棚・移動ラック | 床や壁に固定する。棚板からの落下を防ぐ |
| 複合機・デジタル印刷機 | キャスターをロックし、床や壁に固定する、移動防止の器具を使う |
| ローパーテーション | 床や机と連結し、倒れないようにする |
| 引き出し・扉 | 地震の揺れで開かないよう、ラッチ(扉が開かない金具)を付ける |
固定の方法は、壁や床の構造によって変わります。コンクリートの壁、軽量鉄骨下地の中空壁、配線のための二重床(フリーアクセスフロア)では、それぞれ適した固定方法が違います。内閣府の防災情報のページも、十分に強度のある箇所に正しく固定しなければ、固定した場所もろとも壊れながら転倒・移動して大変危険だと注意しています。施工は専門の業者に相談しましょう。
サーバーラックやUPSの固定は、データを守る観点からも重要です(→サーバ室とUPSの管理)。
賃貸オフィスでの注意
壁や床に穴をあける固定は、ビルのオーナーや管理会社の承諾が必要なことが多く、退去時の原状回復にも関係します。工事の前に、賃貸借契約の内容と、ビル側が推奨する固定方法を確認しましょう(→オフィスの賃貸借契約)。穴をあけない方法(天井と家具の間に入れる突っ張り棒式の器具、粘着マットなど)を使う場合も、器具の種類によって効果に差があるため、組み合わせ方を業者に確認すると安心です。
ステップ3:点検を仕組みにする
| 時期 | 点検の内容 |
|---|---|
| レイアウト変更・増員時 | 新しく置いた家具の固定、通路幅、避難誘導灯の見え方 |
| 防災訓練の前後 | 安全スペースに物が置かれていないか、通路がふさがれていないか(→防災訓練のシナリオづくり) |
| 年末の大掃除 | 棚の上の荷物、固定金具の緩み、キャスターのロック(→年末大掃除の安全) |
| 年1回 | 家具の一覧と固定状況の棚卸し |
備品管理台帳に「固定の有無」「固定方法」「点検日」の列を加えておくと、点検の記録を一か所にまとめられます(→備品管理台帳、防災チェックリスト)。
社員への周知
- 緊急地震速報が鳴ったら、背の高い家具から離れ、安全スペースや机の下で身を守る
- 通路や避難口の前に段ボールや荷物を置かない
- キャビネットの上に物を積まない、重い物は下段に入れる
- 固定金具の緩みや外れに気づいたら総務に連絡する
帰宅困難時の待機や備蓄と合わせて案内しておくと、防災の取り組みが一つの流れとして伝わります(→帰宅困難者対策、安否確認の仕組みづくり)。オフィス移転のタイミングは、家具の配置と固定をゼロから見直す好機です(→オフィス移転の進め方)。
まとめ
- 地震によるけがの3〜5割は家具類の転倒・落下・移動が原因とされる。高層階ほど移動が多い
- まずレイアウトを見直し、直線で幅1.2m以上の避難通路と、物を置かない安全スペースを確保する
- キャビネット・書架・複合機は壁や床に固定し、壁や床の構造に合った方法を業者と選ぶ。賃貸では事前に管理会社に確認する
- レイアウト変更、防災訓練、大掃除のたびに点検し、台帳に記録する
この記事で使えるテンプレート
総務 防災・BCP 備えチェックリスト 地震・風水害などの災害に備えて、総務が点検すべき項目をまとめたチェックリストです。体制・連絡網、防火管理、オフィスの安全対策、備蓄品、事業継続(BCP)、訓練までを確認できます。 総務 備品管理台帳 パソコン・スマートフォン・机・複合機などの備品を1点ずつ管理する台帳です。管理番号、取得日・取得価額、会計処理区分、設置場所・使用者、貸与日・返却日、棚卸しの確認日まで記録できます。 総務 オフィス移転チェックリスト 本社・事業所を移転するときの準備、行政への届出(登記・税務署・年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク・消防署)、従業員関係の手続き、移転後の確認までを時期別にまとめたチェックリストです。この記事に出てくる用語
- 消防計画
- 防火管理者が作成する、火災予防と火災発生時の行動を定めた計画です。自衛消防の組織、避難経路、消防用設備の点検、訓練の実施時期などを記載し、消防署に届け出ます。