社内ITサポートの外部委託(情シス代行・ヘルプデスク)の選び方|任せる範囲、対応の時間と方法、権限と契約の確認ポイント
「PCが動かない」「パスワードを忘れた」「新しい人のアカウントを作って」。専任の情報システム担当がいない会社では、こうした対応を総務が抱えがちです。社内ITサポートを外部に委託するときに、任せる範囲の決め方、対応の時間と方法、管理者権限の渡し方、契約と個人情報の取扱い、偽装請負にならない進め方まで、特定の事業者に寄らずに整理します。
- 対象読者
- PCの設定やアカウント管理、社員からのIT関連の問い合わせを、総務が兼任で受けている従業員30〜300名の企業の担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- まず、今どんな問い合わせが月に何件あり、どれに時間がかかっているかを洗い出す。任せる範囲は「問い合わせ対応」「入退社時の設定」「機器の調達と管理」「セキュリティの運用」に分けて決める
- 比べるのは、対応の時間帯・方法(電話・チャット・訪問・遠隔操作)、対応件数や時間の上限、記録と報告、管理者権限の扱い。料金は自社の条件で見積もりを取る
- 委託先には社員の個人情報を扱わせることになるため、契約で安全管理と再委託の扱いを決め、委託先を監督する。常駐の場合は、委託先の担当者に自社が直接指示しない形にする
専任の情報システム担当がいない会社では、PCの不具合、プリンターの接続、パスワードの再設定、入社者のアカウント作成といった対応を、総務が兼任で引き受けていることがよくあります。1件ずつは小さくても、本来の業務が中断され、詳しい人が退職すると誰も分からなくなります。
この記事では、社内ITサポートを外部に委託するとき(いわゆる情シス代行・ヘルプデスクの委託)に、特定の事業者に寄らず比較するための確認ポイントを整理します。料金は対応の範囲と件数で大きく変わるため、自社の条件を示して見積もりを取ることを前提にしています。
まず今の問い合わせを洗い出す
委託の範囲を決める前に、今どんな対応をしているかを数えます。1か月ほど、次の項目を記録すると、委託先との話がしやすくなります。
| 記録する項目 | 例 |
|---|---|
| 日時と件数 | 1日あたり何件、どの時間帯に多いか |
| 内容の分類 | PCの不具合、アカウント・パスワード、プリンター、ネットワーク、ソフトの使い方 |
| 対応にかかった時間 | 5分で終わったか、半日かかったか |
| 対応の方法 | 口頭、電話、席に行って操作、業者に連絡 |
総務への問い合わせを分類して記録する方法は「総務への問い合わせログを分類して改善につなげる」が参考になります。記録してみると、委託するより社内のマニュアルやFAQで減らせる問い合わせも見つかります。
任せる範囲を決める
| 範囲 | 内容の例 | 委託するときの注意 |
|---|---|---|
| 問い合わせ対応 | PCやソフトの不具合、使い方の質問 | 社員が直接連絡してよいか、総務を通すかを決める |
| 入退社時の設定 | PCの初期設定、アカウントの作成・停止 | 依頼の方法と、停止のタイミングを決める(→入退社手続きを自動化する) |
| 機器の調達と管理 | PCの選定・購入、台帳の更新、廃棄時のデータ消去 | 購入の承認は社内のルールで行う |
| セキュリティの運用 | ウイルス対策・更新の確認、バックアップの確認 | 何を監視し、何を報告するかを決める |
| 社内システムの相談 | ツールの選定や導入の相談 | 助言の範囲か、作業まで含むかを決める |
全部を一度に任せる必要はありません。問い合わせ対応と入退社時の設定から始め、様子を見て広げる進め方もあります。
比べるポイント
| ポイント | 確認すること |
|---|---|
| 対応の時間帯 | 平日の何時から何時まで。始業前や休日の対応の有無 |
| 対応の方法 | 電話・メール・チャット・遠隔操作・訪問のどれに対応するか。訪問の範囲と回数 |
| 件数・時間の上限 | 月の対応件数や時間に上限があるか。超えたときの扱い |
| 記録と報告 | 対応の記録を自社が見られるか。月次の報告の内容 |
| 引き継ぎ | 今の機器・アカウント・設定の調査と、資料化をしてくれるか |
| 管理者権限 | どのシステムの管理者権限を渡すか。委託先の担当者ごとにアカウントを分けるか |
| 契約の終了 | 終了時に、資料・パスワード・設定の情報を返してもらえるか |
最後の「契約の終了」は見落とされがちです。委託先しか設定を知らない状態になると、事業者を替えられなくなります。設定の記録やアカウントの一覧は、自社が持つ前提で契約します(→パスワードの管理)。
個人情報と権限の扱い
ITサポートの委託先は、社員のメール、ファイル、人事や給与のシステムに触れることがあります。個人データの取扱いを委託する場合、会社は委託先に対して必要かつ適切な監督を行わなければなりません。個人情報保護委員会のガイドラインは、適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先での取扱状況の把握を挙げています。
- □ 契約に、安全管理の措置、目的外利用の禁止、再委託の条件、終了時のデータの返却・消去を入れた
- □ 管理者権限は必要なシステムに限り、委託先の担当者ごとに個別のアカウントを発行した
- □ 遠隔操作は、社員の了承を得てから始める手順にした
- □ 委託先の対応の記録を定期的に確認する担当を決めた
IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」も、外部に委託するときの情報セキュリティの確認を対策の一つに挙げています。社内のルールは「情報セキュリティの基本」で整理できます。
常駐型の場合は偽装請負に注意
委託先の担当者が自社に常駐する場合、自社の社員が委託先の担当者に直接業務の指示をしたり、勤務時間を管理したりすると、請負ではなく労働者派遣と判断される(偽装請負)おそれがあります。指示は委託先の責任者を通じて行い、契約で業務の範囲を明確にします。考え方は「業務委託・フリーランスと偽装請負の境界」を参照してください。
導入の手順
- 1か月分の問い合わせを記録し、任せる範囲の案を作る
- 2〜3社に同じ条件で見積もりを依頼する(→相見積もりの依頼書と比較表をAIで作る)
- 引き継ぎの調査(機器・アカウント・ネットワーク)の範囲と期間を決める
- 社員に、問い合わせの窓口と方法、遠隔操作の手順を案内する
- 3か月後に対応件数と満足度を確認し、範囲を見直す
委託先に渡す資料
委託を始めるときに次の資料がそろっていると、引き継ぎの調査が短くなり、費用も見通しやすくなります。
- PC・スマートフォン・ネットワーク機器の一覧(→IT資産管理台帳)
- 使っているクラウドサービスとアカウントの一覧、管理者が誰か
- ネットワークの契約(回線・プロバイダー)と、ルーターの設置場所
- 社内の情報セキュリティのルールと、PC貸与のルール(→PC貸与誓約書)
- 過去1か月の問い合わせの記録
よくある失敗
| 失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 範囲を決めずに「全部お願い」で契約する | 想定外の作業が追加料金になる、逆に頼んだつもりの作業がされない | 任せる範囲を表にして契約に添付する |
| 総務の窓口をなくす | 社員の依頼が委託先に直接集まり、社内で状況が分からなくなる | 依頼の記録を自社が見られるようにし、月次の報告を受ける |
| 管理者のパスワードを委託先だけが持つ | 契約を替えるときに設定を引き継げない | 自社の管理者アカウントを残し、パスワードを社内で管理する |
まとめ
- 委託の前に、今の問い合わせの内容・件数・時間を記録し、任せる範囲を決める
- 対応の時間帯と方法、件数の上限、記録と報告、管理者権限、契約終了時の情報の返却で比べる
- 個人データを扱わせる場合は、契約で安全管理を決め、委託先を監督する
- 常駐型では、委託先の担当者に自社が直接指示しない