Web会議ツールの選び方:社外との会議のしやすさ、セキュリティの設定、録画データの管理と社内ルールで比べる
Web会議ツール(オンライン会議サービス)を会社として選び直すときの比較ポイントを、特定の製品をすすめずに整理します。社外との会議のしやすさ、待機室やパスワードなどのセキュリティ設定、録画・文字起こしデータの保存先と管理、アカウント管理、社内ルールの決め方までまとめます。
- 対象読者
- 部署ごとに別々のWeb会議ツールを使っている、または無料版のまま使い続けている、従業員30〜300名の企業の総務・情報システム担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了7分
- 最終確認日
この記事のポイント
- Web会議ツールは、社外の相手が使いやすいか、社内のチャット・カレンダーとつながるかで使い勝手が大きく変わる。まず会議の種類と参加者を整理する
- 総務省のテレワークセキュリティガイドラインは、会議URLを参加者以外に公開しない、出席者を確認する、パスワードや待機室を設定することなどを対策として示している。管理者が設定を強制できるかを比べる
- 録画や文字起こしのデータには個人情報や社外秘の情報が含まれる。保存先・保存期間・閲覧できる人を決め、社内ルールにまとめる
営業部はAというツール、人事は別のツール、社長は取引先に合わせて毎回違うツール。Web会議が当たり前になった一方で、会社としてどのツールを使うかを決めないまま運用している会社は少なくありません。アカウントの管理や録画データの扱いが部署任せになり、退職者のアカウントが残る、録画がどこにあるか分からない、といった問題が起きがちです。
この記事では、Web会議ツールを会社として選ぶときの比較ポイントを、製品名を挙げずに整理します。会議そのものの進め方は「会議の生産性を上げる運営ルール」、テレワークの社内規程は「テレワーク規程の作り方と労務管理」も参考にしてください。
まず会議の種類と参加者を整理する
| 会議の種類 | 参加者 | 重視すること |
|---|---|---|
| 社内の定例・1on1 | 社員のみ | チャット・カレンダーとの連携、すぐに始められること |
| 取引先との打合せ | 社外の相手 | 相手がアカウントなしで参加できるか、相手の会社の制限で使えないことがないか |
| 採用面接 | 応募者 | 案内のしやすさ、録画の同意の取り方(→オンライン面接の運用ルール) |
| 説明会・研修 | 多人数 | 参加人数の上限、質問の受け方、画面共有の制限 |
社外の相手が多い会社では、相手の会社が特定のツールしか使えないこともあります。「社内は1つに統一し、社外の相手の指定には柔軟に合わせる」という決め方も現実的です。
比べるポイント1:セキュリティの設定
総務省のテレワークセキュリティガイドラインは、オンライン会議の対策として、会議にアクセスするためのURLを正規の参加者以外に公開しない、出席者を確認して第三者が参加しないようにする、会議参加時のパスワードや待機室の機能を可能な限り設定する、といった点を示しています。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 入室の制御 | 待機室、パスコード、主催者による参加の許可 |
| 管理者による設定の強制 | 会社全体で、パスコードや待機室を必須にできるか |
| 通信の暗号化 | 暗号化の方式。機密性の高い会議ではエンドツーエンド暗号化に対応しているか |
| 画面共有・ファイル送信の制限 | 参加者の画面共有やファイル送信を主催者が制限できるか |
| 認証 | 社内のアカウントで一括ログイン(シングルサインオン)できるか、多要素認証に対応しているか |
同ガイドラインは、通信がhttps(TLS)で暗号化されていても、暗号化されているのは端末からサービス提供事業者のサーバまでの間に限られる場合があるとし、機密性の高い情報を扱う場合はエンドツーエンドで暗号化されるサービスの利用を挙げています。ただし、エンドツーエンド暗号化を有効にすると録画などの機能が使えなくなることもあるため、会議の種類ごとに使い分けを考えます。
比べるポイント2:録画・文字起こしデータの管理
録画や自動の文字起こし・要約の機能は便利ですが、会議の内容には社員や取引先の個人情報、社外秘の情報が含まれます。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 保存先 | クラウドに保存するか、各自のパソコンに保存するか。クラウドの保存場所(国・地域) |
| 保存期間 | 自動で削除する期間を設定できるか |
| 閲覧できる人 | 主催者・参加者・社内全員など、共有の範囲を管理者が制限できるか |
| 録画の通知 | 録画中であることが参加者に表示されるか |
| AIの機能 | 文字起こし・要約のデータがどう扱われるか、機能を管理者が無効にできるか |
会議の議事録をAIで作る場合の注意点は「会議の議事録をAIで作る運用ルール」で解説しています。
比べるポイント3:アカウントと費用の管理
- 管理者が、社員のアカウントを一括で作成・停止できるか
- 退職者のアカウントを停止したとき、録画データの引継ぎや削除ができるか
- 有料のアカウントを必要な人だけに割り当てられるか(会議を主催する人だけ、など)
- 利用状況(会議の回数・参加人数)を確認できるか
料金の体系は、利用者数・主催者数・参加人数の上限・録画の容量などで変わり、製品やプランによって大きく違います。契約前に、自社の使い方で見積りを取ります。アカウントは、他のSaaSと同じ台帳で管理しておくと、退職時の停止漏れを防げます(→IT資産・ライセンス管理)。
比べるポイント4:社内のツールとの連携
- カレンダーから会議のURLを自動で発行できるか
- 社内のチャットツールから会議を始められるか(→ビジネスチャットの選び方)
- 会議室の機器(カメラ・マイク・大型画面)と組み合わせて使えるか(→オフィスレイアウト見直しの進め方)
無料版・個人アカウントを使い続けるリスク
無料版や社員個人のアカウントは手軽ですが、会社として次の点を管理できません。
- 退職した社員のアカウントや、そこに残った録画を会社が停止・削除できない
- 待機室やパスコードなどの設定を、会社全体でそろえられない
- 誰がどの会議を開いたか、利用状況を確認できない
- 利用規約や、データの扱いを会社として確認・合意していない
業務の情報を扱う以上、会社が管理できるアカウントにまとめることが、ツール選びの前提になります。
切り替えの進め方
- 今使っているツールと、使っている部署・人数を洗い出す
- 会議の種類ごとに必要な機能を決め、候補を2〜3に絞る
- 社外の相手との会議を含めて、1〜2か月試用する
- 管理者の設定(パスコード・待機室・録画の保存先)を決めてから全社に展開する
- 旧ツールのアカウントと録画データを整理し、不要なものを削除する
社外の相手から別のツールを指定されたとき
取引先や採用候補者から、自社で使っていないツールでの参加を求められることはよくあります。すべて断るのは現実的ではないため、扱いを決めておきます。
- 参加者として使う場合は、アカウントを作らずブラウザから参加する方法を優先する
- 会社のパソコンに新しいアプリを入れる場合は、情報システムの担当に確認する
- 相手のツールで録画される場合は、録画の有無と保存先を相手に確認する
- 機密性の高い打合せでは、自社が管理するツールでの開催を提案する
社内ルールにまとめること
ツールを決めたら、使い方のルールを1枚にまとめて周知します。
- 会社として使うツールと、社外の相手から別のツールを指定されたときの扱い
- 会議URLを社外に転送しない、SNSなどに載せない
- 録画するときは、事前に参加者に伝える。保存先と保存期間
- 自宅やカフェで参加するときは、画面ののぞき見や音漏れに注意する
- 無料版や個人のアカウントを業務で使わない
まとめ
- Web会議ツールは、会議の種類と参加者を整理してから比べる。社外の相手との使いやすさも見る
- セキュリティは、入室の制御、管理者による設定の強制、暗号化、認証を比べる
- 録画・文字起こしのデータは、保存先・保存期間・閲覧できる人を決めて管理する
- アカウントは台帳で管理し、使い方のルールを社内に周知する