MDM(モバイルデバイス管理)ツールの選び方:会社支給スマホ・PCを守るために必要な機能と、従業員への説明
会社支給のスマートフォンやノートPCを紛失したとき、遠隔でロックやデータの消去ができますか。端末をまとめて管理する「MDM(モバイルデバイス管理)」ツールの選び方を解説します。必要になるタイミング、最低限ほしい機能、私物端末(BYOD)との関係、位置情報など従業員のプライバシーへの配慮、比較表と導入の手順まで整理します。
- 対象読者
- 会社支給のスマートフォンやノートPCの管理を、総務と兼任で担当している従業員30〜300名の企業の担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- MDMは、会社の端末の設定を一括で配り、紛失時の遠隔ロック・データ消去、パスワードの強制、OSの更新状況の確認などを行うツール。総務省のテレワークセキュリティガイドラインでも紛失・盗難への備えとして挙げられている
- まず「管理する端末の種類(スマホ・PC、OS)と台数」と「紛失時に何をしたいか」を決める。対応OS、遠隔ロック・消去、設定の配布、台帳との連携を比べる
- 位置情報の取得など、従業員のプライバシーに関わる機能は、使う目的と範囲を決めて事前に説明する。私物端末は業務用の領域だけを管理する方式を検討する
会社支給のスマートフォンを、従業員が電車に置き忘れた。ノートPCが入ったかばんを盗まれた。そのとき、総務の担当者がすぐに端末をロックし、中のデータを消せるでしょうか。端末が数台のうちは手作業で設定できても、数十台になると、設定のばらつきや管理漏れが起こります。
この記事では、端末をまとめて管理する「MDM(モバイルデバイス管理)」ツールの選び方を、特定の製品に偏らずに整理します。端末の台帳管理は「情シス兼任のIT資産・ライセンス管理」、私物スマホの業務利用は「私物スマホ(BYOD)業務利用のルール」で解説しています。
MDMでできること
MDMは、会社が管理する端末に専用のアプリや設定を入れ、管理画面から一括で操作できるようにする仕組みです。製品によって範囲は異なりますが、主に次のことができます。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 紛失・盗難時の対応 | 遠隔でのロック、データの消去、端末の初期化 |
| セキュリティ設定の強制 | 画面ロックとパスワードの設定、暗号化の有効化 |
| 設定・アプリの配布 | Wi-Fi・メール・業務アプリの設定を一括で配る。不要なアプリの制限 |
| 状態の確認 | OSのバージョン、更新の適用状況、最後に接続した日時 |
| 端末の一覧 | 端末ごとの利用者・機種・状態を一覧で確認 |
総務省の「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」でも、テレワーク端末の紛失・盗難に備え、MDMなどを導入して遠隔でのデータ・アカウントの初期化、ログイン時のパスワード認証の強制、ハードディスクの暗号化などを有効にする対策が挙げられています。
導入を検討するタイミング
| こんな状況なら検討する | 理由 |
|---|---|
| 会社支給のスマホ・PCが増え、設定を手作業でしている | 設定のばらつきが、そのまま弱点になる |
| テレワークや外出が多く、端末を社外に持ち出す | 紛失・盗難のリスクが高くなる |
| 端末の紛失が実際に起きた、またはヒヤリとした | 次に起きたときの対応手順が必要 |
| 取引先からセキュリティ対策の状況を聞かれる | 管理の仕組みを説明できるようにする |
| 退職者の端末の回収・初期化に手間がかかっている | 一覧で状態を確認し、遠隔で初期化できる |
スマートフォンの場合、通信会社がMDMのサービスを提供していることもあります。ガイドラインでも、その方法で遠隔から初期化できる例が紹介されています。今の契約にオプションとして含まれていないか、最初に確認するとよいでしょう。
先に決めておくこと
ツールを比べる前に、次の3点を決めます。決めずに比較を始めると、機能の多さだけで選んでしまいがちです。
- 管理する端末:スマートフォンだけか、PCも含むか。OS(iOS・Android・Windows・macOS)ごとの台数
- 紛失時にやりたいこと:ロックだけか、データ消去まで行うか。誰が判断し、誰が操作するか
- 私物端末を含めるか:含める場合、会社が管理するのは業務用の領域だけにするのか
紛失時の手順は、MDMの導入とあわせて決めておきます。端末の紛失で個人データが漏えいした可能性がある場合の対応は「個人情報の漏えいが起きたときの初動対応」を確認してください。
比較のポイント
| 比較項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 対応OS | 自社の端末のOSにすべて対応しているか。OSによって使える機能が違うことが多い |
| 紛失時の機能 | 遠隔ロック・データ消去・初期化ができるか。操作の手順は分かりやすいか |
| 設定の配布 | パスワード・暗号化・Wi-Fi・アプリを一括で配れるか |
| 端末の登録 | 新しい端末を配るときの登録の手間。購入時に自動で登録できる仕組みに対応するか |
| 私物端末への対応 | 業務用の領域だけを管理する方式に対応するか |
| 台帳・他のツールとの連携 | 端末一覧を出力して、IT資産台帳と照合できるか |
| 管理画面 | 兼任の担当者でも操作できるか。日本語の画面・マニュアル・サポートの有無 |
| 費用の構造 | 端末1台あたりの月額か、まとめての契約か。台数が増えたときの総額 |
費用やできることは製品ごとに異なり、変更もあります。候補を2〜3製品に絞ったら、無料の試用期間などで、実際の端末に入れて操作を確かめるのがおすすめです。
従業員のプライバシーへの配慮
MDMの中には、端末の位置情報を取得できるものや、インストールされているアプリの一覧を見られるものがあります。会社の端末であっても、従業員が「監視されている」と感じると、反発やトラブルにつながります。
- 使う目的を決める:位置情報は「紛失時の捜索のときだけ確認する」など、目的と場面を限る
- 見る人を限る:管理画面にアクセスできる人を決め、操作の記録を残す
- 事前に説明する:何を管理し、何を見ないのかを、端末の貸与時に書面で説明する
- 私物端末は業務領域だけ:私物の写真や個人のアプリには会社が触れない方式を選ぶ
端末の貸与時の取り決めは「パソコン等貸与誓約書」のようなひな形に、MDMで管理することとその範囲を書き加えておくと、説明の記録にもなります。
導入の手順
- 端末の台帳を最新にする(利用者・機種・OS・購入日)
- 先に決めた3点をもとに、2〜3製品を比較する
- 総務の端末など数台で試験導入し、設定の配布と遠隔ロックを試す
- 従業員への説明資料を作り、管理する範囲を伝える
- 全端末に展開し、台帳と管理画面の一覧を照合する
- 紛失時の手順(連絡先、ロック・消去の判断者)を社内に周知する
パスワードや多要素認証のルールも、MDMで配る設定とそろえておきます(パスワード・多要素認証の社内ルール)。
導入後によくある失敗
- 登録していない端末が残る:導入前から使っている端末や、部署で独自に買った端末が登録から漏れる。台帳と管理画面の一覧を定期的に照合する
- 退職時に初期化を忘れる:退職者の端末を回収したら、管理画面で初期化と登録の解除を行う。退職の手続きのチェックリストに入れておく(退職手続きチェックリスト)
- 管理者が一人しかいない:担当者の不在時に紛失が起きると操作できない。管理者の権限を持つ人を2人以上にし、手順書を残す
- 更新の通知を見落とす:OSの更新に対応した設定の見直しが必要になることがある。提供元からのお知らせを受け取る担当者を決める
まとめ
- MDMは端末の設定を一括で配り、紛失時に遠隔でロック・消去できるツール。テレワークセキュリティガイドラインでも紛失・盗難への備えとして挙げられている
- 管理する端末の種類と台数、紛失時にやりたいこと、私物端末を含めるかを先に決める
- 対応OS、紛失時の機能、設定の配布、端末の登録、台帳との連携、管理画面の使いやすさで比べる
- 位置情報など従業員のプライバシーに関わる機能は、目的と範囲を決めて事前に説明する