会社案内・パンフレットの作り方|目的と読者の決め方、掲載項目、制作会社への依頼と表示・著作権の注意点
会社案内は、営業・採用・取引先の審査など、さまざまな場面で使われる会社の基本資料です。目的と読者の決め方、掲載する項目、紙とPDF・Webの使い分け、制作会社への依頼の進め方、誇大な表示や写真の著作権・肖像の注意点、更新の管理を整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で、会社案内の作成・更新を任された総務・広報担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 最初に「誰に、何をしてもらうための資料か」を決める。営業用・採用用・取引先審査用で載せる内容と分量が変わる。1冊で全部を満たそうとしない
- 会社概要(商号・所在地・代表者・設立・資本金など)は登記事項と一致させる。実績や数値は根拠を残し、事実と異なる・誤解を招く表示をしない。採用に使う場合は職業安定法の的確表示も意識する
- 写真・イラスト・ロゴは著作権の扱いを契約で決め、社員が写る写真は本人の了解を得る。版の日付を入れ、組織変更や役員交代のたびに更新する
「会社案内、5年前のままなんだけど作り直してくれる?」。総務に突然こうした依頼が来ることがあります。デザインの話から始めたくなりますが、最初に決めるべきは「誰が、どの場面で読むか」です。
この記事では、会社案内を作り直すときの進め方と、見落としやすい法的な注意点を整理します。
目的と読者を決める
会社案内の使われ方は会社によって大きく違います。目的によって、載せる内容と分量が変わります。
| 目的 | 主な読者 | 重視する内容 | 形式の目安 |
|---|---|---|---|
| 営業 | 見込み客 | 事業内容、強み、導入事例、問い合わせ先 | A4 4〜8ページ、PDF |
| 採用 | 学生・求職者 | 仕事内容、働く人、キャリア、制度 | Webページ、説明会用スライド |
| 取引先の審査・与信 | 取引先の購買・審査部門 | 会社概要、沿革、主要取引先、許認可 | A4 1〜2枚 |
| 来客・式典 | 来訪者、地域 | 理念、沿革、拠点 | 紙のパンフレット |
1冊ですべてを満たそうとすると、ページ数が増えて誰にも読まれない資料になります。共通の会社概要(1〜2ページ)+目的別の資料に分けると、更新も楽になります。採用向けの発信は小さな会社の採用ブランディングも参考にしてください。
掲載する項目
会社概要(共通)
| 項目 | 確認先・注意点 |
|---|---|
| 商号 | 登記事項証明書と一致させる(株式会社の位置、旧字体など) |
| 本店所在地・拠点 | 登記上の本店と実際の本社が違う場合は書き分ける |
| 代表者 | 役職名と氏名。代表者交代時は必ず更新 |
| 設立 | 設立年月日(登記上の会社成立の日) |
| 資本金 | 増資・減資のたびに更新 |
| 従業員数 | 「〇年〇月現在」を付ける。正社員のみか、パート等を含むかを明記 |
| 事業内容 | 定款の目的ではなく、読者に伝わる言葉で |
| 許認可・登録 | 番号と有効期限 |
| 主要取引先・取引銀行 | 取引先名の掲載は相手の了解を得る |
| 法人番号・Webサイト・問い合わせ先 | 代表電話、メールアドレス |
商号や本店、役員が変わったときの登記は会社の登記変更の手続きを参照してください。登記を変えたら会社案内も更新する、と手順に入れておきます。
目的別の内容
- 理念・代表メッセージ:短く。写真付きで1ページ
- 事業内容・強み:「誰の、どんな困りごとを、どう解決するか」
- 沿革:設立、主要な出来事、拠点の開設など10項目程度
- 組織図・拠点:組織変更が多い会社は部署名を細かく書かない(→組織図と職務分掌)
- 数字で見る会社:売上、従業員数、平均年齢、有給休暇の取得率など。時点と定義を明記
表示の注意点
実績・数値は根拠を残す
「業界No.1」「顧客満足度98%」のような表示は、根拠となる調査や数字がないと、取引先からの信頼を損ないます。消費者向けの商品・サービスの広告で、実際より著しく優良と示す表示は、景品表示法の優良誤認表示にあたるおそれがあります。
- 数値には「〇年〇月時点」「〇〇調べ」を付ける
- 根拠資料(調査結果、集計表)を社内に保存する
- 「No.1」「最大級」は対象範囲と調査方法を併記できない限り使わない
採用に使う場合
会社案内を求人や説明会で使う場合、労働者の募集に関する情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保つことが求められます(職業安定法第5条の4)。平均残業時間や有給休暇の取得率、福利厚生の内容は、現状と合っているか人事に確認します(→求人票の書き方)。
写真・デザインの権利
著作権の扱いを契約で決める
制作会社やカメラマンに依頼した写真・イラスト・文章の著作権は、原則として作った人(制作会社など)に生じます。契約で決めておかないと、次のような問題が起きます。
| 問題 | 契約で決めること |
|---|---|
| 会社案内の写真をWebサイトや求人広告に使いたい | 利用範囲(媒体、期間)、または著作権の譲渡 |
| 別の制作会社で改訂したい | 元データ(デザインデータ)の引き渡し |
| 素材サイトの写真が含まれていた | 使用している素材のライセンス条件の一覧 |
契約書は契約書管理台帳に登録し、利用範囲を確認できるようにしておきます(→契約書の管理)。
社員が写る写真
社員の顔写真や名前は個人情報です。会社案内は社外に配布し、Webにも掲載されるため、撮影前に用途(会社案内、Webサイト、採用広告など)を説明して本人の了解を得ます。退職者が写った写真をいつまで使うか(次の改訂まで、など)も決めておきます。
了解の取り方は、撮影時の同意書が確実です。用途を「会社案内およびWebサイト」と限定して同意を得た写真を、後から求人広告に使う場合は、改めて本人の了解を取りましょう。
制作の進め方
| 時期 | やること |
|---|---|
| 3か月前 | 目的・読者・ページ数・予算の決定、経営者の承認 |
| 2〜3か月前 | 制作会社の選定(見積りの比較、過去の制作物の確認) |
| 2か月前 | 構成案・原稿の作成、写真撮影の日程調整 |
| 1か月前 | デザイン案の確認、事実確認(数字・固有名詞・登記事項) |
| 2週間前 | 最終校正、関係部署・経営者の確認 |
| 納品 | 印刷物の検品、PDF・元データの受け取り |
原稿は社内で書き、デザインと撮影を外部に頼むと費用を抑えられます。社内報の記事の書き方(→社内広報の進め方)のノウハウが使えます。
紙とPDF・Web
印刷物は一度刷ると修正できません。部数は1年で使い切る量にとどめ、普段はPDFとWebで配布し、紙は来客・式典・展示会用に絞ると、更新のたびに在庫を捨てる無駄がなくなります。
更新を管理する
- 表紙か裏表紙に**「〇年〇月発行」**を入れる
- 更新のきっかけ(代表者交代、本店移転、資本金変更、組織変更、拠点の開設・閉鎖)を一覧にしておく
- 年1回、従業員数や数値データを更新する
- 古い版のPDFが社内で使われないよう、共有フォルダの最新版を1つにする
本社の移転時は、会社案内・名刺・Webサイトなどの変更をまとめて行います(→オフィス移転の進め方、名刺の管理)。
まとめ
- 「誰に、何をしてもらうための資料か」を決め、共通の会社概要+目的別資料に分ける
- 会社概要は登記事項と一致させ、数値には時点と根拠を付ける
- 採用に使う場合は職業安定法の的確表示を意識し、人事と内容を確認する
- 写真・デザインの著作権と利用範囲は契約で決め、社員の写真は用途を示して了解を得る
- 発行年月を入れ、登記や組織の変更に合わせて更新する
この記事で使えるテンプレート
総務 契約書管理台帳 取引先との契約書を一覧で管理する台帳です。契約期間・自動更新の有無・解約予告期限・保管場所(紙/電子)・印紙の有無・担当部署を記録し、更新や解約の判断漏れを防ぎます。 総務 個人情報 管理台帳 社内で扱う個人データ(従業員名簿、給与データ、応募者情報、顧客名簿など)を一覧にする台帳です。個人情報保護委員会のガイドラインが例示する項目に、保管場所・保存期間・委託先・廃棄方法などを加えています。この記事に出てくる用語
- 職業安定法
- 求人の募集、職業紹介、求職者の個人情報の扱いなどのルールを定めた法律です。会社が求人を出すときの労働条件の明示や、虚偽の表示の禁止もここに定められています。
- 定款
- 会社の目的・商号・本店所在地・機関設計・役員の任期など、会社の基本ルールを定めた文書です。会社の「憲法」とも呼ばれ、変更には株主総会の特別決議が必要です。
- 登記事項証明書
- 法務局が発行する、会社の登記内容を証明する書面です。いわゆる「登記簿謄本」にあたり、銀行口座の開設や入札、許認可の申請などで提出を求められます。
- 年次有給休暇
- 一定期間働いた労働者に与えられる、賃金が支払われる休暇です。6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すると10日付与され、勤続に応じて最大20日まで増えます。
- 法人番号
- 国税庁が会社などの法人に1つずつ指定する13桁の番号です。個人のマイナンバーと違って公表されており、誰でも自由に利用できます。