総務 #リスク管理#安全衛生#防災・BCP

クマ出没に備える会社の安全対策|出没情報の確認、屋外作業・通勤のルール、敷地の誘引物管理、遭遇時の行動と緊急銃猟への協力

クマによる人身被害は市街地や事業所の周辺でも起きています。政府は2025年11月にクマ被害対策パッケージをまとめ、市町村長の判断で人の生活圏で銃猟ができる緊急銃猟制度の運用も2025年9月に始まりました。環境省・政府広報の案内に沿って、出没情報の確認、屋外作業と通勤のルール、敷地内の誘引物の管理、遭遇したときの行動、出没時の社内連絡と自治体への協力を整理します。

対象読者
郊外・山間部に事業所や現場があり、従業員の通勤や屋外作業の安全を担当する従業員30〜300名の企業の総務担当者
難易度
基本
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • 基本は「クマを寄せ付けない」「人の存在を知らせる」「出没情報を調べる」。事業所周辺の自治体の出没情報を確認し、出没があれば屋外作業や通勤時間帯の行動を見直す
  • 敷地内の生ごみ・残飯・果樹・飲料の空き容器などクマを引き寄せるものを屋外に置かない。藪の刈り払いで見通しをよくする。遭遇したら走らず静かに離れ、建物や車の中に避難する
  • 事業所の近くに出没したら、従業員と来客を屋内にとどめ、自治体・警察に連絡する。緊急銃猟の実施時は、市町村の避難・通行制限の指示に従えるよう連絡体制を決めておく

「工場の裏山でクマを見た」「早朝に出勤した社員が駐車場でクマと鉢合わせしそうになった」。クマの出没は、山林で働く人だけの問題ではなくなっています。政府の関係閣僚会議は2025年11月、クマによる死者数が過去最多を大幅に更新した事態を受けて「クマ被害対策パッケージ」をまとめました。

会社としては、従業員の通勤と屋外での作業、来客の安全を守るためのルールが必要です。この記事では、環境省と政府広報の案内をもとに、事業所でできる対策を整理します。

国と自治体の動き

時期 内容
2025年9月 鳥獣保護管理法に基づく緊急銃猟制度の運用開始(環境省資料)。人の日常生活圏にクマやイノシシが出没した場合、安全確保など一定の条件のもとで、市町村長の判断で銃器を使った捕獲などができる
2025年11月 関係閣僚会議が「クマ被害対策パッケージ」を決定。人の生活圏からの排除、出没時の安全確保、誘引物の撤去、ICTを使った出没情報の提供などを盛り込む

環境省は、人身被害件数や出没件数の速報値、緊急銃猟の実施状況を「クマに関する各種情報・取組」のページで公表しています。

ふだんからやること

政府広報オンラインは、クマ被害を防ぐ基本として「クマを寄せ付けない」「人の存在を知らせる」「出没情報を調べる」の3つを挙げています。これを事業所の対策に置き換えると次のようになります。

出没情報を調べる

  • 事業所・現場がある市町村や都道府県の出没情報(ウェブサイト、メール配信、アプリなど)を総務で登録し、出没があれば社内に周知する
  • 出没が続く時期は、早朝・夕方の屋外作業や徒歩・自転車での通勤に注意を促す(政府広報は早朝や夕方の行動を避けるよう案内している)
  • 「いつもの道」「いつもの敷地」でも油断しないことを伝える

クマを寄せ付けない(誘引物の管理)

場所 対策の例
ごみ置き場 生ごみ・残飯は屋外に置きっぱなしにせず、ふた付きの頑丈な容器や屋内で保管し、収集日の朝に出す
休憩所・喫煙所 食べ残しや飲料の容器を放置しない
敷地の植栽 実のなる木(柿・栗など)の実を早めに収穫・除去する
敷地の周囲 藪や草を刈り払い、見通しをよくする。必要に応じて電気柵などを検討する

廃棄物の保管ルールはオフィスのごみと産業廃棄物の出し方もあわせて見直してください。

人の存在を知らせる

山林に近い現場や巡回では、鈴やラジオで音を出し、複数人で行動するよう指示します。政府広報は、人里に繰り返し出てくるクマには効果がない場合もあるとしているため、音だけに頼らず、出没情報の確認と組み合わせます。

屋外作業・通勤のルール

場面 ルールの例
山林・河川敷・農地に近い現場 単独作業を避ける。作業前に出没情報を確認する。退避できる車両や建物を決めておく
早朝・夕方の構内作業 照明を確保し、見通しの悪い場所に一人で行かない
徒歩・自転車通勤 出没が続く時期は、通勤経路や時間の変更、車での送迎、時差出勤を検討する(→マイカー・自転車通勤のルール)
営業・配送 訪問先周辺の出没情報を確認し、車から降りる前に周囲を確認する

クマ撃退スプレーを備える場合は、政府広報が、クマが目の前に迫ったときに使うもので、事前に操作方法を確認し練習しておくよう案内しています。保管場所と使い方を担当者に周知します。

遭遇したときの行動

政府広報オンラインは、遭遇したときの行動として次を挙げています。社内の周知文やポスターに使ってください。

  • 大声を出したり、走って背を向けたりせず、静かにゆっくり後退する
  • 車や建物など、クマとの間に遮るものを挟める場所があれば移動し、屋内や車内に避難する
  • 最後の手段として、うつ伏せになって手を首の後ろで組み、首と頭を守る「防御姿勢」をとる
  • 安全な場所に逃げたうえで、自治体または管轄の警察署に連絡する

事業所の近くに出没したとき

  1. 目撃情報を受けたら、従業員と来客を屋内にとどめ、屋外作業を中止する
  2. 自治体・警察に通報し、目撃場所・時刻・頭数・移動方向を伝える
  3. 社内に一斉連絡し、外出中・出勤途中の社員に注意を促す(→安否連絡網)
  4. 自治体から避難や通行制限の指示があれば従う。緊急銃猟が行われる場合、環境省の資料のとおり市町村長は地域住民の安全確保のため必要に応じて通行制限や避難指示を行うため、事業所の責任者と連絡がつく体制にしておく
  5. 安全が確認されるまで、帰宅や出社の時間をずらす

出没が続くときの出社・帰宅の扱い(自宅待機、在宅勤務、時差出勤)や賃金の考え方は、台風・大雪の日の出社と賃金と同じ枠組みで整理できます。

けがをしたとき

業務中や通勤途中にクマによる被害を受けた場合は、救急要請と応急手当を優先します(→職場の救急対応)。業務中・通勤中の災害は、労災保険の給付の対象になり得ます。手続きは労災が起きたときの手続き、通勤災害を参照してください。

社内ルールと周知文の例

対策は、担当と手順を文書にしておくと、担当者が不在でも動けます。次のような分担表を作り、防災マニュアルやBCPに加えておきます(→BCPの作り方)。

役割 担当の例 主な仕事
情報収集 総務担当 自治体の出没情報の登録・確認、社内への周知
現場の判断 各事業所・現場の責任者 屋外作業の中止・再開、屋内待機の指示
通報 目撃者または責任者 自治体・警察への連絡(場所・時刻・頭数・移動方向)
安否確認 総務担当 外出中・通勤途中の社員の状況確認
環境整備 施設管理の担当 ごみ置き場の管理、敷地の草刈り、果樹の実の除去

社内への周知文は、短く具体的にします。

【クマ出没に関するお知らせ】○月○日、当事業所の北側の山林付近でクマの目撃情報がありました(○○市の発表)。当面の間、早朝・夕方の構内の屋外作業は2人以上で行い、北側の通用口は使用しないでください。クマを見かけたら近づかず、静かに建物や車の中に避難し、総務(内線○○)に連絡してください。

外国人社員がいる職場では、やさしい日本語や母国語の版も用意します。環境省のページには外国人旅行者向けの注意喚起チラシ(英語版)も掲載されています。

まとめ

  • 自治体の出没情報を登録して社内に周知し、早朝・夕方の屋外行動に注意を促す
  • 生ごみ・残飯・果実など誘引物を屋外に置かず、藪を刈って見通しをよくする
  • 遭遇したら走らず静かに離れ、建物や車に避難し、自治体・警察に連絡する
  • 近くに出没したら屋内にとどめ、緊急銃猟時の避難・通行制限に対応できる連絡体制を作る

この記事で使えるテンプレート

CSV 総務 緊急連絡網・安否確認 連絡先一覧 地震・台風などの災害時に従業員の安否を確認するための連絡先一覧です。連絡網の順番、複数の連絡手段、緊急連絡先、帰宅・出社の目安、安否確認の結果欄までを1行にまとめています。

この記事に出てくる用語

安否確認
地震などの災害が起きたとき、従業員とその家族の安全や出社の可否を会社が確認することです。連絡網や安否確認サービスを使い、発動基準と手順を事前に決めておきます。
BCP
「Business Continuity Plan」の略で、地震・水害・感染症・システム障害などの緊急事態が起きても、重要な業務を止めない、または早く再開するための計画です。
労災保険
業務中や通勤中のけが・病気・障害・死亡に対して、治療費や休業中の所得補償などを給付する公的保険です。保険料は全額会社が負担します。

用語集の一覧を見る →

出典・参考資料

無料メルマガ

法改正アラート:改正の1ヶ月前に「やることリスト」が届く

月1回の定期号と、施行直前号でお届けします。今月やること・新着テンプレートもまとめて確認できます。