組織図と業務分掌規程の作り方|部署ごとの所管業務の書き方、決裁権限との関係、改定の手順
組織図と業務分掌規程は、「誰が何を担当し、どこまで決められるか」を社内で共有するための基本文書です。組織図の描き方、業務分掌規程の構成と所管業務の書き方の例、職務権限・決裁権限規程との関係、取締役会での決議が必要な組織変更、改定と周知の手順を整理します。
- 対象読者
- 組織図・業務分掌規程を整備・改定する総務担当者、管理部門の責任者
- 難易度
- 実務
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- 最終確認日
この記事のポイント
- 組織図は「部署」と「指揮命令の線」を示す図、業務分掌規程は「部署ごとの所管業務」を定める規程、決裁権限規程は「誰がどこまで決められるか」を定める規程。3つをセットで整える
- 所管業務は「〜に関すること」と動詞・対象を具体的に書く。どの部署にも属さない業務と、複数部署にまたがる業務の扱いを決めておく
- 取締役会設置会社では、支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止は取締役会で決める事項。組織変更時は、組織図・規程・決裁権限表・社内システムの権限を同時に更新する
「この業務はどの部署の担当か」「誰に承認をもらえばよいか」。社内でこうした質問が頻繁に出るなら、組織図と業務分掌が整っていないか、実態と合っていない可能性があります。総務がこれらの文書の管理担当になることが多いものの、作り方を教わる機会はあまりありません。
この記事では、従業員30〜300名の会社で、組織図と業務分掌規程をつくり、改定していく手順を整理します。社内規程全体の体系は社内規程の体系とつくり方を参照してください。
3つの文書の役割
| 文書 | 定めること | 例 |
|---|---|---|
| 組織図 | 部署の構成と、指揮命令の系統 | 社長の下に管理部・営業部・製造部、管理部の下に総務課・経理課 |
| 業務分掌規程 | 部署ごとの所管業務 | 総務課は「株主総会・取締役会の運営に関すること」 |
| 決裁権限規程(職務権限規程) | 誰がどこまで決められるか | 50万円未満の備品購入は部長決裁 |
この3つは互いに参照し合うので、別々に改定すると食い違いが生じます。組織を変えるときは、必ず3つをセットで見直します。決裁権限は決裁権限規程テンプレートを使うと作りやすくなります。
組織図の描き方
載せる情報
- 部署名(正式名称)
- 部署の階層(本部・部・課・グループ)
- 部署の長の役職名(氏名を入れる版と入れない版を分けるとよい)
- 指揮命令の線(実線)と、助言・連携の関係(点線)
- 委員会など、部署以外の会議体(衛生委員会、コンプライアンス委員会など)
- 作成日・改定日
よくある失敗
| 失敗 | 対策 |
|---|---|
| 兼務が分からない | 兼務者は「(兼)」と表示し、兼務一覧を別に付ける |
| 社長直轄の担当が抜けている | 内部監査、秘書、経営企画などの位置を明示する |
| 委員会が載っていない | 法令で設置が必要な委員会(衛生委員会など)も記載する |
| 古い版が出回る | 社内ポータルの1か所にだけ掲載し、印刷版には作成日を入れる |
組織図は、採用説明、取引先への会社概要、労働基準監督署の調査、補助金の申請など、社外に提出することもあります。氏名入りの版を社外に出すときは、掲載する範囲を確認します。
業務分掌規程の構成
業務分掌規程は、次のような構成にするのが一般的です。
- 目的:各部署の所管業務を明確にし、業務を円滑に進めることを目的とする
- 組織:組織は別表の組織図のとおりとする
- 部署の長の責任:所管業務を遂行し、部下を指揮監督する
- 所管業務:別表で部署ごとに定める
- 所管が明らかでない業務:管理部長(または社長)が所管部署を決める
- 部署間の協力:複数の部署にまたがる業務は、主管部署が関係部署と協議して進める
- 改廃:取締役会(または社長)の承認による
所管業務の書き方
所管業務は「〜に関すること」という形で、対象と行為を具体的に書きます。
| 部署 | 所管業務の例 |
|---|---|
| 総務課 | 株主総会・取締役会の運営に関すること/社内規程の制定・改廃の取りまとめに関すること/印章の管理に関すること/文書の受発信と保存に関すること/備品・社用車の管理に関すること/防災・安全衛生に関すること |
| 人事課 | 採用に関すること/入社・退職の手続きに関すること/人事評価・昇格の運用に関すること/給与計算と社会保険の手続きに関すること/研修に関すること |
| 経理課 | 予算の編成・実績管理に関すること/会計記録と決算に関すること/支払と入金の管理に関すること/税務申告に関すること |
「総務に関すること」「その他必要なこと」だけの書き方では、境界の業務を決められません。業務の洗い出しには、人事総務の業務棚卸しの手順が使えます。
境界の業務を決めておく
小さな会社ほど、次のような業務の担当があいまいになりがちです。
- 社用携帯・パソコンの管理(総務か情報システムか)
- 契約書の審査と保管(総務か各部署か)
- 社内イベントの企画(総務か人事か)
- 個人情報の管理責任(総務か各部署か)
「主管部署」と「協力部署」を分けて書くと、責任の所在がはっきりします。
法令・他の規程との関係
取締役会の決議事項
取締役会設置会社では、支店その他の重要な組織の設置、変更および廃止と、支配人その他の重要な使用人の選任および解任は、取締役会が決めなければならない事項です(会社法第362条第4項)。どの組織変更・人事が「重要」にあたるかは、取締役会規程で基準を定めておくと判断しやすくなります(取締役会の議事録の作り方)。
就業規則・管理監督者との関係
組織図上の「部長」「課長」が、労働基準法上の管理監督者にあたるとは限りません。管理監督者かどうかは、肩書ではなく職務内容・権限・待遇の実態で判断されます(管理監督者の範囲)。業務分掌や決裁権限で部署の長に与える権限を書くときは、この点も意識します。
また、厚生労働省のモデル就業規則は、服務規律と遵守事項は必ず定めなければならない事項ではないものの、職場の秩序維持に大きな役割を果たすことから、会社として労働者に守らせたい事項を定めるよう示しています。部署の長の指揮命令や報告のルールを業務分掌規程に書く場合は、就業規則の服務規律と食い違わないようにします。
個人の職務
業務分掌は部署単位の定めです。個人の担当業務と求める成果は、職務記述書で定めます(職務記述書の書き方)。
組織変更のときの手順
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 新しい組織案と業務分掌の変更案をつくる |
| 2 | 決裁権限規程の変更案をつくる(部署名・役職名の置き換え、権限の再配分) |
| 3 | 必要に応じて取締役会で決議する |
| 4 | 人事発令を行う(人事異動の発令と社内通知の書き方) |
| 5 | 組織図・規程を社内ポータルで更新し、改定日を入れる |
| 6 | ワークフロー・会計・勤怠システムの承認経路と部門コードを変更する |
| 7 | 名刺・メール署名・社外向けの会社案内を更新する |
6のシステム設定の変更を忘れると、発令日から申請が承認されない、旧部署の上司に申請が回るといったことが起きます。システム担当者には、発令の2週間前までに伝えておきます。
まとめ
- 組織図・業務分掌規程・決裁権限規程は3つセットで整え、組織を変えるときは同時に改定する
- 所管業務は「〜に関すること」で具体的に書き、所管が不明な業務の決め方と、主管・協力部署を定める
- 取締役会設置会社では、重要な組織の設置・変更・廃止は取締役会の決議事項
- 組織変更時は、システムの承認経路や名刺・署名の更新まで手順に入れる